○送信したニュースレター2018年(No.117〜134)


ニュースレターNo.134(2018年12月21日送信)

長野県の地域産業政策に係る2019年の調査研究の具体的方向性等について

【はじめに】
〇ニュースレターNo.133(2018.11.24送信。テーマ「長野県の地域産業政
策に係る当面注視すべき課題について〜産学官の皆様方による、県に対す
る、地域産業政策の質的高度化と効果的具現化のための助言・提言に資す
ることを目指して〜」)で提示した、長野県の地域産業政策に係る様々な
課題は、長野県固有の課題ではなく、地域産業政策の普遍的課題に相当す
ると言えるものでもあることから、それらの課題の解決方策の創出に資す
ることを、2019年の調査研究の基本的目標として位置づけようと考えている。

〇年末のこの時点で、この基本的目標の下に、2019年の私の調査研究の具
体的方向性等(テーマ等)についてきちっと整理し、来年1月からの調査
研究活動を円滑にスタートできるようにしておくべきと考えた次第である。

〇長野県の地域産業政策の質的高度化に関心をお持ちの産学官の皆様方に
は、私の調査研究の具体的方向性等に対してご意見・ご助言等をいただく
ことや、関連する調査研究やセミナーの開催等についての情報を適宜提供
していただくことなど、私の調査研究活動へのご支援等をお願い申し上げ
たい。

【長野県ものづくり産業振興戦略プランの統括的推進体制の整備に資する
調査研究】
〇ものづくり産業振興戦略プランの統括的推進体制が有すべき基本的支援
機能は、「産業イノベーション創出活動の入口から出口までを一貫支援で
きるワンストップ・ハンズオン型支援機能」と、「同プランに提示された
16の地域クラスター形成プロジェクトの戦略的マネジメント機能」の二つ
であること、そして、この二つの支援機能の整備に当たっては、工業技術
総合センター、中小企業振興センター、テクノ財団の支援機能の連携・融
合化を組み込むべきことが同プランに明示されている。

〇そこで、同プランの統括的推進体制の効果的整備に資する調査研究にお
いては、以下のテーマ等に取り組むことにしたい。
@経済的あるいは社会的な課題の解決方策を創出・ビジネス化すること
(産業イノベーションの創出)による、地域クラスターの拡大再生産を主
導している中核的産業支援機関を探索し、その活動内容(産業イノベーシ
ョン創出エコシステムを含む。)の調査研究

A産業分野の異なる複数の地域クラスター形成プロジェクトを統括的(相
互補完的)に推進することによって、他地域の地域クラスター形成プロジ
ェクトに対する優位性の確保を主導している中核的産業支援機関を探索し、
その活動内容(産業イノベーション創出エコシステムを含む。)の調査研究

※長野県テクノ財団が連携協定を締結している、アッパーオーストリアの
地域クラスターの中核的産業支援機関「クラスターランド」(様々な産業
分野の地域クラスター形成プロジェクトを統括)の活動内容が調査研究対
象の一つになる。

【長野県が目指すべき理想的な産業支援体制の全体像(抜本的見直し)の
提示・具現化に資する調査研究】
〇ものづくり産業振興戦略プランでは、2022年度までに県主導によって、
長野県の産業支援体制の抜本的見直し(再編・再構築)を具現化すること
になっており、そのために、今年度中に、国内外の産業支援体制の先進事
例や、本県の産業支援体制の課題(不足している支援機能等)を調査研究
し、それに基づき、来年度半ばまでに、長野県が目指すべき理想的な産業
支援体制の全体像(抜本的見直し)を描き提示することになっている。

〇そこで、目指すべき理想的な産業支援体制の全体像(抜本的見直し)の
提示・具現化に資する調査研究においては、以下のテーマ等に取り組むこ
とにしたい。
@地域において実現すべき地域クラスター像を提示・共有し、その実現の
ための、様々な産業支援機関による一体的な取組みを主導している中核的
産業支援機関を探索し、その活動内容(産業イノベーション創出エコシス
テムを含む。)の調査研究

A財団法人・社団法人等の県組織以外の産業支援機関と、県組織である産
業支援機関との効果的連携・融合化の先進事例(連携・融合化手法として
の優位性・独創性等)を探索し、その連携・融合化の仕組み等の調査研究

【創業支援機能強化のために新設するイノベーションハブの機能・体制等
の全体像の提示・具現化に資する調査研究】
〇ものづくり産業振興戦略プランでは、長野県を「日本一創業しやすい県」
にするために必要な創業支援機能、すなわち、起業・スタートアップ支援
機能とオープンイノベーション機能を有するイノベーションハブの全体像
を今年度中に描き、2022年度までに設置することにしている。

  〇そこで、理想的なイノベーションハブの全体像の提示・具現化に資する
調査研究においては、以下のテーマ等に取り組むことにしたい。
@ものづくり産業分野における「高い付加価値の創出につながるイノベー
ティブな創業・起業」の活性化を主導している中核的産業支援機関を探索
し、その活動内容(イノベーティブな創業・起業エコシステムを含む。)
の調査研究

  A他県等から広く創業・起業希望者を引きつけることができる、優位性・
独創性を有する新規事業を企画・運営している先進的イノベーションハブ
を探索し、その活動内容の調査研究

【長野県食品製造業振興ビジョンに提示された、産学官連携による科学的
エビデンスに基づく優位性ある新食品の創出システムの整備・稼動に資す
る調査研究】
〇食品製造業振興ビジョンにおいては、既存食品の内外への販路開拓促進
のみならず、産学官連携による科学的エビデンスに基づく優位性ある新食
品の創出を目的とする活動の活性化を目指している。

〇そこで、長野県における新食品創出への取組みを活性化するための、産
学官連携による科学的エビデンスに基づく優位性ある新食品の創出システ
ムの整備と効果的稼動に資する調査研究においては、以下のテーマ等に取
り組むことにしたい。
@産学官連携による科学的エビデンスに基づく優位性のある新食品の創出
システムを整備・稼動させている、先進的食品産業クラスターの中核的産
業支援機関を探索し、その活動内容(新食品創出エコシステムを含む。)
の調査研究

A先端的食品加工技術の開発・応用による新規高付加価値食品(健康増進
に資する新食品、高度に安全・安心が確保された新食品、高齢者・障がい
者等が摂取しやすい性状の新食品等)の創出・事業化を主導している中核
的産業支援機関を探索し、その活動内容の調査研究

【長野県航空機産業振興ビジョンに基づく、航空機産業クラスターの持続
的発展に不可欠な、中核的推進機関の自立的な事業企画・実施化機能の強
化に資する調査研究】
○航空機産業振興ビジョンに基づき、飯田・下伊那地域に中核的な航空機
産業クラスターをまず形成し、そこを拠点として、同心円的に、あるいは、
飛び地的に、県内他地域への技術的・経済的な波及効果を顕在化していく
ためには、そのクラスター形成活動の中核的推進機関(南信州・飯田産業
センター)が、グローバルな視点から、クラスター形成に資する各種事業
を自ら企画・実施化し、同地域の知名度を高め、国内外から多くの企業等
を同地域に呼び込み、航空機産業関係の企業・研究機関・人材育成機関等
の集積を加速できるように、中核的推進機関の中に必要な組織・体制等を
整備することが特に重要となる。

〇そこで、国際競争力を有する航空機産業クラスター形成を主導できる中
核的推進機関の効果的整備に資する調査研究においては、以下のテーマ等
に取り組むことにしたい。
@機体メーカーは立地していないが、航空機部品に係る研究開発・供給、
人材育成等によって拡大再生産している、国際競争力を有する航空機部品
産業クラスターの中核的推進機関を探索し、その活動内容(航空機部品創
出・供給エコシステムを含む。)の調査研究

A国際競争力を有する航空機部品産業クラスターとしての知名度を高め、
グローバルな規模で、多くの企業・研究機関等の人々を同クラスターに呼
び込むことのできる、魅力ある各種事業を企画・実施化している、航空機
部品産業支援機関を探索し、その活動内容の調査研究

【優位性のある長野県医療機器産業振興ビジョンの策定・具現化に資する
調査研究】
〇今年度中に策定される医療機器産業振興ビジョンが実現を目指す姿(ビ
ジョン)と、その具現化へのシナリオ・プログラムにおける優位性を如何
にして確保するのかについての議論が不足している。

〇そこで、優位性のある医療機器開発・事業化エコシステムを内包する、
医療機器産業クラスターの形成促進に資する調査研究においては、以下の
テーマ等に取り組むことにしたい。
@医療機器産業の発展による地域の経済的課題の解決と、地域の人々の健
康・長寿増進による社会的課題の解決とを整合(両立)する形での、国際
競争力を有する医療機器産業クラスターの形成を主導している中核的推進
機関を探索し、その活動内容(医療機器開発・事業化エコシステムを含む。)
の調査研究

A新規医療機器の開発・事業化を目指す地域中小企業が、医療機器の開発・
事業化の各工程を円滑にステップアップしていくことに資する各種支援メ
ニューがシステマチックに整備され、効果的に運用される医療機器開発・
事業化エコシステムの運営を主導している医療機器産業支援機関を探索し、
その活動内容の調査研究

【優位性のある長野県AI・IoT利活用戦略の策定・具現化に資する調査研究】
〇長野県が今年度中に策定するAI・IoT利活用戦略は、支援対象とする産
業・業種や、AI・IoTを利活用するビジネス形態などが千差万別となるこ
とから、その策定作業には技術的に多くの困難性が伴うことになる。
 その困難性を克服するためには、AI・IoT利活用戦略が実現を目指す姿
(ビジョン)を明確に提示し、そのビジョンを実現するための、優位性の
あるシナリオ・プログラムについて、論理的な議論をすることが必要となる。

〇そこで、長野県ならではの優位性のある「AI・IoT利活用活性化エコシ
ステム」を組み込んだ、AI・IoT利活用戦略のビジョン・シナリオ・プロ
グラムについての論理的議論に資する調査研究においては、以下のテーマ
等に取り組むことにしたい。
@長野県ならではの他県等に比して優位性を有する、「AI・IoT利活用活
性化エコシステム」の形成・稼動の参考になる先進事例を探索し、エコシ
ステム形成・稼動の仕組み等の調査研究

A単にAI・IoT(既存のソフト・ハード)の利活用の普及だけではなく、
真に新規性や優位性(市場競争力)を有するAI・IoT利活用産業の創出・
集積促進に政策的に取り組んでいる先進事例を探索し、その政策的「仕掛
け」の調査研究

【むすびに】
〇できるだけ多くの産学官の皆様方に、様々な専門的視点から、長野県の
地域産業政策の質的高度化に資する調査研究に取り組んでいただきたい。
そして、その成果を広く発表していただくとともに、その調査研究の成果
に基づき、県に対して、地域産業政策の在り方等に関して積極的に助言等
をしていただくことをお願いしたい。

〇長野県の産学官の皆様方の間での、長野県の地域産業政策の在り方等に
関する議論が、政策論的にあるいは学術的に、より高いレベルで活性化す
ることが、地域産業政策の質的高度化とその効果的具現化を促進し、長野
県の地域産業の優位性のある持続的発展の可能性を一段と高めることに繋
がると信じている。
 「優位性のある地域産業政策なくして、優位性のある地域産業の発展な
し。」ということを改めて強調したいのである。


ニュースレターNo.133(2018年11月24日送信)

長野県の地域産業政策に係る当面注視すべき課題について
〜産学官の皆様方による、県に対する、地域産業政策の質的高度化と効果的具現化のための
 助言・提言に資することを目的として〜

【はじめに】
〇長野県の地域産業政策の質的高度化と、その具現化の効果的促進に資
することを目的として、県の地域産業政策の主要な「構成要素」である、
産業分野別の振興戦略の進捗状況や、新たな振興戦略の策定状況等につ
いて、「県民ホットライン」(県政に関する県への意見・質問等の提出
制度)を活用して、担当部署に照会した結果、今後の「宿題」として残
されている多くの具体的な政策課題が明らかになった。

〇そこで、今回の一連の「県民ホットライン」の活用で明らかになった、
長野県ものづくり産業振興戦略プラン、長野県食品製造業振興ビジョン、
そして、今年度中に策定される長野県医療機器産業振興ビジョンと長野
県AI・IoT利活用戦略に係る、「宿題」として残されている政策課題に
ついて整理し、今後、産学官の皆様方に特に注視していただきたいポイ
ントを以下に提示する。
 なお、今回の「県民ホットライン」での、県に対する課題確認等は実
施しなかったが、私が従来から指摘してきている、長野県航空機産業振
興ビジョンが内包する根幹的課題のポイントについても、併せて改めて
以下に提示する。

〇産学官の皆様方におかれては、それを参考にしていただき、県の地域
産業政策の質的高度化と、その効果的具現化によって、県の地域産業が、
他県等に比して優位性をもって持続的に発展できるよう、県に対する積
極的な助言・提言をお願いしたい。

※長野県ものづくり産業振興戦略プランについては、以下、「ものプラ
ン」という。
【ものプランに係る当面注視すべきポイントT:ものプランの統括的推
進体制が今年度中に整備できるのか】
〇本来であれば、ものプランがスタートした今年4月から稼動できるよ
うにしておかなければならなかった、ものプランの統括的推進体制が未
だに整備されていないのである。
 ものプランの統括的推進体制については、「ものプランの統括的推進
体制の整備なくして、ものプランの効果的推進なし」と言えるほどに極
めて重要な事項なのである。

〇その統括的推進体制が有すべき基本的支援機能は、「産業イノベーシ
ョン創出活動の入口から出口までを一貫支援できるワンストップ・ハン
ズオン型支援機能」と、「ものプランに提示された16の地域クラスター
形成プロジェクトの戦略的マネジメント機能」の二つであることが、も
のプランに明示されている。

〇ものプランに提示されたスケジュール通り、この二つの支援機能を有
する、ものプランの統括的推進体制(工業技術総合センター、中小企業
振興センター、テクノ財団の支援機能の連携・融合化を含む。)を、遅
くとも今年度中に整備する方針(知事が2月県議会の答弁の中で明言)に
は、何ら変更が無いことが、「県民ホットライン」によって確認できた
のである。

〇そこで、産学官の皆様方には、県が、今年度中に、ものプランに明示
された二つの支援機能を有する統括的推進体制を整備できるよう、県の
整備作業の進捗状況を注視していただき、必要に応じて、県に対して積
極的な助言・提言をお願いしたい。

【ものプランに係る当面注視すべきポイントU:長野県が目指すべき理
想的な産業支援体制の全体像(抜本的見直し)を来年度半ばまでに描き
提示できるのか】
〇ものプランでは、2022年度までに県主導によって、長野県の産業支援
体制の抜本的見直し(再編・再構築)を具現化することになっており、
このことは2月県議会での知事答弁においても明確にされている。
 そのために、今年度中に、国内外の産業支援体制の先進事例や、本県
の産業支援体制の課題(不足している支援機能等)を調査研究し、それ
に基づき、来年度半ばまでに、長野県が目指すべき理想的な産業支援体
制の全体像(抜本的見直し)を描き提示することになっている。

〇ものプランには、長野県が目指すべき理想的な産業支援体制の全体像
を描く作業の専任組織として、産学官からなる「長野県の産業支援体制
の在り方検討会」を設置することになっており、知事も2月県議会の答弁
において、その方針を明言していた。しかし、何故か、知事は、その方
針を変更し、同検討会の設置無しで、必要な調査研究や理想的な産業支
援体制の全体像の提示作業に取り組むことにしたことが、「県民ホット
ライン」によって確認できたのである。

〇産学官の皆様方には、県が、今年度中に、国内外の産業支援体制の先
進事例や、本県の産業支援体制の課題(不足している支援機能等)を調
査研究し、その成果を公表(「県民ホットライン」では公表を検討する
と回答している。)することができるのか、それに基づき、来年度半ば
までに、長野県が目指すべき理想的な産業支援体制の全体像(抜本的見
直し)を描き提示することができるのか、について注視していただき、
必要に応じて、県に対して積極的な助言・提言をお願いしたい。

【ものプランに係る当面注視すべきポイントV:創業支援機能強化のた
めに新設するイノベーションハブの機能・体制等の全体像を今年度中に
描き提示できるのか】
〇ものプランでは、長野県を「日本一創業しやすい県」にするために必
要な創業支援機能、すなわち、起業・スタートアップ支援機能とオープ
ンイノベーション機能を有するイノベーションハブを以下のスケジュー
ルで新設することにしている。
 2018年度 機能・体制検討
 2019年度 設計・施設整備
 2020年度〜2022年度 設置

〇今回の「県民ホットライン」での以下の質問ついては、今年度中のイ
ノベーションハブの機能・体制の検討を経て、改めて県から回答をいた
だけることになっている。
@イノベーションハブの経営(運営)主体、設置場所、支援機能、実施
事業、人的体制、予算措置等はどうなるのか。
Aイノベーションハブの支援機能の中に、他県等のイノベーションハブ
に対する、どのような優位性・独創性等を確保するのか。
Bものづくり産業の特性を踏まえて、特に整備・強化する支援機能は何か。
Cものづくり産業分野における「高い付加価値につながるイノベーティ
ブな創業・起業」の活性化のために、どのような支援機能を整備するのか。
Dイノベーションハブ自体が整備すべき支援機能と、他の支援機関の支
援機能の活用によって対応する支援機能とをどのように整理するのか。
Eイノベーションハブ自体が整備すべき、ものづくり産業分野でのイノ
ベーティブな創業・起業の活性化に資する支援機能は何か。
F「ながの創業サポートオフィス」、「信州創業応援プラットフォーム
の支援体制」、「ものプランに基づき整備されるワンストップ・ハンズ
オン型支援体制」とイノベーションハブとの支援機能の役割分担・棲み
分けはどうなるのか。

〇産学官の皆様方には、県が、上記のような「イノベーションハブ新設
に係る様々な課題」に的確に対処し、その機能・体制の検討作業を年度
内に完璧に終了できるように、その進捗状況を注視していただくととも
に、検討成果が公表された場合(「県民ホットライン」によって、検討
成果は公表予定であることを確認済み)には、その問題点の改善や具現
化が効果的に図られるよう、県に対して、必要な助言・提言を積極的に
実施していただくことをお願いしたい。

※長野県食品製造業振興ビジョンについては、以下、「食品ビジョン」
という。
【食品ビジョンに係る当面注視すべきポイント:産学官連携による科学
的エビデンスに基づく優位性ある新食品創出システムをいつ整備・稼動
できるのか】
〇食品ビジョンに基づく県の活動が、既存食品の内外への販路開拓促進
を目的とすることに偏り過ぎ、産学官連携による科学的エビデンスに基
づく優位性ある新食品の創出を目的とする活動が不活発に見えることか
ら、新食品の創出への県の取組みを強化していただくことを期待して、
「県民ホットライン」で現状の取組み内容(産学官連携による科学的エ
ビデンスに基づく優位性ある新食品創出システムの整備・稼動状況)を
確認させていただいた。

〇県が、科学的エビデンスに基づく優位性ある新食品の創出活動を主導
したいと願っていることは確認できたが、県主導の産学官連携による新
食品創出システムの整備・稼動を実現するためには、以下のような「宿
題」にきっちり取り組まなければならないことが明らかになったのである。
@食品ビジョンで実施が提示された「国内外の先進的食品産業クラスタ
ーとの連携による、新食品への市場ニーズのグローバルな規模での探索・
選定」については、今年度末までにやっと連携先候補の選定作業に着手
でき、本格的なニーズ探索・選定活動は、来年度以降になるという、ス
ケジュールの大幅な遅れの挽回に真剣に取り組まなければならない状況
にある。

A食品ビジョンによって設置された、産学官連携・ネットワーク型の
「『食』と『健康』ラボ」の連携拠点・総合窓口である県工業技術総合
センター食品技術部門には、産学官連携による科学的エビデンスに基づ
く優位性ある新食品創出システムを整備し稼動させる機能がかなり不足
していることが明らかになった。以下に、その具体例を列挙する。
A-1食品ビジョンで実施が提示された「食と健康長寿の関連性の探求と
食品機能性エビデンスの取得」については、「『食』 と『健康』ラボ」
の構成メンバーである大学等への委託研究とし、任せきりの状態になっ
ているようである。
 県食品技術部門は、「『食』 と『健康』ラボ」の連携拠点・総合窓口
であることから、委託研究の進捗状況を委託主体として随時的確に把握
し、常に、応用可能な研究成果の探索・選定に努め、その選定された研
究成果に基づく産学官共同研究開発の企画・実施化を主導(産学官連携
コーディネートを含む。)できる機能を整備・強化することが必要とな
っている。

A-2食品ビジョンで実施が提示された「先端的加工技術によって創出可
能な特殊性状の新食品」の具現化については、高付加価値の新食品開発
に応用できる先端的加工技術を広く探索・抽出し、あるいは、新たに研
究開発し、当該加工技術を用いる新食品創出に関する、産学官共同研究
開発の企画・実施化を主導(産学官連携コーディネートを含む。)でき
る機能を、県食品技術部門に整備・強化することが必要となっている。

A-3食品ビジョンで実施が提示された「高度な安全・安心が確保される
食品製造技術」の創出については、「高度な安全・安心の確保」が課題
となっている事例を探索・抽出し、その課題の新規解決方策創出のため
の産学官共同研究開発の企画・実施化を主導(産学官連携コーディネー
トを含む。)できる機能を、県食品技術部門に整備・強化することが必
要となっている。

A-4食品ビジョンで実施が提示された「環境負荷低減に資する省エネ型・
資源有効活用型の食品製造技術」の創出については、食品製造における
省エネ化や、資源有効活用(廃棄物等の未利用資源の活用を含む。)に
係る課題を広く探索・抽出し、その課題の新規解決方策創出のために、
本県に蓄積されている優れた超精密技術等を活用するというような、本
県ならではの優位性や独創性のある、産学官共同研究開発の企画・実施
化を主導(産学官連携コーディネートを含む。)できる機能を、県食品
技術部門に整備・強化することが必要となっている。

A-5食品ビジョンで実施が提示された「県産農林水産物が含有する未知
の機能性成分の探索・評価」及び「機能性表示制度の活用のための産学
官連携による効能評価・ヒト介入試験等」については、必要な体制整備
によって、優位性のある新規機能性食品の創出等に活用できる成果を得
るための産学官連携活動を主導(産学官連携コーディネートを含む。)
できる機能を、県食品技術部門に整備・強化することが必要となっている。

B食品ビジョンで実施が提示された「食品機能性エビデンスライブラリ
ーの産学官連携による整備」については、県食品技術部門にインターネ
ットで閲覧できるシステムを構築したいとしているが、閲覧に供する情
報内容も未だ具体的に定まっておらず、整備・運用までには、かなりの
期間を要する状況にある。速やかな整備が求められる。

〇産学官の皆様方には、上記のような、科学的エビデンスに基づく優位
性ある新食品の創出を目的とする県主導の活動が停滞している状況を注
視していただき、産学官連携による、市場競争力を有する高付加価値な
新食品の研究開発活動が活性化するよう、県に対して、必要な助言・提
言を積極的に実施していただくことをお願いしたい。

※長野県航空機産業振興ビジョンについては、以下、「航空機ビジョン」
という。
【航空機ビジョンに係る当面注視すべきポイント:航空機産業クラスタ
ーの持続的発展に不可欠な、中核的推進機関の自立的な事業企画・実施
化機能の強化を実現できるのか】
○航空機ビジョンは、飯田・下伊那地域を中心とする、国際競争力を有
する航空機産業クラスターの形成を目指している。
 飯田・下伊那地域に中核的な航空機産業クラスターをまず形成し、そ
こを拠点として、同心円的に、あるいは、飛び地的に、県内他地域への
技術的・経済的な波及効果が顕在化していくようにすることを基本的な
航空機産業振興戦略としている。このような戦略は、基本的かつ論理的
な地域クラスター形成手法に合致するものである。

〇航空機ビジョンの策定主体である県として、飯田・下伊那地域に国際
競争力を有する航空機産業クラスターを形成したいのであれば、そのク
ラスター形成活動の中核的推進機関(南信州・飯田産業センター)が、
グローバルな視点から、クラスター形成に資する各種事業を自ら企画・
実施化し、同地域の知名度を高め、国内外から多くの企業等を同地域に
呼び込み、航空機産業関係の企業・研究機関・人材育成機関等の集積を
加速できるように、その機能強化を最優先すべきことになる。

〇すなわち、南信州・飯田産業センターが、その航空機産業振興機能を
中・長期的に維持・高度化し、飯田・下伊那地域が自立的かつ持続的に
航空機産業クラスター形成活動に取り組んでいくことを主導できるよう
に、同機関の中に必要な組織・体制等を整備することが特に重要となる
のである。
 このことについては、南信州・飯田産業センターの役員や幹部職員の
方々も同じ認識ではあるが、同センター独力では実現が不可能に近く県
等の支援が不可欠であるとの認識であることも確認している。

〇県の現状の取組みを見ていると、航空機産業分野への参入支援事業
(ソフト事業)における本県の中核的推進機関は、南信州・飯田産業セ
ンターではなく諏訪圏ものづくり推進機構であると勘違いさせてしまう
ような状況になっている。南信州・飯田産業センターへの、航空機産業
クラスター形成推進機能の集中的強化が不可欠なのである。

〇産学官の皆様方には、南信州・飯田産業センターによる、国際競争力
を有する航空機産業クラスター形成活動の中核的推進機関に必要な機能
の整備(自立的事業企画・実施化が可能となる人的・資金的「仕組み」
の整備等を含む。)の進捗状況を注視していただき、県や同センターに
対して、その整備促進に資する助言・提言を積極的に実施していただく
ことをお願いしたい。

※長野県医療機器産業振興ビジョンについては、以下、「医療機器ビジ
ョン」という。
【今年度中に策定される医療機器ビジョンに係る当面注視すべきポイン
ト:長野県が目指すべき優位性ある「医療機器産業の集積の姿」を明確
に提示する論理的な医療機器ビジョンを策定できるのか】
〇今年度中に策定される医療機器ビジョンの策定趣旨等に係る「県民ホ
ットライン」での質問によって、以下のような課題が明らかになった。
@医療機器産業を発展させるための一般的支援手法の整備や、医療機器
開発に活用できそうな技術的資源の発掘など、医療機器産業振興の具体
的手法についてのアットランダムな議論が先行し、本県が実現を目指す
べき、長野県ならではの国際競争力を有する「医療機器産業の集積の姿」
(全体像)を最初に描くことの重要性が認識されていない。

A長野県が実現を目指すべき「医療機器産業の集積の姿」については、
単に優れた医療機器の開発・供給拠点という姿ではなく、県民の更なる
健康・長寿に資する医療機器の開発・活用による、新たな健康・長寿増
進ビジネスモデルを創出し、それを内外に広く展開する、健康・長寿推
進拠点という姿にすることによって、医療機器産業の発展による経済的
課題の解決と、人々の健康・長寿増進による社会的課題の解決とを整合
(両立)できる、長野県ならではの先進的な医療機器産業の集積形成が
可能となるということに関する議論の必要性や価値を理解していただけ
ていない。

B医療機器の開発・事業化を目指す県内企業が、医療機器の開発・事業
化の各工程を円滑にステップアップしていくことに資する各種支援メニ
ューがシステマチックに整備され、効果的に運用される「医療機器開発・
事業化エコシステム」の整備を、医療機器ビジョンの中に提示すること
の重要性を十分に認識していただけていない。

C「医療器開発・事業化エコシステム」の効果的な構築・稼動・高度化
を主導する機関としての「中核拠点」の設置を、医療機器ビジョンの中
に提示することの必要性について、十分に認識していただけていない。

〇産学官の皆様方には、医療機器ビジョンが、実現を目指す優位性ある
「医療機器産業の集積の姿」を掲げ、その具現化のためのシナリオ・プ
ログラムを提示するという、論理的な体系・構成からなるものとして策
定されるように、その策定作業の進捗状況を注視していただき、県に対
して、必要な助言・提言を積極的に実施していただくことをお願いした
い。

【今年度中に策定される長野県AI・IoT利活用戦略に係る当面注視すべ
きポイント:多種多様な産業分野を対象とする戦略策定の技術的困難性
を如何にして克服するのか】
〇「県民ホットライン」での質問によって、AI・IoT利活用戦略の策定
に係る、以下のような課題が明らかになった。
@2月県議会の知事議案説明の中では、「製造業はもとより農林業、建
設業、介護・福祉産業等の幅広い分野におけるAI、IoTの利活用を促進
するため、有識者の知見を得て『利活用戦略』を策定する」と述べられ
ている。
 知事の説明通りに、AI・IoT利活用戦略を策定する場合には、支援対
象とする産業・業種や、AI・IoTを利活用するビジネス形態などが千差
万別となることから、その策定作業には技術的に多くの困難性が伴うこ
とになる。

AAI・IoT利活用戦略が実現を目指す姿(ビジョン)を明確に提示でき
なければ、そのビジョンを実現するためのシナリオ・プログラムについ
ての論理的な議論もできないことになる。したがって、ビジョン提示の
在り方については、関係者による十分な議論が不可欠となるが、そのこ
とがまだ良く理解されていない。

BAI・IoT利活用戦略の目指す姿(ビジョン)については、他県等と類
似することを避けられない場合にあっても、そのビジョン実現へのシナ
リオ・プログラムの策定・実施化においては、長野県としての優位性や
独創性・新規性を発揮できるようにし、他県等に比して、より速やかに
ビジョンを実現できるようにすべきことが、まだ良く理解されていない。

C長野県ならではの、他県等に比して優位性を有する、「AI・IoT利活
用活性化エコシステム」を形成することを、AI・IoT利活用戦略の中に
提示することの重要性が、十分には認識されていない。

D単にAI・IoT(既存のソフト・ハード)の利活用の普及だけではなく、
真に新規性や優位性(市場競争力)を有するAI・IoT利活用産業の創出・
集積促進に政策的に取り組むことの意義、重要性等が、十分には認識さ
れていない。

〇産学官の皆様方には、上記のような、AI・IoT利活用戦略の体系・構
成等に係る根本的課題への県の対応を注視していただき、他県等に比し
て優位性や独創性を有するAI・IoT利活用戦略が策定され、かつ効果的
に具現化せれるよう、県に対して、必要な助言・提言を積極的に実施し
ていただくことをお願いしたい。

【むすびに】
〇今回の一連の「県民ホットライン」による、県の地域産業政策の進捗
状況等の確認によって、最も心配になったことは、ものプランに基づく、
「ものプランの統括的推進体制の整備」と「長野県が目指すべき理想的
な産業支援体制の全体像(抜本的見直し)の提示・具現化」が、県とし
て他県等に誇れるレベルできっちり実施できるのか、ということである。

〇「県民ホットライン」での県の回答の「歯切れの悪さ」からは、県は、
「ものプランの統括的推進体制の整備」と「長野県が目指すべき理想的
な産業支援体制の全体像(抜本的見直し)の提示・具現化」という、非
常に困難性の高い「宿題」に、積極果敢に取り組もうという強い意思を
本当に有しているのだろうかという、一抹の不安を覚えてしまうのは私
だけではないだろう。

〇更に、県が、その「宿題」の具現化の困難性の高さから、その「宿題」
自体の変更(安易な方向・レベルへの路線変更)という「禁じ手」にま
で手を出すようになるのではないのかという、疑いの気持ちまでを抱い
てしまうのも私だけではないだろう。

〇産学官の皆様方には、前述のような不安や疑いが「取り越し苦労」に
終わるよう、ものプランが想定する以上の機能を発揮できる「統括的推
進体制」や「新たな産業支援体制」(現状の産業支援機関の再編・再構
築を含む。)を実現できるよう、県に対して、積極的な助言・提言をし
ていただければ幸いである。


ニュースレター 号外19(2018年11月16日送信)

長野県食品製造業振興ビジョンの進捗状況について〜「『食』と『健康』ラボ」と「『発酵・長寿』県宣言」の進捗状況に焦点を絞って〜
(再質問への県の回答と私のコメント)

※長野県食品製造業振興ビジョンについては、以下、食品ビジョンと
いう。
【はじめに】
〇10月25日に、食品ビジョンに新食品創出活動活性化のための重点プ
ログラムとして位置づけられている、「『食』と『健康』ラボ」と
「『発酵・長寿』県宣言」の進捗状況について、食品ビジョンの的確
な実施化に資することを目的として、県民ホットラインで質問させて
いただいた。その質問の趣旨・内容等については、同日付の「ニュー
スレター号外14」で皆様方にお知らせした通りである。

〇その質問について、11月1日に県から回答メールを受け取った。し
かしながら、その回答内容からは、食品ビジョンが提示する新食品創
出への取組みの在り方について、真に理解して事業に取り組んでいる
とは思えない点や、各質問の主旨を的確に把握し真剣かつ正確に回答
しようとしているとは考えられない点等が多々あったことから、食品
ビジョンの策定に深く関与した者として、再質問によって、それらを
指摘せざるをえないと判断し、11月2日に県民ホットラインに再質問
を送信した。その内容については、「ニュースレター号外16」でお知
らせした通りである。

〇その再質問への県の回答メールを11月16日に受け取った。その回答
内容については、最初の質問への回答とは異なり、回答期限(11月9日)
を超えるほどに時間をかけて、じっくり検討していただいたことが窺
えるものであった。

〇以下に、再質問に対する県の回答と私のコメントを記載する。皆様
方からも、県が、食品ビジョンに基づき、新食品創出活動の活性化に
効果的に取り組めるように、県に対して、積極的な助言等をしていた
だければ幸いである。

【質問1:重点プログラム「『食』と『健康』ラボ等による研究開発・
商品開発等への一貫支援」について】
〇質問1-1「(1)国内外の消費者(市場)ニーズの探索・選定」の「国
内外の先進的食品製造業集積地(食品クラスター)との連携による市
場ニーズの探索」においては、どのような国内外の食品クラスターと、
どのような連携(手法等)によって、どのような市場ニーズを探索・
選定できているのか。
[県の回答]
 現在「食のグローバル・マーケティング支援事業(品目別市場戦略
の策定)」により、国内外の消費者ニーズ把握のための効率的かつ効
果的な調査方法及び先進的事例分析よる県内食品製造業の海外展開の
強化について検討しております。

[再質問]
 「食のグローバル・マーケティング支援事業(品目別市場戦略の策
定)」は、委託業務仕様書に記載の通り、長野県の出荷額の高い既存
食品の内外の市場ニーズの把握や、その輸出拡大戦略の策定等を目指
す委託事業である。長野県の食品製造業が、これから新たに研究開発
すべき新商品の顕在的・潜在的市場ニーズをグローバルに探索・選定
することを目的とするものではない。質問に対する回答になっていない。
@国内外の先進的な食品クラスターとの連携によって、新食品への顕
在的・潜在的市場ニーズをどのように探索・選定していくのか、質問
の主旨を真正面から捉え、明確に分かりやすく回答願いたい。
A連携対象の内外の食品クラスターの候補はどこか。候補としたクラ
スターの選定理由となる先進性、優位性等は何か。
B今後の探索・選定活動のスケジュール等についても説明願いたい。

[再質問への県の回答]
 質問1-1@国内外の先進的な食品クラスターとの連携による新食品
への市場ニーズの探索・選定につきましては、海外の食料産業クラス
ター先進地との連携を模索しております。その相手先の実状を十分に
理解する必要があるため、まずは相手先を訪問し、成り立ちや最近の
取組、何がどう優れているのかレクチャーを受けた上で県内の事情や
実力、また持っている研究環境や食品、産業レベルなどを考慮して、
どういう面で相互に交流、協力、共同研究ができるかなどを整理いた
します。
 この結果を持って県内の食品関係企業、農業関係者、市町村、業界
団体などにフードバレーのあり方や優れた面をお知らせし、それぞれ
の立場で何を見たいか、何を知りたいか、または何を売り込みたいか、
何を一緒に研究したいかなどの考えをまとめてもらいます。その上で
現地の再訪問などにより具体的なニーズを探り出して、ビジネスとし
て展開できる新たな食品開発につなげていきたいと考えております。
 質問1-1A連携対象につきましては、現在複数の候補を挙げて検討
しております。
 質問1-1B今後のスケジュールにつきましては、訪問先を決定し、
相手先と調整のうえ、可能であれば、年度内を目標に訪問したいと考
えております。

[コメント]
 非常に具体的に回答いただいた。この方針で進めていただき、グロ
ーバルな規模で、新たに研究開発すべき新商品への顕在的・潜在的市
場ニーズを探索・選定し、具体的な新商品の研究開発活動につなげて
いただくことを期待したい。

〇質問1-2
 「(2)産学官連携による食品研究開発 〇新食品の研究開発」の「食
と健康長寿の関連性の探求と食品機能性エビデンスの取得」において、
@どのような食品とどのような健康状態との関連性を探求しているのか。
Aどのような食品機能性エビデンスの取得に取り組んでいるのか。
B新たに明らかになった健康長寿に資する食品機能性エビデンスには、
どのようなものがあるのか。
[県の回答]
 味噌、蕎麦、甘酒、野沢菜等の機能性エビデンスの取得に向け、各
種評価系を用いた機能性の検証や細胞・生化学レベルの評価、マウス
などを用いた動物実験等を行い、免疫調節作用や腸内フローラの解析、
抗高脂血症作用等についての研究を委託により実施しております。

[再質問]
@味噌から野沢菜等まで、多くの食品の機能性エビデンス取得のため
の研究を委託で実施しているとのことであるが、例えば、野沢菜の健
康長寿に対するどのような機能性・効能等(野沢菜の摂取と、ある特
定の健康状態の維持・向上との関連性等)について研究委託している
のか。委託先はどこか。
A例えば、野沢菜のどのような機能性の確認に取り組んでいるのか。
野沢菜は、どのような機能性物質(生理活性物質等)を含有している
のか。どのようにして、その機能性のエビデンスの取得に取り組んで
いるのか。
B新たに明らかになった(明らかにしようとしている)、健康長寿に
資する食品機能性エビデンス(どのような食品の、どのような含有物
質が、どのような機能性を発揮するのかなど)には、どのようなもの
があるのか。

[再質問への県の回答]
 質問1-2産学官連携による食品研究開発における「食と健康長寿の関
連性の探求と食品機能性エビデンスの取得」につきましては、秘密保
持の観点から、詳細な内容の開示は控えさせていただきます。なお、
研究成果がまとまったところで公表し、広く周知、PRして参ります。

[コメント]
 「食と健康長寿の関連性の探求と食品機能性エビデンスの取得」の
趣旨を正確に理解していただき、その趣旨にそう論理的かつ戦略的な
手法で取り組んでいただきたい。野沢菜等の機能性に関する研究成果
の公表に期待したい。

〇質問1-3
 「(2)産学官連携による食品研究開発 〇新食品の研究開発」の「先
端的加工技術によって創出可能な特殊性状の新食品」において、
@どのような先端的加工技術の活用に取り組んでいるのか。
Aその先端的加工技術の活用によって、どのような特殊性状や効能等
を有する新食品の開発に取り組んでいるのか。
[県の回答]
 中温中高圧処理技術を活用し、色調が良好で、物性が生に近い食感、
加熱により分解しやすい栄養成分が保持された食品の開発に取り組ん
でおります。

[再質問]
@中温中高圧処理技術とは、どのような点で先端的加工技術と言える
のか。
A色調が良好、生に近い食感、栄養成分の熱分解が少ないことによっ
て付加価値が高まる新規食品としては、具体的にどのような原料を用
いた、どのような加工食品を想定しているのか。分かりやすい例示を
いくつかお願いしたい。
 特殊性状としては、色調良好、生に近い食感、栄養成分の熱分解が
少ないことの他に、どのような特殊性状が考えられるのか。例えば、
誤嚥防止に資する性状等がイメージできるが、高付加価値化が期待で
き、開発テーマとなる特殊性状について例示願いたい。

[再質問への県の回答]
 質問1-3産学官連携による食品研究開発における「先端的加工技術に
よって創出可能な特殊性状の新食品」につきましては、中温中高圧処
理技術は高圧力と中程度の加熱の併用により高い殺菌効果が得られる
先端的加工技術です。従来の加熱のみによる殺菌に比べ加熱条件が弱
いため、前回の回答で述べたような高品質な食品の開発が可能となり
ます。食品の高品質化、高付加価値化に資する有望な技術ですが、近
年研究が始まった新規性が高い技術であり、まだ実用化例はありません。
 現在、果実の加工に当該技術を活用した研究開発を実施中ですが、
秘密保持の観点から、詳細な内容の開示は控えさせていただきます。
なお、研究成果がまとまったところで公表し、広く周知、PRして参り
ます。
 また、当該技術による他の特殊性状としては、フレッシュな香りが
残る可能性があります。

[コメント]
 中温中高圧処理技術のみに固執せず、高付加価値の新規食品開発に
応用できる先端的加工技術を広く探索・抽出し、あるいは、新たに研
究開発し、県内食品製造業への普及等に努めていただきたい。

〇質問1-4
 「(2)産学官連携による食品研究開発 〇新製造技術の研究開発」の
「高度な安全・安心が確保される食品製造技術」において、
@どのような安全・安心の確保に注目する研究開発に取り組んでいる
のか。
Aその安全・安心を確保するために、どのような技術を、どのように
活用しようと考えているのか。
B新たに開発された(開発に取り組んでいる)食品製造技術・装置等
には、どのようなものがあるのか。
[県の回答]
 雑菌微生物の抑制効果が高い乳酸菌の選抜及びその利用により、雑
菌微生物を低減化した調味料などの開発、商品化に取り組んでおります。
 また、質問1-3先端的加工技術で述べた中温中高圧処理技術は、安全・
安心が確保される食品製造技術としての展開も想定されます。

[再質問]
@どのような高度な安全・安心の確保に注目する研究開発に取り組ん
でいるのか。人の健康状態に影響の少ない、既存の発酵食品中の雑菌
微生物の低減化は、高度な安全・安心の確保に相当するとは考えられ
ないが、いかがか。
 食品製造工程において高度な安全・安心の確保が必要な場合とは、
例えば、どのような食品製造工程の、どのような安全・安心のことな
のか。
Aその高度な安全・安心を確保するために、どのような技術を、どの
ように活用しようと考えているのか。
Bその高度な安全・安心を確保するために、新たに開発された(開発
に取り組んでいる)食品製造技術・装置等には、どのようなものがあ
るのか。

[再質問への県の回答]
 質問1-4産学官連携による食品研究開発における「高度な安全・安心
が確保される食品製造技術」につきましては、発酵食品中の微生物低減
化技術はニーズが高く、安全・安心の確保に合致するテーマと考えて
おります。
 一般的に発酵食品は食塩やアルコール等の含有により、有害微生物
の生育が抑えられていると考えられますが、減塩化食品の開発に当た
っては、有害微生物の生育の可能性に留意する必要が生じます。また、
流通業界からは非発酵系加工食品並みの菌数低減を求められることが
あります。こうした課題に対し、雑菌微生物抑制効果が高い乳酸菌の
利用は、課題解決の可能性を持つ有望な技術と考え、取り組んでおり
ます。
 また、1-3の中温中高圧処理技術は殺菌技術として加工食品全般に適
用が可能であり、食品の安全・安心に資する技術と考えられます。

[コメント]
 残念ながら、食品製造における「高度な安全・安心」の意味が的確
にとらえられていない。生物学的視点、物理学的視点、化学的視点な
ど、様々な視点からの「危険性」への対応が必要となっている。
 例えば、放射性物質や環境ホルモン等による食品汚染の防止・除去等
は、高度な安全・安心の確保に係る重要課題の一つとなるだろう。
 そのような視点から、「高度な安全・安心の確保」の課題をとらえ
ることとし、実際に課題となっている案件を広く探索・抽出し、その
課題の新規解決方策創出のために、本県に蓄積されている優れた超精
密技術を活用するというような、本県ならではの優位性や独創性のあ
る、産学官連携による研究開発に取り組んでいただきたい。

〇質問1-5
 「(2)産学官連携による食品研究開発 〇新製造技術の研究開発」の
「環境負荷低減に資する省エネ型・資源有効活用型の食品製造技術」
において、
@どのような省エネ技術を、どのような食品製造において、どのよう
に活用しようと考えて研究開発に取り組んでいるのか。
Aどのような資源を、どのように有効活用し、どのような食品を創出
しようと考えて研究開発に取り組んでいるのか。
[県の回答]
 信州大学アクアイノベーション拠点で取り組んでいる膜処理技術を
飲料分野に活用し、加熱処理せずに、微生物除去などによる保存性向
上、安全性の確保が考えられます。具体的な研究開発は今後検討した
いと考えております。

[再質問]
@膜処理技術については、既に様々な高度技術が開発されている。な
ぜ、信州大学の膜処理技術について、特に優れた省エネ技術として注
目するのか。食品製造に応用した場合、既存の膜処理技術に対して著
しい省エネが可能となる根拠は何か。
 食品製造業分野において、省エネが特に重要課題となっている食品
製造工程は、加熱による微生物除去の工程ということか。
 信州大学の膜処理技術の新規用途を探索することよりも、省エネが
特に重要課題となっている食品製造工程を探索・特定し、その工程の
省エネに効果的な省エネ技術を探索・開発することを目指すべきでは
ないのか。その方が、長野県の食品製造業の省エネ化に大きく貢献で
きるのではないのか。
A資源有効活用の視点から、どのような資源を、どのように活用し、
どのような新食品を創出しようと考えて研究開発に取り組んでいるのか。

[再質問への県の回答]
 質問1-5産学官連携による食品研究開発における「環境負荷低減に資
する省エネ型の食品製造技術」につきましては、信州大学での膜処理
技術の利用を含めて更に幅広くシーズ、ニーズ等を検討し、今後の研
究開発を推進、支援したいと考えております。
 また「資源有効活用型の食品製造技術」につきましては、キノコ廃
培地からの希少糖の抽出、精製、濃縮、変換などの生産製造技術の研
究開発に取り組んでおります。

[コメント]
 食品製造における省エネルギー化や、資源有効活用(廃棄物等の未
利用資源の活用を含む。)に係る課題を広く探索・抽出し、その課題
の新規解決方策創出のために、本県に蓄積されている優れた超精密技
術を活用するというような、本県ならではの優位性や独創性のある、
産学官連携による研究開発に期待したい。

【質問2:重点プログラム「『発酵・長寿』県宣言等によるブランド化
の基盤づくり」について】
〇質問2-1
 「発酵・長寿」県宣言は、いつ、どのように実施されるのか。
[県の回答]
 平均寿命が全国でトップクラスの本県で生産される発酵食品等の「か
らだに優しい食品」や発酵食文化、発酵技術等を広く県内外に発信で
きるよう、「『発酵・長寿』県宣言」の内容や時期、効果的な場面、
方法を現在検討中でございます。

[再質問]
 「『発酵・長寿』県宣言」については、食品ビジョンP19に記載され
た趣旨・内容での実施をするということで良いのか。その点のみ確認
したい。回答願いたい。

[再質問への県の回答]
 質問2-1及び2-2「『発酵・長寿』県宣言」につきましては、「長野
県食品製造業振興ビジョン」に記載の趣旨・内容で実施してまいります。

[コメント]
 回答通り、食品ビジョンP19に提示された趣旨・内容での「『発酵・
長寿』県宣言」を是非実施していただきたい。

〇質問2-2
 P19の〈「発酵・長寿」県宣言の実施〉には、「・・・本県の食品製
造業振興に係る活動に参画する産学官の代表者による、『からだに優し
い食品』の創出と情報発信を先導する旨の決意表明としての『発酵・長
寿』県宣言を実施し・・・」と記載されている。すなわち、同宣言につ
いては、長野県の伝統的食品である発酵食品の単なるPRイベント的なも
のとしてではなく、科学的根拠に裏打ちされた、からだに優しい新規発
酵食品の創出活動の活性化等までを含む、食品製造業振興のための新た
な戦略的役割をも担うものとして位置づけられている。
 このような食品ビジョンに提示された趣旨・内容での「発酵・長寿」
県宣言を実施していただけるのか、改めて確認したい。いかがか。
[県の回答]
 「『発酵・長寿』県宣言」は、「からだに優しい食品」の創出と情報
発信を先導する旨の決意表明として行うものであり、今年8月に産学官
連携により設置した「『食』と『健康』ラボ」による機能性食品等の研
究開発や大学等で行う機能性エビデンスの確立など開発力とブランド力
の向上を合わせて目指す取り組みでございます。

[再質問]
 食品ビジョンP19に提示された趣旨・内容での「『発酵・長寿』県宣言」
を実施していただけるのか。そのことに絞って明確に回答願いたい。

[再質問への県の回答]
 質問2-1及び2-2「『発酵・長寿』県宣言」につきましては、「長野県
食品製造業振興ビジョン」に記載の趣旨・内容で実施してまいります。

[コメント]
 回答通り、食品ビジョンP19に提示された趣旨・内容での「『発酵・
長寿』県宣言」を是非実施していただきたい。

〇質問2-3
 長野県の味噌・醤油、酒等に係る発酵技術は、全国共通の技術であっ
て、長野県に特異的に蓄積されてきたものでなく、そのままでは、長野
県の食品産業に国際的な優位性や独創性を与える基盤的技術とはなりえ
ない。
 したがって、発酵技術にのみ焦点を当てた「発酵・長寿」県宣言で、
長野県の食品産業の振興戦略に優位性を確保できるのか、長野県の強み
とする他の工業技術も含めて、食品産業の振興に資する政策的宣言をす
べきではないのか、という非常に重要な検討課題が残されたままになっ
ている。
 この点について、どのように認識し、どのように対応するのか。

