平成19年度 行政視察報告

 

須坂市議会福祉環境委員会

岩 田 修 二

○ 視察先及び視察項目

  5月16日  山形県新庄市  

○ 食品トレーのリサイクルについて

視察した施設

 1 特定非営利活動法人 たんぽぽ作業所

 2 知的障害者通所授産施設 友愛園

 3 ヨコタ東北リサイクル・アメニティセンター

 4 新庄市環境課環境保全室

  5月17日  山形県庄内町 埼玉県吉川市

      ○ 風力発電について

      視察した施設

       1 風車村 ウインドーム立川

       2 庄内町風力発電施設

      ○ 一般廃棄物最終処分場について

      視察した施設

       1 エコパーク吉川「みどり」

  518日  千葉県市原市

      ○ 焼却灰のエコセメント化について

      視察した施設

       1 市原エコセメント

 

○ 視察の目的と視察場所の選定理由

 1 山形県新庄市「食品トレーのリサイクルについて」

   ごみの減量化については、全ての自治体が関心を持っており、その対策については様々な取り組みが行なわれている。新庄市では「新庄方式」として、食品トレーのリサイクル事業を、住民、企業、福祉施設、行政が一体となって進めていることから、その事業内容を視察し今後の研究課題とするため。

 2 山形県庄内町「風力発電について」

   峰の原高原に民間企業による風力発電事業が計画されており、環境影響評価方法書をめぐっての説明会等が開催されていることから、昭和55年から町ぐるみで風力発電事業に取り組んでいる庄内町(旧立川町)の実情を視察し、今後の参考にするため。

 3 埼玉県吉川市「一般廃棄物最終処分場について」

   最終処分場の建設をめぐって、適地とされた米子区から建設反対の請願が提出され、継続審査となっている。

   当委員会として須坂市に計画されているものと同じ方式で、ほぼ同規模の施設を視察し、最終処分場に対する見識を広めるため。

 4 千葉県市原市「焼却灰のエコセメント化について」

   現在須坂市で焼却処理されているごみの「焼却灰」は埋め立て処理されていることから、大都市周辺で実用化されている焼却灰のエコセメント化について、その工場を視察し、廃棄物のリサイクルについてさらに理解を深め、製品の積極的な活用について探るため。

 

○食品トレーのリサイクルについて

1 視察内容

   新庄市では「新庄方式」と呼ばれる障害者が参加する、食品トレーリサイクルシステムを確立している。これにより障害者は、安定した仕事を確保できるという安心感と環境保全という、重要な課題へ取り組んでいるという誇りをもち生活している。

 (1)「新庄方式」

  @家庭で使用済みトレーは洗って、スーパーの店頭回収ボックスへ

A特定非営利活動法人「たんぽぽ作業所」が回収して7種類に分別

B分別されたトレーを知的障害者通所授産施設「友愛園」がP&Pトレー用の原料ペレットを製造し潟コタ東北へ販売

C潟コタ東北がペレットの全量を買い取り「P&Pはがせる食品トレー」として商品化し地元スーパーへ販売

 (2)新庄方式の特徴

  @市民・スーパーマーケット・トレーメーカー・福祉施設が行政の支援を受けて運用しているため、地域ぐるみの取り組みに発展している。

  A回収できるトレーの種類が多いことで、ごみの減量効果が高い。

  B運用は、社会福祉法人とNPO法人、民間企業の三者で作る「P&Pトレーリサイクル研究会」が行っているため、市予算の投入はない。

  C福祉施設の作業が、機能回復訓練の一環として、軽作業に携わることで将来的に一般労働への移行促進や継続的な雇用の実現といった自立をめざしている。

 (3)事業の実績

  @平成16年11月から稼動、トレーの店頭回収協力店舗14店舗

  A平成18年度実績

    スーパーから回収した量  54,454kg(回収率約20%)