[県の回答]
 「『発酵・長寿』県宣言」は、単に発酵技術のみに焦点を当てたもの
ではなく、県内食品製造業・業界のブランディング活動の活性化のため
の基盤づくりとして、今月開催する「全国発酵食品サミット」や今後整
備を進めるエビデンスライブラリーの活用、機能性表示や地理的表示等
の各種認定制度の活用支援など、総合的な取組を実施することとしてお
ります。

[再質問]
 回答の意味が良く理解できない。「『発酵・長寿』県宣言」が、総合
的な取組を実施するとは、どういうことか。
 食品技術以外の工業技術の食品分野への活用による、本県の食品製造
業の優位性の確保については、取り組んでいただけるのか。それも含め
た「『発酵・長寿』県宣言」にしていただけるのか。

[再質問への県の回答]
 質問2-3総合的な取組につきましては、「『発酵・長寿』県宣言」の実
施も含め、「長野県食品製造業振興ビジョン」の目指す姿を実現するた
めの4つの優位性の確保に向けた取組を行ってまいります。

[コメント]
 質問2-3に記載した通り、長野県の味噌・醤油、酒等に係る発酵技術は、
全国共通の技術であって、長野県に特異的に蓄積されてきたものではなく、
そのままでは、長野県の食品製造業に国際的な優位性や独創性を与える基
盤的技術とはなりえない。このことをしっかり認識していただき、長野県
が強みとする様々な工業技術との融合等によって、本県食品製造業の国際
的優位性等の確保に資する新技術・新製品の研究開発に戦略的に取り組ん
でいただくことを期待したい。

〇質問2-4
 他県等に先駆けて優位性のある、「発酵・長寿」県宣言を実施しようと
するのであれば、その宣言の内容を、科学的根拠の乏しい単なるイメージ
戦略的な内容ではなく、本県の食品産業が他県等の食品産業に対して優位
性を有することに資する、科学的根拠に基づく食品産業振興戦略に相当す
る内容にすべきであると考えるが、いかがか。
[県の回答]
 「『発酵・長寿』県宣言」は、「からだに優しい食品」の創出と情報発
信を先導する旨の決意表明であり、今後進めていく長寿に寄与する科学的
根拠の確立や新商品開発等のビジョン推進のための旗印としての位置づけ
と考えております。体系・構成については、県のビジョンに基づき行う予
定でございます。
[再質問]
 特に質問なし。食品ビジョンP19に提示された趣旨・内容での「『発酵・
長寿』県宣言」を是非実施していただきたい。

〇質問2-5
 科学的根拠に基づく食品産業振興戦略に相当する内容の「発酵・長寿」
県宣言の体系・構成としては、以下の様なものを想定できるが、現時点
では、どのような体系・構成を考えているのか。
@宣言の実施者
A宣言の趣旨
B宣言に基づき具現化を目指す食品産業の姿
C目指すべき食品産業の姿を具現化するための産学官の連携活動方針
[県の回答]
 「『発酵・長寿』県宣言」は、「からだに優しい食品」の創出と情報
発信を先導する旨の決意表明であり、今後進めていく長寿に寄与する科
学的根拠の確立や新商品開発等のビジョン推進のための旗印としての位
置づけと考えております。体系・構成については、県のビジョンに基づ
き行う予定でございます。

[再質問]
 特に質問なし。食品ビジョンP19に提示された趣旨・内容での「『発酵・
長寿』県宣言」を是非実施していただきたい。

〇質問2-6
 「(2)本質的な価値(エビデンス、ストーリー展開など)を活用したブ
ランディング活動」の「『食』と『健康』ラボにより確保されたエビデ
ンスの活用」において、
@どのようなエビデンスが確保されているのか。あるいは、確保しよう
としているのか。
Aそのエビデンスをどのような食品に、どのように活用しようとしてい
るのか。
[県の回答]
 回答1-2の繰り返しになりますが、県内加工食品の機能性エビデンスの
取得に向け、各種評価系を用いた機能性の検証や細胞・生化学レベルの
評価、マウスなどを用いた動物実験等を行い、免疫調節作用や腸内フロー
ラの解析、抗高脂血症作用等についての研究を委託により実施しており
ます。そこで得た機能性エビデンスや文献や新規研究のデータ等を整理
した「エビデンスライブラリー」を構築し、機能性表示食品の開発促進
及び消費者に対する認知度の向上を図ることを検討しております。

[再質問]
@どのようなエビデンス(どのような食品の、どのような含有物質が、
どのような生理活性を発揮するのかなど)が確保されているのか。ある
いは、確保しようとしているのか。
Aそのエビデンスをどのような食品に、どのように活用しようとしてい
るのか。

[再質問への県の回答]
 質問2-6エビデンスの確保及び活用につきましては、秘密保持の観点
から、詳細な内容の開示は控えさせていただきます。なお、研究成果が
まとまったところで公表し、広く周知、PRして参ります。

[コメント]
 長野県の食品の本質的価値を高めるために行なわれる、食品の機能性
エビデンス取得の取組みの趣旨を正確に理解していただき、その趣旨に
そう真に科学的な手法で取り組んでいただくことをお願いしたい。今後
の研究成果の公表に期待したい。

〇質問2-7
 「(2)本質的な価値(エビデンス、ストーリー展開など)を活用したブ
ランディング活動」の「食品機能性エビデンスライブラリー(長寿食の
エビデンス)の産学官連携による整備」において、
@食品機能性エビデンスライブラリー(長寿食のエビデンス)とは、ど
のようなものか。具体的にイメージできるように説明願いたい。
Aその整備状況はどうなっているのか。いつ頃から企業等が利用できる
のか。
B企業等の利用目的・用途としては、具体的にどのような事を想定して
いるのか。
[県の回答]
 回答1-2の繰り返しになりますが、県内加工食品の機能性エビデンスの
取得に向け、各種評価系を用いた機能性の検証や細胞・生化学レベルの
評価、マウスなどを用いた動物実験等を行い、免疫調節作用や腸内フロ
ーラの解析、抗高脂血症作用等についての研究を委託により実施してお
ります。そこで得た機能性エビデンスや文献や新規研究のデータ等を整
理した「エビデンスライブラリー」を構築し、機能性表示食品の開発促
進及び消費者に対する認知度の向上を図ることを検討しております。

[再質問]
@食品機能性エビデンスライブラリー(長寿食のエビデンス)とは、ど
のようなものか。県内の農産物や、その加工食品等の機能性に関するデ
ータ・資料等を「図書館」のように整理しておき、企業等の閲覧に供す
るというような形式か。あるいは、それをデジタル化しインターネット
で閲覧できるようにする形式か。具体的にイメージできるように説明願
いたい。
Aその整備状況はどうなっているのか。いつ頃から企業等が利用できる
のか。
B企業等の利用目的・用途としては、具体的にどのような事を想定して
いるのか。

[再質問への県の回答]
 質問2-7食品機能性エビデンスライブラリーにつきましては、県内加工
食品等の機能性に関する文献や新規研究のデータ等を整理し、インター
ネットで閲覧できる形式を取りたいと考えております。現在、消費者庁
の機能性表示食品の届出情報等よりデータを収集し、閲覧者が見やすい
ように整理しております。具体的な掲載時期につきましては、現在、調
整を行っておりますが、集約されたデータを基に、機能性表示食品の届
出支援や県内研究機関の食品分析データや研究成果の情報共有等に活用
したいと考えております。

[コメント]
 県内食品製造企業による、機能性食品の研究開発の活性化に資する、
食品機能性エビデンスライブラリーの早期の整備・運用開始をお願いし
たい。

〇質問2-8
 「(2)本質的な価値(エビデンス、ストーリー展開など)を活用したブ
ランディング活動」の「県産農林水産物が含有する未知の機能性成分の
探索・評価」において、
@どのような農林水産物の、どのような機能性成分の探索・評価に取り
組んでいるのか。
A新規機能性食品の開発に応用できるような評価がなされた機能性成分
はあるのか。それは、どのような機能性成分か。実際に新食品に応用さ
れた事例はあるのか。
[県の回答]
 機能性成分の探索・評価等は、「『食』と『健康』ラボ」による研究
を進めているところでございます。

[再質問]
@「『食』と『健康』ラボ」による研究を進めているところとのことで
あるが、研究の進捗状況はどうなっているのか。
 対象とする農林水産物は何か。そのどのような機能性成分に注目して
いるのか。どのような機能性成分探索手法を用いているのか。
A「『食』と『健康』ラボ」による研究を進めているところとのことで
あるが、評価に取り組んでいる機能性成分はどのような物質か。どのよ
うな評価手法を用いているのか。

[再質問への県の回答]
 質問2-8「県産農林水産物が含有する未知の機能性成分の探索・評価」
及び2-9「機能性表示制度の活用のための産学官連携による効能評価・
ヒト介入試験等」につきましては、「『食』と『健康』ラボ」による研
究を進めているところですが、秘密保持の観点から、詳細な内容の開示
は控えさせていただきます。なお、研究成果がまとまったところで公表
し、広く周知、PRして参ります。

[コメント]
 県産農林水産物が含有する機能性成分の探索・評価活動は、市場競争
力を有する新規食品の創出のための基盤的活動として非常に重要なもの
である。その活動の一層の強化に期待したい。

〇質問2-9
 「(2)本質的な価値(エビデンス、ストーリー展開など)を活用したブ
ランディング活動」の「機能性表示制度の活用のための産学官連携によ
る効能評価・ヒト介入試験等」において、
@どのような効能評価・ヒト介入試験等が実施されているのか。
A実際に機能性表示制度の活用に結びついた成果は出ているのか。それ
はどのような食品に関する、どのような成果か。
[県の回答]
 機能性成分の探索・評価等は、「『食』と『健康』ラボ」による研究
を進めているところでございます。

[再質問]
@研究を進めているところとのことであるが、どのような食品や物質に
ついて、どのような効能評価・ヒト介入試験等に取り組んでいるのか。
A研究を進めているところとのことであるが、実際に機能性表示制度の
活用に結びつきそうな成果を得ることに期待できそうか。それはどのよ
うな食品や物質に関する、どのような成果か。

[再質問への県の回答]
 質問2-8「県産農林水産物が含有する未知の機能性成分の探索・評価」
及び2-9「機能性表示制度の活用のための産学官連携による効能評価・
ヒト介入試験等」につきましては、「『食』と『健康』ラボ」による研
究を進めているところですが、秘密保持の観点から、詳細な内容の開示
は控えさせていただきます。なお、研究成果がまとまったところで公表
し、広く周知、PRして参ります。

[コメント]
 県内食品製造企業が、機能性表示制度を活用する際に利用しやすい、
産学官連携による効能評価・ヒト介入試験等の実施体制の速やかな整備
をお願いしたい。

〇質問2-10
 「(2)本質的な価値(エビデンス、ストーリー展開など)を活用したブ
ランディング活動」の「成分分析・官能評価等に基づく地理的特徴の解
析等による地理的表示の活用」において、
@どのような食品について地理的特徴の解析等に取り組んでいるのか。
A地理的表示の活用に結びつく、地理的特徴が明らかになったような成
果が出ているのか。それは、どのような食品に関する、どのような地理
的特徴なのか。
[県の回答]
 機能性成分の探索・評価等は、「『食』と『健康』ラボ」による研究
を進めているところでございます。

[再質問]
@研究を進めているところとのことであるが、どのような食品について、
どのような地理的特徴の解析等に取り組んでいるのか。
 地理的特徴とは、どのようなことか。地理的特徴の解析とは、どのよ
うに行うのか。分かりやすく説明願いたい。
A研究を進めているところとのことであるが、地理的表示の活用に結び
つくような研究成果を期待できそうか。それは、どのような食品に関す
る、どのような地理的特徴なのか。

[再質問への県の回答]
 質問2-10「成分分析・官能評価等に基づく地理的特徴の解析等による
地理的表示の活用」につきましては、県内ワイナリーのワインについて
機器や官能による評価を行い、他地域の結果と比較することで、味の地
理的特徴の解析に取り組んでおります。成果につきましては、解析が終
了後に公表いたします。

[コメント]
 ワインだけでなく、県内食品製造企業等が、地理的表示の活用を目指
す際に利用しやすい、産学官連携による技術的支援体制の速やかな整備
をお願いしたい。

【むすびに】
〇そもそも今回の県民ホットラインへの質問等の送信は、食品ビジョン
に基づく県の活動が、既存食品の内外への販路開拓促進を目的とするこ
とに偏り過ぎて、産学官連携による科学的エビデンスに基づく優位性あ
る新規食品の創出を目的とする活動が不活発に見えるという、問題の提
起を第一の目的としていた。

〇今回の「再質問」への県の回答から、県が、産学官連携による科学的
エビデンスに基づく優位性ある新規食品の創出活動を本気で主導しよう
としていることが概ね確認できた。
 しかし、現時点では秘密保持を理由として、優位性のある新規食品の
研究開発活動の内容については、全く説明していただけない点が多々あ
った。それらについては、研究開発成果として今後公表されるとのこと
であるので、それを楽しみに待ちたい。

〇県が、この回答通り、科学的エビデンスに基づく新規食品創出活動の
活性化に効果的に取り組めるよう、関係の産学官の皆様方には、県に対
して、引き続き、積極的にご支援・ご協力等をしていただければ幸いで
ある。


ニュースレター 号外18(2018年11月10日送信)

長野県ものづくり産業振興戦略プランの推進体制の整備の進捗状況について(再質問への県の回答と私のコメント)

※「長野県ものづくり産業振興戦略プラン」については、以下、「もの
プラン」という。
【はじめに】
〇9月18日に、ものプランの体系・構成等の根幹部分の決定に深く関与
した者として、ものプランの的確な推進に資することを目的として、
遅々として進んでいないように見える、「長野県の産業支援体制の在り
方検討会」(以下、「検討会」という。)の設置等を含む、ものプラン
の着実な実施化に不可欠な推進体制の整備の進捗状況について、県の説
明を求めて県民ホットラインに質問等を投稿した。その質問等について
は、9月26日に県から回答メールを受け取った。

〇しかし、残念ながら、その回答全般が、2月県議会における知事答弁
で明らかにされた、ものプランの推進体制の整備への知事の積極的姿勢
と大きく矛盾するものであったため、その県の回答の問題点についての、
知事の認識等を確認させていただくことも含めて、9月27日に再質問を
県民ホットラインに投稿した。
※県の回答、再質問の趣旨・内容等については、ニュースレター号外10
(2018.9.27送信)を参照していただきたい。
※知事の議会答弁(積極的姿勢)については、ニュースレター号外10の
参考資料(2018.9.28送信)を参照していただきたい。

〇その「再質問」について、11月9日に県から回答メールを受け取った。
県の回答が、原則的には1週間以内であるにもかかわらず大幅に遅れたの
は、「再質問」投稿日が9月県議会開会中であったため、回答については
県議会閉会(10月17日)後であってもかまわない旨を担当部署(産業政
策課)に伝えてあったからである。

〇県のホームページには、県民ホットラインについて「いただきました
ご意見等は、原則、知事が拝見します。」と記載されていることから、
当然、県の回答についても、知事はチェックすることになっていると思
われる。
 しかし、9月26日の県の回答は、2月県議会で知事が示した積極姿勢が
大きく後退したと思わせるものであったため、知事のチェックを経てい
ないものと推測した次第である。再質問では、その点についての確認も
目的としていた。

〇再質問への県の回答においては、知事が2月県議会で設置を明言した、
長野県が実現を目指すべき産業支援体制の全体像を描くための専任組織
である、企業・大学・産業支援機関・行政機関・金融機関等の関係者か
らなる、検討会の設置を取り止めたことなど、ものプランの推進体制の
整備に関して、大きな路線変更がなされていることが明らかになった。

〇私としては、長野県が目指すべき理想的な産業支援体制の全体像を描
くことの困難性、専門性等を考慮すれば、必要な人的体制からなる専任
組織の設置による、論理的な検討作業が不可欠と考えていた。
 しかし、知事が、ものプランでの提示や議会答弁にもかかわらず、何
らかの理由によって、検討会の設置の必要性無しの方針を了承したとな
れば、我々としては、その方針の枠組みの中での、最善の検討作業の実
施に期待するしかないことになる。

〇いずれにしても、来年度半ばまでには、長野県が実現を目指すべき産
業支援体制の全体像(理想像。既存の産業支援機関の再編・再構築を含
む。)を、県として提示しなければならないのである。
※ものプランの統括的推進体制については、今年度中の整備が、ものプ
ランの推進体制整備スケジュールに記載されている。

〇今回の再質問への県の回答内容を見ていると、県は、「ものプランの
統括的推進体制の整備」や「本県の産業支援体制の抜本的見直し」とい
う、非常に困難性の高い「宿題」に、積極果敢に取り組もうという強い
意思を本当に有しているのだろうかという、一抹の不安を覚えてしまう
のは、私だけではないだろう。

〇以下に、県の回答内容とそれに対する私のコメントを記載することに
したい。皆様方には、県が、ものプランに基づき、「ものプランの統括
的推進体制の整備」や「本県の産業支援体制の抜本的見直し」等に積極
果敢に取り組めるよう、今まで以上に、県に対する積極的なご支援・ご
協力等をお願いしたい。

【質問1】
〇本年4月から来年3月までに、国内外の産業支援体制の先進事例や、現
状の本県の産業支援体制の課題(不足する支援機能等)を徹底的に調査
研究するようになっている。この調査研究については、2月県議会におい
て、知事も、内外の先進事例を徹底的に調査研究すると積極的に答弁さ
れている。
 この調査研究は、今後の長野県の産業支援体制の在り方、整備(再編・
再構築)の方向性を決定づける極めて重要なものであるため、スケジュ
ール通りの着実な実施をお願いしたい。

〇そこで、以下についてお尋ねしたい。
質問1-@この調査研究の進捗状況は、どうなっているのか。
 [県の回答]
 進捗につきましては、これまでの間、産業労働部の職員が、富山県新
世紀産業振興機構、ひろしま産業振興機構、東北大学試作コインランド
リ等を訪問し、事例調査を行っております。この調査は、多くの先進事
例を参考にするため、今後も随時実施することとしております。

 [再質問]
 調査研究の本来の趣旨は、先進事例の調査研究を通して、本県の産業
支援体制の課題(不足する支援機能等)を把握し、それを産業支援体制
の抜本的見直し(再編・再構築等)に活かすことである。この調査研究
の実施への2月県議会時点での「知事の積極的姿勢」に、何か変化等があ
ったのか。
 先進事例の調査研究に基づく、本県の産業支援体制の課題(不足する
支援機能等)の把握については、具体的にどのように進められているの
か。現時点で、どのような課題が把握できているのか。

 [再質問への県の回答]
 産業支援体制の見直しに関して、積極的な姿勢に変化はございません。
現在、県の産業支援体制を見直すため、職員が先進事例の調査などによ
り情報収集し、調査研究を実施しております。
 課題の把握につきましては、4機関(工業技術総合センター、中小企
業振興センター、テクノ財団、発明協会)の機能と役割を業務ごとに整
理した上で、調査研究で得られた県外の先進事例情報と比較し、本県の
産業支援体制に足りない機能がないかどうかチェックしております。
 具体的には、本県のテクノ財団では、産学官連携のコーディネート機
能があるものの、販路開拓機能がないといった課題や、中小企業振興セ
ンターでは、販路開拓や事業承継などの経営支援機能があるものの、大
学との連携機能がないといった課題等について、把握ができつつあります。

 [コメント]
 現時点においては、本県の産業支援体制の中に、他県等に対する優位
性を有する新規支援機能を整備することに資するレベルの調査研究成果
はまだ得られていないことが推測できる。本県の産業支援体制に新規に
整備すべき支援機能や、その新規支援機能の具体的な整備方法等(既存
の産業支援機関の再編・再構築による整備を含む。)を、明確化するこ
とに資する、関係職員の英知を結集した、真剣な調査研究に期待したい。

質問1-A調査研究体制は、どのようなものか。
 [県の回答]
 体制につきましては、産業労働部の職員が有識者と協議のうえ実施し
ております。

 [再質問]
 調査研究の本来の趣旨や重要性を十分に認識できれば、調査研究の的
確な実施に資する、産学官からなる専門的な人的体制(例えば、「調査
研究班」の編成等)による、的確な指揮命令系統に基づく調査研究の実
施が不可欠と考えるが、いかがか。
 現状では、関係職員が思いつくままに有識者に相談しながら調査し、
それを持ち寄るというような手法をとっているということか。

 [再質問への県の回答]
 調査研究に当たっては、進め方も含め、ものづくり産業振興戦略プラ
ンの策定に携わった有識者の助言や、参考となる支援機関の紹介をいた
だくなどにより、調査を実施しております。
 調査を進めるにあたっては、産業労働部内で検討のうえ、産業政策課
が決定し実施するとともに、工業技術総合センターや中小企業振興セン
ターとも連携を取り合いながら進めています。

 [コメント]
 産学官からなる高度・専門的な人的体制(調査研究班等)による調査
研究を実施するほどの必要性は無いとの方針を、知事が了承していると
なれば、その方針の枠組みの中で、できる限り工夫して、理想的な産業
支援体制の全体像を描くことに実際に役立つ、有用な情報の探索に効果
的に取り組んでいただくことを期待したい。

質問1-B調査研究対象は、どのような国や地域の、どのような機関等に
なっているのか。
 [県の回答]
 対象につきましては、国内につきましては、@で申し上げた複数の支
援組織を統合して設立された機関や先進的な取組を行っている産業支援
機関等を対象としております。海外につきましては、米国モデル、欧州
モデル(ベルギー、スイス等)などについて情報収集しております。

 [再質問]
 先進的な取組みを実施している産業支援機関等を調査研究対象として
いるが、先進的な取組みとは、どのような視点で先進的と評価したのか。
県の現状の産業支援体制では提供できていない支援機能を有する産業支
援機関等としては、どのようなものがあったのか。それはどのような支
援機能だったのか。
 米国モデル、欧州モデルとは、どのようなものか。具体的な調査研究
対象(機関等)は何か。どのような情報を収集しているのか。

 [再質問への県の回答]
 技術の進展により、IoTを使い集めたビッグデータをAIの活用により付
加価値を創出する取組は、これまでなかったため、先進的であると判断
しております。
 県の現状の体制では提供できない機能を有するのは、広島県や東京都
であり、具体的には、専門人材によるワンストップ支援体制を既に確立
していたり、中小企業向けIoTについて簡単なモデルでIoT実装事例を示
している事例があります。
 米国モデル、欧州モデルとは、米国シリコンバレーのように、個人事
業者が投資家とコミュニケーションをとり、アイデアを提示することで
資金を引き出せるようなイノベーションの場を整備する支援の仕方や、
地域政府や研究機関等の産業支援機関が、イノベーションによる起業や
創業の仲介役となる支援の仕方などを指します。
 調査研究対象については、技術支援や産学官連携コーディネート、経
営支援の3つの機能を有機的に連携し、企業支援に取り組んでいる機関
を調査研究対象としております。

 [コメント]
 調査研究の本来の趣旨は、先進事例の調査研究を通して、本県の産業
支援体制の課題(不足する支援機能等)を把握し、それを産業支援体制
の抜本的見直し(再編・再構築等)に活かすことであることを十分に認
識していただき、如何にしたら、実際に産業支援体制の抜本的見直し
(再編・再構築)に活用できる調査研究成果を得ることができるのかを
真剣に考え、計画的に調査研究に取り組んでいただきたい。
 特に、他県等に比して優位性を有する新規支援機能に関する情報収集
が期待できる、海外の先進的地域クラスターの中核的産業支援機関の調
査については必ずしっかり実施していただきたい。

質問1-C調査研究はいつ頃までに終了し、その成果は公開されるのか。
 [県の回答]
 調査期間につきましては、今年度中に調査研究、分析を行い、課題を
整理する予定です。調査結果等を踏まえ、今後施策構築に反映していく
形でお示ししていく予定です。

 [再質問]
 国内外の先進的産業支援機関の優位性ある支援機能等の情報は、県内
の様々な産業支援機関にとっても、その支援機能の改善等に資するもの
であるため、報告書としてまとめ、公開する意義は非常に大きいと考え
るが、いかがか。なぜ、公費を費やし実施する重要な調査研究の貴重な
成果を、県関係組織外も含め広く活用しようと考えないのか。

 [再質問への県の回答]
 調査内容につきましては、現在ヒアリングした先の情報を整理してお
り、整理が済み次第公開に向けて検討してまいります。また、調査研究
の成果を、広く活用することは重要なことですので、今後の活用方法に
ついても検討してまいります。

 [コメント]
 調査研究成果については、様々な形(報告書の配布、産業支援体制の
在り方を探るシンポジウムの開催等)での公開を工夫し、県内の各種産
業支援機関の支援機能の高度化への活動の活性化に資するよう配慮して
いただきたい。

質問1-D以上に関する調査研究計画書のようなものがあれば、公開して
いただきたい。
 [県の回答]
 計画書につきましては、調査研究計画書は作成しておりませんが、視
察候補やヒアリングの視点などの考え方を整理した資料に基づき実施し
ております。

 [再質問]
 定められた期間内に効果的な調査研究を実施・完了することや、調査
研究の役割や費やすコストの大きさ等を考慮すれば、事前の全体的な調
査研究計画の検討・策定・実施化が極めて重要と考えるが、いかがか。
 なぜ、全体的な調査研究計画を策定しないままに、調査研究に着手し
たのか。

 [再質問への県の回答]
 計画の検討・策定・実施を行います。
 産業支援機関のあり方の検討を進めるにあたり、ワンストップ型支援
体制の整備、先進事例の視察、企業訪問、外部有識者との意見交換など
それぞれ方向性を定めたスケジュールを作成しており、それに基づき進
めます。

 [コメント]
 遅ればせながらではあるが、今後の調査研究においては、実際に活用
できる形の報告書の完成に向けて、出口(多くの有用な情報の確保と、
それに基づく整備すべき新規支援機能の特定等)をきちっと見据えた、
計画的な調査研究の実施をお願いしたい。

【質問2】
〇速やかに整備すべきものプランの推進体制の姿(理念)については、
ものプランに基づき、以下のように整理できると思われる。
 [ものプランの推進体制の姿(理念)]
 ものプランに提示された9の重点施策を効果的に活用して、県内企業の
産業イノベーション創出活動の入口(経済的・社会的ニーズの把握・選
定)から出口(販売・販路拡大)までを、一貫して支援できるワンスト
ップ・ハンズオン型の支援機能と、16の産業イノベーション創出型プロ
ジェクト(地域クラスター形成プロジェクト)を効果的に推進するため
に、各プロジェクトの課題解決や連携・補完等を支援するなどの、戦略
的なプロジェクトマネジメント機能とを併せ持つ、統括的な推進体制

〇また、その整備の進め方に関する留意事項としては、ものプランには
以下の2点が挙げられている。
@統括的な推進体制の在り方等の検討においては、県のリーダーシップ
の下、同一の建物に本部を有する、県工業技術総合センター、県中小企
業振興センター及び県テクノ財団のそれぞれの支援機能の連携・融合化
等について検討する。

A前記3機関が連携したワンストップ・ハンズオン型の支援体制の整備等
(3機関の一部支援機能の統合組織の整備等)を今年度中に実現し、本県
の産業支援体制の更なる高度化を図るための調査研究を実施し、その調
査研究結果に基づき、時代の変化に迅速に対応できる新たな産業支援体
制(3機関全体の統合による新たな産業支援機関の創設等)を2022年度ま
でに構築する。

〇そこで、以下についてお尋ねしたい。
質問2-@今年度中に整備することになっている、県工業技術総合センタ
ー、県中小企業振興センター及び県テクノ財団の3機関によるワンストッ
プ・ハンズオン型支援体制の整備の進捗状況はどうなっているのか。
※3機関の共同運営による統合型相談・支援窓口の設置等(3機関の全体
的な統合にまでは至らない、一部支援機能の統合組織の整備等)につい
て、ものプランの策定作業の中で、かなり具体的に検討されていた。
 [県の回答]
 ワンストップ・ハンズオン型支援体制の整備につきまして、工業技術
総合センター、中小企業振興センター、テクノ財団、発明協会の4機関
で会議を設置し、4月から6回にわたり支援のあり方などついて検討を
進めております。具体的には、利便性向上の観点から、既に建物入口案
内の見直し、連絡電話窓口の設置などを行ったほか、実際にワンストッ
プで対応できるよう、各機関に連絡担当者を設置し、4機関の業務内容
を共有する体制づくりを進めております。
 また、先日は、ワンストップ支援を進めていくための4機関職員合同
研修会を開催し、各機関の業務内容や連携方法について理解を深めたと
ころです。

 [再質問]
 ものプランについては、「統括的な推進体制」の整備によって、はじ
めて、独創的・戦略的で優位性のある、長野県ならではの「産業イノベ
ーション創出へのワンストップ・ハンズオン型の支援」ができるという
体系・構成・内容で策定されている。この「統括的な推進体制」の整備
への、2月県議会時点での「知事の積極的姿勢」に、何か変化等があった
のか。
 現状の取組みは、単に「若里の建物」への訪問者の利便性向上に努め
ているだけで、ものプランが真に求める、ものプランの効果的推進のた
めの「統括的な推進体制」の整備を中止したようにしか見えないが、そ
のような解釈で良いのか。
 このような「統括的な推進体制」整備への取組みの「重大な変更」に
ついては、知事は了承していないと推測するが、いかがか。

 [再質問への県の回答]
 「統括的な推進体制」の整備への積極的姿勢に変化はございません。
また、長野県に優位性のある産業分野においてイノベーションが創出さ
れるよう、工業技術総合センター、中小企業振興センター、テクノ財団
等の支援機関、大学、民間企業等が産学官連携により、分野横断的な課
題の解決に向け、重点施策やプロジェクトを推進できる体制の構築につ
いて検討しております。

 [コメント]
 ものプランが想定している統括的な支援機能(産業イノベーション創
出活動の入口から出口までを一貫支援できるワンストップ・ハンズオン
型支援機能と、16の地域クラスター形成プロジェクトの戦略的マネジメ
ント機能)を完備する「統括的な推進体制」の具体的姿(人的体制、設
置場所、実施事業等)を速やかに提示し、ものプランのスケジュール通
り、今年度中の整備をお願いしたい。なお、資金的問題については、来
年度予算編成での解決に配意願いたい。

質問2-A今年度中に整備される、ものプランに基づく「ワンストップ・
ハンズオン型支援体制」と、「攻めと守りの政策パッケージ」に基づき
来年4月に設置予定の医療機器産業振興に係る「事業化開発センター」と
の支援機能の棲み分け・役割分担等については、どのように整理する予
定なのか。
 [県の回答]
 ワンストップ・ハンズオン型支援体制は、4機関が連携し、産業全般
の課題解決を図る総合的・効果的な支援につなげていくものであります。
 一方、医療機器に関する事業化開発センター(仮称)は、事業化に精
通した専門人材を招へいし、国内であれば医療機器完成品、海外につい
ては、医療機器部材の供給に特化して進めてまいります。

 [再質問]
 ものプランに提示された、ワンストップ・ハンズオン型支援体制は、
「産業全般の課題解決を図る総合的・効果的な支援につなげていくもの」
ではなく、個別企業等の産業イノベーション創出活動における様々な課
題解決に資する支援機能を整備・提供するものである。認識が根本的に
間違っているのではないのか。
 したがって、ワンストップ・ハンズオン型支援体制は、当然、医療機
器分野も支援対象とする。その上での事業化開発センター(仮称)の必
要性や支援機能の棲み分け・役割分担の在り方等について、説明願いたい。

 [再質問への県の回答]
 ワンストップ・ハンズオン型支援体制の整備は、個別企業等県内企業
の産業イノベーションの創出に向け、積極的に取り組みやすい環境を構
築するためのものと考えております。一方、信州医療機器事業化開発セ
ンターは、医療機器分野に限定して地域企業による事業化を加速するた
めの支援機能として整備する予定です。
 県としましても、重複する支援機能とならないよう、効率的な支援体
制を整備する必要があると考えますので、支援機能の棲み分け・役割分
担についてしっかり整理してまいります。

 [コメント]
 ものプランに基づくワンストップ・ハンズオン型支援体制の整備につ
いて検討する中で、他の支援機関・組織等との役割分担や連携の在り方
について、具体的に詰めていただくことをお願いしたい。
 また、医療機器産業振興ビジョンの策定作業においては、当該ビジョ
ンのシナリオ・プログラムの中に、信州医療機器事業化開発センターを
どのように位置づけるのかについて、他の産業支援機関・組織等との連
携の在り方を探ることを含めて、じっくり検討していただきたい。

【質問3】
〇今年度すみやかに、企業、大学、産業支援機関、行政機関、金融機関
等の関係者による、「長野県の産業支援体制の在り方検討会」(仮称)
(以下、「検討会」という。)を設置し、今年度中に、ものプラン推進
体制の整備の在り方の検討に資する調査研究を実施し、その調査研究に
基づき、整備すべき姿を描く作業等を、来年度の半ばまで実施すること
になっている。

〇そこで、以下についてお尋ねしたい。
質問3-@検討会は設置されているのか。設置されている場合には、その
設置要綱等を公開していただきたい。
 [県の回答]
 検討会については、新たな産業支援体制の検討に当たり、要綱による
検討会は設置しておりませんが、4機関による連絡会議を中心に検討を
進めており、外部専門家や金融機関、企業経営者のもとを訪問し、ご意
見を伺いながら産業支援体制の構築について検討しているところです。

 [再質問]
 4機関による連絡会議は、ものプランに基づく検討会に対してどのよ
うな位置づけとなるのか。どのような役割分担となるのか。

 [再質問への県の回答]
 4機関の連絡会議は、ものづくり産業振興戦略プランに掲載のある検
討組織の一部と考えています。
 この連絡会議の場を活用するとともに、中小企業振興審議会からも意
見をいただきながら、ものづくり産業振興戦略プランの具現化を進めて
まいりたいと考えています。

 [コメント]
 ものプランに基づく専任組織である検討会をまず設置し、その補完機
能等を担う下部組織として、連絡会議等を設置するということであれば
理解できる。しかし、現状は、産業支援体制の在り方検討について中心
的役割を担うべき、専任組織である検討会を設置しないで、その補完機
能を担うべき連絡会議等を先に設置するという、本末転倒の形になって
しまっている。
 しかし、知事が、この進め方で、長野県が実現を目指す理想的な産業
支援体制の全体像をきちっと描くことができると判断している以上は、
我々としては、現状の体制の中での有意義な検討に期待するしかないだ
ろう。

質問3-Aまだ、検討会が設置されていない場合には、今後の設置予定や
検討スケジュール等はどうなっているのか。スケジュール通り実施可能
なのか。
 [県の回答]
 現段階では、いわゆる検討会を設置する予定はありませんが、@で申
し上げましたとおり、連絡会議や有識者等の意見交換により、今年度中
には調査研究を行うこととしており、ご提示したスケジュールに沿って
進めてまいりたいと考えております。ご指摘のものづくり産業振興戦略
プランの推進体制は、重要な事項でありますので、引き続き鋭意検討を
進めてまいりたいと考えております。今後ともよろしくお願い申し上げ
ます。

 [再質問]
 検討会の設置予定なしということは、ものプランに基づく、本県の産
業支援体制の抜本的見直し(再編・再構築等)については真剣には取り
組まないということで良いのか。このような、ものプラン記載事項の
「重み」を無視したような取組み、路線変更について、知事は了承して
いないと推測するが、いかがか。

 [再質問への県の回答]
 これまで説明したとおり、産業支援体制のあり方検討は、大変重要な
課題であると認識しており、路線変更はしておりません。7回の4支援
機関連絡会議の開催、他県等の先進事例の調査研究、有識者との意見交
換など、様々な手法を通じて検討を進めていることが、検討会機能であ
ると認識しております。引き続き調査研究結果を踏まえ、真摯に検討し
てまいりますので、助言等のご支援をお願いします。

 [コメント]
 知事が、2月県議会で設置を明言した、ものプランに基づく検討会の設
置を取り止めることを了承しているのであれば、「検討会の設置」を
「検討会機能の整備」にすり替える様な苦しい言い訳をせずに、ものプ
ランの推進体制の整備手順等の変更として、その理由を明確に説明すべ
きであろう。
 いずれにしても、来年度の半ばまでに、長野県が目指すべき理想的な
産業支援体制の全体像を、県として明確に提示できるようにするために
必要なベストの手法を選択すれば良いのである。

【むすびに】
〇知事の判断に基づき、ものプランの推進体制の整備(ものプランの統
括的推進体制の整備と本県の産業支援体制の抜本的見直し)の進め方に
大きな変更が加えられている。
 しかし、いずれにしても、速やかに、ものプランの統括的推進体制の
具体的姿を描き、今年度中に、それを整備・稼働させなければならない
し、来年度半ばまでには、本県が目指すべき産業支援体制の理想的な全
体像を描き、ものプラン期間中にそれを具現化しなければならないとい
うように、「出口」は既に明確に定まっているのである。

〇県が、その「出口」の具現化の困難性の高さから、その「出口」自体
の変更(安易な方向への路線変更)にまで手を出すようなことなど決し
て無いように、関係の産学官の皆様方には、県に対する格段のご支援・
ご協力等をお願いしたい。


ニュースレター 号外17(2018年11月6日送信)

長野県ものづくり産業振興戦略プランの的確な推進について〜起業・スタートアップ支援機能とオープンイノベーション機能を有するイノベーションハブ(仮称)の整備の進捗状況について
(県の回答と私のコメント)〜

〇10月27日に、長野県ものづくり産業振興戦略プランの「産業イノベ
ーション創出活動促進のための重点施策」の中に位置づけられている、
「起業・スタートアップ支援機能とオープンイノベーション機能を有
するイノベーションハブ(仮称)の整備」の進捗状況について、その
イノベーションハブの的確かつ効果的な整備に資することを目的とし
て、県民ホットラインで質問させていただいた。その質問の趣旨・内
容等については、同日付の「ニュースレター号外15」で皆様方にお知
らせした通りである。

〇その質問について、11月5日に県から回答メールを受け取った。その
回答内容については、残念ながら、現在検討中を理由とする、実質的
に無回答に近いものだった。
 しかし、現時点で十分な回答ができない事項については、いい加減
な回答で何とか逃れようとするような姿勢は見せずに、後日の改めて
の回答とするなど、誠実さが込められたものでもあった。

〇以下に、県の回答内容とそれに対する私のコメントを記載すること
にしたい。皆様方からも、県が、ものづくり産業振興戦略プランに基
づき、他県等に対する優位性を有するイノベーションハブの整備をス
ケジュール通り具現化できるよう、県に対する積極的な助言等をして
いただければ幸いである。

 長野県ものづくり産業振興戦略プランの的確な推進について
〜起業・スタートアップ支援機能とオープンイノベーション機能を
 有するイノベーションハブ(仮称)の整備の進捗状況について
 (県の回答と私のコメント)〜

※長野県ものづくり産業振興戦略プランについては、以下、「ものプ
ラン」という。
※ものプランに提示されたイノベーションハブの整備スケジュールは、
以下のようになっている。
 2018年度 機能・体制検討
 2019年度 設計・施設整備
 2020年度〜2022年度 設置

【質問1:「日本一創業しやすい県」づくりについて】
 長野県が実現を目指す「日本一創業しやすい県」とは、どのような
県なのか。県が、その具体像を提示し、関係の産学官の間でのコンセ
ンサスを得た上で、産学官連携によって、その具現化に取り組むこと
が必要となる。
 その具体像が、長野県の創業促進戦略の基本的体系・構成となる、
ビジョン・シナリオ・プログラムの中のビジョン(目指す姿)に位置
づけられるのである。そして、そのビジョン(目指す姿)の設定がで
きて初めて、そのビジョン実現への道筋(シナリオ)と、そのシナリ
オの着実かつ効果的な推進のために必要な各種施策(プログラム)に
ついて議論できるようになるのである。そこで、以下についてお尋ね
したい。

@長野県として、「日本一創業しやすい県」とは、どのような県をイ
メージしているのか。長野県として実現を目指す具体像について、で
きるだけ分かりやすく説明願いたい。

[県の回答]
 既にご承知のように平成27年度に策定した信州創生戦略で県創業支
援施策の目指す姿として「日本一創業しやすい県づくり」を掲げてお
りましたことから、本プランにおいてもプロジェクトのサブタイトル
としたところでございます。
 どのような県であるかは理念的なものではありますが、創業希望者、
創業者、支援機関など創業に関わる全ての皆様が「創業しやすい」と
感じる県であることと考えております。
 実現を目指す具体像については、行政や支援機関だけでなく大学や
企業、地域など多くの主体が関わり創業を支援するベンチャー・エコ
システムの形成であると考えております。

[コメント]
 長野県が実現を目指す「日本一創業しやすい県」とは、残念ながら、
単にキャッチフレーズ的なものであって、「日本一創業しやすい県」
を実現するためのシナリオやプログラムを具体的に議論することに資
するレベルにまで論理的に詰められていないことと、詰めることの政
策的意義がほとんど認識されていないことが明らかになった。このよ
うな政策スタンスでは、長野県は、創業支援に係る政策の策定面でも
その具現化面でも、知事が目指す「トップランナー」としての地位を
確保することはできないであろう。

A長野県を「日本一創業しやすい県」にするためには、ものプランに
記載されているベンチャー・エコシステムが、日本一創業に効果のあ
るものとすることが必要と考えるがいかがか。

[県の回答]
小林様のお考えのとおりでございます。

[コメント]
 是非、日本一創業に効果のあるベンチャー・エコシステムの構築に、
論理的かつ戦略的に取り組んでいただきたい。

B長野県が実現を目指す「日本一創業しやすい県」の具体像について、
関係の産学官の間でコンセンサスを得ておくことが、関係の産学官連
携による創業促進施策(ベンチャー・エコシステムを構成する各種施
策)の効果的な企画・実施化には不可欠と考えるが、いかがか。

[県の回答]
 小林様のお考えのとおりであることから、県といたしましては、平
成28年度に県内産学官金及びコワーキングスペース運営者が参画する
「信州創業応援プラットフォーム」を創出いたしました。このプラッ
トフォームでは、全県的な創業支援施策やイノベーションハブ(仮称)
の機能等について検討・意見交換するとともに、創業支援者のネット
ワーク化を図っております。
 これまでの開催状況は県ホームページに掲載しておりますのでご覧
ください。

[コメント]
 最初に、産学官の間でコンセンサスを得た「日本一創業しやすい県」
の具体像を提示することによって、はじめて、イノベーションハブの
機能等について論理的に検討することができるようになるということ、
すなわち、「日本一創業しやすい県」の具体像を論理的に詰めること
の政策的意義を認識できていないため、「信州創業応援プラットフォ
ーム」の検討・意見交換においては、参加者のそれぞれの思いが述べ
られ、拡散していくだけで、議論が深まらない状況になってしまって
いる。
 「日本一創業しやすい県」の具体像の提示が、参加者のそれぞれの
思いの効果的収束に資することを認識していただきたい。

C長野県のベンチャー・エコシステムを、日本一創業に効果のあるも
の、すなわち、他県等に比して優位性・独創性等を有するものとする
ためには、どのような施策の企画・実施化に最も力を入れるべきと考
えているのか。イノベーションハブに整備すべき支援機能と関連づけ
て説明願いたい。

[県の回答]
 イノベーションハブ(仮称)の機能を検討中であることから、後日、
改めて回答させていただきます。

[コメント]
 しっかり検討していただきたい。後日改めての回答に期待したい。

D長野県が実現を目指す「日本一創業しやすい県」の具体像について、
創業促進施策の企画・実施化の上で、関係の産学官の間でコンセンサ
スを得ておくことが必要と考える場合には、どのような手法・段取り
等によって、その具体像を描き、その具体像についての関係者間での
コンセンサスを得ていくべきと考えるのか。

[県の回答]
 質問1-3で回答しました「信州創業応援プラットフォーム」で検討
・意見交換してまいりたいと考えております。
 次に、質問2-1〜9につきましては、現在検討を進めている最中で
ございますので、申し訳ございませんが、現段階で回答できる部分の
みの回答とさせていただき、それ以外の項目については、後日、改め
て回答させていただきます。

[コメント]
 「信州創業応援プラットフォーム」における、「日本一創業しやす
い県」の具体像についてのコンセンサスを得る作業が、イノベーショ
ンハブに対する、参加者のそれぞれの思いの効果的収束に資すること
を認識していただきたい。

【質問2:「イノベーションハブ(仮称)」の整備について】
 イノベーションハブについては、既に他県等でも整備されている。
したがって、「日本一創業しやすい県」とするためには、他県等のイ
ノベーションハブに対して、支援機能等における優位性・独創性等を
有するものとする必要がある。そこで、以下についてお尋ねしたい。

@ものプランに提示されているイノベーションハブ整備スケジュール
における、「機能・体制検討」の進捗状況はどうなっているのか。
 その検討作業は、どのような体制(責任者あるいはリーダー、事務
局、メンバー等)で検討されているのか。その検討に関する実施要領
のようなものがあれば公開願いたい。

[県の回答]
 検討作業は、「信州創業応援プラットフォーム」等の意見を踏まえ
て創業・サービス産業振興室が担当して進めております。当室の業務
であり実施要領は作成しておりません。

[コメント]
 ものプランに提示された、2019年度の設計・施設整備(そのための
予算化等を含む。)に間に合うように、他県等に比して優位性のある、
長野県ならではのイノベーションハブの機能・体制についてじっくり
検討し、まとめ上げていただきたい。

A整備すべきイノベーションハブの機能・体制の検討作業においては、
イノベーションハブの経営(運営)主体、設置場所、支援機能、実施
事業、人的体制、予算措置等について、現時点で、どのような方向付
けがなされているのか。できるだけ具体的に説明願いたい。

[県の回答]
 現在検討中のため、後日、改めて回答させていただきます。

[コメント]
 しっかり検討していただきたい。後日改めての回答に期待したい。

Bそのイノベーションハブの支援機能の中に、他県等のイノベーショ
ンハブに対する、どのような優位性・独創性(長野県ならではの支援
機能)等を確保しようと考えているのか。できるだけ具体的に説明願
いたい。

[県の回答]
 現在検討中のため、後日、改めて回答させていただきます。

[コメント]
 しっかり検討していただきたい。後日改めての回答に期待したい。

Cものプランの中に位置づけられたイノベーションハブであることか
ら、当然、ものづくり産業分野での創業活性化を目指す支援機能の整
備に力を入れることになる。ものづくり産業の特性等を踏まえて、特
に整備・強化すべき支援機能としては、どのようなものを考えている
のか。

[県の回答]
 現在検討中のため、後日、改めて回答させていただきます。

[コメント]
 しっかり検討していただきたい。後日改めての回答に期待したい。

Dものづくり産業分野を対象とする、内外の先進的なイノベーション
ハブの調査は実施したのか。調査を実施している場合には、調査によ
って、長野県のイノベーションハブが、特に重点的に整備すべき支援
機能として、どのようなものを見出しているのか。

[県の回答]
 内外の先進的なイノベーションハブの調査につきましては、都道府
県が設置する創業支援拠点について調査を実施いたしました。国外の
施設については調査しておりません。

[コメント]
 特に、ものづくり産業分野を対象とする、他県等の先進的イノベー
ションハブの支援機能を参考にして、それに対する優位性を有する、
長野県ならではの支援機能の整備に尽力願いたい。
 ものづくり産業分野を対象とする、国外の先進的施設についても参
考にして、ものづくり産業のイノベーティブな創業に日本一効果のあ
る、長野県ならではのベンチャー・エコシステムの構築を目指してい
ただきたい。

E「高い付加価値の創出につながるイノベーティブな創業・起業」の
促進が必要としているが、ものづくり産業分野における、そのような
創業・起業を活性化するためには、イノベーションハブには、特に、
どのような支援機能を整備すべきと考えているのか。

[県の回答]
 現在検討中のため、後日、改めて回答させていただきます。

[コメント]
 しっかり検討していただきたい。後日改めての回答に期待したい。

Fイノベーションハブの支援機能については、ものプランに多くの支
援機能を提示しているが、イノベーションハブ自体が整備すべき支援
機能と、他の支援機関の支援機能の活用で対応する支援機能とについ
て、どのような整理をしているのか。

[県の回答]
 現在検討中のため、後日、改めて回答させていただきます。

[コメント]
 しっかり検討していただきたい。後日改めての回答に期待したい。

Gイノベーションハブ自体が整備すべき支援機能の中で、特に、もの
づくり産業分野でのイノベーティブな創業・起業の活性化に資する支
援機能としては、どのようなものを考えているのか。

[県の回答]
 現在検討中のため、後日、改めて回答させていただきます。

[コメント]
 しっかり検討していただきたい。後日改めての回答に期待したい。

H「ながの創業サポートオフィス」、「信州創業応援プラットフォー
ム」、「ものプランに基づき整備されるワンストップ・ハンズオン型
の支援体制」とイノベーションハブとは、支援機能について、どのよ
うな棲み分けや役割分担を考えているのか。できるだけ分かりやすく
説明願いたい。

[県の回答]
 現在検討中のため、後日、改めて回答させていただきます。

[コメント]
 しっかり検討していただきたい。後日改めての回答に期待したい。

I今回、検討途中であることなどの理由で、十分な回答を頂けなかっ
た事項については、後日、改めてお尋ねすることにしたいが、イノベ
ーションハブの機能・体制等の検討結果は、何らかの形で公開される
のか。あるいは、要望すれば情報提供していただけるのか。

[県の回答]
 イノベーションハブ(仮称)の機能、運営体制、設置スケジュール
などが決定したところで公表することを予定しており、後日の回答と
させていただいた項目につきましても、公表にあわせて回答したいと
考えております。

[コメント]
 しっかり検討していただきたい。後日改めての回答に期待したい。


ニュースレター 号外16(2018年11月2日送信)

長野県食品製造業振興ビジョンの進捗状況について(再質問)〜「『食』と『健康』ラボ」と「『発酵・長寿』県宣言」の進捗状況に焦点を絞って〜

〇10月25日に、長野県食品製造業振興ビジョンに新食品創出活動活性化
のための重点プログラムとして位置づけられている、「『食』と『健康』
ラボ」と「『発酵・長寿』県宣言」の進捗状況について、同ビジョンの
的確な実施化に資することを目的として、県民ホットラインで質問させ
ていただいた。その質問の趣旨・内容等については、同日付の「ニュー
スレター号外14」で皆様方にお知らせした通りである。

〇その質問について、11月1日に県から回答メールを受け取った。しか
しながら、その回答内容からは、同ビジョンが提示する新食品創出への
取組みの在り方について、真に理解して事業に取り組んでいるとは思え
ない点や、各質問の主旨を的確に把握し真剣かつ正確に回答しようとし
ているとは考えられない点等が多々あることから、同ビジョンの策定に
深く関与した者として、再質問によって、それらを指摘せざるをえない
と判断した次第である。

〇以下に、県の回答内容と、それに対する再質問を記載する。皆様方か
らも、県が、食品製造業振興ビジョンに基づき、新食品創出活動の活性
化に真剣に取り組むよう、県に対して、積極的な助言等をしていただけ
れば幸いである。

           県民ホットラインへの投稿(2018.11.2)

長野県食品製造業振興ビジョンの進捗状況について(再質問)
〜「『食』と『健康』ラボ」と「『発酵・長寿』県宣言」の進捗状況に
焦点を絞って〜

【はじめに】
〇長野県食品製造業振興ビジョン(以下、「食品ビジョン」という。)
が提示する新食品創出への取組みの在り方について、真に理解して事業
に取り組んでいるとは思えない点や、各質問項目の主旨を的確に把握し
真剣かつ正確に回答しようとしているとは考えられない点等が多々ある
ことから、同ビジョンの策定に深く関与した者として、再質問によって、
それらを指摘せざるをえないと判断した次第である。

〇各質問項目・内容を勝手にアレンジして回答するようなことは止めて、
各質問項目毎に、それぞれきっちり回答していただきたい。

【質問1:重点プログラム「『食』と『健康』ラボ等による研究開発・
商品開発等への一貫支援」について】
〇質問1-1
 「(1)国内外の消費者(市場)ニーズの探索・選定」の「国内外の先進
的食品製造業集積地(食品クラスター)との連携による市場ニーズの探
索」においては、どのような国内外の食品クラスターと、どのような連
携(手法等)によって、どのような市場ニーズを探索・選定できている
のか。

[県の回答]
 現在「食のグローバル・マーケティング支援事業(品目別市場戦略の
策定)」により、国内外の消費者ニーズ把握のための効率的かつ効果的
な調査方法及び先進的事例分析よる県内食品製造業の海外展開の強化に
ついて検討しております。

[再質問]
 「食のグローバル・マーケティング支援事業(品目別市場戦略の策定)」
は、委託業務仕様書に記載の通り、長野県の出荷額の高い既存食品の内
外の市場ニーズの把握や、その輸出拡大戦略の策定等を目指す委託事業
である。長野県の食品製造業が、これから新たに研究開発すべき新商品
の顕在的・潜在的市場ニーズをグローバルに探索・選定することを目的
とするものではない。質問に対する回答になっていない。
@国内外の先進的な食品クラスターとの連携によって、新食品への顕在
的・潜在的市場ニーズをどのように探索・選定していくのか、質問の主
旨を真正面から捉え、明確に分かりやすく回答願いたい。
A連携対象の内外の食品クラスターの候補はどこか。候補としたクラス
ターの選定理由となる先進性、優位性等は何か。
B今後の探索・選定活動のスケジュール等についても説明願いたい。

〇質問1-2
 「(2)産学官連携による食品研究開発 〇新食品の研究開発」の「食と
健康長寿の関連性の探求と食品機能性エビデンスの取得」において、
@どのような食品とどのような健康状態との関連性を探求しているのか。
Aどのような食品機能性エビデンスの取得に取り組んでいるのか。
B新たに明らかになった健康長寿に資する食品機能性エビデンスには、
どのようなものがあるのか。

[県の回答]
 味噌、蕎麦、甘酒、野沢菜等の機能性エビデンスの取得に向け、各種
評価系を用いた機能性の検証や細胞・生化学レベルの評価、マウスなど
を用いた動物実験等を行い、免疫調節作用や腸内フローラの解析、抗高
脂血症作用等についての研究を委託により実施しております。

[再質問]
@味噌から野沢菜等まで、多くの食品の機能性エビデンス取得のための
研究を委託で実施しているとのことであるが、例えば、野沢菜の健康長
寿に対するどのような機能性・効能等(野沢菜の摂取と、ある特定の健
康状態の維持・向上との関連性等)について研究委託しているのか。委
託先はどこか。
A例えば、野沢菜のどのような機能性の確認に取り組んでいるのか。野
沢菜は、どのような機能性物質(生理活性物質等)を含有しているのか。
どのようにして、その機能性のエビデンスの取得に取り組んでいるのか。
B新たに明らかになった(明らかにしようとしている)、健康長寿に資
する食品機能性エビデンス(どのような食品の、どのような含有物質が、
どのような機能性を発揮するのかなど)には、どのようなものがあるの
か。

〇質問1-3
 「(2)産学官連携による食品研究開発 〇新食品の研究開発」の「先
端的加工技術によって創出可能な特殊性状の新食品」において、
@どのような先端的加工技術の活用に取り組んでいるのか。
Aその先端的加工技術の活用によって、どのような特殊性状や効能等を
有する新食品の開発に取り組んでいるのか。

[県の回答]
 中温中高圧処理技術を活用し、色調が良好で、物性が生に近い食感、
加熱により分解しやすい栄養成分が保持された食品の開発に取り組んで
おります。

[再質問]
@中温中高圧処理技術とは、どのような点で先端的加工技術と言えるの
か。
A色調が良好、生に近い食感、栄養成分の熱分解が少ないことによって
付加価値が高まる新規食品としては、具体的にどのような原料を用いた、
どのような加工食品を想定しているのか。分かりやすい例示をいくつか
お願いしたい。
 特殊性状としては、色調良好、生に近い食感、栄養成分の熱分解が少
ないことの他に、どのような特殊性状が考えられるのか。例えば、誤嚥
防止に資する性状等がイメージできるが、高付加価値化が期待でき、開
発テーマとなる特殊性状について例示願いたい。

〇質問1-4
 「(2)産学官連携による食品研究開発 〇新製造技術の研究開発」の
「高度な安全・安心が確保される食品製造技術」において、
@どのような安全・安心の確保に注目する研究開発に取り組んでいるの
か。
Aその安全・安心を確保するために、どのような技術を、どのように活
用しようと考えているのか。
B新たに開発された(開発に取り組んでいる)食品製造技術・装置等に
は、どのようなものがあるのか。

[県の回答]
 雑菌微生物の抑制効果が高い乳酸菌の選抜及びその利用により、雑菌
微生物を低減化した調味料などの開発、商品化に取り組んでおります。
また、質問1-3先端的加工技術で述べた中温中高圧処理技術は、安全・安
心が確保される食品製造技術としての展開も想定されます。

[再質問]
@どのような高度な安全・安心の確保に注目する研究開発に取り組んで
いるのか。人の健康状態に影響の少ない、既存の発酵食品中の雑菌微生
物の低減化は、高度な安全・安心の確保に相当するとは考えられないが、
いかがか。
 食品製造工程において高度な安全・安心の確保が必要な場合とは、例
えば、どのような食品製造工程の、どのような安全・安心のことなのか。
Aその高度な安全・安心を確保するために、どのような技術を、どのよ
うに活用しようと考えているのか。
Bその高度な安全・安心を確保するために、新たに開発された(開発に
取り組んでいる)食品製造技術・装置等には、どのようなものがあるの
か。

〇質問1-5
 「(2)産学官連携による食品研究開発 〇新製造技術の研究開発」の
「環境負荷低減に資する省エネ型・資源有効活用型の食品製造技術」に
おいて、
@どのような省エネ技術を、どのような食品製造において、どのように
活用しようと考えて研究開発に取り組んでいるのか。
Aどのような資源を、どのように有効活用し、どのような食品を創出し
ようと考えて研究開発に取り組んでいるのか。

[県の回答]
 信州大学アクアイノベーション拠点で取り組んでいる膜処理技術を飲
料分野に活用し、加熱処理せずに、微生物除去などによる保存性向上、
安全性の確保が考えられます。具体的な研究開発は今後検討したいと考
えております。

[再質問]
@膜処理技術については、既に様々な高度技術が開発されている。なぜ、
信州大学の膜処理技術について、特に優れた省エネ技術として注目する
のか。
 食品製造に応用した場合、既存の膜処理技術に対して著しい省エネが
可能となる根拠は何か。
 食品製造業分野において、省エネが特に重要課題となっている食品製
造工程は、加熱による微生物除去の工程ということか。
 信州大学の膜処理技術の新規用途を探索することよりも、省エネが特
に重要課題となっている食品製造工程を探索・特定し、その工程の省エ
ネに効果的な省エネ技術を探索・開発することを目指すべきではないの
か。その方が、長野県の食品製造業の省エネ化に大きく貢献できるので
はないのか。
A資源有効活用の視点から、どのような資源を、どのように活用し、ど
のような新食品を創出しようと考えて研究開発に取り組んでいるのか。

【質問2:重点プログラム「『発酵・長寿』県宣言等によるブランド化の
 基盤づくり」について】
〇質問2-1
 「発酵・長寿」県宣言は、いつ、どのように実施されるのか。

[県の回答]
 平均寿命が全国でトップクラスの本県で生産される発酵食品等の「か
らだに優しい食品」や発酵食文化、発酵技術等を広く県内外に発信でき
よう、「『発酵・長寿』県宣言」の内容や時期、効果的な場面、方法を
現在検討中でございます。

[再質問]
 「『発酵・長寿』県宣言」については、食品ビジョンP19に記載され
た趣旨・内容での実施をするということで良いのか。その点のみ確認し
たい。回答願いたい。

〇質問2-2
 P19の〈「発酵・長寿」県宣言の実施〉には、「・・・本県の食品製
造業振興に係る活動に参画する産学官の代表者による、『からだに優し
い食品』の創出と情報発信を先導する旨の決意表明としての『発酵・長
寿』県宣言を実施し・・・」と記載されている。すなわち、同宣言につ
いては、長野県の伝統的食品である発酵食品の単なるPRイベント的なも
のとしてではなく、科学的根拠に裏打ちされた、からだに優しい新規発
酵食品の創出活動の活性化等までを含む、食品製造業振興のための新た
な戦略的役割をも担うものとして位置づけられている。
 このような食品ビジョンに提示された趣旨・内容での「発酵・長寿」
県宣言を実施していただけるのか、改めて確認したい。いかがか。

[県の回答]
 「『発酵・長寿』県宣言」は、「からだに優しい食品」の創出と情報
発信を先導する旨の決意表明として行うものであり、今年8月に産学官
連携により設置した「『食』と『健康』ラボ」による機能性食品等の研
究開発や大学等で行う機能性エビデンスの確立など開発力とブランド力
の向上を合わせて目指す取り組みでございます。

[再質問]
 食品ビジョンP19に提示された趣旨・内容での「『発酵・長寿』県宣
言」を実施していただけるのか。そのことに絞って明確に回答願いたい。

〇質問2-3
 長野県の味噌・醤油、酒等に係る発酵技術は、全国共通の技術であっ
て、長野県に特異的に蓄積されてきたものでなく、そのままでは、長野
県の食品産業に国際的な優位性や独創性を与える基盤的技術とはなりえ
ない。
 したがって、発酵技術にのみ焦点を当てた「発酵・長寿」県宣言で、
長野県の食品産業の振興戦略に優位性を確保できるのか、長野県の強み
とする他の工業技術も含めて、食品産業の振興に資する政策的宣言をす
べきではないのか、という非常に重要な検討課題が残されたままになっ
ている。この点について、どのように認識し、どのように対応するのか。

[県の回答]
 「『発酵・長寿』県宣言」は、単に発酵技術のみに焦点を当てたもの
ではなく、県内食品製造業・業界のブランディング活動の活性化のため
の基盤づくりとして、今月開催する「全国発酵食品サミット」や今後整
備を進めるエビデンスライブラリーの活用、機能性表示や地理的表示等
の各種認定制度の活用支援など、総合的な取組を実施することとしてお
ります。

[再質問]
 回答の意味が良く理解できない。「『発酵・長寿』県宣言」が、総合
的な取組を実施するとは、どういうことか。
 食品技術以外の工業技術の食品分野への活用による、本県の食品製造
業の優位性の確保については、取り組んでいただけるのか。それも含め
た「『発酵・長寿』県宣言」にしていただけるのか。

〇質問2-4
 他県等に先駆けて優位性のある、「発酵・長寿」県宣言を実施しよう
とするのであれば、その宣言の内容を、科学的根拠の乏しい単なるイメ
ージ戦略的な内容ではなく、本県の食品産業が他県等の食品産業に対し
て優位性を有することに資する、科学的根拠に基づく食品産業振興戦略
に相当する内容にすべきであると考えるが、いかがか。

[県の回答]
 「『発酵・長寿』県宣言」は、「からだに優しい食品」の創出と情報
発信を先導する旨の決意表明であり、今後進めていく長寿に寄与する科
学的根拠の確立や新商品開発等のビジョン推進のための旗印としての位
置づけと考えております。体系・構成については、県のビジョンに基づ
き行う予定でございます。

[再質問]
 特に質問なし。食品ビジョンP19に提示された趣旨・内容での「『発酵・
長寿』県宣言」を是非実施していただきたい。

〇質問2-5
 科学的根拠に基づく食品産業振興戦略に相当する内容の「発酵・長寿」
県宣言の体系・構成としては、以下の様なものを想定できるが、現時点
では、どのような体系・構成を考えているのか。

@宣言の実施者
A宣言の趣旨
B宣言に基づき具現化を目指す食品産業の姿
C目指すべき食品産業の姿を具現化するための産学官の連携活動方針

[県の回答]
 「『発酵・長寿』県宣言」は、「からだに優しい食品」の創出と情報
発信を先導する旨の決意表明であり、今後進めていく長寿に寄与する科
学的根拠の確立や新商品開発等のビジョン推進のための旗印としての位
置づけと考えております。体系・構成については、県のビジョンに基づ
き行う予定でございます。

[再質問]  特に質問なし。食品ビジョンP19に提示された趣旨・内容での
「『発酵・長寿』県宣言」を是非実施していただきたい。

〇質問2-6
 「(2)本質的な価値(エビデンス、ストーリー展開など)を活用したブ
ランディング活動」の「『食』と『健康』ラボにより確保されたエビデ
ンスの活用」において、
@どのようなエビデンスが確保されているのか。あるいは、確保しよう
としているのか。
Aそのエビデンスをどのような食品に、どのように活用しようとしてい
るのか。

[県の回答]
 回答1-2の繰り返しになりますが、県内加工食品の機能性エビデンスの
取得に向け、各種評価系を用いた機能性の検証や細胞・生化学レベルの
評価、マウスなどを用いた動物実験等を行い、免疫調節作用や腸内フロ
ーラの解析、抗高脂血症作用等についての研究を委託により実施してお
ります。そこで得た機能性エビデンスや文献や新規研究のデータ等を整
理した「エビデンスライブラリー」を構築し、機能性表示食品の開発促
進及び消費者に対する認知度の向上を図ることを検討しております。

[再質問]
@どのようなエビデンス(どのような食品の、どのような含有物質が、
どのような生理活性を発揮するのかなど)が確保されているのか。ある
いは、確保しようとしているのか。
Aそのエビデンスをどのような食品に、どのように活用しようとしてい
るのか。

〇質問2-7
 「(2)本質的な価値(エビデンス、ストーリー展開など)を活用したブ
ランディング活動」の「食品機能性エビデンスライブラリー(長寿食の
エビデンス)の産学官連携による整備」において、
@食品機能性エビデンスライブラリー(長寿食のエビデンス)とは、ど
のようなものか。具体的にイメージできるように説明願いたい。
Aその整備状況はどうなっているのか。いつ頃から企業等が利用できる
のか。
B企業等の利用目的・用途としては、具体的にどのような事を想定して
いるのか。

[県の回答]
 回答1-2の繰り返しになりますが、県内加工食品の機能性エビデンスの
取得に向け、各種評価系を用いた機能性の検証や細胞・生化学レベルの
評価、マウスなどを用いた動物実験等を行い、免疫調節作用や腸内フロ
ーラの解析、抗高脂血症作用等についての研究を委託により実施してお
ります。そこで得た機能性エビデンスや文献や新規研究のデータ等を整
理した「エビデンスライブラリー」を構築し、機能性表示食品の開発促
進及び消費者に対する認知度の向上を図ることを検討しております。

[再質問]
@食品機能性エビデンスライブラリー(長寿食のエビデンス)とは、ど
のようなものか。県内の農産物や、その加工食品等の機能性に関するデ
ータ・資料等を「図書館」のように整理しておき、企業等の閲覧に供す
るというような形式か。あるいは、それをデジタル化しインターネット
で閲覧できるようにする形式か。具体的にイメージできるように説明願
いたい。
Aその整備状況はどうなっているのか。いつ頃から企業等が利用できる
のか。
B企業等の利用目的・用途としては、具体的にどのような事を想定して
いるのか。

〇質問2-8
 「(2)本質的な価値(エビデンス、ストーリー展開など)を活用した
ブランディング活動」の「県産農林水産物が含有する未知の機能性成分
の探索・評価」において、
@どのような農林水産物の、どのような機能性成分の探索・評価に取り
組んでいるのか。
A新規機能性食品の開発に応用できるような評価がなされた機能性成分
はあるのか。それは、どのような機能性成分か。実際に新食品に応用さ
れた事例はあるのか。

[県の回答]
 機能性成分の探索・評価等は、「『食』と『健康』ラボ」による研究
を進めているところでございます。

[再質問]
@「『食』と『健康』ラボ」による研究を進めているところとのことで
あるが、研究の進捗状況はどうなっているのか。
 対象とする農林水産物は何か。そのどのような機能性成分に注目して
いるのか。どのような機能性成分探索手法を用いているのか。
A「『食』と『健康』ラボ」による研究を進めているところとのことで
あるが、評価に取り組んでいる機能性成分はどのような物質か。どのよ
うな評価手法を用いているのか。

〇質問2-9
 「(2)本質的な価値(エビデンス、ストーリー展開など)を活用した
ブランディング活動」の「機能性表示制度の活用のための産学官連携に
よる効能評価・ヒト介入試験等」において、
@どのような効能評価・ヒト介入試験等が実施されているのか。
A実際に機能性表示制度の活用に結びついた成果は出ているのか。それ
はどのような食品に関する、どのような成果か。

[県の回答]
 機能性成分の探索・評価等は、「『食』と『健康』ラボ」による研究
を進めているところでございます。

[再質問]
@研究を進めているところとのことであるが、どのような食品や物質に
ついて、どのような効能評価・ヒト介入試験等に取り組んでいるのか。
A研究を進めているところとのことであるが、実際に機能性表示制度の
活用に結びつきそうな成果を得ることに期待できそうか。それはどのよ
うな食品や物質に関する、どのような成果か。

〇質問2-10
 「(2)本質的な価値(エビデンス、ストーリー展開など)を活用した
ブランディング活動」の「成分分析・官能評価等に基づく地理的特徴の
解析等による地理的表示の活用」において、
@どのような食品について地理的特徴の解析等に取り組んでいるのか。
A地理的表示の活用に結びつく、地理的特徴が明らかになったような成
果が出ているのか。それは、どのような食品に関する、どのような地理
的特徴なのか。

[県の回答]
 機能性成分の探索・評価等は、「『食』と『健康』ラボ」による研究
を進めているところでございます。

[再質問]
@研究を進めているところとのことであるが、どのような食品について、
どのような地理的特徴の解析等に取り組んでいるのか。
 地理的特徴とは、どのようなことか。地理的特徴の解析とは、どのよ
うに行うのか。分かりやすく説明願いたい。
A研究を進めているところとのことであるが、地理的表示の活用に結び
つくような研究成果を期待できそうか。それは、どのような食品に関す
る、どのような地理的特徴なのか。

【むすびに】
〇回答については、形式的にも実質的にも、県組織として、自信の持て
るレベルのものとしていただくようお願いしたい。


ニュースレター 号外15(2018年10月27日送信)

長野県ものづくり産業振興戦略プランの的確な推進について〜起業・スタートアップ支援機能とオープンイノベーション機能を有するイノベーションハブ(仮称)の整備の進捗状況について〜

〇今回は、号外14(10.25送信)でお示しした、長野県の地域産業政策
に係る6つの「先送りされた検討課題」の1つ「長野県ものづくり産業
振興戦略プランの的確な推進B=起業・スタートアップ支援機能とオ
ープンイノベーション機能を有するイノベーションハブ(仮称)の整
備」を取り上げたい。

〇長野県ものづくり産業振興戦略プラン(以下、「ものプラン」とい
う。)に提示された9つの「産業イノベーション創出活動促進のための
重点施策」の中の「起業・スタートアップ支援〜日本一創業しやすい
県づくりの推進〜」の新規重点事業である「『イノベーションハブ
(仮称)』の整備による新たなビジネスの創出支援」については、他
県等に比して非常に低い本県の開業率(3.6%。全国平均5.6%。全国
第39位)を2022年度には6.4%に引き上げるための「切り札」として
位置づけられている。

〇しかし、その肝心のイノベーションハブの整備スケジュールについ
ては、ものプランに以下のように提示されており、ものプランの期間
中(2018年度〜2022年度)での早期の本格稼働は期待しにくい状況に
あるのである。開業率6.4%の達成は本当に大丈夫なのだろうか。
 2018年度 機能・体制検討
 2019年度 設計・施設整備
 2020年度〜2022年度 設置

〇2019年度予算編成作業が既に始まっている現状においては、必要な
予算計上のため、イノベーションハブに整備すべき支援機能や必要な
人的体制等について、かなり煮詰まってきているのではないのかと推
測できる。
しかし、その状況が外部に全く見えてこないため、以下の通り、県
が描く「日本一創業しやすい県」の具体像に係る疑問点も含めて、イ
ノベーションハブの効果的整備に資することを目的として、県民ホッ
トラインで確認させていただくことにした次第である。

〇関係の産学官の皆様方には、県に対して、イノベーションハブの整
備が、県が従来からアピールし続けている「日本一創業しやすい県づ
くり」に相応しく、他県等のイノベーションハブに比して優位性のあ
る形で具現化されることに資する提言等を積極的に実施していただく
ことをお願いしたい。

県民ホットラインへの投稿(2018.10.27)

 長野県ものづくり産業振興戦略プランの的確な推進について
〜起業・スタートアップ支援機能とオープンイノベーション機能を
有するイノベーションハブ(仮称)の整備の進捗状況について〜

【はじめに】
〇長野県ものづくり産業振興戦略プラン(以下、「ものプラン」とい
う。)に提示された9つの「産業イノベーション創出活動促進のため
の重点施策」の中の「起業・スタートアップ支援〜日本一創業しやす
い県づくりの推進〜」の新規重点事業である「『イノベーションハブ
(仮称)』の整備による新たなビジネスの創出支援」については、他
県等に比して非常に低い本県の開業率(3.6%。全国平均5.6%。全国
第39位)を2022年度には6.4%に引き上げるための「切り札」として
位置づけられている。

〇イノベーションハブの整備スケジュールについては、ものプランに
以下のように提示されており、2019年度予算編成作業が既に始まって
いる現状においては、必要な予算計上のため、イノベーションハブに
整備すべき支援機能や必要な人的体制等について、かなり煮詰まって
きているのではないのかと推測できる。
しかし、その状況が外部に全く見えてこないため、以下の通り、県
が描く「日本一創業しやすい県」の具体像に係る疑問点も含めて、イ
ノベーションハブの効果的整備に資することを目的として、県民ホッ
トラインで確認させていただくことにした次第である。
[イノベーションハブ整備スケジュール]
 2018年度 機能・体制検討
  2019年度 設計・施設整備
   2020年度〜2022年度 設置

【質問1:「日本一創業しやすい県」づくりについて】
 長野県が実現を目指す「日本一創業しやすい県」とは、どのような
県なのか。県が、その具体像を提示し、関係の産学官の間でのコンセ
ンサスを得た上で、産学官連携によって、その具現化に取り組むこと
が必要となる。
 その具体像が、長野県の創業促進戦略の基本的体系・構成となる、
ビジョン・シナリオ・プログラムの中のビジョン(目指す姿)に位置
づけられるのである。そして、そのビジョン(目指す姿)の設定がで
きて初めて、そのビジョン実現への道筋(シナリオ)と、そのシナリ
オの着実かつ効果的な推進のために必要な各種施策(プログラム)に
ついて議論できるようになるのである。そこで、以下についてお尋ね
したい。

@長野県として、「日本一創業しやすい県」とは、どのような県をイ
メージしているのか。長野県として実現を目指す具体像について、で
きるだけ分かりやすく説明願いたい。

A長野県を「日本一創業しやすい県」にするためには、ものプランに
記載されているベンチャー・エコシステムが、日本一創業に効果のあ
るものとすることが必要と考えるがいかがか。

B長野県が実現を目指す「日本一創業しやすい県」の具体像について、
関係の産学官の間でコンセンサスを得ておくことが、関係の産学官連
携による創業促進施策(ベンチャー・エコシステムを構成する各種施
策)の効果的な企画・実施化には不可欠と考えるが、いかがか。

C長野県のベンチャー・エコシステムを、日本一創業に効果のあるも
の、すなわち、他県等に比して優位性・独創性等を有するものとする
ためには、どのような施策の企画・実施化に最も力を入れるべきと考
えているのか。イノベーションハブに整備すべき支援機能と関連づけ
て説明願いたい。

D長野県が実現を目指す「日本一創業しやすい県」の具体像について、
創業促進施策の企画・実施化の上で、関係の産学官の間でコンセンサ
スを得ておくことが必要と考える場合には、どのような手法・段取り
等によって、その具体像を描き、その具体像についての関係者間での
コンセンサスを得ていくべきと考えるのか。

【質問2:「イノベーションハブ(仮称)」の整備について】
 イノベーションハブについては、既に他県等でも整備されている。
したがって、「日本一創業しやすい県」とするためには、他県等のイ
ノベーションハブに対して、支援機能等における優位性・独創性等を
有するものとする必要がある。そこで、以下についてお尋ねしたい。

@ものプランに提示されているイノベーションハブ整備スケジュール
における、「機能・体制検討」の進捗状況はどうなっているのか。
 その検討作業は、どのような体制(責任者あるいはリーダー、事務
局、メンバー等)で検討されているのか。その検討に関する実施要領
のようなものがあれば公開願いたい。

A整備すべきイノベーションハブの機能・体制の検討作業においては、
イノベーションハブの経営(運営)主体、設置場所、支援機能、実施
事業、人的体制、予算措置等について、現時点で、どのような方向付
けがなされているのか。できるだけ具体的に説明願いたい。

Bそのイノベーションハブの支援機能の中に、他県等のイノベーショ
ンハブに対する、どのような優位性・独創性(長野県ならではの支援
機能)等を確保しようと考えているのか。できるだけ具体的に説明願
いたい。

Cものプランの中に位置づけられたイノベーションハブであることか
ら、当然、ものづくり産業分野での創業活性化を目指す支援機能の整
備に力を入れることになる。ものづくり産業の特性等を踏まえて、特
に整備・強化すべき支援機能としては、どのようなものを考えている
のか。

Dものづくり産業分野を対象とする、内外の先進的なイノベーション
ハブの調査は実施したのか。調査を実施している場合には、調査によ
って、長野県のイノベーションハブが、特に重点的に整備すべき支援
機能として、どのようなものを見出しているのか。

E「高い付加価値の創出につながるイノベーティブな創業・起業」の
促進が必要としているが、ものづくり産業分野における、そのような
創業・起業を活性化するためには、イノベーションハブには、特に、
どのような支援機能を整備すべきと考えているのか。

Fイノベーションハブの支援機能については、ものプランに多くの支
援機能を提示しているが、イノベーションハブ自体が整備すべき支援
機能と、他の支援機関の支援機能の活用で対応する支援機能とについ
て、どのような整理をしているのか。

Gイノベーションハブ自体が整備すべき支援機能の中で、特に、もの
づくり産業分野でのイノベーティブな創業・起業の活性化に資する支
援機能としては、どのようなものを考えているのか。

H「ながの創業サポートオフィス」、「信州創業応援プラットフォー
ム」、「ものプランに基づき整備されるワンストップ・ハンズオン型
の支援体制」とイノベーションハブとは、支援機能について、どのよ
うな棲み分けや役割分担を考えているのか。できるだけ分かりやすく
説明願いたい。

I今回、検討途中であることなどの理由で、十分な回答を頂けなかっ
た事項については、後日、改めてお尋ねすることにしたいが、イノベ
ーションハブの機能・体制等の検討結果は、何らかの形で公開される
のか。あるいは、要望すれば情報提供していただけるのか。

【むすびに】
〇質問に的確に答えられない場合、すなわち、イノベーションハブが
整備すべき支援機能や人的体制等についての検討が未だに十分にでき
ていない場合等にあっては、検討を遅らせている解決困難な問題点等
について、できるだけ具体的に説明していただきたい。
 その問題等の解決方策について調査研究してみようと考えている。


ニュースレター 号外14(2018年10月25日送信)

長野県食品製造業振興ビジョンの進捗状況について〜「『食』と『健康』ラボ」と「『発酵・長寿』県宣言」に焦点を絞って〜

〇ニュースレターNo.127(2018.6.23送信)の「長野県の地域産業
政策の優位性ある具現化のために解決すべき諸課題について〜『先送
りされた検討課題』の解決への産学官による提言等の活発化のために
〜」において、以下のような、長野県が速やかに取り組むべき地域産
業政策に係る6つの「先送りされた検討課題」を提示した。
@課題1
  長野県ものづくり産業振興戦略プランの的確な推進@=同プランの推
進体制の整備
A課題2
 長野県ものづくり産業振興戦略プランの的確な推進A=本県が目指
すべき理想的なものづくり産業支援体制の全体像の提示とその具現化
B課題3
 長野県ものづくり産業振興戦略プランの的確な推進B=起業・スタ
ートアップ支援機能とオープンイノベーション機能を有するイノベー
ションハブ(仮称)の整備
C課題4
 長野県AI・IoT利活用戦略の策定=戦略策定の技術的困難性の克服
D課題5
 長野県航空機産業振興ビジョン〜アジアの航空機システムの拠点づ
くり〜の具現化への的確な取組み=航空機産業クラスターの中核的推
進機関の機能強化と自立化
E課題6
 長野県食品製造業振興ビジョンの的確な推進=科学的エビデンスに
基づく優位性ある新食品創出システムの形成

〇課題1、2、4については、既に、その進捗状況等に関して県民ホット
ラインを活用して確認し、皆様に県の回答等をお知らせしているとこ
ろである。

〇今回は、長野県食品製造業振興ビジョンに基づく県の活動が、既存
食品の内外への販路開拓促進を目的とすることに偏り過ぎ、産学官連
携による科学的エビデンスに基づく優位性ある新食品の創出を目的と
する活動が不活発に見えることを問題としたい。
 そもそも、同ビジョンが実現を目指す姿は、「長寿県NAGANOの『か
らだに優しい食品』の創出・提供を核として、国内外の食市場で優位
性を確保する食品製造業の実現」として提示されている。すなわち、
「新食品の創出」なくして同ビジョンが目指す姿の実現はあり得ない
のである。

〇そこで、同ビジョンに新食品創出活動活性化のための重点プログラム
として位置づけられている、「『食』と『健康』ラボ」と「『発酵・
長寿』県宣言」について、同ビジョンの策定趣旨を含む体系・構成等
の根幹にかかわる部分の決定に深く関与した者として、同ビジョンが
策定趣旨に沿った形で的確に実施化されることに資することを目的と
して、その進捗状況等について、以下の通り、県民ホットラインで確
認させていただくことにした次第である。

〇県の回答を受け取り次第、その内容と私のコメントについて、速や
かにお知らせする予定である。
 関係の産学官の皆様方には、同ビジョンに提示された「目指す姿」
実現のためのシナリオ・プログラムの的確な推進に、積極的なご支援・
ご協力をいただければ幸いである。

            県民ホットラインへの投稿(2018.10.25)

【はじめに】
〇食品製造業振興ビジョン(以下、「食品ビジョン」という。)に基
づく現状の県の取組みについては、既存食品の内外への販路開拓促進
のための取組みについて力を入れていることは、県のホームページ等
での情報発信(直近では、「食のグローバル・マーケティング支援事
業(品目別市場戦略策定委託事業)」など)から良く理解できる。
 しかし、今日に至っても、産学官連携による、科学的エビデンスに
基づく優位性ある新食品の創出活動の活性化のための取組みがどのよ
うに進められているのかが全く見えてこないことから、食品ビジョン
の策定趣旨を含む体系・構成等の根幹にかかわる部分の決定に深く関
与した者として、同ビジョンが策定趣旨に沿った形で的確に実施化さ
れることに資することを目的として、以下の点について質問させてい
ただくことにした次第である。

【質問1:重点プログラム「『食』と『健康』ラボ等による研究開発・
商品開発等への一貫支援」について】

〇質問1-1
 「(1)国内外の消費者(市場)ニーズの探索・選定」の「国内外の
先進的食品製造業集積地(食品クラスター)との連携による市場ニー
ズの探索」においては、どのような国内外の食品クラスターと、どの
ような連携(手法等)によって、どのような市場ニーズを探索・選定
できているのか。

〇質問1-2
 「(2)産学官連携による食品研究開発 〇新食品の研究開発」の「食
と健康長寿の関連性の探求と食品機能性エビデンスの取得」において、
@どのような食品とどのような健康状態との関連性を探求しているのか。
Aどのような食品機能性エビデンスの取得に取り組んでいるのか。
B新たに明らかになった健康長寿に資する食品機能性エビデンスには、
どのようなものがあるのか。

〇質問1-3
 「(2)産学官連携による食品研究開発 〇新食品の研究開発」の「先
端的加工技術によって創出可能な特殊性状の新食品」において、
@どのような先端的加工技術の活用に取り組んでいるのか。
Aその先端的加工技術の活用によって、どのような特殊性状や効能等
を有する新食品の開発に取り組んでいるのか。

〇質問1-4
 「(2)産学官連携による食品研究開発 〇新製造技術の研究開発」の
「高度な安全・安心が確保される食品製造技術」において、
@どのような安全・安心の確保に注目する研究開発に取り組んでいる
のか。
Aその安全・安心を確保するために、どのような技術を、どのように
活用しようと考えているのか。
B新たに開発された(開発に取り組んでいる)食品製造技術・装置等
には、どのようなものがあるのか。

〇質問1-5
 「(2)産学官連携による食品研究開発 〇新製造技術の研究開発」
の「環境負荷低減に資する省エネ型・資源有効活用型の食品製造技術」
において、
@どのような省エネ技術を、どのような食品製造において、どのよう
に活用しようと考えて研究開発に取り組んでいるのか。
Aどのような資源を、どのように有効活用し、どのような食品を創出
しようと考えて研究開発に取り組んでいるのか。

【質問2:重点プログラム「『発酵・長寿』県宣言等によるブランド化
の基盤づくり」について】

〇質問2-1
 「発酵・長寿」県宣言は、いつ、どのように実施されるのか。

〇質問2-2
 P19の〈「発酵・長寿」県宣言の実施〉には、「・・・本県の食品製
造業振興に係る活動に参画する産学官の代表者による、『からだに優
しい食品』の創出と情報発信を先導する旨の決意表明としての『発酵・
長寿』県宣言を実施し・・・」と記載されている。すなわち、同宣言
については、長野県の伝統的食品である発酵食品の単なるPRイベント
的なものとしてではなく、科学的根拠に裏打ちされた、からだに優し
い新規発酵食品の創出活動の活性化等までを含む、食品製造業振興の
ための新たな戦略的役割をも担うものとして位置づけられている。
 このような食品ビジョンに提示された趣旨・内容での「発酵・長寿」
県宣言を実施していただけるのか、改めて確認したい。いかがか。

〇質問2-3
 長野県の味噌・醤油、酒等に係る発酵技術は、全国共通の技術であ
って、長野県に特異的に蓄積されてきたものでなく、そのままでは、
長野県の食品産業に国際的な優位性や独創性を与える基盤的技術とは
なりえない。
 したがって、発酵技術にのみ焦点を当てた「発酵・長寿」県宣言で、
長野県の食品産業の振興戦略に優位性を確保できるのか、長野県の強
みとする他の工業技術も含めて、食品産業の振興に資する政策的宣言
をすべきではないのか、という非常に重要な検討課題が残されたまま
になっている。この点について、どのように認識し、どのように対応
するのか。

〇質問2-4
 他県等に先駆けて優位性のある、「発酵・長寿」県宣言を実施しよ
うとするのであれば、その宣言の内容を、科学的根拠の乏しい単なる
イメージ戦略的な内容ではなく、本県の食品産業が他県等の食品産業
に対して優位性を有することに資する、科学的根拠に基づく食品産業
振興戦略に相当する内容にすべきであると考えるが、いかがか。

〇質問2-5
 科学的根拠に基づく食品産業振興戦略に相当する内容の「発酵・長
寿」県宣言の体系・構成としては、以下の様なものを想定できるが、
現時点では、どのような体系・構成を考えているのか。
@宣言の実施者
A宣言の趣旨
B宣言に基づき具現化を目指す食品産業の姿
C目指すべき食品産業の姿を具現化するための産学官の連携活動方針

〇質問2-6
 「(2)本質的な価値(エビデンス、ストーリー展開など)を活用し
たブランディング活動」の「『食』と『健康』ラボにより確保された
エビデンスの活用」において、
@どのようなエビデンスが確保されているのか。あるいは、確保しよ
うとしているのか。
Aそのエビデンスをどのような食品に、どのように活用しようとして
いるのか。

〇質問2-7
 「(2)本質的な価値(エビデンス、ストーリー展開など)を活用し
たブランディング活動」の「食品機能性エビデンスライブラリー
(長寿食のエビデンス)の産学官連携による整備」において、
@食品機能性エビデンスライブラリー(長寿食のエビデンス)とは、
どのようなものか。具体的にイメージできるように説明願いたい。
Aその整備状況はどうなっているのか。いつ頃から企業等が利用でき
るのか。
B企業等の利用目的・用途としては、具体的にどのような事を想定し
ているのか。

〇質問2-8
 「(2)本質的な価値(エビデンス、ストーリー展開など)を活用し
たブランディング活動」の「県産農林水産物が含有する未知の機能性
成分の探索・評価」において、
@どのような農林水産物の、どのような機能性成分の探索・評価に取
り組んでいるのか。
A新規機能性食品の開発に応用できるような評価がなされた機能性成
分はあるのか。それは、どのような機能性成分か。実際に新食品に応
用された事例はあるのか。

〇質問2-9
 「(2)本質的な価値(エビデンス、ストーリー展開など)を活用し
たブランディング活動」の「機能性表示制度の活用のための産学官連
携による効能評価・ヒト介入試験等」において、
@どのような効能評価・ヒト介入試験等が実施されているのか。
A実際に機能性表示制度の活用に結びついた成果は出ているのか。そ
れはどのような食品に関する、どのような成果か。

〇質問2-10
 「(2)本質的な価値(エビデンス、ストーリー展開など)を活用し
たブランディング活動」の「成分分析・官能評価等に基づく地理的特
徴の解析等による地理的表示の活用」において、
@どのような食品について地理的特徴の解析等に取り組んでいるのか。
A地理的表示の活用に結びつく、地理的特徴が明らかになったような
成果が出ているのか。それは、どのような食品に関する、どのような
地理的特徴なのか。

【むすびに】
〇各質問に十分に答えられない場合、すなわち、関連事業が当初想定
していたようには企画・実施化できていないような場合等にあっては、
その原因となっている課題等について、できるだけ具体的に説明して
いただきたい。
 その課題等の解決方策について調査研究してみようと考えている。


ニュースレター 号外13(2018年10月10日送信)

長野県ならではの「IoT利活用戦略」の策定・実施化について〜県の回答とそれに対するコメントについて〜

 平成30年2月県議会の知事議案説明で、知事は「・・・製造業はも
とより農林業、建設業、介護・福祉産業等の幅広い分野におけるAI、
IoTの利活用を促進するため、有識者の知見を得て利活用戦略を策定
する・・・」と述べられた。
 この利活用戦略(以下、「IoT利活用戦略」という。)が、優位性
のある長野県ならではのものとして策定・実施化されることに少しで
も貢献することを目的として、10月1日に、県民ホットラインにいく
つかの質問を投稿した。その内容については、同日付の「号外11」
で皆様方にお知らせした通りである。

 その質問について、10月9日に県からの回答メールを受け取ったの
で、その回答と、それについての私のコメントを併せてお送りしたい。

 県の回答からは、IoT利活用による産業振興のための効果的な支援
施策の企画・実施化の「バイブル」とも言える「IoT利活用戦略」の
果たす役割の重要性への認識が不十分であることが推測できる。例え
ば、県においては、「IoT利活用戦略」の策定がなされていないにも
かかわらず、思いつくままにアットランダムに、IoT利活用による産
業振興施策の企画・実施化を先行させているのである。

 皆様方には、「IoT利活用戦略」の策定やその具現化への取組みの
在り方等に関して、県に対する積極的なご助言等を引き続きよろしく
お願いしたい。

【県からの回答の前文】
 長野県産業政策監兼産業労働部長の内田雅啓、企画振興部長の小岩
正貴と申します。10月1日に「県民ホットライン」へお寄せいただい
た『長野県ならではのIoT利活用戦略の策定・実施化』に関するご質問・
ご提案について順次お答えいたします。なお、本回答にあたっては、
当県が策定を予定しているAI・IoTの利活用に係る戦略を「AI・IoT利
活用戦略(仮)」と表現させていただきますことをご了承ください。

【質問1:「IoT利活用戦略」策定作業の進捗状況等について】
@「IoT利活用戦略」に位置づけられる新規事業に要する経費を、来
年度当初予算に計上するためには、それが可能となるスケジュールで
同戦略を策定しなければならないことになるが、現時点での策定作業
の進捗状況はどうなっているのか。
【県の回答】
 年度内の策定を目途に、庁内関係部局とともに、課題の明確化、そ
の解決に向けた取組の検討等を進めております。また、速やかに取り
組む必要性の認識が共有されたものについては、「AI・IoT利活用戦略
(仮)」の策定を待たず、同時並行で予算化、事業化を検討してまい
りたいと考えております。
【コメント】
 この回答から、県組織においては、産業振興のための戦略策定の意
義についての認識が極めて低いことがうかがえる。地域間競争と言え
る地域産業振興を戦争に例えて言うならば、戦争に勝つためには、敵
より優れた作戦を立てることが極めて重要となるということについて
の基本的認識が極めて低いということである。
 「AI・IoT利活用戦略(仮)」は、AI・IoTの利活用によって、どの
ような本県の姿の実現を目指すのか(ビジョン)、その実現のために、
どのような道筋(政策的仕掛け等)を設定するのか(シナリオ)、そ
の道筋の着実な推進のために必要な各種施策をどう策定するのか(プ
ログラム)、という、ビジョン・シナリオ・プログラムからなる体系・
構成の、AI・IoT利活用の活性化に資する施策の論理的策定・実施化の
「バイブル」とも言えるものである。その「バイブル」の策定無しに、
その時々に思いつくままに、事業をアットランダムに予算化、事業化
している姿勢については、とても戦略的かつ効果的な予算執行に努め
ているとは言えないだろう。海図無しで大海原への航海に出発してい
る状況とも言えるだろう。

A幅広い産業分野の人々が、「これは分かりやすい、役に立つ。」と
高く評価するような「IoT利活用戦略」を策定するためには、幅広い
産業分野の人々の意見・要望等を聴くことができる様々な機会を設け
ることが必要と考えるが、現時点でどのような機会を設けようと考え
ているのか。あるいは、既に、どのような機会を設け、どのような意
見・要望等を得て来ているのか。
【県の回答】
 県内産業団体やITベンダーの方々との個別の意見交換、県内企業数
百社規模へのアンケート調査等を通じ、現場のご意見等を踏まえた検
討を進めているところです。今後、必要に応じて、外部有識者等の意
見も伺いながら、一層の反映を図ってまいります。
 なお、現在、県内企業からは、情報不足、社内人材の不足等の課題
を頂戴しておりますが、とりまとめ作業中であることから、詳細につ
きましては、この場ではお答えを控えさせていただきます。
【コメント】
 県内企業へのアンケート調査によって、県内企業のAI、IoT利活用へ
の具体的ニーズを探るだけでなく、そのニーズに応える「AI・IoT利活
用戦略(仮)」の内容(ビジョン・シナリオ・プログラムの在り方等)
に対する意見・要望等を、同戦略の策定作業に反映できるようにして
欲しいということなのである。

B県民の意見・要望等を広く聴くことができる一般的手法として、
「パブリックコメント」が考えられるが、実施する予定はあるのか。
実施する場合はいつ頃か。
【県の回答】
 上記のとおりアンケート調査等を通じ、企業の皆様における課題や
ご意見・ご要望を伺う機会を設けるよう努めており、現在、予定して
おりませんが、今後、必要に応じ実施を検討していきたいと考えてお
ります。
【コメント】
 パブリックコメントは、「AI・IoT利活用戦略(仮)」の内容(ビジ
ョン・シナリオ・プログラムの在り方等)についての、県民の意見・
要望等を聴き、それを同戦略の策定に反映することを目的としている。
県内企業等へのアンケート調査によって、県内企業等のAI、IoTの利活
用への具体的ニーズを探ることとは全く別のものであることが、理解
されていないようである。

【質問2:「IoT利活用戦略」策定の技術的困難性への対応について】
@知事は、非常に幅広い産業分野でのIoTの利活用を目指す旨を明言し
ているが、「IoT利活用戦略」の中に、産業分野別に、それぞれに適合
した支援施策をフルセットで盛り込むことは物理的に困難となる。
 「IoT利活用戦略」の策定における、このような課題への対応策・工
夫等として、どのようなことをお考えか。
※県の回答は、Aと一緒にした形になっている。

A一言でIoTの利活用と言っても、それを利活用するビジネス形態に
よって、利活用の手法や利活用する技術の分野・内容等は大きく異な
るため、政策的に促進すべきIoT利活用の形態(ビジネス形態)を特定
して支援施策を整備することも困難となる。
 「IoT利活用戦略」の策定における、このような課題への対応策・工
夫等として、どのようなことをお考えか。
【県の回答】
 ご指摘のとおり、IoT技術は、製造業、農林業、建設業等様々な産業
分野での利活用が見込まれ、また、利活用の目的・方法に応じ多様な
ビジネス形態での活用が見込まれる一方、それら全てに個別の施策を
講じることは、様々な制約から難しいものと認識しております。そこ
で、県内の産業支援機関との連携のもと、県内企業の皆様に対し、様々
な産業分野、利活用の目的・方法等に応じ、分野横断的かつ総合的な
サポート方策等の検討してまいりたいと考えております。
【コメント】
 様々な産業分野、利活用の目的・方法等に応じ、IoT利活用に係る分
野横断的かつ総合的なサポートを可能とする方策等の検討をするとの
ことであるが、長野県ならではの、他県等に比して優位性を有する、
IoT利活用活性化エコシステムを形成できるような創意工夫を期待したい。

BIoTを構成する知識・技術は多種多様であるため、政策的に修得を支
援すべき、IoT利活用の促進に必要な知識・技術の分野・内容を特定す
ることも困難となる。すなわち、IoTの利活用に係る人材育成カリキュ
ラムの体系的な企画・実施化も困難となる。
 「IoT利活用戦略」の策定における、このような課題への対応策・工
夫等として、どのようなことをお考えか。
【県の回答】
 上記のとおり多種多様な利活用の可能性に対応するためには、IoT技
術の基礎的な性質・性能を理解した上で、具体的な利活用の目的や導入
シーンを想定しつつ最適な方策を検討していくことが重要であると考え
ており、そうした機会を設けられるよう努めてまいります。
【コメント】
 IoTの利活用に係る人材育成カリキュラムの体系的な企画・実施化が
困難となる状況下、長野県としては、どのような独創性や優位性を有
する人材育成シナリオ・プログラムを策定・実施化していくのかに関
する基本的な考え方について質問したが、質問の真の意味を理解して
いただけなかったようである。