    リサイクルできた量    47,862kg

    リサイクル率          87.9%

 (4)視察した施設の概要

  @特定非営利活動法人 たんぽぽ作業所(知的障害者小規模作業所)

   ・定員  15名

   ・作業内容

     廃油石鹸・菓子の製造販売、各種リサイクル事業

   ・「新庄方式」での業務内容

地域住民が投入したスーパーの回収ボックスからトレーを運搬し、汚れ落とし、有色・白色の区分、リサイクルできないトレーの分別作業を行っている。

        食品トレーの分別         7種類に分別し袋に入れる

             作業所内部                   たんぽぽ作業所玄関



  A知的障害者通所授産施設 友愛園

   ・定員  40名

   ・主な授産の状況

     葬祭用品の受託、縫製品、木工組み立て加工、印刷、園芸、食品トレーのリサイクル

   ・「新庄方式」での業務内容

    分別したトレーから剥がせるトレーの材料となるペレットを製造し潟コタ東北へ全量を売却。機械はオーストラリア製2台で、潟コタ東北が無償貸し付けしている。

  たんぽぽ作業所から運ばれた食品トレー        ペレット製造する機械へ
     オーストラリア製の機械           製造した原料ペレット
      担当者から説明を聞く      

   トレーの色によって出来上がったペレット

  B潟コタ東北リサイクル・アメニティセンター

   豆腐容器の製造でトップシェアを誇る潟コタ東北が、環境教育の体験学習が行えるリサイクル施設として、平成12年に新庄市中核工業団地に建設したもの。

   建物は、ミュージアム棟と工場棟からなり、総合プロデュースを母子健康手帳のイラストなどで有名な創作家、「みのわむねひろ」氏に依頼したもの。ミュージアム棟にはリサイクルの仕組みをイラストや人形で分かりやすく説明する展示室、学習ビデオを上映するミニシアターやカフェも設置されている。工場棟2階の見学コースからは、食品トレーの再生ラインを見ることができる。来館者の半分以上を子どもが占めている。

   ・「新庄方式」での役割

    「友愛園」が製造したペレットを全量買い取り食品トレーを製造し、主に地元スーパーに販売。

   アメニティーセンター中央ホール      ドイツで製作された陶器の壁画
         中央ホール          食品トレー製造工場
    見学コースガラス越しから

 

2 視察の成果とまとめ

 (1)新庄市は、平成11年に「環境保全都市宣言」を行い、環境に関するさまざまな取り組みを行っている。平成1611月から始まったトレーリサイクル新庄方式は、その一環であり注目すべき取り組みである。

 (2)食品トレーの店頭回収は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンと多用途にわたる容器が対象となっており着実に軌道に乗ってきている。

 (3)しかし、トレーの回収率が20%台ということで、店頭回収協力店の増を含めて回収率の向上が大きな課題ではないだろうか。

 (4)「新庄方式」の大きな特徴は、市内企業の環境問題に対する積極的な取り組みにあり、この企業の存在が大きな役割を果たしている。また、福祉施設が主体的に参加していることにより、リサイクルの大きな輪が広がっている。

 (5)須坂市内における食品トレーの回収はまだ一部のスーパーでしか行なわれておらず、プラスチックごみの相当を占める食品トレーの地域内での循環再資源化は大変参考になる取り組みであるが、協力する企業(市外も含めた)、スーパー・店舗の開拓が大きな課題と言える。

 

○ 風力発電について

1 視察の内容

 (1)風力発電導入の経過

   庄内町(旧立川町地域)は、地域特性である強風を資源として昭和55年から町おこしのシンボル的に風車が導入されたことから、風力発電に対する取り組みがスタートしている。平成5年にアメリカ製大型風車3基を建設し、当時は80世帯分を発電する自治体では日本一の風力発電施設であった。また、施設周辺を風車村として整備、バッテリーカー広場、木製遊具広場では風車で発電された電気で充電したバッテリーカーやソーラーカーなどが備わっている。さらに、「風」を理解するスペースとして多目的施設「ウィンドーム立川」をオープン、教育と観光を兼ね備えたスポットとなっている。