C県内企業が、現状の事業の課題をIoTによって速やかに解決し、利益
を確実に確保するためには、既存のIoT関連技術の組合せで対応するこ
とが合理的となる。しかし、それでは、そのIoT利活用手法に新規性を
確保できず、特許等あるいはブラックボックス化によって、同業他社
の模倣を阻止することは困難となる。
 同業他社の模倣を阻止することができる、新規技術開発を伴うIoTの
利活用は、実現までに時間とコストを要する上に、実現できないリスク
も大きい。
 したがって、単にIoT(既存のソフト・ハード)の利活用の普及だけ
ではなく、真に新規性や優位性(市場競争力)を有するIoT利活用産業
の創出・集積促進に資する「政策的仕掛け」の構築には、大いなる創意
工夫が不可欠となる。
 「IoT利活用戦略」の策定における、このような課題への対応策・工
夫等として、どのようなことをお考えか。
【県の回答】
 質問2の@の検討に併せて、対応してまいりたいと考えております。
【コメント】
 単にIoT(既存のソフト・ハード)の利活用の普及だけではなく、真
に新規性や優位性(市場競争力)を有するIoT利活用産業の創出・集積
促進に政策的に取り組むことの意義、重要性等に関する、県組織の基本
的認識をお聞きしたかったが、今後の検討ということで、回答していた
だけなかった。

【質問3:「IoT利活用戦略」の体系・構成の在り方について】
@知事議案説明においては、「IoT利活用戦略」の策定は、「産業の生
産性の高い県づくり」のための「革新力に富んだ産業の創出・育成」を
目指すものとされている。したがって、同戦略については、県内の幅広
い産業分野において、IoTの利活用による、生産性の向上や新規ビジネ
スの創出等を通して、大きな社会的・経済的効果が発揮される、いわゆ
る産業イノベーション創出活動を活性化することを策定趣旨とすること
になると考えるが、それで良いのか。
【県の回答】
 ご認識のとおりでございます。
【コメント】
 AI、IoTの利活用による産業イノベーション創出活動の活性化を目指す
ことを「AI・IoT利活用戦略(仮)」の策定趣旨とすることが確認できた。
その策定趣旨に相応しいビジョン・シナリオ・プログラムという論理的
体系・構成からなる「AI・IoT利活用戦略(仮)」が策定されることに
期待したい。

Aその策定趣旨を前提とした場合の「IoT利活用戦略」の体系・構成
(ビジョン・シナリオ・プログラム)における「ビジョン(「IoT利活
用戦略」が実現を目指す姿)」については、以下のようなものになると
考えるが、いかがか。
 [「IoT利活用戦略」が実現を目指す姿]
 県内の様々な産業分野において、IoTの利活用が活性化し、生産性の
向上や新規ビジネスの創出等の加速化によって、県内産業の国際競争力
の強化・高付加価値化や県民生活の質的高度化が具現化された、真に豊
かな地域社会の形成
【県の回答】
 貴重なご意見を頂戴し、御礼申し上げます。ご意見を踏まえ、今後の
策定作業を進めてまいります。
【コメント】
 「AI・IoT利活用戦略(仮)」が実現を目指す姿(ビジョン)を明確
に提示できなければ、そのビジョンを実現するためのシナリオ・プログ
ラムについての論理的な議論もできないことになる。
 したがって、ビジョン提示の在り方については、関係者によるしっか
りとした議論がなされることを期待したい。

B「シナリオ(ビジョン実現への道筋・政策的仕掛け)」については、
「一般的支援体制の整備(業種共通的・横断的支援体制の整備)」と
「特定プロジェクト支援体制の整備(市場競争力を有するIoT利活用産
業集積を目ざす、戦略性に優れた産学官連携プロジェクトへの支援体制
の整備)」に整理して体系的に提示すべきと考えるが、いかがか。
※県の回答は、Cと一緒にした形になっている。

C「プログラム(シナリオの着実な推進のための各種施策)」につい
ては、「一般的支援のためのプログラム」と「特定プロジェクト支援
のためのプログラム」に整理して体系的に提示すべと考えるが、いか
がか。
【県の回答】
 施策の実施方策に係る貴重なご意見を頂戴し、御礼申し上げます。
ご意見を踏まえつつ、具体的な方策の検討を進めてまいります。
【コメント】
 「AI・IoT利活用戦略(仮)」のビジョンについては、他県等と類似
することは避けられないかもしれないが、そのビジョン実現へのシナ
リオ・プログラムの策定においては、長野県としての優位性や独創性・
新規性の発揮に注力していただき、他県等に比して、より速やかにビ
ジョンを実現できるようにしていただくことを期待したい。

【質問4:AI、IoT等の活用を検討する新組織の設置について】
〇平成30年8月6日の信濃毎日新聞は、知事が、産業振興や生活の利便
性向上などのために、AIやIoT等の先端技術の活用を検討する新組織を
できるだけ速やかに設置する意向であることを報じていた。
 そこで、この新組織について、以下の通りお尋ねしたい。
@この新組織とは、具体的にどのような組織なのか。現時点で考えて
いる、組織名、設置目的、体制、担当事務・事業、設置場所(機関)等
の概要について説明願いたい。
※県の回答は、@〜Cを一緒にした形になっている。

Aこの新組織は、「IoT利活用戦略」の実施化を主導する中核拠点(IoT
利活用に係るワンストップ・ハンズオン型の支援機能を含む。)とし
ての役割を担うのか。そうでないとしたら、この中核拠点は、どこに、
どのように整備するのか。

Bこの新組織と、工業技術総合センターの「IoTデバイス事業化・開発
センター」との関係(支援機能における役割分担、連携の在り方等)は
どうなるのか。

【県の回答】
 しあわせ信州創造プラン2.0には、政策の構築、実行に当たっての共
通視点として、先端技術の活用を掲げており、暮らし、教育、産業など
様々な分野において、この先端技術を最大限利活用できるように、取組
を行っていきたいと考えております。
 そのために、デジタル革命に対応していくためのCDO(最高デジタル
責任者)を設置するといった最近の民間企業の取組事例なども参考に、
先端技術分野の統括・指揮していく県庁内の組織体制を検討してまいり
ます。
 新組織の役割は、様々な分野において先端技術の活用が促進されるよ
う総括・指揮を行っていくもので、IoTデバイス事業化・開発センター
(以下、「IoTセンター」)は、県内企業等の強みを生かしたIoTデバイ
スの開発・事業化の支援をしていくものです。
 なお、新組織の設置場所や時期などの詳細については、まだ確定して
おりません。
【コメント】
 新組織の役割は、暮らし、教育、産業など様々な分野における先端技
術の活用が促進されるよう総括・指揮を行っていくこととのことである。
県の組織が、暮らし、教育、産業などの様々な分野における先端技術の
活用を総括・指揮できると考えていること自体に大きな問題がある。県
は、本当に、そのような機能を有する組織を設置できると考えているの
だろうか。知事は、できるだけ速やかに設置したいと言っていたが、実
際には、設置スケジュールの検討を含め、具体的作業はあまり進んでい
ないようである。それは当然のことと言えるだろう。
 県としては、暮らし、教育、産業など様々な分野における先端技術の
活用が促進されるよう、各実施主体の先端技術活用に係る自主的な活動
が円滑に進むよう、様々に支援するという黒子的役割に徹するべきと考
える。

【質問5:「IoTデバイス事業化・開発センター市場・技術動向調査委託
業務」について】
@この委託業務は、その仕様書によると、単なる市場・技術動向調査で
はなく、県工業技術総合センター「IoTデバイス事業化・開発センター」
(以下、「IoTセンター」という。)が、重点的に支援すべきIoTデバイ
スやIoTビジネスの領域を設定し、その領域におけるIoTビジネス具現化
プロジェクトをモデル事業として組成・実施化することまでを含むと考
えられるが、それで良いのか。
【県の回答】
 基本的には貴殿のご理解のとおりですが、より詳細に申し上げますと、
IoTセンターの重点的支援領域の設定や、モデルとなるプロジェクトの
組成・実施化の主体は、IoTセンターに設置する専門家からなる支援チー
ムとなり、委託業務の受託機関が行うのは、支援チームが仮設定した支
援領域における市場・技術動向等の情報の提供や県内企業の技術を踏ま
えての支援領域の提案、モデルプロジェクトの実施化における支援チー
ムへの知見・ノウハウの提供などであり、あくまで側面的支援を行う立
場としての関与となります。
【コメント】
 IoTセンターの職員だけでは、県内企業等のIoTの利活用を支援できな
いため、専門家からなるIoT支援チームを設置して、支援機能を強化し
ようとすることについては基本的に賛成である。しかし、そのIoT支援
チームが、自らの支援領域を無理に設定し、その領域でのモデルプロジ
ェクトの県内企業等による組成・実施化を支援するのではなく、自らモ
デルプロジェクトを実施してみせるという、本事業の産業政策的意義を
見い出すことは非常に困難である。

A県としては、知事議案説明にある通り、IoT活用に関連する非常に広
範な産業分野を支援対象としていく中で、IoTセンターが、敢えてその
重点支援領域を絞り込むことは、産業政策的に問題ではないのか。でき
るだけ、どのような支援領域にも対応できるようにしておくことが、知
事議案説明の主旨に沿うことではないのか。
【県の回答】
 長野県のAI、IoTに係る振興政策の現時点の方向性は、平成30年度当
初予算案の発表資料中、「平成30年度に重点的に取り組む14の政策パッ
ケージ」中の「2 産業の生産性が高い県づくり」の「2-@ 革新力に
富んだ産業の創出・育成」に整理・記載されております。
 同資料では、AI、IoT関連振興政策の方向性として「県内企業等の強
みを活かしたIoTデバイスの開発・事業化」と、「あらゆる産業におい
てAI、IoT、ロボット等の利活用を促進するための戦略の策定と実行」
の2つに分けて推進することとしております。
 知事議案説明にあります、「・・・製造業はもとより農林業、建設業、
介護・福祉産業等の幅広い分野におけるAI、IoTの利活用を促進するた
め、有識者の知見を得て利活用戦略を策定する・・・」との発言は、前
述の2つの方向性のうちの特に後者について発言したものであり、こち
らが知事議案説明の主旨を具現化する振興政策となります。一方、ご質
問のIoTセンターについては、特に前者を推進する支援体制として整備
を進めているものでございます。
 県内企業の強みを活かしてIoTデバイスやビジネスを事業化しようと
した場合、事業化の成功確率を高める上では、県内企業の強みであるセ
ンサ等の技術が応用可能な産業分野や、更には国内外の競合プレーヤー
にも打ち勝つことのできる産業分野を設定していくことが大変重要とな
ります。例えば、自動運転技術について見てみますと、既にトヨタ自動
車、Google等が多額の開発・実証等の資金を投入して事業化を進めてい
るところであり、もちろん、県内企業のセンサ技術が自動運転車にも活
用されていくことは想定されますが、センサから得られたビッグデータ
を活用し、自動運転の高度化に資するソリューションサービスの提供ま
でを県内企業が事業領域とするべく目指すのは、事業化の成功確率の面
から現実的ではないと考えられます。
 よって、県内企業の優れた技術を核に、IoTデバイスから得られるビッ
グデータを活用したビジネスの創出までを目指す場合においては、県が
投入できる支援資金も限られることから、県内企業のあらゆる相談に対
応できる相談窓口的な支援ではなく、事業化の成功確率が相対的に高い
IoTデバイスと展開する産業分野の組合せを選択し、個別プロジェクト
ベースでの支援を行うことが重要と考えております。
【コメント】
 県内個別企業あるいは県内の産学官連携体が実施主体として、県内企
業等の優れた技術を核に、IoTデバイスから得られるビッグデータを活用
した新ビジネスの創出までを目指すプロジェクトを企画・実施化する場
合に、IoTセンターに設置したIoT支援チームや外部の専門機関(県の委
託業務の受託機関を含む。)が、その専門的知見によって、当該プロジ
ェクトの成功確率を高めるためのハンズオン型支援を実施するというよ
うな政策スキームであれば理解できる。しかし、IoTセンターに設置した
支援チームが、モデル事業として、ある特定分野のテーマに係るIoT利
活用プロジェクトを、県内企業に対して「やってみせる」という事業の
政策的意義が理解できないのである。
 また、県内企業が目指すべきIoT利活用分野については、県が、外部
専門機関の力を借りてそれを指し示すのではなく、県内企業が自ら目指
すIoT利活用分野を探索・選定できるように支援する施策の整備にこそ
注力すべきと考える。
 そもそも工業技術総合センターは、科学技術や工業技術を活用し、県
内産業の国際競争力の強化や県民生活の質的高度化を支援する中核拠点
として、特定分野に拘ることなく、県内企業の個別的支援ニーズにきめ
細やかに応えることを任務としているのである。

Bそもそも工業技術総合センターは、科学技術や工業技術を活用し、県
内産業の国際競争力の強化や県民生活の質的高度化を支援する中核拠点
である。そこに属するIoTセンターとしては、重点支援領域を抽出・特定
することに拘るのではなく、県内産業のIoTに係る潜在的・顕在的支援ニ
ーズに効果的に対応できるよう、県内外の産学官との最適連携(広域的
オープンイノベーション)によって支援できるような体制の整備にこそ
注力すべきではないのか。
【県の回答】
 質問5のAの回答として記載させていただきましたとおり、重点支援
領域の抽出・特定は重要と考えておりますものの、IoTデバイスやビジ
ネスの創出・事業化においては、センサ等のデバイスの技術が県内に存
在したとしても、通信技術、ビッグデータ化技術、データをサービスへ
活用できるようにするための解析技術、実際にデータを活かしたサービ
スを展開する技術などの全てを県内で賄うことは現実的ではないと考え
られます。
 このため、IoTセンターが各プロジェクトを支援する場合においては、
プロジェクト毎に適切な県内外の産学官との連携体制が構築できるよう
にコーディネートすることも支援の一つと考えております。
【コメント】
 県内企業の自発的、主体的なIoT利活用(具体的には、IoTデバイスの
開発・事業化等)の活性化を目指すのであれば、専門家集団が、特定分
野におけるモデル的なIoT利活用プロジェクトを「やってみせる」という
ことよりも、IoT利活用によって解決できる自社・他社・産業界・社会等
の課題の抽出から、特定された課題の解決手法のアイディアの検討、ア
イディアのビジネスモデル化、アイディアを具現化する製品プロトタイ
プの製造・評価・改善、製品化等に至る各工程をワンストップ・ハンズ
オン型で支援できる体制の整備の方が効果的ではないだろうか。
 繰り返しになるが、工業技術総合センターは、科学技術や工業技術を
活用し、県内産業の国際競争力の強化や県民生活の質的高度化を支援す
る中核拠点として、特定分野に拘ることなく、県内企業の個別的支援ニ
ーズにきめ細やかに応えることを任務としているのである。

C今回の委託業務は、工業技術総合センターに不足している新規プロジ
ェクト企画・実施化機能の一時的な補完事業として意義があるが、委託
業務終了後においても、同センターが新規プロジェクト企画・実施化機
能を維持できるよう、委託業務の中で、何らかの対応・工夫をしておく
べきと考えるが、どのようなことをお考えか。
【県の回答】
 質問5の@の回答として記載させていただきましたとおり、支援のノ
ウハウについては、支援チームに蓄積されることとなり、当該支援チー
ムが存続する限りは継続的な支援が行えるものと考えております。一方、
市場や技術動向の調査については、長年にわたっての事業実施により蓄
積された情報や知識、ノウハウが不可欠であり、支援チームへその機能
を付与することは人的、資金的に現実的ではなく、業務委託の形態で民
間機関のノウハウを活用していく方が効率的であると考えられます。
【コメント】
 今回の委託業務(IoT支援チームへの専門的知見・ノウハウの提供業
務等)によって、一時的に、IoTセンターのIoT利活用への支援機能が高
度化しても、中長期的に、当該委託業務を継続することは財源的に困難
であることから、支援チームが存続しても、専門的知見・ノウハウを提
供してくれる専門機関(受託機関)が無くなれば、支援チームのIoT利
活用支援機能は、著しく低下することになる。
 したがって、当該委託業務の実施によって高度化されたIoTセンター
の支援機能を、財源的理由から当該委託業務が中止になった場合にも、
質的に低下させることなく持続させ、更に高度化できるようにする工夫
(戦略的対応)を、当該委託業務実施期間中にしておかなければならな
いとの指摘であった点を理解していただき、的確な対応をお願いしたい。


ニュースレター 号外12(2018年10月3日送信)

長野県ならではの「長野県医療機器産業振興ビジョン」の策定について〜県の回答とそれに対するコメントについて〜

 9月22日に、長野県ならではの「長野県医療機器産業振興ビジョン」の
策定に資することを目的として、県民ホットラインに質問を投稿した。
その内容については、同日付の「号外9」で皆様方にお知らせした通りで
ある。

 その質問について、10月3日に県からの回答メールを受け取ったので、
その回答と、それについての私のコメントを併せてお送りしたい。

 なお、質問の真意をご理解いただけなかったために、質問と回答がうま
くかみ合っていない個所もいくつか見られるため、その点も含めて私のコ
メントについては、「長野県医療機器産業振興ビジョン」策定の担当部・
課にもお知らせし、参考にしていただこうと考えている。

 皆様方には、「長野県医療機器産業振興ビジョン」が、他県等に対する
優位性を有する医療機器産業クラスター形成の具現化のために真に役立つ
「バイブル」として策定されるよう、県に対する積極的なご助言等を引き
続きお願いしたい。

【質問1】
@昨年度末に策定した、長野県ものづくり産業振興戦略プランは、医療機
器産業振興(医療器産業の集積形成)も重点分野として当然含んでいる。
また、次世代自動車(EV化や自動運転化)分野への県内企業の展開支援体
制の整備や、県内産業における環境と共生するバイオエコノミーの加速化
等の喫緊の課題が他にもある中、なぜここで急いで、特に医療機器分野を
支援対象として選定し、医療機器産業振興ビジョンを最優先で別途策定し
なければならないのか。その特別の事情、背景等は何なのか。
【県の回答】
 平成29年度に当部で実施しました「長野県工業技術動向調査」において、
今後、参入したい産業分野として「健康・医療分野」を挙げた企業が全回
答の44.0%に上り、産業分野の中で最も高くなりました。また、本年3月
に策定した「長野県ものづくり産業振興戦略プラン」においては、多くの
地域で健康・医療分野のプロジェクトを掲げております。この様に、健康
医療分野は参入機運が相対的に高まっていることから、今回、先んじて振
興ビジョンの策定や支援施策の企画・実施化を進める必要があるとの判断
に至りました。
【コメント】
〇多くの県内企業が参入を希望する「健康・医療分野」は、人の健康の維
持・増進に関連する非常に広範な種類の製品・部品等を含むものであって、
「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」
(略称:薬機法)において定義される医療機器を目指そうとする企業が、
どの程度いるかについては明確には把握されていない。

〇しかし、今回、薬機法に規定される医療機器をメインの振興対象にきち
っと据え、薬機法の遵守や戦略的活用等に係る支援機能についても組み込
んだ、医療機器産業振興ビジョンを策定しようというチャレンジングな県
の姿勢には、多くの産学官の方々が大きな期待を寄せていることだろう。
※参考:薬機法の医療機器の定義 第2条第4項
 人若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること、又
は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことを目的と
されている機械器具等(再生医療等製品を除く。)であって、政令に定め
るものをいう。

A長野県が主導し、信州大学やテクノ財団等と連携し、文部科学省や経済
産業省等の大型の支援制度も活用して取り組んできた、今までの国際競争
力を有する医療機器産業の集積形成を目指すプロジェクトには、どのよう
な課題があったのか。もし課題があったとすれば、今回の医療機器産業振
興ビジョンの策定(信州医療機器事業化開発センターの設置を含む。)に
よって、その課題をどのように解決しようと考えているのか。
【県の回答】
 特に、平成23年度から開始した文部科学省「地域イノベーション戦略支
援プログラム」において、地域の中核企業による健康・医療分野への新規
参入を目指した研究開発プロジェクトの実施化や、地域中小企業の参入支
援のための医工連携コーディネート体制を整備したものの、特に、地域の
企業を核とした研究開発プロジェクトの創出や事業化例の創出という面に
おいて、十分な成果を得ることが出来ませんでした。
 この要因として、医療機器分野独特の商慣習、すなわち医療機関へ医療
機器販売を行う医療機器製造販売業との連携の在り方や、製品上市のため
の法規制の理解とその対応などの面で、その道の専門家によるきめ細やか
な支援が必ずしも実施しきれていなかったのではないかと考えております。
同様に、海外医療機器メーカーのニーズに合致した技術を提供するという
面においても、展示会等の機会の提供にとどまらず、より深堀しての支援
を行う余地があったのではないかと考えております。
 このため、今回の事業化開発センター等においては、それらの部分を埋
めるべく、新たな医療機器開発において、開発しようとする医療機器の市
場性を見極めることのできる人材や、医療機器の上市承認を行う(独)医
薬品医療機器総合機構の意見、判断等を理解し的確に対応できる人材を新
たに招へいしつつ、各地域で医工連携を推進し多数の研究開発プロジェク
トを創出できるようコーディネート体制を強化したいと考えております。
また、海外医療機器メーカーのニーズに合致した技術提供という面では、
例えば、グローバルに海外メーカーとのネットワークを有するコンサルテ
ィングファームなどといった専門機関を活用し、県内企業の参入に繋がり
うる解決すべきニーズの発掘を行い、当該ニーズを満たすための試作開発
を推進したいと考えています。
【コメント】
〇本県において、地域企業を核とした医療機器の研究開発プロジェクトの
立上げやその成果としての事業化という面において、十分な成果を得るこ
とができてこなかった原因については、以下の「※参考」に示す医療機器
の開発・事業化の工程を参考にすると良く理解できる。
 すなわち、その根本的な原因は、県内企業が、医療機器分野独特の商慣
習等を良く理解できていないことではなく、医療機器開発・事業化の「律
速段階」とも言える、工程の入口段階である@からBの活動を活性化でき
なかったことによるのである。したがって、今後は、この課題への対応策
が重要となるのである。

※参考:医療機器の開発・事業化の工程
@医療現場等の課題解決ニーズの把握・選定→A課題解決できる機器のア
イディアの検討・選定→Bアイディアに係るビジネスモデルの構築・検討
→C研究開発(プロトタイプの製作・評価・改良。臨床試験等を含む。)
→D必要な許認可等の取得→E生産→F販売・販路拡大→G県内外の医療
現場等における課題解決(医療機器分野における産業イノベーションの創
出)

B医療機器産業振興ビジョンの新規策定・実施化によって、他県等に比し
て、優位性あるいは新規性・独創性等を有する医療機器産業の集積形成を
改めて目指すことになるが、具体的にどのような優位性、新規性・独創性
等を、どのようにして確保しようと考えているのか。
※県の回答は、Cと一緒にした形になっている。

C他県等に比して優位性、新規性・独創性等を有する、長野県ならではの
国際競争力を有する「医療機器産業の集積の姿」については、現時点でど
のようなイメージを描いているのか。
【県の回答】
 基本的な認識としましては、本県が有する産業界の超精密加工技術や、
大学が有する優位性ある材料技術が競争力の源泉にあると考えております。
一方、これらはあくまでも医療機器の要素技術にすぎないため、これらの
技術を医療機器分野で十分に浸透させ、部材供給企業や医療機器開発企業
の売上に繋げていくためには、世界の医師、医療機器メーカー、医療機器
開発ベンチャー企業等の医療機器開発プレーヤーに本県技術が先んじて選
ばれるようにするための仕掛けが必要となります。
 そのためには、まずは本県の有する技術が十分に医療機器産業分野で貢
献できるという事例、すなわち事業化例を多数創出していくことが必要で
あると考えられることから、まずは事業化を促進するための支援体制であ
る事業化開発センター等の構築に力点を置いております。
 一方で、世界のプレーヤーを惹きつけるためには、本県としてより多く
の優位性を創出・保有することが重要となります。例えば、信州大学で取
り組まれている、各企業の医療機器研究開発データをビッグデータとして
利活用できるよう整備し、医療機器開発に新規参入する企業の事業化の加
速に貢献しようとする取組などは一例になると考えられますが、その様な
優位性を高める要素となりうるものとしてどういったものがあり、その要
素を本県で保有するためにはどの様にするべきであるのかなども今後、議
論を重ね、ビジョンに反映していく必要があるものと考えております。
【コメント】
〇医療機器産業を発展させるための一般的支援手法の整備や、医療機器開
発に活用できそうな技術的資源の発掘など、医療機器産業振興の手法につ
いてのアットランダムな議論が先行し、本県が実現を目指すべき、長野県
ならではの国際競争力を有する「医療機器産業の集積の姿」を最初に描く
ことの重要性が認識されていない。

〇まず、長野県が実現を目指すべき「医療機器産業の集積の姿」を描き、
その後、その実現へのシナリオとプログラムについて議論するという、論
理的な振興ビジョンの策定作業から逸脱してしまうのではないか、という
大きな不安を感じる。

〇本来的には、最初に、実現を目指すべき「医療機器産業の集積の姿」を
描き、その具現化のためのシナリオ・プログラムの中に、「医療機器事業
化開発センター」が位置づけられるというような、論理的アプローチが不
可欠なのである。しかし、現状は、その逆で、「医療機器事業化開発セン
ター」が最初にありきになってしまっているのである。

D長野県が目指す「医療機器産業の集積の姿」については、医療機器製造
という「ものづくり」に特化した「新規医療機器の創出・供給拠点として
の優位性」を確保する産業集積を目指すのか、あるいは、「ものづくり」
の領域を超えて「新規医療機器の開発・活用による健康・長寿推進拠点と
しての優位性」を確保する産業集積を目指すのか。
 中小企業振興条例に規定される県の責務(産業イノベーションの創出に
留意等)を考慮すると、後者の産業集積を目指すべきと考えられるが、い
かがか。
【県の回答】
 医療機器産業の振興を図るため、新たな医療機器の開発等に力点を置き
ますが、開発された製品を活用するユーザーとなる医師側における機運醸
成は重要な取組になるものと考えております。
【コメント】
〇長野県が実現を目指すべき「医療機器産業の集積の姿」については、単
に優れた医療機器の開発・供給拠点という姿ではなく、県民の更なる健康・
長寿に資する医療機器の開発・活用による、新たな健康・長寿増進ビジネ
スモデルを創出し、それを内外に広く展開する、健康・長寿推進拠点とい
う姿にすることによって、医療機器産業の発展という経済的課題の解決と、
人々の健康・長寿増進という社会的課題の解決とを整合(両立)できる、
長野県ならではの先進的な医療機器産業の集積形成が可能となるのではな
いのか、という指摘であるが、このことに関する議論の必要性や価値を理
解していただけていないようである。

【質問2】
@長野県において、理想的な医療機器開発・事業化エコシステムを構築し
ようとする場合、医療機器の開発・事業化に係る、入口から出口までの各
工程の円滑な推進に必要な支援機能を全て県内で整備することは不可能と
なる。そこで、県外の支援機関・企業等までを含めた形での、県境を越え
た広域的なエコシステムを構築しなければならないと考えるが、いかがか。
 広域的なエコシステムの構築については、ビジョンの中に位置づける方
向で、ビジョン策定作業の中で検討していただけるのか。
【県の回答】
 仰るとおり、既に他地域において、大規模な非臨床試験支援施設が建設
されたり、医学部を有する各大学において医工連携のためのインキュベー
ション施設の整備が進められたりしていることから、それらと効果的に連
携しつつ事業化を図っていくことは重要と考えております。また、ビジョ
ンにおいて、本県として取り組むべき領域を見定める上でも、他地域の取
組への理解は重要であると考えております。
【コメント】
〇医療機器開発・事業化エコシステムとは、医療機器の開発・事業化を目
指す県内企業が、前述の医療機器の開発・事業化の各工程を円滑にステッ
プアップしていくことに資する各種支援メニューがシステマチックに整備
され、効果的に運用されている状態を示すものである。このエコシステム
の整備の重要性を十分に認識して、医療機器産業振興ビジョンの策定に取
り組んでいただきたい。

A県内のある中小企業が、独自のアイディアや技術に基づき、新たに医療
機器分野に進出し、優れた新規医療機器を開発し、それを事業化して国際
的な医療機器ビジネスを展開しようとする場合において、医療機器ビジネ
スの経験に乏しい当該中小企業が、必要な臨床試験や許認可取得等を行い、
大量生産し、内外に広く販売していくという最終工程までを一貫して担う
ことは不可能に近い。
 そのような場合には、県外の大手医療機器メーカーとの連携が合理的な
経営戦略の一つになる。すなわち、研究開発(プロトタイプの製作等)ま
では県内中小企業が行い、それ以降の事業化は県外の大手医療機器メーカ
ーが実施するというようなビジネスモデルの具現化を支援できるシステム
も、長野県の医療機器開発・事業化エコシステムの中に組み込まなければ
ならないと考えるが、いかがか。
 医療機器ベンチャー企業のみならず医療機器分野に新規参入する中小企
業の、県外大手医療機器メーカーとの戦略的な広域連携ビジネスモデルの
構築支援システムについては、ビジョンの中に位置づける方向で、ビジョ
ン策定作業の中で検討していただけるのか。
【県の回答】
 ご指摘のビジネルモデルを実現したい企業を支援できるよう、事業化開
発センター等の支援機能として整備し、ビジョンにも位置付けていきたい
と考えています。なお、同センター等の支援機能については質問1の3及
び4の回答として記載させていただいたとおりです。
【コメント】
〇事業化開発センターが、医療機器の開発・事業化の工程の中のどの部分
への支援機能を整備するのか。全工程への支援をワンストップ・ハンズオ
ン型で実施できるようにするのか。他の産業支援機関や、ものづくり産業
振興戦略プランに基づき今年度整備される、県内企業の産業イノベーショ
ン創出活動へのワンストップ・ハンズオン型の新規支援体制などとの役割
分担等が課題となる。ビジョン策定作業の中で十分に検討していただきたい。

B医療機器の開発・事業化に係る、県外の大手医療機器メーカー等との広
域連携の中で、県内企業はどのようにしたら利益を確保し発展し続けるこ
とができるようになるのか、というような新たな戦略的なビジネスモデル
の構築に係る課題への対応策についても、医療機器開発・事業化エコシス
テムの中に組み込まなければならないと考えるが、いかがか。
 グローバルな規模で展開する医療機器産業の動向の中で、長野県の医療
機器産業集積が持続的に発展し続けることを可能とする、新たなビジネス
モデル(優位性のある立ち位置)の構築支援システムについては、ビジョ
ンの中に位置づける方向で、ビジョン策定作業の中で検討していただける
のか。
【県の回答】
 ご指摘のビジネスモデルを一定の売上確保を前提に実現しようとする場
合、一般的には数量的需要の大きい医療機器への部材供給を実現すること
が重要となります。国内市場が約3兆円、世界市場が約50兆円という市場
規模において、一つの部材が相当数量必要となる医療機器は限定的になる
かとは考えられますが、それらを探索し希望する企業へ提案する支援機能
は整備したいと考えており、ビジョンにも位置付けていきたいと考えてお
ります。
【コメント】
〇医療機器の世界市場の中で、大手医療機器メーカーからの部材発注を受
けるための受発注マッチング支援活動は重要であるが、他国・他地域の企
業との価格競争のみに陥ることなく、県内企業の優位性のある立ち位置を
如何にして構築していくべきかについては、技術的にもビジネスモデル的
にも重要な検討課題となる。個別の受発注マッチングの案件ごとに、戦略
的な支援ができる機能をエコシステムの中に位置づけることが必要となる。

C長野県ならではの医療機器開発・事業化エコシステムを構築するために
は、内外の先進的な医療機器開発・事業化エコシステムの事例を調査研究
し、それを参考にすることが、効果的なビジョン策定手法と考えるが、い
かがか。
 現時点でのビジョン策定作業のスケジュールには、医療機器開発・事業
化エコシステム等の先進事例の調査研究は位置づけられているのか。
【県の回答】
 ビジョンは年度内に策定を予定している一方、詳細な策定スケジュール
については現在調整中でございます。一方、質問2の@の回答でも記載し
ましたとおり、他地域との連携や機能補完は大変重要な視点であることか
ら、何らかの形で調査研究は実施する必要があると考えております。
【コメント】
〇医療機器に係る個別の産業支援機関の支援機能等の調査研究ではなく、
先進的な医療機器産業クラスターが内包する、先進的な医療機器開発・事
業化エコシステムについての調査研究をして欲しいということである。こ
のエコシステムなくして、県内企業による自律的な医療機器開発・事業化
活動を活性化することはできないのである。

【質問3】
@医療機器開発・事業化エコシステムの効果的な構築・稼働・高度化のた
めの中核拠点の整備が必要になると考えるが、いかがか。
【県の回答】
 医療機器産業の集積形成を図るうえで、取り組む企業、大学、支援機関
等の求心力を高めることは大変重要であると考えられます。
【コメント】
〇医療器開発・事業化エコシステムの効果的な構築・稼働・高度化を主導
する機関としての中核拠点の必要性を問うているが、その意味を理解いた
だけていない。

Aこのような中核拠点が必要と考える場合には、来年度設置される予定の
信州医療機器事業化開発センター(仮称)がその役割を担うべきという考
え方で良いのか。
 そうでない場合には、現時点で同センターが担うべき支援機能として、
具体的にどのようなものを想定しているのか。
【県の回答】
 事業化開発センター等は、質問1のB及びCの回答として記載させてい
ただきましたとおり、現時点では、地域企業による事業化を加速するため
の支援機能として整備することに力点を置いております。
【コメント】
〇事業化開発センターは、医療機器開発・事業化エコシステムの中核拠点
にはならないという回答であることから、中核拠点を別途整備しなければ
ならないことになる。医療機器産業振興ビジョン策定作業の中で、エコシ
ステムとその中核拠点について、どのように整備すべきか、じっくり検討
していただきたい。

B信州医療機器事業化開発センターが、医療機器の開発・事業化に係る全
工程へのワンストップ・ハンズオン型の支援機能を整備しない(できない)
場合には、当然、長野県ものづくり産業振興戦略プランに基づき整備が進
められている、県工業技術総合センター、県中小企業振興センター、県テ
クノ財団の3機関の支援機能を連携・融合化した、県内企業の産業イノベー
ション創出活動へのワンストップ・ハンズオン型の新規支援体制が、その
役割を担うことになる。そのような考え方で良いのか。
※県の回答は、Cと一緒にした形になっている。

Cいずれにしても、「攻めと守りの政策パッケージ〜テイクオフ3+1〜」に
基づき、来年度設置される信州医療機器事業化開発センターと、ものづく
り産業振興戦略プランに基づき、今年度中に整備されるワンストップ・ハ
ンズオン型の産業イノベーション創出活動への新規支援体制との関係(支
援機能の役割分担・棲み分け、連携の在り方等)を明確に整理することが、
合理的な産業支援体制の構築のために必要になると考えるが、現時点では、
どのような整理の仕方を考えているのか。
【県の回答】
 事業化開発センター等は、医師のニーズ把握から製品上市に至るまでの
伴走支援や、海外医療機器メーカーの技術ニーズ把握から部材の試作開発・
提案までの支援の機能は整備出来るものと考えております。一方、開発品
の精度検証や新たなパートナー探索のための展示会等の場の提供、研究開
発支援資金の獲得支援等、工業技術総合センター、県中小企業振興センタ
ー、県テクノ財団等の従来の支援機能を活用することはもちろんありうる
と考えております。一方、ものづくり産業振興戦略プランに掲げるワンス
トップ・ハンズオン型の新規支援体制については、先日ホットラインでご
質問いただき、産業政策課から回答を申し上げた以上のことは、今のとこ
ろございません。もちろん、重複する支援機能を整備することは県財政の
面でも利用者側の利便性の面でも効率的ではございませんので、関係性を
明確にしていくことは重要と考えております。
【コメント】
〇現在、県組織内では、様々な産業支援体制の検討・整備が並行して進め
られていることから、現時点での明確な役割分担の整理は困難と思われる。
今後の医療機器産業振興ビジョンの策定作業の中で、明確化されるようお
願いしたい。

【質問4】
@県民が良く理解し高く評価できるような、体系・構成・内容からなる医
療機器産業振興ビジョンにするためには、県民の意見・要望等を広く聴く
ことができる様々な機会を設けることが必要と考えるが、現時点で、どの
ような機会を設けようと考えているのか。
※県の回答は、Aと一緒にした形になっている。

A県民の意見・要望等を広く聴くことができる一般的手法として、「パブ
リックコメント」が考えられるが、実施する予定はあるのか。実施する場
合はいつごろか。
【県の回答】
 広くご意見・ご要望等をお聞きするとともに、より多くの方々に医療機
器産業の振興についてお考えいただく契機とすることは実効性あるビジョ
ンの策定という点で大変重要と考えております。一方、パブリックコメン
トの実施に関して申し上げますと、今回策定するビジョンは、本年3月に
策定した「長野県ものづくり産業振興戦略プラン」を基に、医療機器分野
について深堀して作成するものであり、同プランの策定経過において既に
パブリックコメントを実施していることから、現時点では改めての実施は
予定しておりません。
【コメント】
〇医療機器産業振興ビジョンについては、ものづくり産業振興戦略プラン
の各論的位置づけとはいえ、今までほとんど議論されたことのない、「本
県が目指すべき医療器産業の集積の姿」や、同プランには提示されていな
かった医療機器事業化開発センターの役割・位置づけなど、広く意見等を
聴取し、それらを参考にする必要のある政策的要素が多々含まれることに
なる。ものづくり産業振興戦略プランでパブリックコメントを実施したか
ら、医療機器産業振興ビジョンではパブリックコメントを実施する必要が
ないというのは、論理的説明になっていない。

〇医療機器産業振興ビジョンの案に対する意見等を述べる機会は提供して
いただけないことから、同ビジョンが正式に策定され公開された後に、そ
の問題点等を把握できた場合には、県民ホットラインで指摘させていただ
こうと考えている。

B医療機器産業振興ビジョンが策定された場合には、同ビジョンの効果的
具現化を促進するため、県内外の多くの産学官の関係者に、同ビジョンの
内容をよく理解していただき、最大限の協力をしていただけるように働き
かける場・機会の設営が必要と考えるが、いかがか。具体的には、同ビジ
ョンによる優位性のある医療機器産業の集積形成の進め方等に関する、学
識経験者によるシンポジウムの開催等が考えられるが、検討していただけ
るか。
【県の回答】
 幾度も申し上げ恐縮ですが、詳細な策定スケジュールが現在調整中であ
りますことから明示的なご回答が出来かねますことをご了承願います。一
方、推進主体となる産学官のご関係の皆様への理解増進や、県全体での機
運醸成という面で、御提案いただいたシンポジウム等の開催は大変有効な
取組であると考えております。
【コメント】
〇特にシンポジウムの開催については、医療機器の開発・事業化への気運
醸成という視点からだけでなく、長野県が目指すべき、優位性のある医療
機器産業の集積の姿、その実現のためのシナリオ・プログラムの在り方等
について、内外の有識者から、できるだけ多くの助言等を得る機会を設け
ることによって、長野県の医療機器産業振興に係る戦略の高度化や、その
効果的推進に資するという視点からも企画・実施化していただくことをお
願いしたい。

C医療機器産業振興ビジョンに位置づけられる新規事業に要する経費を、
来年度当初予算に計上するためには、それが可能となるスケジュールで同
ビジョンを策定しなければならないことになるが、現時点での策定スケジ
ュールはどうなっているのか。
【県の回答】
 ビジョンにつきましては今年度内の策定を予定しており、詳細スケジュ
ールについて現在調整中でございます。
【コメント】
〇ビジョンに位置づけられた事業の予算化という、論理的な予算編成がで
きるような策定スケジュール、策定手法での実施をお願いしたい。


ニュースレター 号外11(2018年10月1日送信)

長野県ならではの「IoT利活用戦略」の策定・実施化について[県民ホットラインへの投稿(2018.10.1)]

 平成30年2月県議会の知事議案説明において、知事は「・・・製造業
はもとより農林業、建設業、介護・福祉産業等の幅広い分野におけるAI、
IoTの利活用を促進するため、有識者の知見を得て利活用戦略を策定す
る・・・」と述べている。
 これを受けて、現在、県組織においては、AI、IoTの利活用戦略の
策定作業に鋭意取り組んでいることと思うが、知事の議案説明通りに、
AI、IoTの利活用戦略を策定する場合には、支援対象とする産業分野や、
AI、IoTを利活用するビジネス形態などが千差万別となることから、そ
の策定作業には技術的に多くの困難性を伴うことになる。

 しかし、産学官の英知の結集によって、その困難性をクリアして、
様々な産業分野の企業等のAI、IoTへの顕在的・潜在的ニーズに的確に
応える、政策的支援施策の企画・実施化の「バイブル」となる、優れ
た利活用戦略を策定できれば、本県産業の振興に大いに資することに
なる。

 そこで、優位性のある長野県ならではのAI、IoTの利活用戦略の在り
方等に関して様々に議論してきた、ニュースレターNo.121、No.129、
No.130のエッセンスを、県組織における利活用戦略の策定作業に少し
でも活用していただくことを目的として、以下の通り、県政への提言、
意見、質問等を歓迎する「県民ホットライン」に投稿した次第である。

 県からの回答については、後日またコメントする予定である。

【はじめに】
 平成30年2月県議会の知事議案説明で、知事は「・・・製造業はもと
より農林業、建設業、介護・福祉産業等の幅広い分野におけるAI、IoT
の利活用を促進するため、有識者の知見を得て利活用戦略を策定する・
・・」と述べられた。
 この利活用戦略(以下、「IoT利活用戦略」という。)が、優位性の
ある長野県ならではのものとして策定・実施化されることに少しでも
貢献することを目的として、以下の通り、いくつか質問等をさせていた
だきたい。

【質問1:「IoT利活用戦略」策定作業の進捗状況等について】
@「IoT利活用戦略」に位置づけられる新規事業に要する経費を、来年
度当初予算に計上するためには、それが可能となるスケジュールで同
戦略を策定しなければならないことになるが、現時点での策定作業の
進捗状況はどうなっているのか。

A幅広い産業分野の人々が、「これは分かりやすい、役に立つ。」と高
く評価するような「IoT利活用戦略」を策定するためには、幅広い産業
分野の人々の意見・要望等を聴くことができる様々な機会を設けること
が必要と考えるが、現時点でどのような機会を設けようと考えているの
か。あるいは、既に、どのような機会を設け、どのような意見・要望等
を得て来ているのか。

B県民の意見・要望等を広く聴くことができる一般的手法として、「パ
ブリックコメント」が考えられるが、実施する予定はあるのか。実施す
る場合はいつ頃か。

【質問2:「IoT利活用戦略」策定の技術的困難性への対応について】
@知事は、非常に幅広い産業分野でのIoTの利活用を目指す旨を明言して
いるが、「IoT利活用戦略」の中に、産業分野別に、それぞれに適合した
支援施策をフルセットで盛り込むことは物理的に困難となる。
 「IoT利活用戦略」の策定における、このような課題への対応策・工夫
等として、どのようなことをお考えか。

A一言でIoTの利活用と言っても、それを利活用するビジネス形態によっ
て、利活用の手法や利活用する技術の分野・内容等は大きく異なるため、
政策的に促進すべきIoT利活用の形態(ビジネス形態)を特定して支援施
策を整備することも困難となる。
 「IoT利活用戦略」の策定における、このような課題への対応策・工夫
等として、どのようなことをお考えか。

BIoTを構成する知識・技術は多種多様であるため、政策的に修得を支援
すべき、IoT利活用の促進に必要な知識・技術の分野・内容を特定するこ
とも困難となる。すなわち、IoTの利活用に係る人材育成カリキュラムの
体系的な企画・実施化も困難となる。
 「IoT利活用戦略」の策定における、このような課題への対応策・工夫
等として、どのようなことをお考えか。

C県内企業が、現状の事業の課題をIoTによって速やかに解決し、利益を
確実に確保するためには、既存のIoT関連技術の組合せで対応することが
合理的となる。しかし、それでは、そのIoT利活用手法に新規性を確保で
きず、特許等あるいはブラックボックス化によって、同業他社の模倣を
阻止することは困難となる。
 同業他社の模倣を阻止することができる、新規技術開発を伴うIoTの利
活用は、実現までに時間とコストを要する上に、実現できないリスクも
大きい。
 したがって、単にIoT(既存のソフト・ハード)の利活用の普及だけで
はなく、真に新規性や優位性(市場競争力)を有するIoT利活用産業の創
出・集積促進に資する「政策的仕掛け」の構築には、大いなる創意工夫が
不可欠となる。
 「IoT利活用戦略」の策定における、このような課題への対応策・工夫
等として、どのようなことをお考えか。

【質問3:「IoT利活用戦略」の体系・構成の在り方について】
@知事議案説明においては、「IoT利活用戦略」の策定は、「産業の生産
性の高い県づくり」のための「革新力に富んだ産業の創出・育成」を目指
すものとされている。したがって、同戦略については、県内の幅広い産業
分野において、IoTの利活用による、生産性の向上や新規ビジネスの創出
等を通して、大きな社会的・経済的効果が発揮される、いわゆる産業イノ
ベーション創出活動を活性化することを策定趣旨とすることになると考え
るが、それで良いのか。

Aその策定趣旨を前提とした場合の「IoT利活用戦略」の体系・構成(ビ
ジョン・シナリオ・プログラム)における「ビジョン(「IoT利活用戦略」
が実現を目指す姿)」については、以下のようなものになると考えるが、
いかがか。

 [「IoT利活用戦略」が実現を目指す姿]
 県内の様々な産業分野において、IoTの利活用が活性化し、生産性の向上
や新規ビジネスの創出等の加速化によって、県内産業の国際競争力の強化・
高付加価値化や県民生活の質的高度化が具現化された、真に豊かな地域社
会の形成

B「シナリオ(ビジョン実現への道筋・政策的仕掛け)」については、
「一般的支援体制の整備(業種共通的・横断的支援体制の整備)」と「特
定プロジェクト支援体制の整備(市場競争力を有するIoT利活用産業集積を
目ざす、戦略性に優れた産学官連携プロジェクトへの支援体制の整備)」
に整理して体系的に提示すべきと考えるが、いかがか。

C「プログラム(シナリオの着実な推進のための各種施策)」については、
「一般的支援のためのプログラム」と「特定プロジェクト支援のためのプ
ログラム」に整理して体系的に提示すべと考えるが、いかがか。

【質問4:AI、IoT等の活用を検討する新組織の設置について】
〇平成30年8月6日の信濃毎日新聞は、知事が、産業振興や生活の利便性向
上などのために、AIやIoT等の先端技術の活用を検討する新組織をできる
だけ速やかに設置する意向であることを報じていた。
 そこで、この新組織について、以下の通りお尋ねしたい。
@この新組織とは、具体的にどのような組織なのか。現時点で考えている、
組織名、設置目的、体制、担当事務・事業、設置場所(機関)等の概要に
ついて説明願いたい。

Aこの新組織は、「IoT利活用戦略」の実施化を主導する中核拠点(IoT利
活用に係るワンストップ・ハンズオン型の支援機能を含む。)としての役
割を担うのか。そうでないとしたら、この中核拠点は、どこに、どのよう
に整備するのか。

Bこの新組織と、工業技術総合センターの「IoTデバイス事業化・開発セ
ンター」との関係(支援機能における役割分担、連携の在り方等)はどう
なるのか。

Cこの新組織の整備スケジュールはどうなっているのか。

【質問5:「IoTデバイス事業化・開発センター市場・技術動向調査委託
業務」について】
@この委託業務は、その仕様書によると、単なる市場・技術動向調査では
なく、県工業技術総合センター「IoTデバイス事業化・開発センター」
(以下、「IoTセンター」という。)が、重点的に支援すべきIoTデバイス
やIoTビジネスの領域を設定し、その領域におけるIoTビジネス具現化プロ
ジェクトをモデル事業として組成・実施化することまでを含むと考えられ
るが、それで良いのか。

A県としては、知事議案説明にある通り、IoT活用に関連する非常に広範
な産業分野を支援対象としていく中で、IoTセンターが、敢えてその重点
支援領域を絞り込むことは、産業政策的に問題ではないのか。できるだけ、
どのような支援領域にも対応できるようにしておくことが、知事議案説明
の主旨に沿うことではないのか。

Bそもそも工業技術総合センターは、科学技術や工業技術を活用し、県内
産業の国際競争力の強化や県民生活の質的高度化を支援する中核拠点であ
る。そこに属するIoTセンターとしては、重点支援領域を抽出・特定する
ことに拘るのではなく、県内産業のIoTに係る潜在的・顕在的支援ニーズ
に効果的に対応できるよう、県内外の産学官との最適連携(広域的オープ
ンイノベーション)によって支援できるような体制の整備にこそ注力すべ
きではないのか。

C今回の委託業務は、工業技術総合センターに不足している新規プロジェ
クト企画・実施化機能の一時的な補完事業として意義があるが、委託業務
終了後においても、同センターが新規プロジェクト企画・実施化機能を維
持できるよう、委託業務の中で、何らかの対応・工夫をしておくべきと考
えるが、どのようなことをお考えか。


ニュースレター 号外10(2018年9月27日送信)

長野県ものづくり産業振興戦略プランの推進体制の整備の進捗状況について(再質問)[県民ホットラインへの投稿(2018.9.27)]

 9月18日に「長野県ものづくり産業振興戦略プランの推進体制の整備の
進捗状況について」、県からの説明を求めて県民ホットラインに質問等
を投稿した。その内容については、同日付の「号外8」で皆様方にお知ら
せした通りである。

 その投稿での県への質問等について、9月26日19時51分に県からの
回答メールを受け取った。

 しかし、残念ながら、県の回答全般について、県民ホットラインへの
投稿の「むすびに」において県にお願いした、「県内の産学官の多くの
方々が、産業支援体制の抜本的な再編・再構築という、困難性は高いが、
県内産業振興には非常に有意義な作業を、県は如何にして主導し、実現
するのかに注目していることを意識して、県として誇れる対応をすべき
こと」と、「2年間という異例の長期間をかけてじっくり検討・策定した
ものプランの記載内容の『重み』を十分に認識して対応すべきこと」に
対して、真摯に応えようとする姿勢が全く見られないものとなってしま
っているのである。
 すなわち、知事の議会答弁とも大いに関係する重要事項が含まれてい
るにもかかわらず、知事の了承を得ない、担当部署が独断で作成した回
答であると推測できるようなものだったのである。

 そこで、県の回答における問題点についての、知事の認識等を確認す
ることも含めて、再質問を県民ホットラインに投稿することにした次第
である。
 以下に、県の回答内容と、それに対する再質問の内容を記載すること
にしたい。皆様方からも、県が、ものづくり産業振興戦略プランに基づ
く産業支援体制の整備に着実に取り組めるよう、積極的な助言等をいた
だければ幸いである。

 現在、9月県議会開会中であるため、回答については遅れても全く問題
ない旨を担当部署に伝えてある。回答が届き次第、また、その内容につ
いてコメントする予定である。

              県民ホットラインへの投稿(2018.9.27)

長野県ものづくり産業振興戦略プランの推進体制の整備の進捗状況
について(再質問)

※「長野県ものづくり産業振興戦略プラン」については、以下、「もの
プラン」という。
【質問1】
〇本年4月から来年3月までに、国内外の産業支援体制の先進事例や、現
状の本県の産業支援体制の課題(不足する支援機能等)を徹底的に調査
研究するようになっている。この調査研究については、2月県議会におい
て、知事も、内外の先進事例を徹底的に調査研究すると積極的に答弁さ
れている。
 この調査研究は、今後の長野県の産業支援体制の在り方、整備(再編・
再構築)の方向性を決定づける極めて重要なものであるため、スケジュ
ール通りの着実な実施をお願いしたい。

〇そこで、以下についてお尋ねしたい。
@この調査研究の進捗状況は、どうなっているのか。
 [県の回答]
 進捗につきましては、これまでの間、産業労働部の職員が、富山県新
世紀産業振興機構、ひろしま産業振興機構、東北大学試作コインランド
リ等を訪問し、事例調査を行っております。この調査は、多くの先進事
例を参考にするため、今後も随時実施することとしております。

 [再質問]
 調査研究の本来の趣旨は、先進事例の調査研究を通して、本県の産業
支援体制の課題(不足する支援機能等)を把握し、それを産業支援体制
の抜本的見直し(再編・再構築等)に活かすことである。この調査研究
の実施への2月県議会時点での「知事の積極的姿勢」に、何か変化等が
あったのか。
 先進事例の調査研究に基づく、本県の産業支援体制の課題(不足する
支援機能等)の把握については、具体的にどのように進められているの
か。現時点で、どのような課題が把握できているのか。

A調査研究体制は、どのようなものか。
 [県の回答]
 体制につきましては、産業労働部の職員が有識者と協議のうえ実施し
ております。

 [再質問]
 調査研究の本来の趣旨や重要性を十分に認識できれば、調査研究の的
確な実施に資する、産学官からなる専門的な人的体制(例えば、「調査
研究班」の編成等)による、的確な指揮命令系統に基づく調査研究の実
施が不可欠と考えるが、いかがか。
 現状では、関係職員が思いつくままに有識者に相談しながら調査し、
それを持ち寄るというような手法をとっているということか。

B調査研究対象は、どのような国や地域の、どのような機関等になって
いるのか。
 [県の回答]
 対象につきましては、国内につきましては、@で申し上げた複数の支
援組織を統合して設立された機関や先進的な取組を行っている産業支援
機関等を対象としております。海外につきましては、米国モデル、欧州
モデル(ベルギー、スイス等)などについて情報収集しております。

 [再質問]
 先進的な取組みを実施している産業支援機関等を調査研究対象として
いるが、先進的な取組みとは、どのような視点で先進的と評価したのか。
県の現状の産業支援体制では提供できていない支援機能を有する産業支
援機関等としては、どのようなものがあったのか。それはどのような支
援機能だったのか。
 米国モデル、欧州モデルとは、どのようなものか。具体的な調査研究
対象(機関等)は何か。どのような情報を収集しているのか。

C調査研究はいつ頃までに終了し、その成果は公開されるのか。
 [県の回答]
 調査期間につきましては、今年度中に調査研究、分析を行い、課題を
整理する予定です。調査結果等を踏まえ、今後施策構築に反映していく
形でお示ししていく予定です。

 [再質問]
 国内外の先進的産業支援機関の優位性ある支援機能等の情報は、県内
の様々な産業支援機関にとっても、その支援機能の改善等に資するもの
であるため、報告書としてまとめ、公開する意義は非常に大きいと考え
るが、いかがか。なぜ、公費を費やし実施する重要な調査研究の貴重な
成果を、県関係組織外も含め広く活用しようと考えないのか。

D以上に関する調査研究計画書のようなものがあれば、公開していただ
きたい。
 [県の回答]
 計画書につきましては、調査研究計画書は作成しておりませんが、視
察候補やヒアリングの視点などの考え方を整理した資料に基づき実施し
ております。

 [再質問]
 定められた期間内に効果的な調査研究を実施・完了することや、調査
研究の役割や費やすコストの大きさ等を考慮すれば、事前の全体的な調
査研究計画の検討・策定・実施化が極めて重要と考えるが、いかがか。
なぜ、全体的な調査研究計画を策定しないままに、調査研究に着手した
のか。

【質問2】
〇速やかに整備すべきものプランの推進体制の姿(理念)については、
ものプランに基づき、以下のように整理できると思われる。

 [ものプランの推進体制の姿(理念)]
 ものプランに提示された9の重点施策を効果的に活用して、県内企業の
産業イノベーション創出活動の入口(経済的・社会的ニーズの把握・選
定)から出口(販売・販路拡大)までを、一貫して支援できるワンスト
ップ・ハンズオン型の支援機能と、16の産業イノベーション創出型プロ
ジェクト(地域クラスター形成プロジェクト)を効果的に推進するため
に、各プロジェクトの課題解決や連携・補完等を支援するなどの、戦略
的なプロジェクトマネジメント機能とを併せ持つ、統括的な推進体制

〇また、その整備の進め方に関する留意事項としては、ものプランには
以下の2点が挙げられている。
@統括的な推進体制の在り方等の検討においては、県のリーダーシップ
の下、同一の建物に本部を有する、県工業技術総合センター、県中小企
業振興センター及び県テクノ財団のそれぞれの支援機能の連携・融合化
等について検討する。

A前記3機関が連携したワンストップ・ハンズオン型の支援体制の整備等
(3機関の一部支援機能の統合組織の整備等)を今年度中に実現し、本県
の産業支援体制の更なる高度化を図るための調査研究を実施し、その調
査研究結果に基づき、時代の変化に迅速に対応できる新たな産業支援体
制(3機関全体の統合による新たな産業支援機関の創設等)を2022年度ま
でに構築する。

〇そこで、以下についてお尋ねしたい。
@今年度中に整備することになっている、県工業技術総合センター、県
中小企業振興センター及び県テクノ財団の3機関によるワンストップ・ハ
ンズオン型支援体制の整備の進捗状況はどうなっているのか。
※3機関の共同運営による統合型相談・支援窓口の設置等(3機関の全体
的な統合にまでは至らない、一部支援機能の統合組織の整備等)につい
て、ものプランの策定作業の中で、かなり具体的に検討されていた。

 [県の回答]
 ワンストップ・ハンズオン型支援体制の整備につきまして、工業技術
総合センター、中小企業振興センター、テクノ財団、発明協会の4機関
で会議を設置し、4月から6回にわたり支援のあり方などついて検討を
進めております。具体的には、利便性向上の観点から、既に建物入口案
内の見直し、連絡電話窓口の設置などを行ったほか、実際にワンストッ
プで対応できるよう、各機関に連絡担当者を設置し、4機関の業務内容
を共有する体制づくりを進めております。
 また、先日は、ワンストップ支援を進めていくための4機関職員合同
研修会を開催し、各機関の業務内容や連携方法について理解を深めたと
ころです。

 [再質問]
 ものプランについては、「統括的な推進体制」の整備によって、はじ
めて、独創的・戦略的で優位性のある、長野県ならではの「産業イノベ
ーション創出へのワンストップ・ハンズオン型の支援」ができるという
体系・構成・内容で策定されている。この「統括的な推進体制」の整備
への、2月県議会時点での「知事の積極的姿勢」に、何か変化等があった
のか。
 現状の取組みは、単に「若里の建物」への訪問者の利便性向上に努め
ているだけで、ものプランが真に求める、ものプランの効果的推進のた
めの「統括的な推進体制」の整備を中止したようにしか見えないが、そ
のような解釈で良いのか。
 このような「統括的な推進体制」整備への取組みの「重大な変更」に
ついては、知事は了承していないと推測するが、いかがか。

A今年度中に整備される、ものプランに基づく「ワンストップ・ハンズ
オン型支援体制」と、「攻めと守りの政策パッケージ」に基づき来年4月
に設置予定の医療機器産業振興に係る「事業化開発センター」との支援
機能の棲み分け・役割分担等については、どのように整理する予定なのか。
 [県の回答]
 ワンストップ・ハンズオン型支援体制は、4機関が連携し、産業全般
の課題解決を図る総合的・効果的な支援につなげていくものであります。
一方、医療機器に関する事業化開発センター(仮称)は、事業化に精通
した専門人材を招へいし、国内であれば医療機器完成品、海外について
は、医療機器部材の供給に特化して進めてまいります。

 [再質問]
 ものプランに提示された、ワンストップ・ハンズオン型支援体制は、
「産業全般の課題解決を図る総合的・効果的な支援につなげていくもの」
ではなく、個別企業等の産業イノベーション創出活動における様々な課
題解決に資する支援機能を整備・提供するものである。認識が根本的に
間違っているのではないのか。
 したがって、ワンストップ・ハンズオン型支援体制は、当然、医療機
器分野も支援対象とする。その上での事業化開発センター(仮称)の必
要性や支援機能の棲み分け・役割分担の在り方等について、説明願いたい。

【質問3】
〇今年度すみやかに、企業、大学、産業支援機関、行政機関、金融機関
等の関係者による、「長野県の産業支援体制の在り方検討会」(仮称)
(以下、「検討会」という。)を設置し、今年度中に、ものプラン推進
体制の整備の在り方の検討に資する調査研究を実施し、その調査研究に
基づき、整備すべき姿を描く作業等を、来年度の半ばまで実施すること
になっている。

〇そこで、以下についてお尋ねしたい。
@検討会は設置されているのか。設置されている場合には、その設置要
綱等を公開していただきたい。
 [県の回答]
 検討会については、新たな産業支援体制の検討に当たり、要綱による
検討会は設置しておりませんが、4機関による連絡会議を中心に検討を
進めており、外部専門家や金融機関、企業経営者のもとを訪問し、ご意
見を伺いながら産業支援体制の構築について検討しているところです。

 [再質問]
 4機関による連絡会議は、ものプランに基づく検討会に対してどのよ
うな位置づけとなるのか。どのような役割分担となるのか。

Aまだ、検討会が設置されていない場合には、今後の設置予定や検討ス
ケジュール等はどうなっているのか。スケジュール通り実施可能なのか。
 [県の回答]
 現段階では、いわゆる検討会を設置する予定はありませんが、@で申
し上げましたとおり、連絡会議や有識者等の意見交換により、今年度中
には調査研究を行うこととしており、ご提示したスケジュールに沿って
進めてまいりたいと考えております。ご指摘のものづくり産業振興戦略
プランの推進体制は、重要な事項でありますので、引き続き鋭意検討を
進めてまいりたいと考えております。今後ともよろしくお願い申し上げ
ます。

 [再質問]
 検討会の設置予定なしということは、ものプランに基づく、本県の産
業支援体制の抜本的見直し(再編・再構築等)については真剣には取り
組まないということで良いのか。このような、ものプラン記載事項の
「重み」を無視したような取組み、路線変更について、知事は了承して
いないと推測するが、いかがか。


ニュースレター 号外9(2018年9月22日送信)

長野県ならではの「長野県医療機器産業振興ビジョン」の策定について[県民ホットラインへの投稿(2018.9.22)]

 長野県が、今年度策定する医療機器産業振興ビジョンの「実現を目指す姿」
と、そのビジョンに基づき来年度に設置される「信州医療機器事業化開発セ
ンター(仮称)」の整備すべき支援機能の在り方等については、ニュースレ
ターNo.131とNo.132において検討させていただいたところである。

 その検討内容について、如何にしたら、県組織に確実に目を通していただ
き、参考にしていただけるのか、何か良い方法はないものかと考え抜いた結
果、県政への提言、意見、質問等を歓迎する「県民ホットライン」の活用が
最善の方法であるという結論に至った。

 そこで、その検討内容に対する県組織としての考え方をしっかりお聞きか
せいただき、私の地域産業政策の研究の高度化にも役立たせていただけるよ
う、3500文字以下という字数制限も考慮して、以下のような「質問形式」に
編集し直し、「県民ホットライン」に投稿した次第である。

 県からの回答は、原則1週間以内にいただけることになっている。回答を
受け取り次第、その内容については、またコメントしたいと考えている。

【質問1】
@昨年度末に策定した、長野県ものづくり産業振興戦略プランは、医療機
器産業振興(医療器産業の集積形成)も重点分野として当然含んでいる。
また、次世代自動車(EV化や自動運転化)分野への県内企業の展開支援体
制の整備や、県内産業における環境と共生するバイオエコノミーの加速化
等の喫緊の課題が他にもある中、なぜここで急いで、特に医療機器分野を
支援対象として選定し、医療機器産業振興ビジョンを最優先で別途策定し
なければならないのか。その特別の事情、背景等は何なのか。

A長野県が主導し、信州大学やテクノ財団等と連携し、文部科学省や経済
産業省等の大型の支援制度も活用して取り組んできた、今までの国際競争
力を有する医療機器産業の集積形成を目指すプロジェクトには、どのよう
な課題があったのか。
 もし課題があったとすれば、今回の医療機器産業振興ビジョンの策定
(信州医療機器事業化開発センターの設置を含む。)によって、その課題
をどのように解決しようと考えているのか。

B医療機器産業振興ビジョンの新規策定・実施化によって、他県等に比し
て、優位性あるいは新規性・独創性等を有する医療機器産業の集積形成を
改めて目指すことになるが、具体的にどのような優位性、新規性・独創性
等を、どのようにして確保しようと考えているのか。

C他県等に比して優位性、新規性・独創性等を有する、長野県ならではの
国際競争力を有する「医療機器産業の集積の姿」については、現時点でど
のようなイメージを描いているのか。

D長野県が目指す「医療機器産業の集積の姿」については、医療機器製造
という「ものづくり」に特化した「新規医療機器の創出・供給拠点として
の優位性」を確保する産業集積を目指すのか、あるいは、「ものづくり」
の領域を超えて「新規医療機器の開発・活用による健康・長寿推進拠点と
しての優位性」を確保する産業集積を目指すのか。
 中小企業振興条例に規定される県の責務(産業イノベーションの創出に
留意等)を考慮すると、後者の産業集積を目指すべきと考えられるが、い
かがか。

【質問2】
@長野県において、理想的な医療機器開発・事業化エコシステムを構築し
ようとする場合、医療機器の開発・事業化に係る、入口から出口までの各
工程の円滑な推進に必要な支援機能を全て県内で整備することは不可能と
なる。そこで、県外の支援機関・企業等までを含めた形での、県境を越え
た広域的なエコシステムを構築しなければならないと考えるが、いかがか。
 広域的なエコシステムの構築については、ビジョンの中に位置づける方
向で、ビジョン策定作業の中で検討していただけるのか。

A県内のある中小企業が、独自のアイディアや技術に基づき、新たに医療
機器分野に進出し、優れた新規医療機器を開発し、それを事業化して国際
的な医療機器ビジネスを展開しようとする場合において、医療機器ビジネ
スの経験に乏しい当該中小企業が、必要な臨床試験や許認可取得等を行い、
大量生産し、内外に広く販売していくという最終工程までを一貫して担う
ことは不可能に近い。
 そのような場合には、県外の大手医療機器メーカーとの連携が合理的な
経営戦略の一つになる。すなわち、研究開発(プロトタイプの製作等)ま
では県内中小企業が行い、それ以降の事業化は県外の大手医療機器メーカ
ーが実施するというようなビジネスモデルの具現化を支援できるシステム
も、長野県の医療機器開発・事業化エコシステムの中に組み込まなければ
ならないと考えるが、いかがか。
 医療機器ベンチャー企業のみならず医療機器分野に新規参入する中小企
業の、県外大手医療機器メーカーとの戦略的な広域連携ビジネスモデルの
構築支援システムについては、ビジョンの中に位置づける方向で、ビジョ
ン策定作業の中で検討していただけるのか。

B医療機器の開発・事業化に係る、県外の大手医療機器メーカー等との広
域連携の中で、県内企業はどのようにしたら利益を確保し発展し続けるこ
とができるようになるのか、というような新たな戦略的なビジネスモデル
の構築に係る課題への対応策についても、医療機器開発・事業化エコシス
テムの中に組み込まなければならないと考えるが、いかがか。
 グローバルな規模で展開する医療機器産業の動向の中で、長野県の医療
機器産業集積が持続的に発展し続けることを可能とする、新たなビジネス
モデル(優位性のある立ち位置)の構築支援システムについては、ビジョ
ンの中に位置づける方向で、ビジョン策定作業の中で検討していただける
のか。

C長野県ならではの医療機器開発・事業化エコシステムを構築するために
は、内外の先進的な医療機器開発・事業化エコシステムの事例を調査研究
し、それを参考にすることが、効果的なビジョン策定手法と考えるが、い
かがか。
 現時点でのビジョン策定作業のスケジュールには、医療機器開発・事業
化エコシステム等の先進事例の調査研究は位置づけられているのか。

【質問3】
@医療機器開発・事業化エコシステムの効果的な構築・稼働・高度化のた
めの中核拠点の整備が必要になると考えるが、いかがか。

Aこのような中核拠点が必要と考える場合には、来年度設置される予定の
信州医療機器事業化開発センター(仮称)がその役割を担うべきという考
え方で良いのか。
 そうでない場合には、現時点で同センターが担うべき支援機能として、
具体的にどのようなものを想定しているのか。

B信州医療機器事業化開発センターが、医療機器の開発・事業化に係る全
工程へのワンストップ・ハンズオン型の支援機能を整備しない(できない)
場合には、当然、長野県ものづくり産業振興戦略プランに基づき整備が進
められている、県工業技術総合センター、県中小企業振興センター、県テ
クノ財団の3機関の支援機能を連携・融合化した、県内企業の産業イノベー
ション創出活動へのワンストップ・ハンズオン型の新規支援体制が、その
役割を担うことになる。そのような考え方で良いのか。

Cいずれにしても、「攻めと守りの政策パッケージ〜テイクオフ3+1〜」に
基づき、来年度設置される信州医療機器事業化開発センターと、ものづく
り産業振興戦略プランに基づき、今年度中に整備されるワンストップ・ハ
ンズオン型の産業イノベーション創出活動への新規支援体制との関係(支
援機能の役割分担・棲み分け、連携の在り方等)を明確に整理することが、
合理的な産業支援体制の構築のために必要になると考えるが、現時点では、
どのような整理の仕方を考えているのか。

【質問4】
@県民が良く理解し高く評価できるような、体系・構成・内容からなる医
療機器産業振興ビジョンにするためには、県民の意見・要望等を広く聴く
ことができる様々な機会を設けることが必要と考えるが、現時点で、どの
ような機会を設けようと考えているのか。

A県民の意見・要望等を広く聴くことができる一般的手法として、「パブ
リックコメント」が考えられるが、実施する予定はあるのか。実施する場
合はいつごろか。

B医療機器産業振興ビジョンが策定された場合には、同ビジョンの効果的
具現化を促進するため、県内外の多くの産学官の関係者に、同ビジョンの
内容をよく理解していただき、最大限の協力をしていただけるように働き
かける場・機会の設営が必要と考えるが、いかがか。具体的には、同ビジ
ョンによる優位性のある医療機器産業の集積形成の進め方等に関する、学
識経験者によるシンポジウムの開催等が考えるが、検討していただけるか。

C医療機器産業振興ビジョンに位置づけられる新規事業に要する経費を、
来年度当初予算に計上するためには、それが可能となるスケジュールで同
ビジョンを策定しなければならないことになるが、現時点での策定スケジ
ュールはどうなっているのか。


ニュースレター 号外8(2018年9月18日送信)

長野県ものづくり産業振興戦略プランの推進体制の整備の進捗状況について[県民ホットラインへの投稿(2018.9.18)]

【はじめに】
〇長野県ものづくり産業振興戦略プラン(2018年度〜2022年度)(以下、
「ものプラン」という。)によると、ものプランの実効性を高める推進
体制の整備を今年度当初から速やかに実施することがP130以降に明示さ
れている。

〇「ものプランの推進体制の整備無くして、ものプランの効果的推進無
し」と言えるほどに重要な推進体制であるので、本来であれば、その推
進体制の整備については、ものプランの中に具体的に提示され、ものプ
ランの開始年度(2018年度)当初から整備・稼働することが当然のこと
ではあるが、何故か、ものプランの中には、推進体制の姿(理念)とそ
の整備のスケジュールのみが提示され、実際の整備は今後の「宿題」と
されている。

〇県においては、ものプランの推進体制の整備の重要性については、十
分に認識された上で、4月以降、速やかに、ものプランP130以降のスケ
ジュール通りの作業に着手されていると拝察申し上げるが、その状況に
ついての情報が公開されていないようであるので、今回、以下の通りお
尋ねすることにした次第である。

【質問1】
〇本年4月から来年3月までに、国内外の産業支援体制の先進事例や、現
状の本県の産業支援体制の課題(不足する支援機能等)を徹底的に調査
研究するようになっている。この調査研究については、2月県議会におい
て、知事も、内外の先進事例を徹底的に調査研究すると積極的に答弁さ
れている。
 この調査研究は、今後の長野県の産業支援体制の在り方、整備(再編・
再構築)の方向性を決定づける極めて重要なものであるため、スケジュ
ール通りの着実な実施をお願いしたい。

〇そこで、以下についてお尋ねしたい。
@この調査研究の進捗状況は、どうなっているのか。
A調査研究体制は、どのようなものか。
B調査研究対象は、どのような国や地域の、どのような機関等になって
いるのか。
C調査研究はいつ頃までに終了し、その成果は公開されるのか。
D以上に関する調査研究計画書のようなものがあれば、公開していただ
きたい。

【質問2】
〇速やかに整備すべきものプランの推進体制の姿(理念)については、
ものプランに基づき、以下のように整理できると思われる。

   [ものプランの推進体制の姿(理念)]
 ものプランに提示された9の重点施策を効果的に活用して、県内企業の
産業イノベーション創出活動の入口(経済的・社会的ニーズの把握・選
定)から出口(販売・販路拡大)までを、一貫して支援できるワンスト
ップ・ハンズオン型の支援機能と、16の産業イノベーション創出型プロ
ジェクト(地域クラスター形成プロジェクト)を効果的に推進するため
に、各プロジェクトの課題解決や連携・補完等を支援するなどの、戦略
的なプロジェクトマネジメント機能とを併せ持つ、統括的な推進体制

〇また、その整備の進め方に関する留意事項としては、ものプランには
以下の2点が挙げられている。
@統括的な推進体制の在り方等の検討においては、県のリーダーシップ
の下、同一の建物に本部を有する、県工業技術総合センター、県中小企
業振興センター及び県テクノ財団のそれぞれの支援機能の連携・融合化
等について検討する。

A前記3機関が連携したワンストップ・ハンズオン型の支援体制の整備等
(3機関の一部支援機能の統合組織の整備等)を今年度中に実現し、本県
の産業支援体制の更なる高度化を図るための調査研究を実施し、その調
査研究結果に基づき、時代の変化に迅速に対応できる新たな産業支援体
制(3機関全体の統合による新たな産業支援機関の創設等)を2022年度ま
でに構築する。

〇そこで、以下についてお尋ねしたい。
@今年度中に整備することになっている、県工業技術総合センター、県
中小企業振興センター及び県テクノ財団の3機関によるワンストップ・ハ
ンズオン型支援体制の整備の進捗状況はどうなっているのか。
※3機関の共同運営による統合型相談・支援窓口の設置等(3機関の全体
的な統合にまでは至らない、一部支援機能の統合組織の整備等)について、
ものプランの策定作業の中で、かなり具体的に検討されていた。

A今年度中に整備される、ものプランに基づく「ワンストップ・ハンズオ
ン型支援体制」と、「攻めと守りの政策パッケージ」に基づき来年4月に
設置予定の医療機器産業振興に係る「事業化開発センター」との支援機能
の棲み分け・役割分担等については、どのように整理する予定なのか。

【質問3】
〇今年度すみやかに、企業、大学、産業支援機関、行政機関、金融機関等
の関係者による、「長野県の産業支援体制の在り方検討会」(仮称)(以
下、「検討会」という。)を設置し、今年度中に、ものプラン推進体制の
整備の在り方の検討に資する調査研究を実施し、その調査研究に基づき、
整備すべき姿を描く作業等を、来年度の半ばまで実施することになってい
る。

〇そこで、以下についてお尋ねしたい。
@検討会は設置されているのか。設置されている場合には、その設置要綱
等を公開していただきたい。

Aまだ、検討会が設置されていない場合には、今後の設置予定や検討スケ
ジュール等はどうなっているのか。スケジュール通り実施可能なのか。

【むすびに】
〇ものプランの効果的な推進のためには、ものプランに提示された、統括
的な推進体制の速やかな整備が不可欠であるため、その整備の進捗状況に
ついて質問させていただいた。

〇県内の産学官の多くの方々が、産業支援体制の抜本的な再編・再構築と
いう、困難性は高いが、県内産業振興には非常に有意義な作業を、県は如
何にして主導し、実現するのかに注目している。

〇2年間という異例の長期間をかけて検討・策定したものプランの記載内
容の「重み」を十分に認識されて、今後の地域産業振興に真剣かつ積極的
に取り組まれることをお願い申し上げます。


ニュースレターNo.132(2018年9月15日送信)

長野県ならではの「長野県医療機器産業振興ビジョン」の策定について(No.2)
〜医療機器産業振興を主導する「事業化開発センター」の支援機能整備の在り方について〜

【はじめに】
〇長野県の阿部知事は、再選後の初登庁日(9月3日)に、速やかに着手する
政策項目(全体で25項目)をまとめた「攻めと守りの政策パッケージ〜テイ
クオフ3+1〜」を公表した。そして、ものづくり産業の振興に関する項目の中
では、「医療機器産業振興ビジョンの策定と事業化開発センターの設置」を
掲げ、遅くとも2019年度当初予算に関係費用を計上し、ビジョンの具現化を
図る意向を明らかにした。

〇地域における国際競争力を有する医療機器産業クラスターの形成について
は、長野県のみならず、他県等でも、国等の競争的資金を獲得し、様々な大
型の医療器産業振興プロジェクトに積極的に取り組んできている。
 しかし、地域における医療現場等の機器ニーズと地域の大学や企業等の技
術シーズとのマッチングによって、優れた新規医療機器を研究開発し、地域
に整備された様々な事業化支援メニュー(ソフトインフラ)を活用して、そ
の研究開発成果を円滑に事業化できるようにする仕掛け、いわゆる、医療機
器の開発・事業化のためのエコシステムを有するような医療機器産業クラス
ターは、未だに全国どこにも形成されていないと言える状況にある。

〇長野県テクノ財団においても、文部科学省の支援施策(地域イノベーション
戦略支援プログラム 国際競争力強化地域 H23年度〜H27年度)を活用して、
医療機器分野に進出しようとする県内企業を総合的に支援する拠点(メディ
カル産業支援センター)を設置したことがあったが、当該支援施策の終了後、
当該拠点は廃止され、それ以降、県内には、医療機器分野に特化した総合的
な支援拠点は存在していない状況にある。

〇このように、地域における医療機器産業の振興には、政策的に様々な課題
が顕在化してきている中で、長野県の阿部知事は、新たに、長野県の医療機
器産業の振興を主導する中核拠点「事業化開発センター」を来年4月に設置す
ることを明らかにしたのである。
 この「事業化開発センター」については、県内の産学官の多くの方々から、
地域における医療機器産業振興に係る従来からの様々な課題を解決できる、
長野県ならではの優位性を有する、新たな支援機能を整備した拠点として設
置されることに、大きな期待が寄せられていることだろう。

〇そこで、今回のニュースレターでは、前回のニュースレターでテーマとし
た「長野県医療機器産業振興ビジョン」の中に提示されることになる、長野
県の医療機器産業の振興を主導する役割を担う「事業化開発センター」の支
援機能の整備の在り方について議論することにした次第である。

【長野県における理想的な医療機器エコシステムの姿と「事業化開発センタ
ー」の役割】
〇長野県ものづくり産業振興戦略プランに提示されている「産業イノベーシ
ョン創出につながる製品開発工程」を参考にして、医療機器の開発・事業化
への道筋を整理すると以下のようになるだろう。
 そして、以下の@からGに至る各工程の円滑なステップアップに資する、
様々な支援メニュー(ソフトインフラ)が総合的に整備され、うまく稼働し
ていることが、医療機器エコシステムが構築されているということになるの
である。

[医療機器の開発・事業化への道筋]
@医療現場等の課題解決ニーズの把握・選定→A課題解決できる機器のアイ
ディアの検討・選定→Bアイディアに係るビジネスモデルの構築・検討→C
研究開発(プロトタイプの製作・評価・改良。臨床試験等を含む。)→D必
要な許認可等の取得→E生産→F販売・販路拡大→G県内外の医療現場等に
おける課題解決(医療機器分野における産業イノベーションの創出)

〇しかし、長野県において、前述のような医療機器の開発・事業化への道筋
における全工程への優位性ある支援メニュー(ソフトインフラ)の整備、す
なわち、理想的な医療機器エコシステムを構築しようとする場合、例えば、
新規医療機器開発のためのオープンイノベーション体制構築に必要な各専門
分野のプレーヤーの不足もあり、各工程の円滑な推進に必要な支援機能を全
て県内で整備することは不可能となる。すなわち、長野県の場合には、県外
の支援機関・企業等までを含めた形での、県境を越えた広域的な医療機器エ
コシステムを構築し、それを県内企業が効果的に活用できるような「仕掛け」
を工夫しなければならないことになるのである。

〇県内の中小企業が、独自のアイディアや技術に基づき、新たに医療機器分
野に進出し、優れた新規医療機器を開発し、それを事業化して国際的な医療
機器ビジネスを展開しようとする場合において、医療機器ビジネスの経験に
乏しい当該中小企業が、必要な臨床試験や許認可取得等を行い、大量生産し、
内外に広く販売していくという最終工程までを一貫して担うことは不可能に
近い。

〇そのような場合には、大手医療機器メーカーとの連携が合理的な経営戦略
の一つになる。すなわち、研究開発(プロトタイプの製作等)までは県内中
小企業が行い、それ以降の事業化は県外の大手医療機器メーカーが実施する
というようなビジネスモデルの具現化を支援できる広域連携システムを、長
野県の医療機器エコシステムの中に組み込まなければならないということで
ある。
 なお、この場合には、医療機器の開発・事業化に係る広域連携の中で、県
内企業はどのようにしたら利益を確保し発展し続けることができるようにな
るのか、というような新たなビジネスモデルの構築に係る課題への対応が重
要となるのである。

〇このようなことから、「事業化開発センター」には、県内企業が、県外の
医療機器に係る様々な支援機関・企業等との連携活動を円滑かつ効果的に企
画・実施化できるように支援できる機能を整備することが求められることに
なる。より具体的に言えば、「事業化開発センター」には、自ら有する県内
外の産業支援機関等との広域連携ネットワークを活用して、県内企業の医療
機器開発の全工程へワンストップ・ハンズオン型の支援ができる、いわゆる
「総合窓口機能」の整備・提供が求められることになるのである。

【「事業化開発センター」が有すべ支援機能の在り方】
〇長野県が来年4月に設置する医療機器に係る「事業化開発センター」に整備
すべき支援機能とは、前述の通り、広域連携ネットワークの構築によって、
県内企業の医療機器開発の全工程へワンストップ・ハンズオン型の支援がで
きる機能ということになる。
 このことについて、医療機器エコシステムという視点から見れば、県内外
の様々な医療機器に係る支援機関等との広域連携ネットワークの下に構築さ
れる、県境を越えた理想的な医療機器エコシステムを効果的に稼働・高度化
させていく拠点(ハブ)として機能するのが、「事業化開発センター」のワ
ンストップ・ハンズオン型支援体制ということになるのである。

〇また、「事業化開発センター」の支援機能の在り方について検討する際に
は、世界の医療機器市場で、約40%という圧倒的なシェアを確保している米
国においては、大手医療機器メーカーが、医療機器ベンチャー企業が開発し
た革新的な医療機器を取り込むことで成長するという、オープンイノベーシ
ョンの形が、米国の医療機器産業の圧倒的な国際競争力の源泉となっている
こと(シリコンバレー等の国際競争力を有する医療機器産業クラスターのエ
コシステムに組み込まれていること)に注目すべきことになる。

〇そこで、「事業化開発センター」の支援機能の整備の在り方を検討する際
には、長野県の場合には、米国のような独創的な医療機器ベンチャー企業を
直ちに輩出することは不可能なことから、新たに医療機器分野に参入するた
めに専任組織を立ち上げる既存の中小企業が、革新的な医療機器の開発に効
果的に取り組めるようにする支援機能の整備についての検討を最優先すべき
ことになる。
 そして、革新的な医療機器の開発においては、プロトタイプ完成後の生産・
販売戦略まで見据えて、県外の大手医療機器メーカー等と緊密に連携した形
で、開発計画の策定・実施化ができるよう、いわゆる「入口から出口まで」
の一貫支援機能の整備が重要となるのである。

〇このようなことから、「事業化開発センター」の支援機能の整備において
は、長野県が構築する広域的な医療機器エコシステム(@〜Gの工程への総
合的支援システム)の中のどの工程への支援機能を自ら整備し、どの工程へ
の支援機能を県内外の他の産業支援機関等との連携システムで提供できるよ
うに整備するのか、ということが重要問題となる。

〇いずれにしても、「事業化開発センター」には、広域連携によって構築す
る医療機器エコシステムの維持・活用・高度化を主導する中核拠点として、
県内企業の新規医療機器開発の「入口から出口まで」の全工程を俯瞰し一貫
支援できる、ワンストップ・ハンズオン型の支援機能を整備していただくこ
とを期待したい。

【むすびに】
〇今後速やかに策定されることになる医療機器産業振興ビジョンは、形式的
には、ものづくり産業振興戦略プラン(2018年度〜2022年度)の各論として
位置づけられうるものである。しかし、ものづくり産業振興戦略プランに基
づき、県内企業の産業イノベーション創出活動を活性化するために今年度中
に整備されることになっている、県工業技術総合センター、県中小企業振興
センター、県テクノ財団の3機関の支援機能を連携・融合化したワンストップ・
ハンズオン型の新規支援体制と、今回の「攻めと守りの政策パッケージ〜テイ
クオフ3+1〜」に基づき、来年4月に設置される医療機器に係る「事業化開発
センター」との関係を県はどのように整理しているのだろうか。

〇ものづくり産業振興戦略プランに基づく、産業イノベーション創出活動を
活性化するためのワンストップ・ハンズオン型の新規支援体制の中には、当
然、医療機器分野も支援対象として含まれているのである。
 ものづくり産業振興戦略プランの策定に参画された、産学官の関係の皆様
には、県の医療機器産業振興への取組みが、政策的に論理性を有する道筋か
ら外れることがないように、また、同プランの推進体制が同プランに明示さ
れたスケジュールで確実に整備されるように見守っていただき、県に対して、
適宜的確な助言等を積極的にしていただくことをお願いしたい。


ニュースレターNo.131(2018年9月7日送信)

長野県ならではの「長野県医療機器産業振興ビジョン」の策定について
〜同ビジョン策定作業の方向性を決定づける「長野県が実現を目指すべき医療機器産業の姿」の提示の在り方を中心にして〜

【はじめに】
〇長野県の阿部知事は、再選後の初登庁日(9月3日)に、速やかに着手す
る政策項目(全体で25項目)をまとめた「攻めと守りの政策パッケージ〜
テイクオフ3+1〜」を公表した。そして、ものづくり産業の振興に関する
項目の中では、「医療機器産業振興ビジョンの策定と事業化開発センター
の設置」を掲げ、遅くとも2019年度当初予算に関係費用を計上し、ビジョ
ンの具現化を図る意向を明らかにした。

〇医療機器産業振興ビジョン(以下、「医療機器ビジョン」という。)を
策定し、その具現化のための予算を2019年度当初予算に計上するという手
順を踏むとすれば、いくら時間をかけたとしても、今後3〜4か月程度で医
療機器ビジョンを完成しなければならないだろう。そうしなければ、昨年
度末に策定された、ものづくり産業振興戦略プランの場合と同様に、医療
機器ビジョンの推進体制(事業化開発センターを含む。)の整備の具体的
内容については、次年度以降の「宿題」にするというような、実際には上
手く機能しない医療機器ビジョンとなってしまうだろう。

〇そこで、今回のニュースレターは、医療機器ビジョンの速やかな策定作
業に資するため、策定作業のまず最初になされるであろう、同ビジョンが
実現を目指す医療機器産業の姿や、同ビジョンの体系・構成の在り方等に
ついての議論に、若干のヒントを提供することを目的としたい。

〇いずれにしても、同ビジョンが実現を目指す医療機器産業の姿や、その
基本的な体系・構成については、長野県が振興を目指す「医療機器」とは
何かをまず明確に定義した上で、以下のようになるだろう。

 [医療機器ビジョンの基本的な体系・構成=ビジョン・シナリオ・プロ
グラム]
◇ビジョン(実現を目指す姿):全国の多くの地域が医療機器産業の振興
に既に積極的に取り組んでいる中で、長野県が実現を目指す、他地域の医
療機器産業に比して優位性を有する、長野県ならではの医療機器産業とは
何かを明確に提示する。

◇シナリオ(ビジョン実現への道筋):ビジョンの実現への戦略的な道筋
を提示する。長野県ならではの優位性を有する医療機器産業の集積を形成
するためには、長野県ならではの優位性を有するシナリオが必要となる。

◇プログラム(シナリオの着実な推進に必要な各種施策):シナリオを着
実に推進し、優位性のある医療機器産業の集積形成を具現化するためには、
後述する静岡県のファルマプロジェクトの事例からも分かるように、少な
くとも10年以上の年月を要するだろう。そのような長期間にわたってシナ
リオを持続的に推進できる強力な推進体制の整備と、その推進体制の下で
企画・実施化される効果的なプログラムが必要となる。
 知事が設置するとしている、医療機器に係る事業化開発センターの設置
(必要な支援機能の整備等)についても、このプログラムの中に位置づけ
られるべきものである。

【医療機器ビジョンにおける「医療機器」の定義】
〇医療機器ビジョンの速やかかつ的確な策定作業を確保するためには、ま
ず、同ビジョンでの「医療機器」とは何かを明確にしておくこと(明確に
定義すること)が必要となる。医療機器ビジョンの策定に参画する産学官
の関係者の間で、同ビジョンが振興しようとする「医療機器」とは何かに
関する認識が一致していなければ、同ビジョンが実現を目指す姿や、その
実現のためのシナリオ・プログラム等に関して、論理的に議論することが
できなくなってしまうということである。

〇長野県が振興を目指す医療機器産業の「医療機器」とは、医療に直接的
に、あるいは間接的に関係する様々な機器、更には、その機器を構成する
部品等まで含むものになるのかもしれない。
 しかし、いずれにしても、知事が、医療機器ビジョンを策定するとして、
「医療機器」を対象とする旨を明確にした以上、当然、「医薬品、医療機
器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(略称:薬機法)
において定義される「医療機器」を、振興対象の中心に据えることになろう。

 [薬機法の「医療機器」の定義 第2条第4項]
 人若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること、又
は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことを目的と
されている機械器具等(再生医療等製品を除く。)であって、政令に定め
るものをいう。

〇薬機法の「医療機器」の場合には、使用における安全に係るリスクや目
的・用途などに応じて大きく4つのクラスに分類され、「医療機器」を製
造・販売するためには、それぞれのクラスに応じて、許可や登録が必要に
なる。したがって、薬機法の遵守や戦略的活用等に係る支援機能について
も、医療機器ビジョンの中に位置づけることが必要になる。

【最初に議論すべき、医療機器ビジョンが実現を目指す姿(ビジョン)に
ついて】
〇医療機器ビジョンの策定作業においては、まず、同ビジョンが実現を目
指す姿(ビジョン)を明確に定めなければ、ビジョン実現への道筋(シナ
リオ)、シナリオの着実な推進のための各種施策(プログラム)の在り方
についての論理的な議論ができないことになる。すなわち、時間を無駄に
することなく、予定期間内に優位性のある医療機器ビジョンの策定作業を
終えるためには、まず最初に、医療機器ビジョンが実現を目指す姿につい
て徹底的に議論し、明確に提示することが必要になるということである。

〇そこで、ここでは、その徹底的な議論に資するため、医療機器ビジョン
が実現を目指す姿の提示の在り方について、2つの視点から議論してみたい。

@視点1:品質・機能等において国際的競争力を有する医療機器の研究開
発・生産・供給基地としての優位性確保を目指す。(新規医療機器の創出
拠点としての優位性)

 この視点1は、医療現場等の医療機器に対する顕在的・潜在的ニーズを
探索・特定し、それに応える優位性を有する新規医療機器を広域的な産学
官連携ネットワーク(長野県に不足する支援機能の補完システム等)によ
って、研究開発・生産・供給できる、長野県ならではの医療機器産業の集
積(地域クラスター)を形成しようとするものである。

 優位性を有する新規医療機器を研究開発するためには、その新規医療機
器の具現化を可能とする技術シーズ(必要な品質・機能等の具現化を可能
とする新規かつ先端的な素材や加工技術等)の存在が前提となる。このよ
うな優れた技術シーズが県内に存在したり、あるいは、県外の優れた技術
シーズを専用できる連携体制が構築されたりしている場合には、この視点1
からのビジョン(実現を目指す姿)の設定が可能となる。

A視点2:長野県民の「更なる健康・長寿」に必要な新規医療機器を研究
開発・生産・供給し、実際にそれを活用し「更なる健康・長寿」を実現す
ること、すなわち、健康・長寿イノベーションの創出における優位性を有
する医療機器産業の集積(地域クラスター)を形成しようとするものであ
る。(新規医療機器による健康・長寿推進拠点としての優位性)

 この視点2は、長野県民の更なる健康・長寿を実現するという、本県の
政策目標の具現化を加速するために必要な新規医療機器を広域的な産学官
連携ネットワーク(長野県に不足する支援機能の補完システム等)によっ
て、研究開発・生産・供給し、実際にそれを県内の医療機関、企業、県民
等が活用し、「更なる健康・長寿」を実現することまでの一貫した健康・
長寿ビジネスモデルを構築・展開できる医療機器産業の集積を形成しよう
とするものである。この長野県発の健康・長寿ビジネスモデルは、国内外
に広く展開させることによって、本県の医療機器産業により大きな付加価
値をもたらすものとなる。

 このような取組みについては、静岡県の東部地域を中心とする「富士山
麓先端医療産業集積構想(ファルマバレー構想、平成13年策定)」に基づ
く取組み(ファルマプロジェクト)を先進事例として参考にすることがで
きるだろう。
 静岡県では、同構想に基づき、世界一の健康・長寿県の形成を目指して、
「健康増進・疾病克服」と「県民の経済基盤の確立」を両輪に、地域企業
の高い技術力を活用しながら、患者・家族や医療現場のための、「ものづ
くり」、「ひとづくり」、「まちづくり」に取り組んできている。
 「ものづくり」については、医療機関(県立がんセンターが中心)、研
究機関、企業群の連携強化により、国内外に向け、医療・健康をキーワー
ドとする地域企業発の「Made in Mt.Fuji」製品の研究開発・製造・供給を
目指している。

〇長野県は、視点1のような「ものづくり」に特化した「新規医療機器の
創出拠点としての優位性」の確保を目指すのか、あるいは、視点1の「も
のづくり」の領域を超えて、視点2のような「新規医療機器による健康・
長寿推進拠点としての優位性」の確保を目指すのか。
 医療機器ビジョンが実現を目指す姿に関する議論においては、このこと
についての関係の皆様による徹底した議論を期待したい。

【むすびに】
〇前述したように、長野県の医療機器ビジョンの策定作業においては、ま
ず、ビジョン(実現を目指す姿。長野県が他県等に比して優位性を確保で
きる医療機器の産業分野の特定等)を明確に設定しなければ、ビジョン実
現のためのシナリオやプログラムについての議論を始めることはできない。
すなわち、ビジョン(実現を目指す姿)を定めなければ、医療機器ビジョ
ンの策定作業を論理的に進めることはできないということである。

〇そこで、今回のニュースレターでは、実現を目指す姿の設定の、医療機
器ビジョン策定作業における重要性に鑑み、同ビジョンのシナリオやプロ
グラムの在り方に関する議論についてはまだ行わないこととした。長野県
によって、実現を目指す姿の概要が明らかにされたところで、シナリオや
プログラムの在り方についての議論をしてみたいと考えている。

〇県内の産学官の皆様方には、医療機器ビジョンが、優位性のある長野県
ならではの医療機器産業の集積形成に実際に役立つ「バイブル」として策
定されるように、そのビジョン・シナリオ・プログラムの中のまずはビジ
ョンの在り方について、県に対して積極的にご助言等をしていただくこと
をお願いしたい。


ニュースレターNo.130(2018年8月24日送信)

長野県の新規事業「IoTデバイス事業化・開発センター市場・技術動向調査委託業務」の産業政策的視点からの分析・評価

【はじめに】
〇長野県では、県工業技術総合センター「IoTデバイス事業化・開発セン
ター」(以下、「IoTセンター」という。)が、重点的に支援すべきIoT
デバイスやIoTジネスの領域を設定し、その領域におけるIoTビジネス具
現化プロジェクトをモデル事業として組成・実施化することを目的とし
て、「IoTデバイス事業化・開発センター市場・技術動向調査委託業務」
(以下、「IoT委託業務」という。)を実施する。この9月10日が、その
企画提案書の県への提出期限で、委託料の上限は600万円となっている。

〇このIoT委託業務の根幹は、より具体的に言えば、県組織であるIoTセ
ンターが、受託者の高度なIoT市場・技術動向調査能力や新規IoTビジネ
ス創出のための研究開発プロジェクト企画・実施化能力を前提とし、そ
の能力を活用して、県内の産学官に対して、事業化の成功確率の高いIoT
ビジネス具現化プロジェクトを提案し、参画者を募り、必要な資金も確
保して実施化を図るというものである。
 プロジェクトの実際の運営は、参画者の中から代表者を選定し、その
代表者が主導することを想定しているようである。

〇県組織が、外部の英知を活用して、IoTによる県内企業の生産性向上
や新事業創出に貢献しようという本委託業務は、県組織のIoT関連の支
援機能を高度化するものとして高く評価されるべきものではある。
 しかし、県が描く本委託業務を通しての、IoT重点支援領域の設定、
その支援領域でのIoTビジネス具現化プロジェクトの組成・実施化やそ
の成果の早期事業化への道筋には、見逃すことのできない課題が存在
している。それらの課題を以下に提示し、その課題の解決方策等につい
て議論してみたい。

[課題1 本委託業務の企画提案書作成の時間的制約]
 本委託業務(プロポーザル方式)の実施についてのプレスリリース
が8月23日、説明会が8月24日、企画提案書の県への提出期限が9月10日
であり、受託希望者にとっては、企画提案書作成に必要な時間を確保
することが極めて困難な状況にある。
 十分に練られた優れた企画提案書が、数多く提出されること(プロ
ポーザル方式の真の効果)は期待しにくい状況となっているのである。