 (2)現在の状況

   平成7年度に策定した「立川町新エネルギー導入計画」で本格的に風力発電の導入を目指し現在11基が稼動している。立川地区の年間消費電力量の約10%に当たる6,500kWの出力を擁し、年間1,267万kWhの発電能力がある。その発電量は、地区全体の57.6%の電力需要をまかなうことができる。

   町営の施設はドイツ製1500kW級1基と風車村のアメリカ製100kW級3基、他は第3セクターで6基、民間企業で1基保有している。総事業費は、1500kW級のものが3億4000万円であった。

 (3)故障等の状況及び対応(町営の1500kW級)

   平成14年2月運転開始、過去の故障は、増速機交換2回、落雷によるブレード損傷のため3回補修があった。

   故障停止時の対応は、基本的には電話回線を使って遠隔操作による対応となる。24時間体制で製造元のドイツか日本の代理店が対応している。

 

       ウインドーム立川     最初に設置されたアメリカ製風車
          風車入り口          風車内部の制御盤



2 視察の成果とまとめ

 (1)庄内町(旧立川町)が事業の主体となって、第2次エネルギー導入計画の柱となる大型風力発電施設の導入を進めてきている。その目的は、地球規模での環境問題やエネルギー問題への対応を図るとともに、町の特徴である年間平均風速5.2m/s

(地上高15m)の中風速域での1500kW大型風力発電機の事業性を実証することとしている。

 (2)風力発電施設は、国道47号と最上川にはさまれた平坦な田園地帯に建設されており、景観的に特に違和感を感じなかった。

 (3)建設工事は農作業のない冬場に行なわれており、仮設道路等を建設しても農作業が始まるまでに復旧したため、さほど問題にはならなかったとの説明。

 (4)庄内町は、風力発電施設を観光・教育・地域づくりにと多面的に活用していることから、取り立てて課題や問題の発生については報告がなかった。

 

 

○ 一般廃棄物最終処分場について

1 視察の内容

 (1)事業及び施設の概要

   事業者    東埼玉資源環境組合

       構成市町村  越谷市草加市八潮市三郷市吉川市松伏町

       管内人口 861,919人

   愛  称   エコパーク吉川「みどり」

   敷地面積   約48,900u

   工  期   平成12年9月〜平成14年3月

   工事費    477,750万円

   埋立処分地

          埋立面積 約31,000u

          埋立地深さ 平均 5.5m

          埋立容量  170,000?

          埋立対象物 溶融スラグ

   遊水地    6,000?

   水処理施設

          処理能力 120?/日

          浸出水調整池 4,600?

          処理方法 凝集沈殿方式

   施設の水対策は、浸出水の流出を防止するため処分地の外周に深さ12.5〜17mの遮水工を設け、処分地には2層の遮水シートを、また、漏水を検知するためのモニタリング管及び漏水検知システムを設置、さらに処分地から発生する浸出水は処理施設で処理し、遊水地を経て最終的には一級河川大場川に放流している。

 (2)5年経過した現時点の埋立状況

   旧施設は、土地区画整理事業地内に位置していたため、平成12年9月から現地に新たな最終処分場の建設に取りかかり平成14年4月から供用を開始した。この間に、容器包装リサイクル法の完全実施などの社会状況の変化により、ごみの分別再利用、減量化が進み焼却残渣等の量も減少傾向に転じている。現在の埋立量は埋立容量の16.62%となっている。

 (3)問題点、今後の課題

   @溶融スラグをインターロッキングブロック製作のための原材料として使用し、構成市町村の公共事業等に有効利用を図ってきている。

   AJIS規格の制定により、今後ますます有効利用が促進されるものと見込んでいるため、溶融スラグの有効利用について調査研究を進めていく。

   Bごみの減量化やスラグの有効利用が進むと、最終処分場の延命が図られるが、処分場の使用期限が15年と定められていることから、使用期限の延長について検討を始めていく。