[課題2 重点支援領域の絞り込みの困難性]
 県としては、IoTデバイスという部品のレベルでのビジネスから、IoT
デバイス等をツールとして新たなサービスやモノを創出・提供するIoT
活用ビジネスに至る、非常に広範な産業分野を支援対象とせざるを得
ないため、IoTセンターが、その重点支援領域を単純に絞り込むことは
非常に困難になる。

[課題3 モデルプロジェクトのテーマの絞り込み等の困難性]
 IoTセンターの重点支援領域を絞り込むことが非常に困難であること
から、その支援領域内でのモデル事業としてのIoTビジネス具現化プロ
ジェクトのテーマの絞り込み、研究開発実施計画の策定等も非常に困難
になる。

[課題4 モデルプロジェクトの企画・実施化の時間的制約]
 IoTセンターの重点支援領域の絞り込みや、IoTビジネス具現化プロジ
ェクトのテーマ選定のための調査の終了後に、調査結果についての説明
会の開催等を通して、IoT活用に関心の高い企業等が出そろったところで、
当該企業等にとって有望なIoTビジネス分野を抽出・特定することになる。
 そして、その有望なIoTビジネス分野を特定できた後に、そのビジネス
分野における市場競争力を有する新製品・新サービスの創出・提供のた
めの、具体的なIoTビジネス具現化プロジェクトを組成・実施化するこ
とになる。
 その研究開発体制の構築においては、最終的に事業化に責任を持つ企
業の選定、研究開発成果(知財等)の配分割合、研究開発資金の調達・
分担等、実施化までに解決すべき事項が多く、委託期間中(平成31年3月
15日まで)の研究開発実施計画の作成・実施化は非常に困難となる。

【[課題1 本委託業務の企画提案書作成の時間的制約]の解決方策等に
ついて】
〇県は、今回のIoT委託業務を企画するに当たっては、その実行性を担保
するために、本委託業務を受託する能力を有すると思われる調査企業等
に相談し、その意見等を反映した内容で委託業務仕様書等を作成してい
ることが推測できる。

〇したがって、IoT委託業務の実施を事前に知っていた調査企業等と、
8月23日のプレスリリースで初めてIoT委託業務の実施を知った調査企業
等が存在することになる。これは避けがたいことではあるが、この時間
的な「差」を実質的に解消し、できるだけ公平性を確保するためには、
プレスリリースから企画提案書の提出期限までの間に十分な時間的余裕
(少なくとも1か月以上)を設けることが必要となるが、今回、そのよ
うな対応ができなくなってしまったことは、反省すべき事項として指摘
できるだろう。

【[課題2 重点支援領域の絞り込みの困難性]の解決方策等について】
〇県としては、IoT活用に関連する非常に広範な産業分野(知事の言葉を
借りれば、製造業はもとより農林業、建設業、介護・福祉産業等の幅広
い産業分野)を支援対象とせざるを得ないため、IoTセンターが、その
重点支援領域を単純に絞り込むことは非常に困難になる。
 今回苦労して、グローバルな規模でのIoT市場・技術動向調査等を参
考にして、何らかの重点支援領域を設定できたとしても、IoT市場・技
術動向、特にIoT関連の市場・技術に関する各種ニーズの動向は、短期間
で多種多様に変化していくことが想定できる。

〇したがって、IoTセンターへの支援ニーズも様々に変化していくこと
が想定できるが、毎年、支援ニーズを把握するために、今回のような市
場・技術動向調査を専門企業等に委託することはできない。それを前提
とした県としての的確な対応が必要となるのである。

〇したがって、科学技術や工業技術を活用し、県内産業の国際競争力の
強化や県民生活の質的高度化を支援する中核拠点である工業技術総合セ
ンターに属するIoTセンターとしては、重点支援領域を抽出・特定するこ
とに拘るのではなく、県内産業のIoTに係る潜在的・顕在的支援ニーズ
に効果的に対応できるよう、工業技術総合センター独自では支援できな
い領域については、県内外の産学官との最適連携(広域的なオープンイ
ノベーション)によって支援できるような体制の整備にこそエネルギー
を注ぐべきと言えるだろう。

【[課題3 モデルプロジェクトのテーマの絞り込み等の困難性]の解決
方策等について】
〇IoTセンターとしての重点支援領域を絞り込むことが非常に困難である
ことから、IoTセンターが先導して組成・実施化するモデル事業としての
IoTビジネス具現化プロジェクトのテーマの絞り込み、研究開発実施計画
の策定等も非常に困難になる。

〇工業技術総合センターは、技術相談、依頼試験、機器貸付、受託研究
等の受動的業務(県内企業等から依頼されて実施する業務)の専門機関
であって、市場ニーズ等を把握して、産学官連携による新技術・新製品
の研究開発プロジェクトを自ら企画・運営するような能動的業務(県内
企業等の新分野進出を先導する業務等)を「不得手」としてきている。
今回のIoT委託業務は、その「不得手」を補完することを意図していると
思われる。しかし、この6か月程度の短期間の委託業務のみで、長年にわ
たって解消できなかった「不得手」を完璧に補完することは不可能と言
わざるを得ない。

〇県内には、工業技術総合センターが「不得手」とする能動的業務の実
施をミッションとしている長野県テクノ財団のような専門機関もある。
したがって、このような専門機関の支援機能の更なる強化のためにIoT
委託業務のような事業を実施すれば、より大きく確実な成果を期待する
ことができただろう。
 しかし、ここに至って、IoT委託業務の骨格を変更することは不可能
なので、テクノ財団等の県内専門機関を受託者の協力機関(再委託先等)
として位置づけ活用することなど、業務実施上で創意工夫をしていただ
くことをお願いしたい。

【[課題4 モデルプロジェクトの企画・実施化の時間的制約]の解決方
策等について】
〇モデルプロジェクト(IoTビジネス具現化プロジェクト)の今年度中の
実施化への段取りについては、以下のような流れを想定できるだろう。
@IoTセンターの重点支援領域の絞り込みや、IoTビジネス具現化プロジ
ェクトのテーマ選定に資する調査の実施
Aその調査結果についての説明会の開催等を通して、IoT活用に関心の
高い企業からなるIoT活用研究会の開催
Bその研究会参加企業にとって有望なIoTビジネス分野を抽出・特定し、
参加企業それぞれのIoTビジネス具現化プロジェクト案を作成
CそのIoTビジネス具現化プロジェクト案の中から、今年度中に、プロ
ジェクトの実施体制整備(提案公募制度活用の場合の管理法人の選定を
含む。)や、当面の活動資金の調達が可能なものを選定し実施化

〇いずれにしても、受託者には(受託者が県外企業等の場合には特に)、
県内の産学官連携活動状況に詳しいテクノ財団等の県内の産業支援機関
との連携を密にして事業を企画・実施化することが効果的であることを
理解していただき、IoTセンターには、受託者に頼り過ぎずに不足する
支援機能を補完できる、広域的なオープンイノベーション志向によって
本委託業務を推進することが、本委託業務の目標達成の「近道」となる
こと理解していただきたいのである。

【むすびに】
〇県の新規事業のIoT委託業務は、工業技術総合センターに不足している
新規プロジェクト企画・実施化機能の補完を狙う事業として意義のある
ものである。しかし、6か月程度の単年度事業によって、長年にわたって
具現化できなかった、同センターの新規プロジェクト企画・実施化機能
の強化を図ることは不可能であると言わざるを得ない。

〇現在、県においては、工業技術総合センター、中小企業振興センター、
テクノ財団の3機関の統合を含む、産業支援体制の抜本的見直し・再編の
ための様々な作業が進められている。
 今回のIoT委託業務の実施過程で顕在化するであろう、工業技術総合セ
ンターの支援機能に係る様々な課題は、3機関の統合の意義を改めて産学
官の関係者に認識させるとともに、産業支援体制の再編の在り方に、重要
な示唆を与えることになるだろう。


ニュースレター号外7(2018年8月22日送信)

平成30年8月28日開催の長野県中小企業振興審議会への期待
〜新たなものづくり産業振興戦略プラン(2018〜2022年度)の推進体制の
 早期整備に資する審議をお願いしたいこと〜

【はじめに】
〇長野県のホームページ(プレスリリース)によると、平成30年8月28日
開催の長野県中小企業振興審議会においては、@平成29年度の主な中小
企業振興施策の実施状況、A長野県ものづくり産業振興戦略プラン(H24
〜29年度)の取組状況、Bしあわせ信州創造プラン2.0、の3項目について
審議されることになっている。

〇すなわち、前年度までの古いものづくり産業振興戦略プランについては
審議されるが、今年度からの新たなものづくり産業振興戦略プラン(2018
〜2022年度)(以下、ものプランという。)において「宿題」とされてい
る、ものプランの推進体制の早期整備の在り方等については、審議されな
いことになっているのである。

〇「ものプランの推進体制の整備無くして、ものプランの効果的推進無し」
であるので、ものプランの推進体制の早期整備は、本県の中小企業振興に
とっての重要事項である。前回の中小企業振興審議会(平成30年2月9日)
においても、早期整備の必要性が確認されている。(県ホームページに掲
載の議事録を参照願います。)

〇したがって、その任務について「中小企業の振興に関する重要事項につ
いて調査審議する」と条例に定められている同審議会においては、是非、
ものプランの推進体制の早期整備に資する審議がなされるよう、関係の皆様
による県への助言等のご支援・ご協力を賜りたく、ニュースレター号外7を
送信した次第である。

【「宿題」(プラン推進体制の早期整備)の内容等について】
〇本来なら、今年度から開始のものプランの推進体制については、ものプ
ランの中に具体的に提示され、年度当初から整備・稼働することが当然の
ことではあるが、何故か、ものプランの中には、推進体制の姿(理念)と
その整備のスケジュールのみが提示され、実際の整備は今後の「宿題」と
されているのである。

〇その「宿題」については、ものプラン130ページを基に、以下の様に整理
することができる。
1 整備すべき推進体制の姿(理念)
 ものプランに提示された9の重点施策を効果的に活用して、県内企業の産
業イノベーション創出活動の入口(経済的・社会的ニーズの把握・選定)か
ら出口(販売・販路拡大)までを、一貫して支援できるワンストップ・ハン
ズオン型の支援機能と、16の産業イノベーション創出型プロジェクト(地域
クラスター形成プロジェクト)を効果的に推進するために、各プロジェクト
の課題解決や連携・補完等を支援するなどの、戦略的なプロジェクトマネジ
メント機能とを併せ持つ、統括的な推進体制

2 整備の進め方に関する留意事項
@統括的な推進体制の在り方等の検討においては、県のリーダーシップの下、
同一の建物に本部を有する、県工業技術総合センター、県中小企業振興セン
ター及び県テクノ財団のそれぞれの支援機能の連携等について検討する。

A前記3機関が連携したワンストップ・ハンズオン型の支援体制の整備等(3
機関の一部支援機能の統合組織の整備等)を今年度中に実現し、本県の産業
支援体制の更なる高度化を図るための調査研究を実施し、その調査研究結果
に基づき、時代の変化に迅速に対応できる新たな産業支援体制(3機関全体の
統合による新たな産業支援機関の創設等)を2022年度までに構築する。

3 整備の具体的なスケジュール(3段階)
 第1段階(2018年度4月から)
@県工業技術総合センター、県中小企業振興センター及び県テクノ財団の3
機関によるワンストップ・ハンズオン型支援体制の整備等
※3機関の共同運営による統合型相談・支援窓口の設置等(3機関の全体的な
統合にまでは至らない、一部支援機能の統合組織の整備等)
A企業、大学、産業支援機関、行政機関、金融機関等の関係者による、「長
野県の産業支援体制の在り方検討会」(仮称)の設置
B国内外の産業支援体制の先進事例や、現状の本県の産業支援体制の課題
(不足する支援機能等)を調査研究

 第2段階(2019年度前半)
@第1段階の調査研究結果に基づき、本県の産業支援体制のあるべき姿を検
討・決定
※3機関の統合を前提とした新たな産業支援体制の構築(3機関全体の統合に
よる新たな産業支援機関の創設等)を目指す。
A本県の産業支援体制のあるべき姿を具現化するための方策について検討・
決定

 第3段階(2019年度後半〜2022年度末)
@第2段階で検討・決定した、本県の産業支援体制のあるべき姿を具現化す
るため、新たな体制を構築(3機関統合による新たな産業支援機関の創設等)
A新たな産業支援体制の構築に当たっては、優先度の高い事項から速やかに
実施

【むすびに】
〇前述のものプランの統括的推進体制の整備スケジュールで明らかなように、
3機関の共同運営による統合型相談・支援窓口の設置と、「長野県の産業支援
体制の在り方検討会」(仮称)による、国内外の産業支援体制の先進事例や、
現状の本県の産業支援体制の課題(不足する支援機能等)の調査研究には、
速やかに着手することが求められている。(スケジュール表では、今年度4月
から着手となっている。)
 特に、検討会による先進事例等の調査研究は、新たに整備すべき産業支援
体制の具体的な内容等を決定づける極めて重要な作業であることは明らかで
ある。

〇したがって、今回の中小企業振興審議会では、3機関の統合型相談・支援
窓口の整備と検討会の設置・調査研究の進捗状況を聴取し、現状での課題や
その解決方策等について審議していただき、より効果的な統合型相談・支援
窓口の整備と検討会による調査研究が速やかに実施化できるようにすること
が必要となる。

〇いずれにしても、今回の中小企業振興審議会においては、本県の中小企業
振興施策推進の「バイブル」とも言えるものプランの、肝心な推進体制の整
備が遅れている(ものプランが不完全なままに放置されている)という現状
の課題を重く受け止めていただき、その課題の解決方策等について十分に審
議していただくことをお願いしたいのである。
 阿部知事も、県議会をはじめ、様々な場で、ものプランの推進体制や、3機
関統合による新たな産業支援体制の構築の速やかな実現の重要性について、
繰り返し語って来ているのである。


ニュースレターNo.129(2018年8月8日送信)

AI・IoT導入による地域産業の競争力強化への支援の在り方
 〜機械系製造業の中小企業におけるAI・IoT導入への具体的支援手法を参考として〜

【はじめに】
〇平成30年8月6日の信濃毎日新聞は、知事選で三選を果たした阿部守一氏が、
産業振興や生活の利便性向上などのために、AIやIoT等の先端技術の活用を検
討する新組織を「できるだけ速やか」に設置する意向であることを報じていた。

〇既にニュースレターNo.121(2018.2.25送信)に記載した通り、阿部氏は、
2月県議会において、「製造業はもとより農林業、建設業、介護・福祉産業等
の幅広い分野におけるAI、IoTの利活用を促進するため、有識者の知見を得て
『AI・IoT利活用戦略』を策定する」旨を表明しており、今後速やかに設置す
る新組織においては、当然、その利活用戦略が検討されるものと思われる。

〇また、ニュースレターNo.121では、長野県が策定すべき「AI・IoT利活用戦
略」のビジョン(戦略が実現を目指す姿)、シナリオ(ビジョン実現への道筋・
政策的仕掛け)、プログラム(シナリオの着実な推進に必要な各種施策)の体
系・構成の在り方についても具体的に提言している。

〇その「AI・IoT利活用戦略」で提示すべきプログラムについては、@「一般
的支援のためのプログラム」とA「特定プロジェクトのためのプログラム」に
区分できることも解説している。

〇今回のニュースレターでは、前述のA「特定プロジェクトのためのプログラ
ム」の中に主要プログラムとして位置づけられるべき新規事業の企画・実施化
に資する情報(経済産業研究所の「IoTによる中堅・中小企業の競争力強化に関
する研究会」の活動概要等)を、北陸産業活性化センターによるセミナー「IoT
化・AI導入の意義・課題」(講師:経済産業研究所 上席研究員 岩本晃一氏)
に参加し入手した。
 そこで、ここでそれを紹介しつつ、長野県が、経済産業研究所の研究会に相
当するような新規事業を企画・実施化する場合の留意点等について提示してみ
ることにした次第である。

【経済産業研究所(RIETI)の「IoTによる中堅・中小企業の競争力強化に関す
る研究会」(以下「IoT研究会」という。)について】
〇RIETIが2016年4月から実施しているIoT研究会の@設立趣旨、Aメンバー構成、
B活動内容、C成果等 の概要については、セミナー資料に基づき以下のよう
に整理することができるだろう。
@設立趣旨
 IoT導入に関する中小企業の不安・疑問等(IoTを使いこなせるのか、投資を
回収できるのか、製造現場は対応できるのかなど)を解消し、真に競争力強化
に資するIoT導入の具現化を促進する。
 IoT研究会は、IoT導入モデル企業のIoT導入に至る途中経過(試行錯誤の内容
等を含む。)を全て公開し、他の企業のIoT導入に資する。
 モデル企業は、途中経過を全て公開する代わりに、専門のITコンサルティン
グ会社に依頼すれば3,000〜4,000万円はかかるコンサルティングに相当するア
ドバイスを無料で受けられるというメリットを得る。

※参考1:ITコンサルティング会社に依頼すれば、通常は、たまたま担当となっ
た1人のコンサルタントからのアドバイスを受けることとなるが、IoT研究会の
場合には、複数の専門家からのアドバイスを受けられ、より客観的なIoT導入に
よる課題解決方策の提案等を受けられるというメリットを得ることができる。

※参考2:公開される途中経過とは、様々な中小企業のIoT導入に関する不安・
疑問等の解消に資するため、どのような困難が待ち構えていたのか、その困難
をどのように乗り越えたのか、どのような検討課題があったのか、どのような
投資案が検討され、最終的にどのような投資案がどのようにして採用されたの
か、投資リターンの金額はどの程度なのか、など非常に具体的で細部にわたる。

Aメンバー構成
 IoT導入モデル企業:IoT導入を強く希望する機械系製造業の中小企業を数社
選定。
 IoTシステム提供企業(支援チーム):大手電機メーカーに所属するIoT関係
の技術者を数人選定。
 学識経験者(支援チーム):大学、研究機関に所属するIoT関係の専門家を
数人選定。

B活動内容
 IoT導入モデル企業の競争力強化のために解決すべき課題を抽出・特定し、
その特定課題のIoTによる解決方策を見い出すために、研究会メンバーが様々
な視点から検討を重ねる。
 具体的には、モデル企業がIoT導入の進捗状況等について説明し、そこに存
在する問題点の解決について、支援チームの専門家に様々な視点からアドバイ
ス等をしてもらい、IoT導入の具現化促進を図るというもの。

※参考:IoT導入の在り方に関する2つの視点
 視点1 人間中心のシステムとAI主導のシステム
・IoTの活用については、あくまで製造工程の課題の「見える化」に止め、表
示を見て原因を突き止め、対策を考え実行するのは熟練作業員という人間中心
のシステム
・「見える化」だけに止まらず、AIが課題発生の原因を突き止め、課題解決方
策を作業員に提示するというAI主導のシステム

 視点2 守りのIoT導入と攻めのIoT導入
・無理や無駄の解消、効率化、合理化、コスト削減、人員整理等を目指す守り
のIoT導入
・新しいビジネスの創出、売上高の増加、雇用の創出等を目指す攻めのIoT導入

C成果等
 モデル企業が実際に導入したIoTは、以下の基準によって選定され、予想以上
の成果を上げている。
 基準1:モデル企業の資金力では困難な高額投資が必要なものは対象外
 基準2:計算上で投資リターンが小さいものは対象外
 基準3:IoT導入後に自社で維持管理できないものは対象外

 モデル企業のIoT導入への取組みが、取引先の企業や金融機関に高く評価さ
れ、モデル企業の信用力向上効果をもたらしていることも、想定外の副次的成
果としてアピールされている。

【長野県がRIETIの「IoT研究会」に相当する新規事業を企画・実施化する場合
の留意点等について(長野県ものづくり産業振興戦略プランに基づく新たなワ
ンストップ・ハンズオン型の産業支援体制の整備に関連づけて新規事業を検討
すべきこと)】
〇長野県がRIETIの「IoT研究会」に相当する新規事業を企画・実施化する場合
の最大の課題は、RIETIの「IoT研究会」の支援対象(IoT導入の主体)は、機械
系製造業の中小企業に絞り込まれれているが、長野県の目指す支援対象は、製
造業はもとより農林業、建設業、介護・福祉産業等の幅広い分野にわたり、
「IoT研究会」の手法をそのまま導入することはできないということである。

〇支援対象が様々な産業分野に拡散すれば、例えば、RIETIと類似の研究会を実
施する場合の支援チームの専門家構成も、当然、拡散せざるを得ないという問題
が伴うことになる。
 この問題への対応策としては、産業分野毎、更には業種分野毎の研究会とする
など、研究会が密度の濃い検討ができる場となるような創意工夫が必要となろう。

〇RIETIの「IoT研究会」を通して把握された、IoT導入の成功への重要ポイント
は、以下の2点に絞られるという。
@IoT導入を目指す中小企業が、当該企業が抱える競争力強化のために解決すべ
き「課題」を抽出・特定できること
AIoT導入を目指す中小企業が、抽出・特定した「課題」の「解決方策」を見い
出すことができること

〇この2つの重要ポイントは、長野県が目指す、幅広い産業分野でのIoT導入促進
のための新規事業の企画・実施化においても重要視すべきものとなる。したがっ
て、この2つの重要ポイントを、IoT導入の主体となる様々な産業・業種の事業者
が、円滑にクリアできるように、ワンストップ・ハンズオン型の支援体制を構築
することが基本的な政策対応となる。

〇すなわち、長野県の場合においては、自社のみならず自社の周りの地域社会や
地域産業における「課題解決ニーズ」の把握、「課題解決方策の構築・ビジネス
モデル化の検討」等の初期工程から、必要な研究開発、研究開発成果の早期事業
化・社会実装という最終工程に至るまでの各工程の円滑なステップアップの促進
に資する、各工程毎の支援メニューをワンストップ・ハンズオン型で提供できる
支援拠点(窓口)の整備が、前述の「一般的支援のためのプログラム」の効果的
な企画・実施化のために不可欠となるのである。

〇また、ここで検討してきたRIETIの「IoT研究会」に相当する新規事業を企画・
実施化する場合には、その事業は、前述の「特定プロジェクトのためのプログラ
ム」の中に位置づけられるべきものとなる。

〇いずれにしても、「一般的支援のためのプログラム」と「特定プロジェクトの
ためのプログラム」の提供を主導する機能については、現在、県において、もの
づくり産業振興戦略プランに基づき整備が進められている、県工業技術総合セン
ター、県中小企業振興センター、県テクノ財団の3機関の支援機能を高度に融合化
した、ワンストップ・ハンズオン型の支援体制の中に位置づけることが、最も合
理的な政策対応となることを強調しておきたい。

【むすびに】
〇今回のセミナーに参加して、北陸地域(富山、石川、福井の3県)においては、
3県の県境を越えた産学官連携ネットワークを形成し、各県が有する優れた産業
的・学術的資源を相互に活用しつつ、北陸地域における国際競争力を有するもの
づくり産業クラスターの形成実現のために、広域的かつ一体的に様々な事業の企
画・実施化に活発に取り組んでいることを改めて強く認識させられた。

〇北陸地域が、県境をまたぐ広域的産業クラスター形成について、他県等に比し
てより効果的に取り組むことができている背景には、北陸地域全体の産業振興を
主導することをミッションとする北陸産業活性化センターの積極的活動の存在が
ある。

〇長野県では現在、ものづくり産業振興戦略プランに基づき、ものづくり産業を
中心とする産業支援体制の抜本的見直し・再構築に取り組んでいる。このことは、
阿部氏の選挙公約(あべ守一基本政策集2018)にも明記されている。
 この産業支援体制の抜本的見直し・再構築においては、長野県が日本で最も多
くの県(8県)と隣接している県でもあることから、この隣接を北陸地域のように
産業振興の優位性として活かせるように、県境を越えた広域的産業クラスター形
成への支援体制の在り方についても併せて検討し具現化すべきことを提案したい。


ニュースレターNo.128(2018年7月7日送信)

「長野県航空機産業振興ビジョン」に内在する論理的脆弱性への対応について
 〜飯田・下伊那地域の航空機産業クラスター形成の中核的推進機関の機能強化促進のために〜

【はじめに】
〇ニュースレターNo.127(2018.6.23送信)において、長野県の地域産業政策の優
位性ある具現化のために、速やかに解決すべき諸課題の一つとして、「長野県航空
機産業振興ビジョン〜アジアの航空機システムの拠点づくり〜」(2016年5月策定。
以下、「県航空機産業ビジョン」という。)の具現化促進のためには、飯田・下伊
那地域のクラスター形成活動に係る中核的推進機関の機能強化と自立化が極めて重
要であることを提示した。

〇すなわち、県航空機産業ビジョンの策定主体である県が、同ビジョンに従い、飯
田・下伊那地域に国際競争力を有する航空機産業クラスター(アジアの航空機シス
テム拠点)の形成を真に目指すのであれば、県としては、そのクラスター形成活動
の中核的推進機関(南信州・飯田産業センターを想定)が、グローバルな視点から、
クラスター形成に資する各種事業を自ら企画・実施化・進捗管理し、国内外から多
くの関係企業・研究機関等を同地域に呼び込むことができるように、その機能強化
を最優先すべきことを改めて提言したのである。

〇ここでの航空機産業クラスター形成に資する各種事業とは、クラスター内での、
航空機システムに関する知識の移転・創造や知的交流の場の提供、クラスター内外
にわたる知的ネットワークの形成・活用、研究開発やその早期事業化のためのグロ
ーバルな規模での産学官連携コーディネートなどを目的とする個別具体的な事業で
あって、その新規性・独創性等から、クラスター外の企業等の参加も動機づけるこ
とができる魅力ある事業のことである。

〇地域クラスター形成を具現化するためには、クラスター形成の中核的推進機関が、
中長期的にクラスター形成に資する各種事業を強力に企画・実施化していくことが
不可欠であることについては、地域クラスター政策に先進的に取り組んできている
EU等に関する各種の事例研究においても既に明らかにされていることである。

【地域クラスター形成理論から逸脱した県の事業企画・実施化の方向性】
〇飯田・下伊那地域を中心とする航空機産業クラスター形成促進のための最近の長
野県の取組みを見ていると、同地域を中心とする航空機産業クラスター形成促進に
資する重要事業(同地域が主導すべき重要事業)を、他地域の産業支援機関に安易
に委託し、飯田・下伊那地域におけるクラスター形成の中核的推進機関の機能強化
を軽視するような、すなわち、地域クラスター形成理論から逸脱したような活動が
目立っている。
 このままでは、既に多額の公費を注ぎ込んでいる、飯田・下伊那地域における航
空機産業クラスター形成への取組みが、国際競争力を有する「アジアの航空機シス
テム拠点」の実現に結びつきにくくなるのではないのかと、非常に危機感を覚えて
いるのである。

〇例えば、2017年11月15日に開催された飯田・下伊那地域における航空機産業クラ
スター形成活動のキックオフイベントについては、長野県が、飯田・下伊那地域の
産業支援機関(南信州・飯田産業センター等)ではなく、諏訪市に所在する諏訪圏
ものづくり推進機構に委託して実施している。
 また、最近では、飯田・下伊那地域での航空機システム拠点形成を促進するため
の、航空機システム分野への参入企業増大を目指す「航空機システム研究会」を、
同じく諏訪圏ものづくり推進機構に委託して実施しているのである。

〇飯田・下伊那地域の航空機産業クラスター形成への「熱い思い」や「強い意思」
を良く理解し尊重できる中核的推進機関が、同クラスター形成に資する各種事業を
自ら企画・実施化・進捗管理し、国内外から多くの関係企業・研究機関等を同地域
に呼び込むことができるように、その機能強化を最優先すべきという、地域クラス
ター形成理論に基づく基本的戦略から逸脱したような県の取組みに、違和感を抱い
ているのは私だけではないだろう。

〇以上のような県航空機産業ビジョンの具現化への、同ビジョン策定主体である県
の取組みの「混乱」は、飯田・下伊那地域に国際競争力を有する航空機システム産
業に特化した航空機産業クラスター(アジアの航空機システム拠点)を形成するた
めの取組みと、県内全域の企業の航空機システム分野への参入を支援する取組みと
を、戦略的に整理できないままに企画・実施化していることによるものである。

〇そこで、以下では、今までのニュースレターで県航空機産業ビジョンの論理的脆
弱性として幾度も繰り返し指摘してきた事項を整理し、飯田・下伊那地域における
航空機産業クラスター(アジアの航空機システム拠点)形成具現化に焦点を絞り、
改めて飯田・下伊那地域の中核的推進機関の事業の企画・実施化機能の強化が如何
に重要であるかを明らかにしたい。

【県航空機産業ビジョンのビジョン・シナリオのエッセンス】
〇以下で、県航空機産業ビジョンの論理的脆弱性やそれへの対応策等について、具
体的に議論を進めるに当たり、最初に、同ビジョンのビジョン(目指す姿)とシナ
リオ(ビジョン実現への道筋)を確認しておきたい。

ビジョン
=飯田・下伊那地域に、航空機システム関連の企業・研究機関等が集積する「アジ
アの航空機システム拠点」を形成すること。

シナリオ(特に、他地域に対する優位性の確保に焦点を絞って整理)
=@飯田・下伊那地域に、国内には未だ無い航空機関係の環境試験機器を有する国
 内初の「航空機システム実証試験拠点」を整備する。
  ↓
 Aその実証試験拠点を利用するために、国内外の航空機システム関連企業・研究
 機関等が、頻繁に飯田・下伊那地域を訪れるようになる。
  ↓
 B実証試験拠点の本格的活用のための、国内外の航空機システム関連企業・研究
 機関等の、飯田・下伊那地域への進出が活発化し、航空機システム関連企業・研
 究機関等が国内他地域に比して多く集積するようになり、「アジアの航空機シス
 テム拠点」と言える集積レベルに到達する。

【県航空機産業ビジョンの「シナリオ」の脆弱性】
〇この航空機産業クラスター(アジアの航空機システム拠点)実現への「シナリオ」
には致命的と言える脆弱性が内在している。すなわち、日本初の「航空機システム
実証試験拠点」を何らかの理由によって完成できなくなれば、あるいは、完成が遅
れ、他地域に代替可能な実証試験施設が整備されてしまえば、飯田・下伊那地域の
航空機産業クラスター実現への「シナリオ」は、機能不全に陥ってしまうことにな
るのである。

〇この日本初の「航空機システム実証試験拠点」については、既に数台の高額機器
が飯田・下伊那地域に設置されている状況下にあっても、目指すべき当該拠点の具
体像(拠点が内外に提供できる、優位性ある各種支援メニュー等を含む。)や、そ
の具体像実現のための体制(運営主体、事業・収支計画、人的組織・体制等)につ
いて、未だに明らかにされていないのである。

〇この「航空機システム実証試験拠点」(ハード面での支援機能)の整備について
は、飯田・下伊那地域にとって、多額の資金の確保や国内トップクラスの機器整備・
運用の将来にわたる継続等の、非常に重い課題を伴うことから、非常にチャレンジ
ングなものと高く評価はできるが、非常にリスキーなものとなっているのである。
そのため、その具体像を描くことも、その具体像を実現するための体制整備等も、
飯田・下伊那地域のみに期待することが困難であることは明らかである。

【県航空機産業ビジョンの「シナリオ」の脆弱性への対応策】
〇県航空機産業ビジョンの「シナリオ」の脆弱性への基本的対応策とは、「航空機
システム実証試験拠点」の整備に万が一支障が生じても、並行する他の「シナリオ」
(もちろん県外の航空機システム関連企業・研究機関等に飯田・下伊那地域への訪
問・進出を動機づけるような、優位性・独創性を有する「シナリオ」)によってそ
れをカバーし、クラスター形成への取組みを中長期的に継続できるように措置して
おくことである。
 しかしながら、県航空機産業ビジョンには、それが全く提示されていないのである。

〇県航空機産業ビジョンの策定主体である県にも、同クラスター形成地域である飯
田・下伊那地域の産学官の関係者の方々にも、飯田・下伊那地域の航空機産業クラ
スター形成活動の中核的推進機関による、国内外の航空機システム関連企業・研究
機関等を同地域へ呼び込むことに資する、魅力ある各種ソフト事業の企画・実施化
機能の強化の不可欠性については、なかなかご理解いただけずに今日に至ってしま
っているのである。

【飯田・下伊那地域の中核的推進機関の機能強化の必要性への県の認識の一例】
〇「飯田・下伊那地域が、他地域に対して、航空機産業クラスター形成に資する各
種事業の企画・実施化に係る優位性を確保することなくして、飯田・下伊那地域に
優位性を有する航空機産業クラスターの形成なし」という重要な論理について、県
等の関係の皆様にご理解いただけないことが、飯田・下伊那地域における航空機産
業クラスター形成促進への最大の障害となっていると言っても過言ではないだろう。

〇県の関係部署の方々に、私の提言の真の意味を理解していただけない、あるいは、
理解しようとしていただけない状況を物語る事例としては、若干古くはなるが、平
成29年度の当初予算のパブリックコメントへの私の意見に対する県の見解が適当と
考え、既にニュースレターNo.100で詳しく紹介済みではあるが、改めて関係個所の
み抜粋・提示しておきたい。

[パブリックコメントへ提出した私の意見]
〇飯田・下伊那地域を中心とする航空機産業クラスター形成の加速化の視点からお
尋ねしたい。同地域の航空機産業クラスター形成の加速化のためには、同地域に、
クラスター形成に必要な事業を関係機関との連携の下に、効果的に企画・実施化・
進捗管理していく機能を有する中核的推進機関が存在することが不可欠と考えるが
いかがか。

〇もしそうだとしたら、県としては、どの産業支援機関を中核的推進機関としたい
のか。私は、南信州・飯田産業センターと考えるがいかがか。

〇飯田・下伊那地域の中核的推進機関のクラスター形成推進機能(研究開発支援か
ら受発注支援や人材育成支援まで含めて、必要な事業を総合的に企画・実施化・進
捗管理できる機能)を強化するための、県の支援事業が当初予算の中に見当たらな
いが、あれば、教えていただきたい。

〇飯田・下伊那地域のクラスター形成への主体性、自立性(クラスター形成推進主
体としての意識も)を高めることも、極めて重要と考えるが、いかがか。

〇もし、そうだとすれば、主体性、自立性を育むためにも、本来、飯田・下伊那地
域の中核的推進機関が実施すべき事業、例えば、航空機システム拠点形成産学官ス
タートアップフォーラム開催事業を、無理やりテクノ財団にやらせようとするのは
なぜか。論理的に説明願いたい。

[私の意見に対する県の見解]
 長野県全域を対象としたクラスター形成に資するため、拠点の総合的な運営組織
として、昨年12月5日に「長野県航空機産業推進会議」を設置・開催しました。この
推進会議には、経済産業省、関東経済産業局、信州大学、産業界、国立研究開発法
人産業技術総合研究所、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)から参加
いただくなど、航空機産業に関連するほぼすべての業界が一堂に会し拠点を運営し
ます。この推進会議を中心に、高度人材育成、研究開発、受発注支援等について検
討し、実行していくことで拠点機能の強化を図ります。

[県の見解に関する私の分析・評価]
 県の関係資料によると、「長野県航空機産業推進会議」は、各種の連絡調整等を
担当するもので、拠点(クラスター)形成に必要な事業の企画・実施化組織(実働
組織)ではない。しかし、この見解の中では、同会議をクラスター形成の総合的運
営組織として位置づけている。県は、この会議が、クラスター形成の運営組織とし
て実働できると考え、クラスター形成において不可欠と言われる中核的推進機関の
別途設置(指定)は必要ないと認識しているのだろうか。
 クラスター形成を主導する者であれば通常有すべき、クラスター形成戦略(手法)
等に関する基礎知識が、関係者の間に浸透していないことが窺え、先行きに大きな
不安を感じざるを得ない。

 産学官の関係機関が、航空機産業クラスター形成に必要な事業を企画・実施化す
る場合には、通常、クラスター形成の中核的推進機関との連携(協議・協働等)に
よって行うことになる。しかし、「会議」と協議・協働等することは不可能に近い。
 県は、どこがいわゆる中核的推進機関なのかを含め、中核的推進機関の在り方に
ついての基本的考え方を、関係機関に対して速やかに、かつ明確に提示しておくこ
とが必要となる。

 県が、県全域を航空機産業クラスターにすることをビジョンとして設定する場合
にあっても、そのビジョン実現への中核的シナリオとして、まずは、既に多額の投
資をしている飯田・下伊那地域を中心とする航空機産業クラスター形成に重点的に
取組むべきと考える。この点についても、県の基本的考え方を関係者に明確に提示
すべきである。
 テクノ財団は、飯田・下伊那地域でのクラスター形成に資することを、航空機産
業振興事業の実施目的の第一として明確に位置づけている。

【むすびに】
〇県航空機産業ビジョンに基づき、飯田・下伊那地域を中心とする国際競争力を有
する航空機産業クラスターの形成を早期に実現するためには、飯田・下伊那地域の
「熱い思い」や「強い意思」を更に醸成・尊重しつつ、既に注ぎ込んだ多額の公費
を無駄にすることなく、将来にわたって自立的に、クラスター形成活動に資する事
業を強力に企画・実施化・進捗管理していく機能を有する中核的推進機関の存在が
不可欠であることを、県や飯田・下伊那地域の関係の皆様には、是非ご理解いただ
き、必要な対応をしていただくことをお願いしたい。

〇そして、県には、その中核的推進機関の整備・運営にこそ、県が全面的な信頼を
寄せている、経済産業省、関東経済産業局、信州大学、産業界、国立研究開発法人
産業技術総合研究所、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)で構成され
る「長野県航空機産業推進会議」の「英知」を活用していただきたいのである。

【参考:県航空機産業ビジョンの論理的脆弱性等に関するニュースレターのバック
ナンバー】
〇ニュースレターNo.82(2016.4.20送信)
 近々公表される「長野県航空機産業振興ビジョン」の政策的優位性等の評価手法
〇ニュースレターNo.84(2016.5.12送信)
 「長野県航空機産業振興ビジョン」に内在する論理的脆弱性
〇ニュースレターNo.94(2016.11.7送信)
 「長野県航空機産業振興ビジョン」に内在する論理的脆弱性(No.2)〜同ビジョ
ンの具現化方策に関する議論の論理性の欠如〜
〇ニュースレターNo.95(2016.11.10送信)
 「長野県航空機産業振興ビジョン」に内在する論理的脆弱性(No.3)〜同ビジョ
ンの具現化推進拠点が整備すべき魅力ある支援機能〜
〇ニュースレターNo.97(2016.12.10送信)
 「長野県航空機産業振興ビジョン」に内在する論理的脆弱性(No.4)〜同ビジョ
ン具現化の1ツールに過ぎない「航空機システム実証試験拠点」より、必要な各種
ツールを総動員できる「戦略的統括拠点」の整備を急ぐべきこと〜
〇ニュースレターNo.98(2016.12.23送信)
 「長野県航空機産業振興ビジョン」に内在する論理的脆弱性(No.5)〜「航空機
部品マーケティング支援センター」設置の重要性〜
〇ニュースレターNo.100(2017.2.10送信)
 「長野県航空機産業振興ビジョン」に内在する論理的脆弱性(No.6)〜長野県の
平成29年度当初予算案に関するパブリックコメントに提出した意見等に対する県の
見解の分析・評価〜
〇ニュースレターNo.113(2017.10.21送信)
 長野県の航空機産業クラスター形成手法の抜本的改善について〜クラスター形成
の中核的推進機関の事業企画・実施化機能の強化を最優先で目指すべきこと〜


ニュースレターNo.127(2018年6月23日送信)

長野県の地域産業政策の優位性ある具現化のために解決すべき諸課題について
 〜「先送りされた検討課題」の解決への産学官による提言等の活発化のために〜

【はじめに】
〇昨年度、長野県の様々な業種・業態のものづくり産業に関する産業政策の策定や
その実施化に係らせていただいた。その過程で、残念ながら、産業政策の具現化の
ための具体的方策等に関して、昨年度中にはまとめきれず、新年度以降の検討課題
として先送りにせざるを得なかったものがいくつもあった。
 それらの「先送りされた課題」の存在に関しては、ニュースレターで指摘し、そ
の解決方策等を提言してきた。

〇現状においては、県がどのようにして、策定済みの産業政策の具現化方策に係る
「先送りされた課題」を速やかに解決し、その具現化方策を、他県等に対する優位
性を確保した上で、効果的に実施化していくのかに注目している状況である。しか
し、今年度の第1四半期も終わろうとしている中で、その「動き」は決して活発と
は言えないように見える。

〇そこで、関係の産学官の皆様方の参画によって、「先送りされた課題」の解決が
促進され、策定済みの各種の産業政策の具現化が、速やかに、かつ効果的に推進さ
れるようにするためには、「先送りされた課題」の主なものについて、ここで改め
て整理し、関係の産学官の皆様方に明確に提示しておくことが必要と考えた次第で
ある。
 以下で、「先送りされた課題」の主なものについて、順次提示し解説させていた
だきたい。

【課題1 長野県ものづくり産業振興戦略プランの的確な推進@=同プランの推進
体制の整備】
〇同プランの長野県としての独創性・優位性を決定づける重大要素である、同プラ
ンの中核的推進拠点の整備については、その具体像(運営主体、組織・人的体制、
事業等)を提示できずに、白紙の状態で今後検討とされている。要するに、「仏作っ
て魂入れず」の状態になっているのである。

〇しかし、その中核的推進拠点が有すべき支援機能については、以下のように大枠
が同プランに提示され、その整備の方向性は一応定まっているのである。関係の産
学官の皆様方には、県による中核的推進拠点の整備の動向に注目していただき、県
に対して、その整備促進に資する提言等を積極的に実施していただくことをお願い
したい。

@整備すべき支援機能No.1
 =県内企業の産業イノベーション創出活動の促進のためのワンストップ・ハンズ
 オン型の支援機能
・工業技術総合センター、中小企業振興センター、テクノ財団の3機関の統合的
(共同運営的)な産業イノベーション創出に係る相談窓口の設置
・他の県内外の専門機関等との産学官連携コーディネート支援
・産業イノベーション創出活動の入口から出口までの一貫したハンズオン型支援 etc.

A整備すべき支援機能No.2
 =県内各地域で産学官連携によって取り組む16の次世代産業クラスター形成プロ
 ジェクトへの統括的な支援機能(クラスター形成プロジェクトの戦略的マネジメ
 ント機能)
・クラスター形成プロジェクトの進捗状況の把握(課題の把握等)
・クラスター形成プロジェクト推進上の課題の解決への支援
・クラスター形成プロジェクトの研究開発成果の早期事業化への支援 etc.

【課題2 長野県ものづくり産業振興戦略プランの的確な推進A=本県が目指すべ
き理想的なものづくり産業支援体制の全体像の提示とその具現化】
〇同プランに基づき、速やかに「長野県の産業支援体制の在り方検討会」(長野県
総合5か年計画に提示されている「産学官民の連携・協働体」としての「学ぶ県組
織」に相当すると言えるだろう。)を設置し、工業技術総合センター、中小企業振
興センター、テクノ財団という3つの産業支援機関の再編・再構築を含む、目指すべ
き理想的なものづくり産業支援体制の全体像を、2019年度半ばまでに描くため、国
内外の先進事例等の調査研究にまず着手することになっている。しかし、未だに同
検討会による本格的な調査研究は開始されていないようである。

〇この調査研究については、同プランに位置づけられているだけでなく、2月県議
会で、知事は、内外の先進事例等について「徹底的に」実施する旨を述べるなど、
県として、ものづくり産業支援体制の抜本的見直し・再構築のための先進事例等の
調査研究の重要性を十分に認識し、その実施への強い「意気込み」を明らかにして
いたのである。
 関係の産学官の皆様方には、この先進事例等の調査研究と、それに基づく目指す
べき理想的なものづくり産業支援体制の全体像の提示作業の動向に注目していただ
き、県に対して、その促進に資する提言等を積極的に実施していただくことをお願
いしたい。

【課題3 長野県ものづくり産業振興戦略プランの的確な推進B=起業・スタート
アップ支援機能とオープンイノベーション機能を有するイノベーションハブ(仮称)
の整備】
〇創業に関する情報等が一元的に集積し、創業希望者が自由に集え、起業・スター
トアップ支援機能とオープンイノベーション機能を有する「場」であるイノベーシ
ョンハブ(仮称)(当初は「長野県オープンイノベーションセンター」を仮称とし
ていた。)の設置の在り方について、長野県は、平成29年8月、県内の産業支援機関
等を対象にアンケートを実施している。

〇しかし、アンケートの設問内容(設置・運営主体、設置場所・設置数等の在り方
に関する質問等)から、その時点では、県としては、同センター(イノベーション
ハブ)の設置趣旨を含む基本的事項について、ほとんど詰めていないことが推測で
きてしまう状況にあった。

〇アンケートの集計結果は知らせてもらえなかったが、関係の産学官の皆様方には、
今後の県によるイノベーションハブの設置の動向に注目していただき、県に対して、
その設置が、県が従来からアピールし続けている「日本一創業しやすい県づくり」
に相応しく、他県等に比して優位性のある形で具現化されることに資する提言等を
積極的に実施していただくことをお願いしたい。

【課題4 長野県AI・IoT利活用戦略の策定=戦略策定の技術的困難性の克服】
〇2月県議会の知事議案説明の中の「産業の生産性の高い県づくり」において、知
事は「・・・製造業はもとより農林業、建設業、介護・福祉産業等の幅広い分野に
おけるAI、IoTの利活用を促進するため、有識者の知見を得て『利活用戦略』を策定
する・・・」と述べている。
 知事の説明通りに、県が、AI、IoTの利活用戦略を策定する場合には、支援対象と
する産業・業種や、AI、IoTを利活用するビジネス形態などが千差万別となることか
ら、その策定作業には技術的に多くの困難性が伴うことになる。

〇しかし、産学官の英知の結集によって、その困難性をクリアして、様々な産業・
業種の方々のAI、IoTへの顕在的・潜在的ニーズに的確に応える、政策的支援施策の
企画・実施化のバイブルとなる、優れた利活用戦略が速やかに策定・実施化される
よう、関係の産学官の皆様方には、その策定作業の動向に注目していただき、県に
対して、その促進に資する提言等を積極的に実施していただくことをお願いしたい。

【課題5 長野県航空機産業振興ビジョン〜アジアの航空機システムの拠点づくり〜
の具現化への的確な取組み=航空機産業クラスターの中核的推進機関の機能強化と
自立化】
○長野県航空機産業振興ビジョンは、飯田・下伊那地域を中心とする航空機産業ク
ラスターの形成を目指している。
 飯田・下伊那地域に国際競争力を有する航空機産業クラスターをまず形成し、そ
こを拠点として、同心円的に、あるいは、飛び地的に、県内他地域への技術的・経
済的な波及効果が顕在化していくようにすることを基本的な航空機産業振興戦略と
している。このような戦略は、基本的かつ論理的な地域クラスター形成手法に合致
するものである。

〇飯田・下伊那地域に国際競争力を有する航空機産業クラスターを形成したいので
あれば、同ビジョンの策定主体である県としては、そのクラスター形成活動の中核
的推進機関(南信州・飯田産業センター等)が、グローバルな視点から、クラスタ
ー形成に資する各種事業を自ら企画・実施化し、国内外から多くの関係企業等を同
地域に呼び込むことができるように、その機能強化を最優先すべきことになる。

〇すなわち、その中核的推進機関が、その機能を中・長期的に維持・高度化し、当
該地域が自立的かつ持続的に航空機産業クラスター形成活動に取り組んでいくこと
を主導できるように、同機関の中に必要な組織・体制等を整備することが特に重要
となるのである。

〇このような地域クラスター形成に不可欠な基本的・基盤的な取組みが非常に遅れ
ていることは、例えば、飯田・下伊那地域の航空機産業クラスターの優位性の決め
手となる「国内唯一の航空機関係の環境試験機器の整備・提供拠点」の中・長期的
で自立的な経営計画さえも未だに策定できていないことからも推測できるのである。
 関係の産学官の皆様方には、航空機産業クラスター形成活動の中核的推進機関の
機能整備(自立的経営が可能となる人的・資金的仕組みの整備等を含む。)の動向
に注目していただき、県や飯田・下伊那地域の関係機関に対して、その整備促進に
資する提言等を積極的に実施していただくことをお願いしたい。

【課題6 長野県食品製造業振興ビジョンの的確な推進=科学的エビデンスに基づ
く優位性ある新食品創出システムの形成】
○同ビジョンについては、策定作業の当初から、「長野県の長寿」=「長野県産の
発酵食品の摂取」というような科学的根拠の乏しい短絡的なイメージを県内外に広
くアピールし、「長野県産の発酵食品を食べてみんなで長寿になろう!」を主旨と
するような、非科学的PRツールとしての「発酵長寿」県宣言を同ビジョンの中核に
据えるなど、その内容の科学的根拠の欠如や体系・構成の非論理性等の様々な課題
が顕在化していた。

〇しかし、関係の産学官の皆様のご支援・ご協力によって、その「発酵長寿」県宣
言も、県内の産学官が発酵技術を中核とした健康長寿に資する新食品の創出を先導
する旨の決意表明としての「発酵・長寿」県宣言に大転換し、同ビジョンの中に明
確に位置づけることができたのである。
 要するに、同宣言によって、産学官連携による発酵技術活用型の新食品の研究開
発・事業化活動が、従来よりも格段に活性化されうるという、政策的意義を同宣言
に与えることができたのである。

〇この「発酵・長寿」県宣言の趣旨の大転換に見られるように、同ビジョンは、産
学官連携によって先端的科学技術を活用し、科学的エビデンスに基づく健康長寿に
資する新食品の研究開発・事業化活動の活性化によって、国内外の食市場での優位
性の確保を目指すことを中核的な戦略として位置づけることができたのである。

〇しかし、科学的エビデンスに基づく健康長寿に資する新食品の創出については、
他県等でも既に積極的に取り組まれており、長野県は後発組とも言える状況にある。
 そこで、関係の産学官の皆様方には、長野県が、どのようにしたら、「長寿日本
一」のようなキャッチフレーズを安易に活用したイメージ戦略から真に脱却し、国
際競争力を有する高付加価値型の新食品の研究開発・事業化に科学的に取り組んで
いくことができるようになるのかに注目していただき、県に対して、新商品創出の
促進に資する提言等を積極的に実施していただくことをお願いしたい。

【むすびに】
〇長野県の担当部署の方々には、ものづくり産業振興戦略プラン、食品製造業振興
ビジョン、航空機産業振興ビジョンのそれぞれの策定趣旨と体系・構成(ビジョン、
シナリオ、プログラム)が真に意味するところを十分に理解していただいた上で、
その具現化に向けて論理的かつ戦略的に取り組んでいただくことをお願いしたい。

〇また、その取組みの中には、より多くの産学官の方々の専門的あるいは先進的な
意見・提言等を反映できる「仕掛け」を組み込むことにも配慮していただきたい。
例えば、ものづくり産業振興戦略プランの中核的推進機関の在り方や、長野県が目
指すべき理想的な産業支援体制の全体像などに関するシンポジウムの開催等も有効
な手法になるだろう。

〇いずれにしても「優位性ある『地域産業政策』なくして優位性ある『地域産業集
積(地域クラスター)』の形成なし」を常に認識していただき、産業政策の具現化
方策については、長野県としての独創性・優位性を確保することを特に重視してい
ただきたいのである。


ニュースレターNo.126(2018年6月6日送信)

長野県が目指すべき「ものづくり産業支援体制の全体像」の具現化について(No.5)
 〜新たなものづくり産業支援体制へのスタートアップ・アクセラレーター機能の
  組み込みの在り方について〜

【はじめに:スタートアップ・アクセラレーターとは何か】
〇近年、起業家やベンチャーキャピタル等の間では、スタートアップ・アクセラレ
ーター(Startup Accelerator)と呼ばれる新たなプレイヤーが注目されている。
スタートアップ・アクセラレーターの基本的な事業形態は、起業間もないベンチャ
ー企業(これから起業しようとするものも含む。)に対して、様々な育成プログラ
ム(少額の資金提供、人脈紹介、指導・助言、ワークスペース・試験研究設備の提
供等)を実施し、その支援の対価として、数パーセント程度の株式を取得するとい
うようなものとなっている。

〇その育成プログラムは、メンターと呼ばれる起業経験者や業界の識者等の主導の
下に数か月間の短期集中型で実施され、育成プログラムの最後には、ベンチャーキ
ャピタル等を集めて追加投資を得るためのイベント(事業計画のプレゼン等)を開
催する。こうしたスタートアップ・アクセラレーターが世界中で数多く生まれ、新
たなベンチャー企業を次々と生み出し、その存在感を増している。

※長野県の今年度の新規事業「信州アクセラレーションプログラム」(6か月間の
集中支援)は、有限責任監査法人トーマツへの委託事業として実施し、トーマツの
助言・指導、外部メンター(起業家、専門家等)による助言・指導、成果発表機会
の提供等からなり、資金提供、ワークスペース・試験研究設備の利用等は含まれて
いない。

〇スタートアップ・アクセラレーターが関与するベンチャー企業支援のステップア
ップは、一般的に以下のように区分されるだろう。

@起業前(会社設立準備期)
A起業初期(シード・アーリー期)
※@Aともに資金調達が非常に難しい状態にある。
B成長期(ミドル期:事業は安定しつつあるが、売上が不安定な時期)
C拡大期(レイター期:事業が発展・成熟しつつあり、更なる変革を見据える時期)
※BCともに、成長を促すための資金が必要で、株式公開を見据えた投資の動きが
出てくる。

〇長野県が目指すべき新たな産業支援体制の全体像を描くために、「長野県の産業
支援体制の在り方検討会」で実施される内外の先進事例の調査研究においては、先
進的なスタートアップ・アクセラレーターもその対象になると考えられることから、
調査研究の対象選定の参考としていただくため、たまたま情報収集の機会に恵まれ
た、タイプの異なる二つの事例について、以下で紹介しておきたい。

【スタートアップ・アクセラレーターの事例1:ハイテクキャンパス・アイントホー
ヘン(High Tech Campus Eindhoven:HTCE)のHighTecXL】
〇欧州を代表するオランダのオープンイノベーション拠点であるHTCEは、1998年に、
同国のグローバル大企業であるフィリップス社の研究開発関連施設が開放され設立
されたものである。現在135以上の企業・研究所等が1?のキャンパスに入居し、85
か国から1万人の研究者・開発者・起業家が集い、ハードウェアを中心とした研究開
発が行われている。ハイテク施設や国際的なネットワークへの容易なアクセスを提
供し、イノベーションを加速させるコンセプトで運営されている。

〇そのHTCEの中のHighTecXLは、ものづくり系のスタートアップの事業拡大を支援対
象とし、その分野も、IoT、先端材料、先端ロボット、自動運転、蓄電、3Dプリンタ
ー、再生可能エネルギー、医療関連技術に特化し、より集中的・効果的な支援がで
きるように工夫されている。

〇HighTecXLは、内外のスタートアップに各支援対象分野に係る課題解決のアイディ
アを提案させ、そのアイディアを、HTCEにおけるオープンイノベーションによって
ビジネス化する過程を支援するという、シード・アーリー期に適した支援プログラ
ムを提供している。
 毎年、国内外の約500社のスタートアップの事業提案から、50〜60社のスタート
アップの事業提案が支援対象として選定される。この提案応募スタートアップの数
の多さが、HighTecXLのスタートアップ・アクセラレーターとしての世界的優位性の
証と言えるだろう。

〇HighTecXLの支援プログラムとは、以下のような様々なサービスを6か月間受ける
ことができるというものである。
@メンター(起業家、投資家、その他支援者等)からの助言・指導
Aスタートアップ毎に専任担当者(アクセラレーションマネージャー)を配置
Bヨーロッパ、中国、インドを対象とする市場開拓支援
Cスタートアップ毎に15,000ユーロの資金支援
DHTCEの人的ネットワークの活用や各種支援プログラム(オープンワークスペース、
研究室、各種試験研究施設等の利用、年間500件を超える各種イベントへの参加等
を含む。)の提供

 特に、HTCEの創設を主導したフィリップス社からの様々な支援も受けられることが、
スタートアップの事業拡大の加速化におけるHighTecXLの優位性の一つとなっている。
 ただし、支援プログラムの対象企業は、支援の対価として、その株式の8%をHTCE
に拠出することになっている。8%の株式の拠出という大きな負担を義務付けられる
にもかかわらず、毎年約500社の国内外のスタートアップからの支援要請があるとい
うことが、HighTecXLの支援プログラムの優位性が国際的に高く評価されていること
の証と言えるだろう。

【スタートアップ・アクセラレーターの事例2:国立研究開発法人・産業技術総合研
究所(ベンチャー開発・技術移転センター)】
〇産業技術総合研究所(以下、産総研という。)は、先端的な研究成果をスピーディ
に社会実装していくため、研究成果を事業化するベンチャー企業の創出・支援に取り
組んでいる。ベンチャー開発・技術移転センターは、そのプラットフォームとして、
研究成果を活用した事業を行うベンチャー企業の創出、創業したベンチャー企業の
事業拡大を支援するためのネットワークの構築を推進している。

〇産総研は、創業前から拡大期までのステップアップの各過程で必要となる技術の
提供等の各種支援を、ハンズオン型かつ一気通貫型で実施している。そして特に、
創業前(会社設立準備期)のアクセラレーションに力を入れ、以下の二つの支援プ
ログラムを提供している。

@スタートアップ開発戦略タスクフォース
 主に産総研で生まれた技術シーズのベンチャー企業設立を支援する。産総研が技
術開発・マーケティングの資金を投入し、技術シーズを持つ研究者(外部人材を含
む。)とベンチャー創業の請負人である、スタートアップ・アドバイザー(SA)が
協力して、ベンチャー創業を目指す先端技術の事業化プロジェクトである。ベンチ
ャー創業後、SAはCEOとして、研究者はCT0として当該ベンチャー企業の経営に参画
する。

Aカーブアウト事業
 @のタスクフォースにおいては、企業等の外部の技術シーズと人材を受け入れて
ベンチャー創業を目指す事業も実施する。企業単独での事業化ではリスクが高い技
術シーズについて、産総研の技術や人材の活用によって、リスク回避・早期事業化
を目指すプログラムである。

〇@やAの支援を受けたベンチャー企業は、ベンチャー創業初期(シード・アーリ
ー期)以降においても引き続き、産総研の知財や設備の活用支援、産総研主催のビ
ジネスマッチングやネットワークによる支援等の様々な支援プログラムの提供を受
けられる。

【長野県の新たなものづくり産業支援体制へのスタートアップ・アクセラレーター
機能の組み込み:長野県としての優位性の確保】
〇ものづくり系スタートアップは、特に、分析・測定・評価用設備や試作用設備等
の高額の試験研究用設備を必要とすることを業種的特徴としているが、人的・資金
的制約等から、それらの設備を自ら整備することは非常に困難である。
 したがって、HTCEや産総研のようなものづくり系スタートアップ・アクセラレー
ターにおいては、分析・測定・評価や試作のためのスペース・設備の提供(ハード
面での支援サービスの提供)を重要な支援機能に位置づけている。

〇長野県が取り組んでいる新たなものづくり産業支援体制の抜本的見直しによって、
新たに構築される新規産業支援機関には、当然、ものづくり系スタートアップ・ア
クセラレーター機能を組み込むべきこととなる。このことは、長野県が様々な機会
に「日本一創業しやすい県づくり」を目指している旨を県内外に強くアピールして
いることからも、避けて通れないことと言える。

〇そして、長野県の場合には、その新規産業支援機関の構築の中核に、ものづくり
系スタートアップが必要とするハード面での支援サービスをフルセット型で提供可
能な長野県工業技術総合センターを据え、そこに、ソフト面での支援サービス(助
言・指導、産学官連携支援、資金獲得支援等)をフルセット型で提供できる中小企
業振興センターと長野県テクノ財団の2機関を統合化することによって、他県等の
産業支援機関に比して優位性のあるスタートアップ・アクセラレーター機能も有す
る、新規産業支援機関の具現化が可能となるのである。

【むすびに】
〇この3月に策定された長野県ものづくり産業振興戦略プラン(2018〜2022年度)に
提示された「産業イノベーションの創出活動促進のための重点施策」の中に位置づ
けられた「起業・スタートアップ支援〜日本一創業しやすい県づくりの推進〜」に
おいては、ものづくり産業振興に特化した、他県等に対する優位性を有するスター
トアップ・アクセラレーター機能の整備については全く触れられていない。

〇長野県が今年度からトーマツに委託して実施している「信州アクセラレーション
プログラム」のように、スタートアップ・アクセラレーターとしての十分な機能を
有する外部機関に委託する手法は、当該分野の人的資源に乏しい長野県組織や県内
産業支援機関にとっては、合理的手法といえる。
 しかし、トーマツのような著名な外部機関へのいわゆる「丸投げ」では、長野県
としてのスタートアップ支援システムに、他県等に対する優位性・独創性を確保す
ることはできない。

〇他県等に対して優位性を有する、長野県ならではのスタートアップ支援システム
が、県内外の有望なスタートアップの県内を拠点とする事業拡大活動を活性化し、
県内での高度産業集積を加速する「仕掛け」となることから、その「仕掛け」を如
何に整備するかは、本県の地域産業政策上の重要課題の一つとなるのである。

〇関係の産学官の皆様方には、トーマツ等の外部機関との連携によって得られる限
定的なスタートアップ・アクセラレーター機能に、長野県の工業技術総合センター、
中小企業振興センター、テクノ財団の3機関が有するハード・ソフト両分野のスター
トアップ支援機能を効果的に融合化させて、他県等に比して優位性を有する、長野
県ならではの魅力あるスタートアップ・アクセラレーター機能を整備することの重
要性についても十分に認識していただいた上で、産業支援体制の抜本的見直し・再
構築に取り組んでいただくことをお願いしたい。


ニュースレターNo.125(2018年5月21日送信)

長野県が目指すべき「ものづくり産業支援体制の全体像」の具現化について(No.4)
 〜工業技術総合センターを中核に据えた、同センター・中小企業振興センター・
  テクノ財団3機関の再編・再構築の一つの手法について〜

【はじめに】
〇長野県では、3月末に策定した「長野県ものづくり産業振興戦略プラン(2018〜
2022年度)」に基づき、速やかに「長野県の産業支援体制の在り方検討会」(仮称)
を設置し、工業技術総合センター、中小企業振興センター、テクノ財団という3つの
産業支援機関の再編・再構築を含む、目指すべき理想的なものづくり産業支援体制
の全体像を、2019年度半ばまでに描くため、国内外の先進事例等の調査研究に着手
することにしていた。しかし、その全体像を描くことの困難性等からか、未だに同
検討会の開催や調査研究等は開始されていないようである。

〇そこで、同検討会の活動に資するため、3つのものづくり産業支援機関の再編・再
構築による、理想的な産業支援体制の全体像を描く合理的な手法として、工業技術
総合センターを中核に据え、そこに不足する支援機能を、中小企業振興センターと
テクノ財団、その他の国内外の先進的地域クラスターの中核的産業支援機関等の支
援機能の中から抽出し付加するという、比較的取り組みやすい手法について、以下
で具体的に提示したい。

【工業技術総合センターを中核に据えて3機関の再編・再構築をすべき理由】
〇工業技術総合センターの根幹的な支援機能は、県内中小企業等が、資金的・人的
制約等から独自では整備できない、高度かつ高価な分析・評価・試作用設備をフル
セット型で整備し、更に、その設備を的確に使いこなして、必要なデータ等を県内
中小企業等に提供できる技術系人材を配置することによって可能となる、個別の県
内中小企業等の技術課題の科学的解決への支援機能である。

〇中小企業振興センターもテクノ財団も、分析・評価・試作用設備や、その操作の
ための技術系人材を整備していない。
 なぜならば、分析・評価・試作用設備をフルセット型で整備し、その操作に熟達
した技術系人材を配置して、県内中小企業等に当該設備によるデータ等を提供した
り、当該設備の使用機会を安価で提供したりする技術支援は、各種の高額設備の導
入・維持管理に必要な資金力を有することは当然として、組織としての長年にわた
る経験・ノウハウの蓄積や、それに基づく分析・評価・試作人材の育成システム
(分析・評価・試作技術の導入・継承システム)があって初めて可能となるもので
あり、県内の他の産業支援機関が直ちに真似して実施できるようなものではないか
らである。

〇県内の産業支援機関の中には、特定の狭い技術分野のみでの分析・評価・試作用
設備を整備している所もあるが、フルセット型で整備している機関は、資金的・人
的制約等から、県組織である工業技術総合センターの他には存在していないのである。

〇中小企業振興センターやテクノ財団の有する受発注開拓支援機能、産学官連携コー
ディネート機能等(ソフト支援機能)は、その経験を有する人材(企業や行政機関
のOB等)を確保すること等で、整備が可能となることから、分析・評価・試作用設
備の整備による技術支援機能(ハード&ソフト支援機能)より、はるかに資金的・
人的に容易に実現できるものである。
 したがって、3機関の再編・再構築を進める上では、工業技術総合センターを中核
に据えて、不足する支援機能を他の2機関等から移転させるという手法に合理性を見
出すことができるのである。

【工業技術総合センターに不足している支援機能】
〇前述の通り、工業技術総合センターの根幹的な支援機能は、整備された分析・評
価・試作用設備によるデータ等の提供や、当該設備の使用機会の提供による、県内
中小企業等の個別の技術課題の解決支援機能である。
 また、工業技術総合センターが、新製品の創出を目的とする産学官連携研究開発
プロジェクトに参画を要請される場合の多くは、工業技術総合センターが有する分
析・評価・試作設備によるデータ提供等を期待されてのものである。

〇したがって、工業技術総合センターの新製品創出工程(新製品ニーズの把握、ビ
ジネス化の可能性調査・ビジネスモデルの構築、研究開発の企画・実施化、研究開
発成果の早期事業化・市場開拓等の一連の工程)に関する中核的な支援機能とは、
その有する分析・評価・試作設備の活用によるデータ等の提供によって、その工程
の中の非常に狭い特定分野の活動(各種データ等に基づく技術課題の発生原因の究
明、課題解決方策の探索等)に資するものと言えるのである。
 しかしながら、これは、県内の他の産業支援機関では代替できない極めて重要な
支援機能なのである。
※ここでの「新製品創出工程」については、ものづくり産業振興戦略プランで定義
する「産業イノベーション創出工程」(経済的・社会的ニーズの把握・選定→ニー
ズに対応するアイディアの検討・選定→ビジネス化可能性の調査→研究開発→試作・
評価・改良→生産→販売・販路拡大→産業イノベーションの創出)と同義として解
釈をお願いしたい。

〇以上のことから、工業技術総合センターが、新製品創出の一連の工程において県
内中小企業等が直面する様々な課題に対して、ワンストップ・ハンズオン型で支援
できるようにするためには、新製品創出の全工程を支援できるよう、現状不足して
いる多種多様な支援機能(ソフト支援機能)を大幅に追加することが不可欠となる。
そこに、中小企業振興センターやテクノ財団等の支援機能の、工業技術総合センタ
ーへの統合化の意義があるのである。

【3機関の再編・再構築によって具現化すべきワンストップ・ハンズオン型支援機
能の基本的な体系・構成】
〇3機関の再編・再構築によって具現化すべきワンストップ・ハンズオン型支援機
能の基本的な体系・構成については、ニュースレターNo.123(2018.4.8送信)で詳
細に提示しているが、参考までに以下にその概要のみを提示する。
 以下の1の(1)、2の(1)のBC、2の(3)のBが、工業技術総合センターのみが
有し、他の産業支援機関では人的・資金的制約から整備・提供できない支援機能で
ある。これらの支援機能は、他の産業支援機関に移すことが極めて困難なため、工
業技術総合センターを中核に据えた産業支援機関の再編・再構築が合理的となるの
である。

1 県内中小企業等の日常の生産活動の中で生じた課題(突発的課題、短期的対応
課題)への対応支援機能
(1)技術的課題への対応支援機能
@技術的課題(品質不良等)についての発生原因や解決方策等に関する相談対応
A技術的課題の発生原因の科学的究明等のための分析・評価等の技術支援(依頼
試験)
B中小企業単独では整備困難な高額な分析・評価・試作用設備等の使用への支援
(機器貸付)

(2)経営的課題への対応支援機能
@仕事を受注してくれる(技術的な協力をしてくれる)企業等の紹介・マッチング
A仕事を発注してくれる企業等の紹介・マッチング
B下請取引におけるトラブルの解決への支援
C特許、各種許認可等に係るトラブルの解決への支援

2 県内中小企業等の中長期的視点の取組に係る課題への対応支援機能
(1)新技術・新製品の研究開発への支援機能
@研究開発ニーズと技術シーズのマッチング支援(産学官連携コーディネートを
含む。)
※研究開発ニーズ:自社由来、他社由来、地域社会・産業由来、消費者ニーズ由
来等の様々な新技術・新製品の研究開発ニーズ
※技術シーズ:企業自ら有する優位性のある技術力、企業が利用できる大学等の
研究成果等
A産学官連携による研究開発体制(プロジェクトチーム)構築への支援
B研究開発に必要な分析・評価等の技術支援(依頼試験)
C研究開発に必要な分析・評価・試作用設備等の使用への支援(機器貸付)
D研究開発資金獲得への支援(提案公募制度の活用等)
E研究開発成果の早期事業化(社会実装)への支援

(2)経営改善への支援機能
@市場、業界動向等に関する調査への支援
A人材育成への支援(企業ニーズに応える人材育成プログラムの企画・実施化)
B専門人材の確保への支援
C事業再生・承継への支援

(3)創業への支援機能(創業段階に応じたサポート機能)
@専門的助言を得られる相談窓口の整備(専門家派遣を含む。)
A創業用レンタルスペース(インキュベータ)の整備・提供
B研究開発、試作等に必要な機器の整備・提供(機器貸付・依頼試験)
C販路開拓支援
D資金獲得支援

3 地域産業政策的視点からの地域先導型の支援機能
(1)国・県等の新たな地域産業政策に整合した、地域先導型の大型産学官連携プロジ
ェクトの企画・提案・運営機能
 多くの県内中小企業等の新技術・新製品創出に資する、地域産業を先導する大型
産学官連携研究開発プロジェクトを企画し、提案公募制度への提案等による実施化
と、その成果の早期事業化を図る。

(2)県内中小企業等の国内広域的・国際的な展開のための国内外の産業支援機関等
との連携ネットワークの形成・活用機能
 国内外の先進的地域クラスターの中核的産業支援機関等との連携ネットワークを
形成・維持し、県内中小企業等の国内広域的あるいは国際的な展開(国際的産学官
連携を含む。)の支援に資する。

【工業技術総合センターを中核に据えた3機関の再編・再構築の2形式】
〇工業技術総合センターを中核に据えた3機関の再編・再構築の形式については、
現時点で、2つの形式を提示できるだろう。
 まず、第1の形式は、県組織である工業技術総合センターを地方独立行政法人化
し、同センターへの中小企業振興センターとテクノ財団のものづくり産業支援機能
の効果的統合を、法的・制度的に実施できるようにすることである。
 第2の形式は、中小企業振興センターとテクノ財団が有する、ものづくり産業支
援機能を統合した新機関(公益財団法人を想定)が、県組織である工業技術総合セ
ンターの運営を受託し、3機関の支援機能を実体的に合体し、ワンストップ・ハンズ
オン型のものづくり産業支援体制を構築することである。

〇第1の形式の一つの事例としては、神奈川県産業技術センターと公益財団法人神
奈川科学技術アカデミーの統合により発足した地方独立行政法人神奈川県立産業技
術総合研究所があり、第2の形式の一つの事例としては、公益財団法人函館地域産業
振興財団による北海道立工業技術センターの運営受託がある。

〇第1形式と第2形式のメリット・デメリット等を詳細に調査し、「長野県の産業支
援体制の在り方検討会」(仮称)が描く、本県の理想的なものづくり産業支援体制
の全体像の具現化手法として、どちらを選択すべきか、あるいは第三の手法を選択
すべきか、について論理的に研究し結論を出すべきこととなる。

【むすびに】
〇長野県が目指すべき理想的なものづくり産業支援体制の全体像を描くための、国
内外の先進事例等の調査研究においては、まずは、長野県テクノ財団が連携協定を
締結している、EUの8つの先進的地域クラスターの中核的産業支援機関の組織・体制
等をターゲットとすることを提案したい。

〇なぜならば、それらの中核的産業支援機関については、@連携協定締結によって
調査研究への協力を得られやすいこと、Aそのほとんどが、ハード・ソフトの産業
支援機能(試験・研究支援設備、人材育成施設、創業支援施設等のハード機能、国
内外への市場開拓支援体制等のソフト機能等)を一体的かつフルセット型で整備し
ていること、B産業支援機関の運営経費の国・地方政府等への過度な依存から脱却
した自立的経営を強く志向していること、などの理由から、本県の3つの産業支援機
関の支援機能統合化による新機関の創設や、新たな産業支援機能の追加等に資する
有用な情報を収集できると考えられるからである。

〇いずれにしても、本県の3つのものづくり産業支援機関の基本的な支援機能につい
ては完璧に有し、更にそこに本県の現状の産業支援体制には存在しない独創的で効
果的な産業支援機能を整備して、各種支援サービスをワンストップ・ハンズオン型
で提供している、内外の先進的な産業支援機関についての調査研究に、速やかに着
手していただきたいのである。

〇今のままでは、2月県議会での知事答弁に反して、十分な調査研究が欠如した「机
上の空論」に基づく、「見せかけだけの産業支援体制の見直し」になってしまうの
ではないのか、非常に心配になるのである。
 関係の産学官の皆様には、理想的な県の産業支援体制の全体像を描くための調査
研究が効果的に実施できるよう、是非とも県に対する積極的な助言等をお願い申し
上げたい。


ニュースレター号外6(2018年5月9日送信)

長野県による「『発酵・長寿』県宣言」が5月18日にも実施されることについて
 〜長野県食品製造業振興ビジョンに位置づけられた「宣言の趣旨」に整合した形
  で実施されることを期待して〜

【はじめに】
〇5月9日の信濃毎日新聞に、長野県が、長野県食品製造業振興ビジョン(以下、
「食品ビジョン」という。)に基づき、5月18日にも「『発酵・長寿』県宣言」を
実施する旨が掲載されていた。
 ただ、その記事を見る限り、県が実施しようとしている同宣言が、食品ビジョ
ンに位置づけられている同宣言の趣旨とはかけ離れたものになるのではないのか、
と非常に心配になったため、今回の号外を送信し、関係の産学官の皆様に県への
助言等をお願いしようと考えた次第である。

〇食品ビジョンの策定過程においては、食品製造業振興施策の中に、「『発酵・
長寿』県宣言」をどのように位置づけ、どのように実施すべきかなどについて、
様々な議論を行い、紆余曲折を経て来ている。関係の産学官の皆様に、同宣言の
趣旨をご理解いただくため、以下で、その議論の経過を簡単に振り返ってみるこ
とにしたい。

〇食品ビジョンの策定過程においては、「『発酵・長寿』県宣言」について、長
野県の伝統的食品である発酵食品の単なるPRイベント的なものとして位置づける
のか、科学的根拠に裏打ちされた、からだに優しい新規発酵食品の創出活動の活
性化等まで含む、食品製造業振興のための新たな戦略的役割をも担うものとして
位置づけるのかなど、様々な議論を重ねてきた。

〇そして、最終的には、食品ビジョン(19ページ)に記載されているように、
「本県の食品製造業振興に係る活動に参画する産学官の代表者による、『からだ
に優しい食品』の創出と情報発信を先導する旨の決意表明」として実施すること
が決定されたのである。
 すなわち、議論の結果、単なるPRイベント的なものではなく、産学官連携によ
る食品製造業振興のための戦略的役割をも担うものという位置づけにまで高めら
れたのである。

【「『発酵・長寿』県宣言」に関する議論の経過〜ニュースレターでの問題提起のポイント〜】
〇当初県が実施しようとしていた「『発酵・長寿』県宣言」の問題点については、
以下に示すように、ニュースレターで繰り返し指摘し、県に改善を求めてきた。
 また、それとは別に、他の識者の方々からも、県に対して、もっと科学的根拠
を重視すべきことなど、様々な指摘がなされていたようである。

〇ニュースレターNo.102(2017.3.29送信)長野県食品産業振興ビジョン(案)の
論理的脆弱性〜ビジョン・シナリオ・プログラムの『根幹』が、非科学的で実施・
実現が困難なものであること〜
※県は当初、「食品産業振興ビジョン」としていたが、後に、振興対象の産業分野
を明確化するために、「食品製造業振興ビジョン」へと修正している。

 [ニュースレターNo.102での問題提起のポイント]
 明確な科学的根拠を示さないままに、長野県民の長寿の主要因が、発酵食品の摂
取であるかのような勝手な論理を、「発酵長寿」あるいは「発酵長寿県」というよ
うなキャッチフレーズ(造語)でイメージ化し、同ビジョン(案)の体系・構成の
「根幹」に据えている。このような論理性を欠いた不適切な状態のままで、県とし
ては、「発酵長寿県」宣言を実施すべきではない。
※県は当初、「発酵長寿」としていたが、「長野県の長寿=発酵食品の摂取」とす
ることの非論理性や政策的問題点を理解できた後には、「発酵・長寿」へと修正し
ている。

〇ニュースレターNo.108(2017.6.30送信)長野県食品産業振興ビジョンにおける
「発酵長寿県」宣言の在り方---「浜松を『光の尖端都市』に〜浜松光宣言2013〜」
を参考にして---

 [ニュースレターNo.108での問題提起のポイント]
 県として、他県等に先駆けて、どうしても「発酵長寿県」宣言を実施したいので
あれば、その宣言の内容を、科学的根拠の乏しい単なるイメージ戦略的な内容では
なく、本県の食品産業が他県等の食品産業に対して優位性を有することに資する、
科学的根拠に基づく産業振興戦略に相当する内容にすべきである。

 理想的な「発酵長寿県」宣言の体系・構成については、以下の様なものを提示で
きるだろう。
@宣言の実施者
A宣言の趣旨
B宣言に基づき具現化を目指す食品産業の姿
C目指すべき食品産業の姿を具現化するための産学官の連携活動方針

   長野県の発酵技術は、浜松地域における光技術のような、地域産業の課題の解決
に貢献しうる地域特有の基盤的技術として共通認識されるものとはなっていない。
なぜなら、味噌・醤油、酒等に係る発酵技術は、全国共通の技術であって、長野県
に特異的に蓄積されてきたものでなく、そのままでは、長野県の食品産業に国際的
な優位性や独創性を与える基盤的技術とはなりえないからである。
 したがって、発酵技術にのみ焦点を当てた「発酵長寿県」宣言で、長野県の食品
産業の振興戦略に優位性を確保できるのか、長野県の強みとする他の工業技術も含
めて、食品産業の振興に資する政策的宣言をすべきではないのか、という非常に重
要な検討課題が残されたままになっている。

〇ニュースレターNo.112(2017.10.2送信)長野県食品製造業振興ビジョンの論理的
な体系・構成への大転換〜「発酵・長寿」県宣言も「非科学的なPRツール」から
「新食品の創出を産学官が先導する旨の決意表明」へ大転換〜

 [ニュースレターNo.112での戦略的「発酵・長寿」県宣言への大転換の評価]
 「長野県の長寿=長野県産の発酵食品の摂取」というような科学的根拠の乏しい
短絡的なイメージを県内外に広くアピールし、「長野県産の発酵食品を食べてみん
なで長寿になろう!」を趣旨とするような、非科学的PRツールとしての「発酵・長
寿」県宣言を根本的に修正し、県内の産学官の代表者による、発酵技術を中核とし
た健康長寿に資する新食品の創出を先導する旨の決意表明としての「発酵・長寿」
県宣言に大転換していただいた。
 この大転換によって、産学官連携による発酵技術活用型の新食品の研究開発・事
業化活動が、従来より格段に活性化されうるという、政策的意義を同宣言に与える
ことができたのである。

【むすびに】
〇このように、「発酵・長寿」県宣言については、本県の発酵食品の非科学的PRツ
ールから、県内の産学官の代表者による、発酵技術を中核とした健康長寿に資する
新食品の創出を先導する旨の決意表明へと改善・高度化され、食品ビジョンに正式
に位置づけられたという経緯があるのである。

〇しかし、5月9日の信濃毎日新聞の「発酵・長寿」県宣言に関する記事を見る限り、
5月18日にも実施される同宣言が、既存の郷土食である発酵食品のPRの手段としての
み実施され、食品ビジョンに最終的に位置づけられた同宣言の本来の趣旨に整合し
ないものになってしまうのではないのか、という不安を抱かざるを得なかったので
ある。

〇そこで、同宣言の作成を主導する県組織の皆様には、食品ビジョンに位置づけら
れた同宣言の趣旨を再確認していただき、長野県として他県等に誇れる優位性のあ
る宣言を作成・実施していただくことをお願いしたい。
 また、県組織以外の、産学官の関係の皆様には、同宣言が、食品ビジョンの策定
過程で実施された、同宣言の在り方に関する議論の結果を的確に反映し、同宣言の
趣旨を具現化するものとなるよう、県への助言等を積極的に行っていただくことを
強くお願いする次第である。

ニュースレターNo.124(2018年4月27日送信)

長野県が目指すべき「ものづくり産業支援体制の全体像」の具現化について(No.3)
 〜新たに整備すべき支援機能(その1):次世代自動車(EV化や自動運転化等)
  分野への展開支援機能の整備〜

【はじめに】
〇(公財)浜松地域イノベーション推進機構は、近年加速する自動車産業の技術革
新(EV化や自動運転化等)に伴う自動車部品産業の構造変化に対し、浜松地域(浜
松市を中心とする8市町からなる静岡県西部地域)の中小企業等が円滑に対応できる
ように支援することを目的として、平成30年4月1日に「次世代自動車センター」を
同機構の新規会員制組織としてオープンした。

〇自動車のEV化や自動運転化等への対応は、本県の自動車部品関連産業にとっても
極めて重要な課題である。例えば、EV化が進展すればするほどエンジン関連部品の
仕事は減ることになる。当然、EV化の進展に合わせて新たな部品(バッテリー、モ
ーター、モーターコントローラー等)への需要が増大することになるし、EV化でも
残る部品の更なる高度化(軽量化等)も求められることになるが、エンジン部品関
連企業が、それらの新規分野に簡単に参入することはできない。

〇したがって、次世代自動車分野への展開支援機能の整備については、現在、長野
県が進めている、県のものづくり産業支援体制の全面的・抜本的な見直し・再構築
においても、当然、検討すべき重要課題となるのである。
 なお、ここで述べる「次世代自動車分野への展開」とは、次世代自動車の部品に
関する課題(技術ニーズ)の把握から、その課題を解決する部品の研究開発と研究
開発された部品の次世代自動車メーカーでの採用に至るまでの一連の活動のことで
ある。

〇そこで、以下では、(公財)浜松地域イノベーション推進機構の「次世代自動車
センター」の支援機能の優位性等について分析し、本県のものづくり産業支援体制
の全面的・抜本的な見直し作業の一環として、「長野県の産業支援体制の在り方検
討会」を中心として実施される、本県が新規に整備すべき支援機能の調査研究や議
論等に資することを目指すこととしたい。

【(公財)浜松地域イノベーション推進機構の「次世代自動車センター」の優位性等】
〇人的体制の整備面での優位性
 同センターの人的体制は10人であり、その内、4人は同機構の職員であるが、残
りの6人については、センター長を含む5人が、スズキ(株)とヤマハ発動機(株)
からの派遣であり、残りの1人は浜松市からの派遣となっている。
 同機構は、基本財産が、約9億円で、長野県テクノ財団の基本財産の約1/6とかな
り少なく、自己資金的には非常に厳しい中にあって、「次世代自動車センター」に
ついては、地元産業界や浜松市等からの多大の人的・資金的支援を得て、専門性の
高い効果的なコーディネート体制の整備を実現できている。
 また、静岡県の浜松工業技術支援センターにおいても、「次世代自動車センター」
の活動を全面的に支援する体制を構築している。

〇研究開発・事業化の促進面での優位性
 自動車のEV化・自動運転化に必要な新規部品の発注サイド(スズキ、ヤマハ発動
機)の技術者をコーディネータとして配置していることで、新規部品の発注サイド
の技術ニーズと、それに応えうる地域中小企業の技術シーズとのマッチングについ
ては、事業化に結び付きやすいレベル(明確な出口戦略を有する形)での実施が可
能となる。
 すなわち、浜松地域においては、同センターを中核拠点として、事業化に結び付
きやすい、新規部品のオープンイノベーションの企画・実施化を可能とする「仕掛
け」が構築されているということである。

〇有料の会員制としたことによる優位性
 同センターは完全な有料会員制組織である。同センターの支援を受けるためには、
その会員にならなければならないということである。年会費は1社12,000円であるが、
既に155社が入会し、更なる増加が見込まれている。
 入会企業サイドは、同センターの人的体制等から、12,000円の年会費を支払えば、
自社に不足する次世代自動車分野への新展開のために必要な高度専門スタッフの補
完に相当するサービスを受けられることに最も期待していると思われる。そこで、
同センターも、その期待に応えられる新規事業を企画・実施化していくことにして
いる。

 有料会員制組織としたことで、同センターの活動資金不足を補完できるという金
銭的メリットのみならず、同センター事業の質的高度化に資する「仕掛け」も構築
できているのである。
 より具体的に言えば、入会企業サイドは、会費分以上のメリットを得ようとして
同センターの活用により一層積極的になり、より質の高い支援サービスを求めるよ
うになる。そして、センターサイドは、会費が高いと言われないよう、会員企業そ
れぞれに適した(それぞれに満足してもらえる)サービスの提供により一層努める
ことになる。このような入会企業とセンターとの適度な緊張関係が、結果として、
センター活動の効果的な推進(事業の質的高度化)に大いに資することになるとい
うことである。

〇企業連携ネットワークの形成面での優位性
 同センターは、センター長やコーディネータに、スズキ(株)やヤマハ発動機(株)
という完成品メーカーの技術者を配置することなどにより、EV化・自動運転化に係
る新規部品の研究開発・事業化案件毎に、最適な輸送用機器メーカー、大手部品メ
ーカー、地域中小企業等を選定し、出口を見据えた優位性のある企業連携ネットワ
ーク(研究開発・事業化プロジェクトチーム)の形成を、効果的かつ円滑に具現化
できる「仕掛け」を有しているということである。

【長野県が整備すべき次世代自動車(EV化や自動運転化等)分野への展開支援機能】
〇(公財)浜松地域イノベーション推進機構の「次世代自動車センター」の支援機
能の優位性を分析し、それを参考にして、本県の新たなものづくり産業支援体制の
中に整備すべき次世代自動車(EV化や自動運転化等)分野への展開支援機能につい
て、以下に例示してみたい。

 本県が整備すべき次世代自動車(EV化や自動運転化等)分野への展開支援機能に
ついては、基本的には浜松地域と同様に以下のような骨格になるだろう。
1 次世代自動車部品のニーズ情報の探索・把握支援
2 部品ニーズと地域中小企業の技術シーズ(優位性のある固有技術)とのマッチン
グ支援
3 部品ニーズに的確に応える部品創出のための研究開発の企画・実施化支援
4 研究開発された部品の早期事業化・販路開拓支援

〇(公財)浜松地域イノベーション推進機構の「次世代自動車センター」は、輸送
用機器メーカー(スズキ、ヤマハ発動機)からの派遣技術者をコーディネータとし
ていることにより、上記の1〜4の支援機能の全てにおいて優位性を有することがで
きるのである。
 すなわち、支援を受ける地域中小企業サイドから言えば、実際に具現化できれば、
直ちにメーカーに採用してもらえるような、早期事業化の確度がかなり高い部品ニ
ーズ情報を提供してもらえ、その具現化のための研究開発の各工程で発生する各種
課題の解決に資する助言等も関係メーカー等から得られやすいことなどから、投入
する貴重な人的・資金的資源を無駄にしないことに資する、合理的な研究開発活動
が可能となるのである。
 特に、EV化・自動運転化等の先進分野の研究開発・事業化に投入できる人的・資
金的資源に乏しい地域中小企業にとっては、非常にメリットの大きい補完的支援機
能が同センターに整備されているのである。

〇本県中小企業も、このようなメリットをより効果的に享受できるように如何に工
夫すべきかが、県が取り組む、新たなものづくり産業支援体制の整備における重要
課題となるのである。
 (公財)浜松地域イノベーション推進機構の「次世代自動車センター」の支援機
能の優位性を参考にしつつ、より高い優位性を有する長野県らしい支援機能を如何
に整備すべきかについて、「長野県の産業支援体制の在り方検討会」に結集された
産学官の識者の方々によって、より詳細な調査研究や議論等が活発になされること
を期待したい。

〇長野県においては、(公財)長野県中小企業振興センター、(公財)長野県テク
ノ財団、長野県工業技術総合センターの3機関の支援機能の合目的的な統合化(3機
関の再編・再構築)を、長野県ものづくり産業振興戦略プラン(2018年度〜2022年
度)の基本的方向性として明確に位置づけている。
 このようなものづくり産業支援体制の抜本的・全面的な見直し・再構築は、その
困難性等から、次世代自動車分野への展開支援先進県である静岡県でもまだ取り組
まれていない。そのことからも、浜松地域の「次世代自動車センター」に比して優
位性を有する、長野県ならではの、長野県にしかできない、次世代自動車分野への
展開支援機能の整備については、その具現化に大いに期待ができるのである。

【むすびに】
〇EV化の進展のためには、電池の性能向上による航続距離の伸長、価格の引下げ、
充電インフラの整備などの課題を解決しなければならない。
 自動運転化の進展のためには、認知・判断の精度・速度の向上、高度な情報処理
や車両外部との連携のための通信速度の向上、サイバーセキュリティの強化、歩車
分離(歩行者と車の分離)などの課題を解決して行かなければならない。

〇このように、EV化・自動運転化の課題については、個々の企業の努力で解決でき
る課題と、多くの企業の協調や政府の主導等によってはじめて解決できる課題が混
在している。いわゆる「競争と協調の最適化」が必要となる。政府主導による協調
領域の設定もなされ、EV化・自動運転化が、オールジャパンで合理的に推進される
ような取組みもなされている。

〇したがって、EV化・自動運転化に関連する分野の新技術・新製品の研究開発・事
業化に係る企業戦略の策定・実施化については、特に、地域中小企業にとっては、
自らの責任でマネジメントできない要素が多すぎて、非常に困難性が高いものとなる。
 しかし、いくら困難性が高く、事業化(利益確保)への的確なシナリオを描けな
くても、自動車部品産業の中で生き残っていくためには、将来に向けて、EV化・自
動運転化分野の特定技術の選定・蓄積には、速やかに着手しなければならないとい
うことが、地域中小企業にとっての最大の課題となっているのである。

〇「長野県の産業支援体制の在り方検討会」には、EV化・自動運転化に係る技術分
野に参入しようとする本県中小企業の不安を解消し、的確な企業戦略策定・実施化
に資する、長野県ならではの、長野県にしかできない効果的な支援機能を、これか
ら描く「長野県が目指すべき理想的なものづくり産業支援体制の全体像」の中に組
み込んでいただきたいのである。


ニュースレターNo.123(2018年4月8日送信)

長野県が目指すべき「ものづくり産業支援体制の全体像」の具現化について(No.2)
 〜支援を受ける企業の視点からの、現状のものづくり産業支援機能(工業技術
  総合センター、中小企業振興センター、テクノ財団)の整理・体系化の一例〜

【はじめに】
〇ニュースレターNo.122(2018.3.18送信)においては、この4月から長野県
の主導で進められる、長野県が実現を目指すべき理想的な「ものづくり産業支援
体制の全体像」を描くための調査研究の作業手順の在り方について提案した。
 そして、その中で、まず最初に、工業技術総合センター、中小企業振興センタ
ー、テクノ財団の3機関のものづくり産業支援機能を一体的に整理・体系化し、
それと比較しながら、国内外のものづくり産業分野の先進的地域クラスターの中
核的産業支援機関等が有する支援機能を広く調査研究し、本県の現状の支援機能
に不足している支援機能を抽出する作業から着手すべきとした。

〇以下で、その3機関のものづくり産業支援機能を、支援を受ける企業サイドの
視点で一体的に整理・体系化してみたい。産業支援機能の整理・体系化の一つの
在り方として、今後の県の調査研究に資することができれば幸いである。

【現状の3機関のものづくり産業支援機能の一体的な整理・体系化の一例】
〇以下では、3機関以外の県内産業支援機関が整備・提供している産業支援機能
についても、現状、県内企業が利用できる有用な支援機能として、それを含めて
整理・体系化することとする。

1 県内企業の日常の生産活動の中で生じた課題(突発的課題、短期的対応課題)
への対応支援機能
(1)技術的課題への対応支援機能
@技術的課題(品質不良等)についての発生原因や解決方策等に関する相談対応
A技術的課題の発生原因の科学的究明等のための分析・評価等の技術支援(依頼
試験)
B中小企業単独では整備困難な高額な分析・評価・試作用設備等の使用への支援
(機器貸付)

(2)経営的課題への対応支援機能
@仕事を受注してくれる(技術的な協力をしてくれる)企業等の紹介・マッチング
A仕事を発注してくれる企業等の紹介・マッチング
B下請取引におけるトラブルの解決への支援
C特許、各種許認可等に係るトラブルの解決への支援

2 県内企業の中長期的視点の取組に係る課題への対応支援機能
(1)新技術・新製品の研究開発への支援機能
@研究開発ニーズと技術シーズのマッチング支援(産学官連携コーディネートを
含む。)
※研究開発ニーズ:自社由来、他社由来、地域社会・産業由来、消費者ニーズ由
来等の様々な新技術・新製品の研究開発ニーズ
※技術シーズ:企業自ら有する技術力、企業が利用できる大学等の研究成果等
A産学官連携による研究開発体制(プロジェクトチーム)構築への支援
B研究開発に必要な分析・評価等の技術支援(依頼試験)
C研究開発に必要な分析・評価・試作用設備等の使用への支援(機器貸付)
D研究開発資金獲得への支援(提案公募制度の活用等)
E研究開発成果の早期事業化(社会実装)への支援

(2)経営改善への支援機能
@市場、業界動向等に関する調査への支援
A人材育成への支援(企業ニーズに応える人材育成プログラムの企画・実施化)
B専門人材の確保への支援
C事業再生・承継への支援

(3)創業への支援機能(創業段階に応じたサポート機能)
@専門的助言を得られる相談窓口の整備(専門家派遣を含む。)
A創業用レンタルスペース(インキュベータ)の整備・提供
B研究開発、試作等に必要な機器の整備・提供
C販路開拓支援
D資金獲得支援

3 産業政策的視点からの地域産業先導型の支援機能
(1)国・県等の新たな産業政策に整合した、地域産業先導型の大型産学官連携
プロジェクトの企画・提案・運営機能
 多くの県内企業の新技術・新製品創出に資する、地域産業を先導する大型産
学官連携研究開発プロジェクトを企画し、提案公募制度への提案等による実施
化と、その成果の早期事業化を図る。

(2)県内企業の国内広域的・国際的な展開のための国内外の産業支援機関等と
の連携ネットワークの形成・活用機能
 国内外の先進的地域クラスターの中核的産業支援機関等との連携ネットワー
クを形成・維持し、県内企業の国内広域的あるいは国際的な展開(国際的産学
官連携を含む。)の支援に活用する。

〇以上のように、一体的に整理・体系化した、3機関の現状の個々の支援機能
については、通常、相互に効果的に関連づけながら企業等に提供されるべきも
のである。しかし現状では、それが効果的に実施できていないことが、今回の
3機関の再編・再構築を目指すこととなった最大の理由である。
 したがって、その個々の支援機能の関連づけが、より円滑かつ効果的に実施
されるようにする「仕掛け」づくりが、3機関の再編・再構築の在り方につい
ての検討における最重要課題となるのである。

【新たに追加すべき支援機能の事例】
〇今回のニュースレターは、現状の支援機能の一体的な整理・体系化を目的と
して、現状の支援機能に不足し新たに追加すべき支援機能については、今後の
調査研究に基づき議論するつもりであったが、現時点で直ちに思いつく追加す
べき支援機能についても、参考までに以下に提示することにしたい。
 また、長野県ものづくり産業振興戦略プランにおいて、新規に整備すべきと
して提示されている支援機能・体制等についても、3機関の再編・再構築による
新たな統合型の産業支援機関の中に組み込むべきと考えられるものについては、
以下に提示する。

1 産業イノベーション創出活動活性化のためのワンストップ・ハンズオン型
の一貫支援機能(長野県ものづくり産業振興戦略プランにおいて整備すべき支
援機能として提示)
 産業イノベーション創出活動の入口(課題解決ニーズ把握、ビジネスモデル
構築等)から出口(事業化、市場開拓)までの全工程を俯瞰し、ワンストップ・
ハンズオン型の一貫支援ができる支援機能のことである。

2 各地域主導の地域クラスター形成プロジェクト推進への支援機能(長野県
ものづくり産業振興戦略プランにおいて整備すべき支援機能として提示)
 各地域で実施される地域クラスター形成プロジェクトの全体を俯瞰し、各プ
ロジェクトの課題解決支援やプロジェクト間の連携・相互補完支援等により、
プロジェクトの効果的推進を可能とする戦略的なプロジェクトマネジメント機
能のことである。

3 創業者や創業応援者の交流拠点の整備(長野県ものづくり産業振興戦略プ
ランにおいて整備すべき支援機能として提示)
 創業を志す者や創業者応援を志す者が自由に集い情報交換でき、更にそこに
両者をつなぐコーディネータや各種相談に応じる専門家等も配置し、創業活動
活性化のための新たなワンストップ・ハンズオン型の「仕掛け」としての場を
創設することである。

4 新たな産学官連携プラットフォーム構築による高付加価値産業創出への支
援機能(現時点で考えられる2つを事例として提示)
(1)次世代自動車産業分野への参入支援プラットフォーム
 加速する自動車産業の技術革新(EV化、自動運転化等)に伴うビジネス環境
の変化に、県内の自動車部品関連企業が円滑に対応し新分野に展開できるよう
に支援する中核的支援体制のことである。