 

        最終処分場埋立地     インターロッキング製造原料貯留場
          溶融スラグ

            浸出水調整池                     製品化されたインターロッキング

2 視察の成果とまとめ

   東埼玉資源管理組合は5市1町で構成されており、ごみの焼却及び灰溶融施設が越谷市に、し尿処理施設が八潮市に、最終処分場が吉川市にそれぞれ設置されている。

最終処分場のある吉川市は、埼玉県の南東部に位置し、東京都心から30kmの距離にある平坦な地形になっている。平成8年に市制を施行し現在の人口は58,000人余り。施設は、一級河川大場川に接する田園地帯に建設されているが、旧最終処分場も吉川市に設置されていたことからか、建設に当たって特に住民の反対はなく現在まで取り立てて問題は発生していない。ただし、溶融スラグ以外は埋立しないとの確認がされている。

施設を視察し、溶融スラグを実際に手にとって見たことは、今後のためにも大変有意義な研修であった。

 

○ 焼却灰のエコセメント化について

1 視察の内容

   一般廃棄物と産業廃棄物(汚泥等)をセメンとして資源化することを目的とした「エコセメント」の製造工場である、市原エコセメント株式会社を視察し、エコセメント利用による資源循環型社会の実現に向けた取り組み、エコセメントの製造工程等について研修した。

 (1)「エコセメント」とは

   「エコロジー」と「セメント」を組み合わせた造語。都市ごみ焼却灰などの廃棄物を主原料として製造される新しいセメントで、旧通産省より命名されたもの。

   エコセメントの技術開発経過は、1990年代初期に太平洋セメント鰍ェ都市ごみ焼却灰などをセメントの原料として再利用することの研究開発に着手し、1993年度に経済産業省の事業として実証実験がスタートした。そして、1997年には実証研究の結果を基に、エコセメント製造技術が確立された。

 (2)「資源循環型社会は、ちばからはじまる」

   千葉県では、あらゆる廃棄物をゼロにすることをめざす「ゼロエミッション構想」を推進するため、県の西・中央地域をモデル地区とし、民間の技術力及び資本力を活用した再資源化施設を整備し、新技術によるリサイクルシステムを実現した都市づくりをめざすことを目的として、「千葉県エコタウンプラン」を策定した。その中核施設として市原エコセメントの施設が位置づけられている。

 (3)市原エコセメント株式会社

   平成13年4月、千葉県エコタウンプランの中核施設で世界初のエコセメント施設として稼動を開始。千葉県の人口の約1/4にあたる150万人分の焼却灰を原料として、年間約11万トンのエコセメントを生産することができる。

 (4)エコセメントの用途

   エコセメントには、「普通エコセメント」と「速硬エコセメント」の2種類がある。普通エコセメントは、普通のセメントとほぼ同様の品質を持ち、生コンクリートとして鉄筋構造物やコンクリート製品をはじめ、地盤改良材等、幅広い用途に利用できる。

   速硬エコセメントは早く固まるセメントで、早期に強度が発現する特徴を持ち、建築用の空洞ブロック、化粧ブロック、木片セメント板等、土木用のインターロッ

キングブロック、消波ブロック等の無筋コンクリート製品として利用されている。

     市原エコセメント入り口           施設全体の模型
          施設の見学

   エコセメントはタンクロ^リーで運ばれている

2 視察の成果とまとめ

   エコセメントは都市ごみ焼却灰や汚泥を主原料にして、セメントを製造することができる画期的な技術で、「21世紀の地球環境を救う技術」として高く評価されている。技術的には確立されているものの、設備に相当の費用が必要なこと、製品の安定した販路が必要なこと等を考えると、地方の小規模都市への導入はまだ先のことと考えざるを得ない。

   また、焼却灰の搬入も考えられるが、輸送経費、焼却灰の内容を含めた管理等解決しなければならない課題は多い。



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