(2)次世代地域産業支援基盤としてのマイチップ(自社用にカスタマイズされた
IC)設計・開発プラットフォーム(マイチップの開発支援については、テクノ
財団主導で10年くらい以前から取り組まれている。)
 県内企業製品の高付加価化(小型化、高機能化、低価格化、ノウハウのブラッ
クボックス化等)に資するマイチップの設計・開発から実用化までを、国内外
の大学等との連携の下に一貫支援できる中核的支援体制のことである。

〇前述の「1」から「4」の新規支援機能については、相互に関連づけて、ある
いは、現状の支援機能と関連づけて、整備・提供することが効果的となること
から、3機関の再編・再構築によって創設される統合型の新規産業支援機関に
おいて、一括して整備・提供できるようにすることが合理的と言える。

【むすびに〜市等のものづくり産業支援機関との連携を前提にすべきこと〜】
〇3機関がそれぞれ有するものづくり産業支援機能の一体的で効果的な運用を
可能とすることが、3機関の再編・再構築の最大の目的である。
 なお、県内には、この3機関以外にも、ものづくり産業支援を使命とする様々
な機関が存在していることから、この3機関の再編・再構築の作業においては、
3機関以外のものづくり産業支援機関と連携する(あるいは合理的な役割分担
をする)ための「仕掛け」づくりに留意することが重要となる。

〇例えば、ものづくり産業支援機関については、県内の多くの市等においても
様々に整備が進められている。この4月に入って新たに、松本ものづくり産業
支援センター、佐久産業支援センターが設立された他、既に南信州・飯田産業
センター、諏訪圏ものづくり推進機構等いくつもの支援機関が長年にわたって
積極的に活動して来ている。

〇したがって、今回、県主導で実施される前述の3機関の再編・再構築による、
統合型の新たなものづくり産業支援機関の創設については、市等の産業支援機
関が効果的に機能することに資すること(市等の支援機関との緊密で効果的な
連携や、合理的な役割分担等を可能とする「仕掛け」を整備すること)に十分
に配慮されたものでなければならない。

〇具体的には、市等のものづくり産業支援機関には無い支援機能(市等では人
的・資金的制約から整備困難な支援機能等)、市等の産業支援活動の質的高度
化に資する支援機能を整備することなどが重要となる。
 そのためには、県主導で実施される、新たなものづくり産業支援体制の在り
方に関する検討の場には、ものづくり産業の支援機関の整備・運営に熱心な市
等の担当者の参画が不可欠となるのである。


ニュースレターNo.122(2018年3月18日送信)

長野県が目指すべき「ものづくり産業支援体制の全体像」の具現化について(No.1)
 〜「理想的な産業支援体制の全体像」を描くための調査研究の進め方〜

【はじめに】
○長野県は、次期「長野県ものづくり産業振興戦略プラン」に基づき、本県の
ものづくり産業が、他県等に先んじて、国際競争力を有する高付加価値型の産
業構造へ転換していくことに資するため、現状のものづくり産業支援体制を全
面的・抜本的に見直し、理想的な産業支援体制の全体像を描き、それを同プラ
ンの計画期間(2018年度〜2022年度)中に具現化することにしている。
 そのために、2月県議会での知事答弁にもある通り、まず、新年度から「検討
会」を立上げ、国内外の先進的な産業支援体制を「徹底的」に調査・分析し、
その結果を反映して、理想的な産業支援体制の全体像を描くことにしている。

○この長野県の理想的な産業支援体制の構築については、知事の意向として、
県組織である長野県工業技術総合センター、公益財団法人である長野県中小企
業振興センターと長野県テクノ財団の3機関の再編・再構築によって具現化する
という基本的方向づけが既に明確になされているのである。

〇従来から、県組織の一部の幹部の間では、その必要性についての論理的議論
が無いままに、中小企業振興センターとテクノ財団を統合すべきという考え方
が広まってきていたようである。しかし、ものづくり産業の振興のための関係
機関の全体的な再編・再構築となれば、そこに工業技術総合センターを加える
べきことは、極めて当然のことなのである。
 県組織と公益財団法人の統合という、手続上の困難性等から、それを提案す
る県幹部は全くいなかった中で、今回、阿部知事が、県主導で、その困難性を
乗り越え、その実現を目指すと「宣言」したことの産業政策的意義は極めて大
きいのである。

○長野県の理想的なものづくり産業支援体制の全体像を描くことは、地域産業
政策を研究する者にとっても、大変興味深いテーマ(研究することに大きな意
義を見出せるテーマ)である。
 そこで、私の来年度の主要な調査研究テーマとして位置づけ、県の「検討会」
には人的にも活動資金的にも全く太刀打ちできない訳ではあるが、しがらみの
ない自由な視点から、他県等に比して優位性を有する、理想的な産業支援体制
の全体像を描くことに挑戦してみようと考えている。

○そこで、今回のニュースレターでは、私がこれから取り組む、理想的な産業
支援体制を描くための調査研究の具体的な作業手順(案)について提案し、そ
れについて皆様方からアドバイス等を頂き、調査研究活動のベクトルをしっか
り定めた上で、調査研究に着手しようと考えた次第である。
 もちろん、県主導の検討会に対しては、必要に応じて、調査研究に基づく提
言等を実施していく予定なので、この点についても、皆様方のご支援等をお願
いしたい。

【作業手順1:県主導で整備すべき「ものづくり産業支援機能」の整理・体系化】
○まず最初に、本県の現状のものづくり産業支援機能(主に前述の3機関の支援
機能)を整理・体系化し、それと比較しながら、国内外のものづくり産業分野
の先進的地域クラスターの中核的産業支援機関等が有する支援機能を広く調査
(資金的制約から文献調査が中心となる。)し、本県の現状の産業支援機能に
不足している支援機能を抽出する作業から着手する。

○本県の現状のものづくり産業支援機能の整理・体系化の1つの形式事例として
は、以下のようなものを提示ができるだろう。
[支援機能の整理・体系化の形式事例]
@企業の日常業務の中で生じた課題(突発的課題、短期的対応課題)の早期解
決への支援機能(技術・経営に関する救急病院的、駆け込み寺的支援機能)
・技術的課題への対応支援機能(例えば、不良品の発生原因の究明とその早期
解決策構築への支援機能等を含む。)
・経営的課題への対応支援機能(例えば、受発注、下請取引適正化への支援機
能等を含む。)
A企業の中長期的視点の取組みに係る課題の解決への支援機能
・新技術・新製品の研究開発への支援機能(例えば、オープンイノベーション
のための産学官連携、研究開発資金獲得への支援機能等を含む。)
・経営改善への支援機能(例えば、新市場進出、人材育成・確保、事業再生・
承継への支援機能等を含む。)
B創業支援機能
・創業を志す者の創業段階に応じたサポート機能(例えば、個別課題の解決へ
のワンストップ支援体制、創業を志す者と創業応援を志す者等のネットワーク
の整備等を含む。)

○その整理された現状の「支援機能の体系」と比較しながら、国内外のものづ
くり産業分野の先進的地域クラスターの中核的産業支援機関等(例えば、テク
ノ財団が、MOUを締結しているEU等の地域クラスターの中核的産業支援機関や、
広域連携プロジェクトを共同実施してきた他県の産業支援機関等)が有する支
援機能を広く調査し、本県の現状の支援機能には無いが、効果の高い支援機能、
すなわち、本県の支援機能に新たに追加すべき支援機能を抽出する。
※私の調査研究の場合には、資金的制約から現地調査はほとんど実施できない
が、「検討会」には、可能な限り現地調査を実施し、新たに追加すべき支援機
能の探索・抽出に、2月県議会での知事答弁通り、「徹底的」に取組んでいただ
きたい。

○そして、現状の「支援機能の体系」に、新たに追加すべき支援機能を組み込
んだ、「理想的な産業支援機能の体系」を策定する。これが、理想的なものづ
くり産業支援体制の全体像を具体的に描くための重要なツールとなるのである。

【作業手順2:「理想的な産業支援機能の体系」に位置づけられた支援機能を
 効果的に整備し、ワンストップで支援機能を発揮・提供できる組織の在り方
 を検討・選定】
○「理想的な支援機能の体系」に位置づけられた支援機能を全て整備し、個別
具体的な支援サービス・メニューとして提供できる組織(産業支援機関)の在
り方については、工業技術総合センター、中小企業振興センター、テクノ財団
3機関の再編・再構築を前提(与えられた政策的ツール)とすれば、大きく以下
の2つの形に整理できるだろう。

[組織の在り方1:3機関をそのままの形で統合]
 現状の工業技術総合センター、中小企業振興センター、テクノ財団3機関を
そのまま全面的に統合し、そこに新たな支援機能を追加して、1法人とすれば
良い場合

 この場合、工業技術総合センターは県組織のため、公益財団法人である中小
企業振興センターやテクノ財団と統合するためには、地方独立行政法人化を選
定することしか考えられないだろう。
※県組織である試験研究機関と公益財団法人である特定の産業支援機関が、地
方独立行政法人として統合された事例は他県には既にあることから、それを調
査する必要がある。

[組織の在り方2:3機関から必要な支援機能のみ切り出し、それを統合]
 3機関をそのまま全面的に統合することでは、「ものづくり産業支援機能」と
は別の分野の支援機能(例えば、ものづくり産業以外の飲食、理美容、観光等
の創業支援サービス、ものづくり産業以外の企業の再生・承継等への支援サー
ビスなど)の効果的な整備・発揮に支障が生ずる場合、あるいは、あらゆる産
業分野に支援するという「何でも屋」になり過ぎ、ものづくり産業支援に関す
る、高度で専門的な組織としての支援事業に係る、速やかな意思決定と効果的
実施化等に支障が生ずる恐れがある場合など

 この場合、3機関それぞれから統合すべき支援機能(ものづくり産業の振興
に資する支援機能)のみ切り出し、そこに新たな支援機能を追加して統合(残っ
た支援機能は別途再編・再構築)することとし、地方独立行政法人化または公
益財団法人化のいずれかを選定する。
 具体的には、既にものづくり産業の支援に特化している工業技術総合センタ
ーとテクノ財団に、中小企業振興センターのものづくり産業への支援に特化し
ている支援機能を組み込んで、1つの産業支援機関とすることを目指すことに
なるので、やはり、最終的な統合形態は、地方独立行政法人になるだろう。

○地方独立行政法人化を選定した場合には、様々な人的・資金的課題への対応
が必要となるが、ここでは、統合される公益財団法人の有する基本財産の取扱
いに関する課題についてのみ取り上げておきたい。
 例えば、県組織である長野県工業技術総合センターと公益財団法人である長
野県テクノ財団を統合し、地方独立行政法人を設立するとした場合、定款等に
基づき、テクノ財団の基本財産(約53億円、出捐者:県、市町村、企業等)は、
県へ贈与されることになる。この場合、テクノ財団への出捐者、特に産業界の
意向をどのようにして新たな地方独立行政法人に反映させることができるのか
が、大きな課題となる。

【作業手順3:選定した[組織の在り方]に基づき、3機関の再編・再構築の具体
 的な作業手順の検討・決定】
○選定した[組織の在り方]に基づき、3機関の再編・再構築を推進するために
必要な作業について、以下の@〜Cの事項毎に整理し、実施スケジュールを策
定する。
 この作業を通して、選定した[組織の在り方]の実現可能性について、詳細に
検討できることになる。したがって、この作業の結果、実現可能性の視点から、
選定した[組織の在り方]を見直す必要性が生ずる可能性もある。その場合には、
無理をせず柔軟に対応することが必要となる。
 最終的には、現状の県のものづくり産業支援体制が、全体として、本県もの
づくり産業が国際競争力を有する高付加価値型の産業構造に転換することに格
段に資するものへ、実際に大きく改善されることが重要なのであって、その
「形」に拘る必要は全くないのである。
@関係法令・制度に基づき、手続上実施しなければならない事項
A人的組織体制(役員体制、実務実施体制)の整備に関する事項
B事業実施計画とそれに必要な収支予算の策定に関する事項
C人事・経理関係の事務処理システムの整備に関する事項

【3機関の再編・再構築の「試行」としての共同運営・統合型の相談対応窓口
 の整備の重要性】
○3機関の再編・再構築の具体的な作業手順を的確に策定できるようにするため
にも、理想的な産業支援体制の全体像を描くための調査・分析と並行して、2018
年度中に整備する、ものづくり産業振興戦略プランの中核的推進拠点としての、
3機関の共同運営・統合型の相談対応窓口の整備は、3機関の本格的な再編・再
構築の前段での「試行」という位置づけ・役割を果たす非常に重要なものとなる。

〇したがって、県には、この3機関の共同運営・統合型の相談対応窓口の整備に
関しては、その先の本格的な3機関の再編・再構築を見据えた「試行」であると
割切り、様々な課題が顕在化することを恐れず、様々な支援機能の画期的高度化
の可能性の「実験場」と位置づけ、チャレンジングに取り組んでいただきたい。

【むすびに】
○次期「長野県ものづくり産業振興戦略プラン」の策定作業には、当初から、
長野県テクノ財団の「卒業論文」とさせていただくと勝手に意気込み、積極的
に参画させていただいた。その私の意気込みを理解し、私の提言を可能な限り
反映していただいた、県の事務局である産業政策課の皆様には心から感謝申し
上げる。

○ただ、次期「長野県ものづくり産業振興戦略プラン」は、様々な要因から、
肝心要の同プランの推進体制の整備について、工業技術総合センター、中小企
業振興センター、テクノ財団の3機関の支援機能の連携・融合化というような
一定の向づけはなされたものの、今後の検討課題として先送りせざるを得なく
なったことについては、非常に残念に思っている。その点からは、同プランは、
完成度の低いものとなってしまっているのである。

〇しかしながら、同プランの策定作業の最終段階に来て、知事の意向(トップ
ダウン)で、同プランの中に、本県の産業支援体制の全面的・抜本的な見直し
という、本県の産業振興施策の飛躍的高度化には不可欠であるが、非常に困難
性の高い取組みを、県主導で実施するという、政策的な「宣言」を組み込めた
ことは、高く評価されるべきものと考えている。
 同プランの事務局である産業政策課の非常に熱心な策定作業によって誘発さ
れた、当初には予想できなかった、非常に画期的な成果と言えるだろう。

○本県の産業支援体制の全面的・抜本的な見直しのために新年度から実施され
る、様々な調査・分析に基づき、目指すべき理想的な産業支援体制の全体像を
描き、その具現化方策を策定・実施化していくという、非常に困難性の高い活
動が、チャレンジングかつ論理的に推進されるよう、産業支援体制の在り方に
関する幅広い知見をお持ちの産学官の関係の皆様には、主体的かつ積極的に参
画していただくことをお願いしたい。


ニュースレターNo.121(2018年2月25日送信)

優位性のある「長野県IoT利活用戦略」策定の在り方について

【はじめに】
○平成30年2月県議会の知事議案説明での、「産業の生産性の高い県づくり」の中
の「革新力に富んだ産業の創出・育成」の部分において、知事は「・・・製造業
はもとより農林業、建設業、介護・福祉産業等の幅広い分野におけるAI、IoTの利
活用を促進するため、有識者の知見を得て『利活用戦略』を策定する・・・」と述
べている。

〇様々な産業分野でのAI、IoTの利活用の促進については、他県等においては既に
政策的に積極的に取組まれ始めている。しかし、その取組みは、AI、IoT利活用の
発展段階を、@AI、IoTとは何かを知る(先進的な利活用事例から応用の方向性・
可能性を知る)、A実際にAI、IoTの導入を試みる、BAI、IoTを利活用して既存
事業の高度化や新規事業の立上げを実現する、CそのAI、IoT利活用事業を通して
産業イノベーションを創出(社会貢献と利益確保とを両立)する、というように
大まかに区分した場合、他県等での取組みの多くは、現状ではまだ@の段階への
支援を中心とするものである。

〇しかし、今回、知事が策定する意向を明らかにしたAI、IoTの利活用戦略につい
ては、前述の@からCの段階に至る産業界の活動が、切れ目なく効果的に推進さ
れるようにするための、他県等に比して優位性を有する各種支援施策の企画・実
施化のバイブルと言える高レベルのものとして策定されることを期待したい。

○以下で、優位性を有する長野県のAI、IoTの利活用戦略の在り方について議論
を進めるに当たっては、そこで用いるIoTという用語については、ビッグデータや
AI等の関連技術も含めることとした上で、利活用戦略の名称を、「長野県IoT利活
用戦略」(以下、「県IoT戦略」という。)とすることにしたい。

【「県IoT戦略」策定の困難性】
○一言でIoTの利活用といっても、産業・業種や、IoTによって何を実現したいのか
という利活用目的によって、その利活用の内容は千差万別となる。また、既存のハ
ード・ソフトの組合せだけで実現できる利活用もあれば、新規のハード・ソフトの
研究開発を伴う、実現へのハードルの高い利活用もある。

○したがって、「県IoT戦略」の策定については、必然的に以下のような困難性が
伴うことになる。
@支援対象産業・業種の多様性
 支援対象産業・業種が多種多様で、政策的に支援すべき対象を特定しにくい。
したがって、各産業・業種別に、それぞれに適合した支援施策をフルセットで提示
することも物理的に困難となる。
AIoTを利活用するビジネス形態の多様性
 一言でIoTの利活用と言っても、それを利活用するビジネス形態によって、利活
用の手法や利活用する技術の分野・内容等は大きく異なるため、政策的に促進すべ
きIoT利活用の形態(ビジネス形態)を想定して支援施策を整備することも 困難
となる。
BIoT関連知識・技術の多様性
 IoTを構成する知識・技術は多種多様であるため、政策的に習得を支援すべき、
長野県におけるIoT利活用の促進に必要な知識・技術の分野・内容を特定すること
も困難となる。すなわち、IoTの利活用に係る人材育成カリキュラムの体系的な企
画・実施化も困難となる。
CIoTの利活用における新規性や優位性の確保の困難性
 現状の事業の課題をIoTによって速やかに解決し、利益を確実に確保するために
は、既存のIoT関連技術の組合せで対応することが合理的となる。しかし、それで
は、そのIoT利活用手法に新規性を確保できず、特許等あるいはブラックボックス
化によって、同業他社の模倣を阻止することは困難となる。
 同業他社の模倣を防止することができる、新規技術開発を伴うIoTの利活用は、
時間とコストを要する上に、実現できないリスクも大きい。
 したがって、単にIoT(既存のソフト・ハード)の利活用の普及だけではなく、
真に新規性や優位性(市場競争力)を有するIoT利活用産業の創出・集積促進に
資する「政策的仕掛け」の構築には、後述する一般的支援体制と特定プロジェク
ト支援体制という「二重構造」の整備など、大いなる創意工夫が不可欠となる。

○このように、「県IoT戦略」の策定には、戦略策定技術的に様々な困難性が伴う。
そこで、その困難性の存在を前提として、形式論的に、あるいは、実質論的に、ど
のようにすれば、他県等に比して優位性を有する「県IoT戦略」を策定することが
できるのかについて、以下で議論・提案してみたい。
 まず最初に、IoTの利活用に関する戦略の策定に係る困難性を物語っている事例
として、お隣の山梨県のIoT利活用戦略と言えるものの紹介から始めたい。

【山梨県の「『輝き あんしん プラチナ社会』の実現に向けたICTの利活用について」】
○山梨県では、昨年の1月に、様々な産業分野でのAI、IoT等の利活用を促進する
ため、「『輝き あんしん プラチナ社会』の実現に向けたICTの利活用について」
という、山梨県版のIoT利活用戦略とも言えるものを策定している。
※山梨県では、ICTという用語については、ICTの代表格にIoTを位置づけ、更にそ
こにAI、ビッグデータ等をも含めるものとして定義している。このニュースレター
で使用するIoTという用語の定義と同じである。

○山梨県による、この名称の付け方からも、IoTの利活用戦略として、ビジョン
(実現を目指す姿)・シナリオ(ビジョン実現への道筋・政策的仕掛け)・プログ
ラム(シナリオの着実な推進のための各種施策)という、通常の体系・構成にまと
め上げることの困難性から、「戦略」に相当する名称の使用をあえて避けたことが
推測できる。

○したがって、その策定趣旨も、「ICT(AI、IoT、ビッグデータ等を含む。)が利
活用されている国内外の事例を紹介し、県内の様々な産業分野での今後のICT利活用
の参考に供する。」というようなものとなっている。そして、その内容も、一般県
民向けの「IoT入門書」と言えるような、IoTに関して、既に様々な場で述べられ公
知になっている事項を分かりやすく整理・提示するレベルに留まっている。

〇すなわち、山梨県の様々な産業分野でのIoTの利活用によって、当該産業の他県等
の類似産業に対する優位性の確保(市場競争力の確保)を具現化するための、通常の
「産業振興戦略」としての役割を果せるレベルのものにはなっていないのである。

○参考までに、山梨県の「『輝き あんしん プラチナ社会』の実現に向けたICTの
利活用について」の骨格について、以下で簡単に整理し説明しておきたい。

[骨格]
@IoTを支える技術の中味
 IoTを支える技術は、「データの収集(センサ技術と映像技術)」、「データの蓄
積(通信技術とクラウド技術)」、「データの分析(ビッグデータとAI)」、「デ
ータの活用(ロボット技術)」からなることを分かり易く簡単に解説している。た
だ、センサ技術等それぞれの技術の中味まで入る説明は省略している。

A国内外における利活用の動向
 海外の取組事例(中国貴州省の取組、ドイツのIndustrie4.0、アメリカのIndustrial
Internet Consortiumの概要)、国内の取組事例(製造業、介護・福祉、農業、交通、
観光、データ産業・情報通信産業における一般県民が理解しやすいレベルの具体的
事例)を分かり易く簡単に解説している。

B国内外のIoT利活用動向を参考にした山梨県における利活用の可能性
 製造業、介護・福祉、農業、交通、観光、データ産業・情報通信産業の各分野で
公知となっているIoT利活用事例を参考にして、一般的なIoT利活用の方向性・可能
性を分かり易く簡単に解説している。

〇以上のように、通常の「産業振興戦略」の論理的体系であるビジョン・シナリオ・
プログラムという形になっておらず、IoT利活用促進のための、山梨県が独創性・優
位性を有するとアピールできる支援施策も全く提示されていない。
 したがって、これは、長野県による「県IoT戦略」の策定には、あまり参考にはな
らないだろう。
※参考にすべき他県等の先進的なIoT利活用戦略を見つけようと努めたが、今日まで
見つけることができないでいる。もし、ご存知の方がおられれば、お知らせいただ
ければ幸いである。

【「県IoT戦略」の体系・構成の在り方】
○知事議案説明における「県IoT戦略」の策定は、「産業の生産性の高い県づくり」
のための「革新力に富んだ産業の創出・育成」を目指すものである。したがって、
「県IoT戦略」については、県内の幅広い産業分野において、IoTの利活用による、生
産性の向上や新規ビジネスの創出等を通して、大きな社会的・経済的効果が発揮され
る、いわゆる産業イノベーション創出活動を活性化することを策定趣旨とすることに
なるだろう。

○その策定趣旨を前提とした場合の、「県IoT戦略」の体系・構成(ビジョン・シナ
リオ・プログラム)の在り方について、以下に例示してみたい。

 [ビジョン(「県IoT戦略」が実現を目指す姿)]
 県内の様々な産業分野において、IoTの利活用が活性化し、生産性の向上や新規ビ
ジネスの創出等の加速化によって、県内産業の国際競争力の強化・高付加価値化や県
民生活の質的高度化が具現化された、真に豊かな地域社会の実現

 [シナリオ(ビジョン実現への道筋・政策的仕掛け)の在り方]
□一般的支援体制の整備(業種共通的・横断的支援体制の整備)
 IoTの利活用によって、自社の課題の解決を目指す個別企業や、地域産業・社会の
課題の解決を目指す産学官連携体など様々な主体が、IoTの利活用に係る様々な技術・
経営面の課題の解決について気軽に相談でき、的確な助言等の支援を受けられるワン
ストップ・ハンズオン型の支援体制(総合窓口)の整備

□特定プロジェクト支援体制の整備(市場競争力を有するIoT利活用産業集積を目ざ
す、戦略性に優れた産学官連携プロジェクトへの支援体制の整備)
 個別企業や産学官連携体など様々な主体が取組む、課題解決型IoT利活用プロジェ
クトの企画・運営・早期事業化に資する、各種支援メニューの整備と、国等の他機関
の支援メニューを含めての最適支援メニューの選定・活用支援体制の整備

 [プログラム(シナリオの着実な推進のための各種施策)の在り方]
□「一般的支援」のためのプログラム
@IoT利活用の先進的事例の情報収集・提供等による、IoT利活用の啓発(動機づけ)
A「課題解決ニーズ」の把握、「課題解決方策」のビジネスモデル化から、必要な研
究開発、事業化等に至るまでの各工程の円滑なステップアップに資する、各工程毎の
支援メニューの、県内外の産業支援機関の緊密な連携による整備・提供

□「特定プロジェクト支援」のためのプログラム
@特定プロジェクト立上げへの支援
 「課題」提供サイドと「課題解決方策」提供サイドとの情報交流の場の設定 etc.
A特定プロジェクト運営への支援
 提案公募制度等の競争的資金獲得(事前調査、プロジェクトチーム編成、提案書作
成等)への支援
 競争的資金によるプロジェクト運営(管理法人業務等)への支援 etc.
B特定プロジェクトの成果の早期事業化への支援
 国内外の商談会、展示会等への出展支援 etc.

【むすびに】
〇長野県は、この3月末までに、次期「ものづくり産業振興戦略プラン」を策定するこ
とになっている(3月10日までパブリックコメント実施中)。
 同プランの中では、県主導の下で、2018年度中に、県工業技術総合センター、県中
小企業振興センター、県テクノ財団の3機関の産業イノベーション創出支援機能を連携・
融合化した支援体制(3機関共同による統合型の相談窓口の設置等が必要)の整備を実
施し、更には、2019年度中に、県関係の産業支援機関の再編・再構築を含む、ものづ
くり産業支援体制の全面的・抜本的見直しに係るビジョン・シナリオ・プログラムを
策定することになっている。

〇このように2018年度からは、様々な産業・業種におけるIoTの利活用について、技術
面あるいは経営面から支援することをミッションとする、県関係の中核的な産業支援
機関の連携、あるいは再編・再構築の具現化への準備作業が開始される。
 したがって、県が真に他県等に比して優位性を有する「県IoT戦略」の策定を目指す
のであれば、その策定作業は、次期「ものづくり産業振興戦略プラン」に基づく、産
業支援機関の再編・再構築のビジョン・シナリオ・プログラム作りの中に含めて実施
することが合理的ではないだろうか。


ニュースレターNo.120(2018年2月19日送信)

地域産業政策に係る「『学ぶ県組織』への転換」には何が必要なのか
〜長野県の次期総合5か年計画の政策推進基本方針の「『学ぶ県組織』への転換」の具現化のために〜

【はじめに】
〇2018年度を初年度とする長野県の次期総合5か年計画の政策推進の基本方針には、
「本計画に掲げる個々の施策の推進に当たって、先ずは、県組織自体が様々な課題
に的確に対応できるよう、『学ぶ県組織』へ転換します。その上で、県民の皆様を
はじめ、企業や団体、大学など様々な主体と連携・協働し、互いに学び、それぞれ
の役割を果たしながら自治の力を高め、長野県全体の活力につながるよう努めてい
きます。」と記載されている。

〇それでは、地域産業政策の策定・実施化に関して、県組織が「学ぶ県組織」とな
るためには(「学ぶ県組織」と称するに相応しいと評価されるためには)、何をど
のようにして学ぶことにすれば良いのだろうか。以下で具体的に検討・提案してみ
たい。

【速やかに「学び」に着手すべきテーマの存在】
〇次期総合5か年計画の政策推進の基本方針で、「『学ぶ県組織』への転換」の重
要性を提示するしないにかかわらず、長野県の地域産業政策の質的高度化のために、
県組織として直ちに「学び」に着手すべきテーマが、現在パブリックコメント実施
中の「次期ものづくり産業振興戦略プラン」の「第[章 推進体制」の中で明らか
にされている。

〇それは、ニュースレターNo.118(長野県の「ものづくり産業支援体制」の全面的・
抜本的改革について〜知事の強力なリーダーシップの下での長野県産業政策史に残
る大改革に期待〜)でも記載した、県工業技術総合センター、県中小企業振興セン
ター、県テクノ財団等の産業支援機関の再編・再構築を含む、本県の理想的な新規
ものづくり産業支援体制の「姿」を描き、その「姿」の具現化方策を2019年度末ま
でに策定するという、非常に困難性の高い「学び」のテーマのことである。
(2020年度から2022年度にかけて、その方策を順次実施化していく計画)

〇「学び」のテーマの困難性が高いということは、その「学び」の成果には、関係
者から高い評価を頂ける可能性が高いということでもある。
 学ぶ意欲の高い人にとっては、非常にやりがいのあるハイリスク・ハイリターン
の「学び」のテーマが、県組織には現に突き付けられているのである。

【地域産業政策に係る「学ぶ県組織」の在り方】
〇パブリックコメント実施中の「次期ものづくり産業振興戦略プラン」によると、
県は、企業、大学、産業支援機関、行政機関、金融機関等の関係者で構成される
「長野県の産業支援体制の在り方検討会」(仮称)を2018年度に設置して、国内外
の産業支援体制の先進事例や、現状の本県の産業支援体制の課題(不足する産業支
援機能等)を調査研究し、本県の産業支援体制の在るべき姿を検討・決定し、その
具現化方策についても2019年度末までに検討・決定することとしている。

〇次期総合5か年計画の政策推進の基本方針では、「・・・先ずは、県組織自体が
様々な課題に的確に対応できるよう、『学ぶ県組織』へ転換します。その上で、県
民の皆様をはじめ、企業や団体、大学など様々な主体と連携・協働し、互いに学び
・・・長野県全体の活力につながるよう努めていきます。」というように、「学ぶ
県組織」と、県組織を含む「産学官民の連携・協働体」とを役割上で区別して位置
づけている。
 しかし、県組織を含む「産学官民の連携・協働体」によって県全体の活力の発揮
につなげるつもりなら、最初の「学び」の段階から、「学ぶ県組織」は「産学官民
の連携・協働体」として活動することが合理的なのである。すなわち、「学び」か
らその成果の「具現化」に至るまでの活動を、県組織を含む「産学官民連携・協働
体」が一貫して推進できるようにすべきということである。

〇「次期ものづくり産業振興戦略プラン」に位置づけられた「長野県の産業支援体
制の在り方検討会」を、「産学官民の連携・協働体」としての「学ぶ県組織」の先
進モデルとしていただくことを期待したい。
 県には、同検討会について、地域産業政策に係る「学ぶ県組織」として高い評価
を得られるよう、困難性の高い「学び」のテーマへの積極的チャレンジから、その
成果の「具現化」までを一貫して推進できるような組織化・運営にご配意願いたい。

【「長野県の産業支援体制の在り方検討会」の組織化・運営における留意点】
○「次期ものづくり産業振興戦略プラン」の策定作業においては、産学官それぞれ
の分野から、学識経験者・専門家とされている6人の方々を検討部会の委員として
選出し、その方々の意見等を参考にして同プランを取りまとめてきた。

〇検討部会の委員の方々は、策定作業期間内(2年間)に6回開催された検討部会
の場で、それぞれの専門的視点から、同プランの問題点(修正すべき事項等)につ
いて様々な有益な意見等を述べられたが、その主旨を的確に把握し、それを反映さ
せて、実際にプランという形にまとめ上げてきたのは、事務局の県職員なのである。

〇「次期ものづくり産業振興戦略プラン」の策定作業の場合は、事務局の県職員が、
たまたま地域産業政策の策定に関する知識や経験が豊富な人材であったために、形
式論的にも実質論的にも、他県等に比して優位性を有するレベルのプランに仕上げ
ることができた。しかし、通常は、2〜3年間隔で異動という県の人事ローテーシ
ョンの都合もあり、地域産業政策の策定についての知識や経験の乏しい職員が事務
局を任せられることが多々あることを目の当たりにしてきている。

○そもそも、県職員の通常の職務内容からして、地域産業政策の策定に関する専門
的知識や策定経験の蓄積に資する機会に恵まれる県職員は、極めて稀にしかいない
と言っても過言ではないだろう。
 したがって、県組織にとっては、従来から、優位性ある地域産業政策の策定に必
要な、高度専門性の確保が最大の課題となっているのである。

〇そこで、「長野県の産業支援体制の在り方検討会」については、年に数回開催さ
れる一般的な会議体としてではなく、同検討会のメンバーが、それぞれ調査研究テ
ーマを分担し、報告書の執筆も担当するような、産学官の専門家からなる高度専門
性を有する「実働部隊」として組織化することが極めて重要なる。そして、その際
に最も重要視すべきことは、調査研究の企画・実施化やその結果を報告書としてま
とめることなどの「実務」を的確に主導できる人材を、同検討会の「長」として据
えることである。

○このことによって、同検討会の調査研究機能を高めることと、同検討会の事務局
を担う県職員の地域産業政策の策定に関する知識・技術を高めることの両方を一体
的に具現化できる「仕掛け」を同検討会に組み込むことができ、同検討会を、「産
学官民の連携・協働体」としての「学ぶ県組織」の先進モデルとすることができる
のである。

【むすびに】
○国際的な産業競争が激しい中で、本県のものづくり産業が持続的に発展していけ
るようにするためには、現在パブリックコメント実施中の「次期ものづくり産業振
興戦略プラン」に提示されている通り、県内企業の産業イノベーション創出活動の
活性化が不可欠となり、産業イノベーション創出活動活性化の政策的仕掛け(活性
化へのシナリオ)の独創性・優位性の確保が重要テーマとなっている。

〇「次期ものづくり産業振興戦略プラン」の策定作業においては、県は既に、検討
部会という産学官からなる専門家集団と、地域産業政策に係る優れた策定知識・技
術を有する事務局との連携・協働体である「学ぶ県組織」を設置し、2年間という
異例の長期間の「学び」によって、他県等に比して独創性・優位性を有する、県内
企業の産業イノベーション創出活動を活性化する政策的仕掛け(活性化へのシナリ
オ)を案出し、同プランにその骨格を提示しているのである。

〇その「学ぶ県組織」が、「次期ものづくり産業振興戦略プラン」の策定作業の経
験を活かし、更にその体制をしっかり強化して、同プランに提示されたスケジュー
ル通りに、本県の理想的な新規ものづくり産業支援体制の「姿」を描くための調査
研究と、その「姿」の具現化方策の策定という、非常に困難性の高い「学び」のテ
ーマに積極果敢に取り組んでいただくことを期待したい。


ニュースレターNo.119(2018年2月14日送信)

長野県の「次期ものづくり産業振興戦略プラン」の中核的推進拠点の在り方について

【はじめに】
○長野県のものづくり産業の振興施策の企画・実施化のバイブルとも言える、
「次期ものづくり産業振興戦略プラン」(以下、「次期ものプラン」という。計
画期間2018年度〜2022年度)については、2月9日〜3月10日まで、
パブリックコメントが実施され、3月下旬に正式決定されることになっている。

○「次期ものプラン」をご覧いただければ、その「目指すべき姿」(ビジョン)・
「目指すべき姿実現への道筋」(シナリオ)・「道筋の着実な推進に必要な各種
施策」(プログラム)という論理的な体系・構成における、長野県としての独創
性・優位性のみならず、同一建物内に本部機能を有する、工業技術総合センター、
中小企業振興センター、テクノ財団の3機関の産業イノベーション創出支援機能
の連携・融合化による、ワンストップ・ハンズオン型の一貫支援が可能な中核的
推進拠点の整備という、同プランの推進体制における独創性・優位性も確保しよ
うとしていることがご理解いただけるだろう。

○ただ残念ながら、ここで「次期ものプラン」の重要問題として指摘せざるを得
ないことは、長野県として他県等に誇れる、産業イノベーション創出活動へのワ
ンストップ・ハンズオン型の一貫支援が可能な、3機関連携による中核的推進拠
点の整備については、整備すべきとはしているものの、必要な支援機能・体制等
の在り方を具体的に提示することを早々にあきらめ、今後1年以上をかけて、全
く白紙の状態から、どのような支援拠点にすべきかを検討し、具現化するという
非常に「のんびりした」プランになってしまっていることである。

○この3機関連携による中核的推進拠点の在り方に関しては、ニュースレターNo.
114(2017.10.27送信)で基本的事項について既に提案しているが、今回のニュー
スレターは、県の今後の速やかな検討に資するため、整備すべき中核的支援拠点
の在り方について、整備の「実務」に活用しやすい形に整理し直してみたもので
ある。以下で具体的に提案することとして、まずは、イントロダクションとして、
「次期ものプラン」の体系・構成から説明することにしたい。

【「次期ものプラン」の体系・構成】
○「次期ものプラン」の体系・構成は、前述の通り、ビジョン(目指すべき姿)、
シナリオ(ビジョン実現への道筋あるいは政策的仕掛け)、プログラム(シナリ
オの推進に必要な各種施策)というように、論理的にきちっと整理されたものに
なっている。

○ビジョンについては、以下のように「総括的な目指すべき姿」と2つの「具体
的な目指すべき姿」という2段階の構成になっている。

総括的な目指すべき姿:「産業イノベーションの創出に向けて、積極果敢にチャ
           レンジするものづくり産業の集積」
具体的な目指すべき姿:@「産業イノベーションの創出に向けた活動に取り組む
            企業の増加」
           A「県内各地域における、国際競争力を有する高付加価
            値型の次世代産業の集積」

※参考(目指すべき姿の設定に係る県条例)
・産業イノベーション創出の定義(長野県中小企業振興条例 第3条)
 新たな製品又はサービスの開発等を通じて新たな価値を生み出し、経済社会の
大きな変化を創出すること
・県の責務(長野県中小企業振興条例 第4条)
 県は、特に産業イノベーションの創出が図られることに留意して・・・中小企
業の振興に関する施策を総合的に策定し、及び実施するものとする。

 そして、具体的な目指すべき姿@Aそれぞれの実現への道筋(政策的仕掛け)
として、道筋@「県内企業における産業イノベーション創出活動の促進」と、道
筋A「次世代産業クラスターの形成」を提示している。

○道筋@「県内企業における産業イノベーション創出活動の促進」では、企業の
産業イノベーション創出活動の入口から出口までの全体を俯瞰し、9つの重点施
策を効果的に活用し、ワンストップ・ハンズオン型で一貫支援できる体制(政策
的仕掛け)を整備することで、長野県としての独創性・優位性を確保することに
している。

○道筋A「次世代産業クラスターの形成」では、県内各地で実施される16の地
域クラスター形成プロジェクトの進捗状況の全体を俯瞰し、各プロジェクトの課
題解決支援から、プロジェクト間の連携・融合への支援等まで含む、全体的・戦
略的なプロジェクト・マネジメント体制(政策的仕掛け)を整備することで、地
域クラスター形成における長野県としての独創性・優位性を確保することにして
いる。

○そして、プログラム(シナリオの着実な推進に必要な各種施策)については、
道筋@「県内企業における産業イノベーション創出活動の促進」のためのプログ
ラムとして、産学官連携による研究開発から販路開拓等に至るまでの支援施策か
らなる9つの重点施策、そして、道筋A「次世代産業クラスターの形成」のため
のプログラムとして、県内各地域での16の産学官連携による地域クラスター形
成プロジェクトが提示されている。

【整備すべき中核的推進拠点のポイント】
○「次期ものプラン」の具現化、すなわち、道筋@「県内企業における産業イノ
ベーション創出活動の促進」と、道筋A「次世代産業クラスターの形成」のため
の各種施策の企画・実施化を主導する中核的推進拠点として、新たに「産業イノ
ベーションセンター」(仮称)を創設することを提案したい。

○「産業イノベーションセンター」の創設に当たっては、その産業イノベーショ
ン創出支援機能に、長野県ならではの独創性・優位性を確保するため、同一建物
内に本部機能を有する、工業技術総合センター、中小企業振興センター、テクノ
財団の3機関がそれぞれ有する産業イノベーション創出支援機能を、県内企業が
ワンストップで効果的に活用できるよう、3機関共同運営の統合型相談窓口業務
をその中核業務に位置づける。

〇「産業イノベーションセンター」の人事・経理等の間接業務の軽減のため、同
センターは、3機関いずれかの附置組織として整備・スタートする。
 なお、同センターは、3機関いずれかの附置組織となるが、他の2機関は、そ
の相談窓口業務を自らの相談窓口業務として位置づけ、同センターの事業には、
自らの事業として対応(協力)する。

○「産業イノベーションセンター」の業務の中には、本県ものづくり産業の高付
加価値型への転換、国際競争力の強化による持続的発展に資する、新たな産業支
援体制の在り方(県の試験研究機関、県関係産業支援機関等の再編、新たな中核
拠点の整備等を含む。)について、国内外の産業支援機関等との連携の下に調査
研究することも位置づける。

【「産業イノベーションセンター」に整備すべき支援機能No.1=県内企業の産業
イノベーション創出活動の促進のための支援機能】
○「次期ものプラン」に提示された、産業イノベーション創出活動の促進のため
の9つの重点施策を効果的に活用し、県内企業の産業イノベーション創出活動の
入口(ニーズの把握・選定、ビジネスモデルの構築等)から出口(事業化・販路
拡大等)までを、一貫して支援するワンストップかつハンズオン型の支援事業を
企画・実施化できる支援機能を整備する。

○具体的には、以下のような事業を企画・実施化できるようにする。
@3機関の統合的な産業イノベーション創出に係る相談窓口業務
 県内企業からの産業イノベーション創出活動に係る相談案件について、支援す
べき内容を分析・抽出・整理し、3機関に所属するコーディネータ等の専門性等
も参考として、3機関との連携で対応できるのか、他の産業支援機関との連携が
必要なのか、を判断し、的確な支援を実施できるようにする。
 なお、最初の相談対応においても、高度な専門性等から、同センターのみでは
対応できない場合には、当然、3機関に所属する専門人材等の協力を得て対応す
ることになる。

A他の県内外の専門機関等との連携コーディネート支援
 「同センター+3機関」のみでは十分に支援できない案件については、他の県内
外の専門機関等との連携コーディネートによって必要な支援を的確に実施できる
ようにする。
 特に、産業イノベーション創出工程の初期段階(ニーズの選定、ビジネスモデ
ルの構築等)への支援については、3機関ともに経験が乏しいため、他の専門機
関(技術や事業の目利きができるコンサルティングファーム等)との緊密な連携
体制の下で効果的に支援できるシステムを構築しておく。

B産業イノベーション創出活動へのハンズオン型支援
 産業イノベーション創出活動に取り組む企業の専門人材不足を補完するため、
例えば、3機関に所属する専門人材等が、企業の研究開発活動にメンバーとして
参画することなどが考えられる。
 3機関の中で適切な専門人材を見出せない場合には、他の県内外の専門機関等
との共同研究体制の構築等を支援することになる。

【「産業イノベーションセンター」に整備すべき支援機能No.2=次世代産業クラ
スター形成の促進のための支援機能】
○県内各地域における次世代産業クラスター形成促進のための16のプロジェクト
全体の進捗状況を俯瞰し、個々のプロジェクトに発生する諸問題の解決支援から、
プロジェクト相互の効果的連携・融合等まで含む、戦略的なプロジェクト・マネ
ジメント機能を整備する。

○具体的には、以下のような事業を企画・実施化できるようにする。
@県内各地域で取り組む次世代産業クラスター形成促進のための16のクラスター
形成プロジェクトの進捗状況の把握(課題の把握等)
・専任コーディネータによる、クラスター形成プロジェクトの中核的推進機関等
への定期的な巡回ヒアリング
・同プロジェクトの中核的推進機関等で構成するPDCA会議の定期的開催、etc.

Aクラスター形成プロジェクト推進上の課題の解決への支援
・「産業イノベーションセンター+3機関」の支援機能の活用による個別課題解
決への支援
・「産業イノベーションセンター+3機関」のみでは対応できない支援について
は、他の県内外の産業支援機関等との連携による支援
・クラスター形成プロジェクトの効果的運営に資するテーマに関する研究会・講
演会等の開催
・課題解決のための研究開発に要する競争的資金獲得への支援、etc.

Bクラスター形成プロジェクトの研究開発成果の早期事業化への支援
・研究開発成果の内外の産学官へのプレゼンテーション機会の提供
・研究開発成果の事業化に向けた大規模研究開発に要する競争的資金獲得への支
援、etc.

【「産業イノベーションセンター」に整備すべき支援機能No.3=新たな産業支援
体制の在り方に関する調査研究機能】
○長野県は、ものづくり産業の高付加価値型への転換、国際競争力の強化による
持続的発展に資する、新たな産業支援体制の在り方(県の試験研究機関、県関係
産業支援機関等の再編、新たな中核拠点の整備等を含む。)について、実現を目
指す理想的姿を提示し、それを具現化することを主導する旨を明言している。
(ニュースレターNo.118「長野県の『ものづくり産業支援体制』の全面的・抜本
的改革について〜知事の強力なリーダーシップの下での長野県産業政策史に残る
大改革に期待〜」を参照)

 そこで、長野県が目指すべき新たな産業支援体制の姿を提示することを支援す
るため、それに必要な調査研究を主導する機能(調査研究会の事務局機能等)を
「産業イノベーションセンター」に整備する。

○具体的には、以下のような事業を企画・実施化できるようにする。
@「新たな産業支援体制の在り方に関する調査研究会」(仮称)の立上げ・運営
 県の試験研究機関、中小企業振興センター、テクノ財団等の産業支援機関、大
学等の実務者で構成する「新たな産業支援体制の在り方に関する調査研究会」
(仮称)を立上げる。
 その調査研究会を拠点として、現状の県全体の産業支援体制の課題(不足する
産業支援機能等)を抽出・特定し、その課題を解決できる、より効果的な新規産
業支援体制の整備(現状の県の試験研究機関、県関係の産業支援機関等の再編、
新たな中核拠点の整備等を含む。)に係る、ビジョン(目指す支援体制の具体的
姿)・シナリオ(ビジョン実現への道筋)・プログラム(シナリオの着実な推進
に必要な各種事務作業・手続等)の策定に必要な調査研究を推進する。

A新規産業支援体制の整備に必要な準備作業等の主導
 調査研究結果を反映し、そのビジョン(目指す新規産業支援体制の姿)を実現
するため、現状の産業支援機関等の再編、新たな中核拠点の整備等に着手する旨
が決定した場合には、関係する産学官の緊密な連携による、ビジョン実現へのシ
ナリオ・プログラムの着実な推進を主導する拠点機能(関係する産学官の間の連
絡調整機能を含む。)を担う。

○「産業イノベーションセンター」に必要な人的体制や予算等についても、具体
的に検討しているが、それについては、同センターの創設について実際に関係者
間で議論が始まってから、必要に応じて提案することとしたい。

【むすびに】
○「次期ものプラン」の検討部会の場で、ある委員から、「同プランで『実施す
べき事項』は既に明確にされているにもかかわらず、その『実施体制』について
は、1年かけて検討・整備するというようなのんびりした対応は、民間企業では
到底考えられない。今日、『実施すべき事項』が定まれば、明日にでも、その
『実施体制』を決定するというのが民間企業のスピード感である。」という主旨
の厳しいご指摘をいただいた。

○事ここに至っては、「次期ものプラン」の策定作業の進め方の問題点をいくら
反省しても後の祭りである。これからは、「次期ものプラン」の「第[章 推進
体制」の最後に提示されている、推進体制整備に係るスケジュールの通りに、
「3機関が連携した支援体制の整備」や「県として目指すべき理想的な産業支援
体制の姿を描くこと」等に、できるだけ速やかに着手することに集中していただ
くことをお願いしたい。


ニュースレターNo.118(2018年1月17日送信)

長野県の「ものづくり産業支援体制」の全面的・抜本的改革について
〜知事の強力なリーダーシップの下での長野県産業政策史に残る大改革に期待〜

【はじめに】
○日本経済新聞(H30.1.5付)によると、平成30年4月からスタートする長野県の
新たな総合5か年計画に盛り込む、中小企業の生産性向上のための施策に関して、
長野県の阿部知事は「技術革新が進む中で、先行した地域になるために産業関連
機関のあり方を再構築したい。県中小企業振興センターや県テクノ財団など産業
支援や研究に関わる機関を一体的に運用できる組織体制を考える。」と述べている。

○この知事の発言・考え方は、長野県において、今まで誰も口にしてこなかった
非常に画期的なものであるため、多くの産学官の関係者が、この件に関する、今
後の知事の「実行力」の発揮に注目していることが推測できる。
 そうであるにも関わらず、この知事の画期的な発言・考え方に対応・整合した
記載内容が、現状の総合5か年計画(案)の中のどこにも見当たらないため、そ
のパブリックコメントに、知事の発言・考え方を具現化するためのシナリオ・プ
ログラム等を明確に提示すべき旨の意見を提出した。

○この知事の画期的な考え方の表明は、今後の県内ものづくり産業からの、顕在
的・潜在的な支援ニーズに効果的に応えうる、他県等に比して優位性を有する新
たな産業支援体制の姿(ビジョン)を、既成概念やしがらみに捉われず、大胆に
フリーハンドで描いてみせるという「宣言」に相当するものであり、今後の本県
のものづくり産業の振興に、非常に大きな恩恵をもたらす極めてチャレンジング
な政策姿勢と言えるだろう。

【知事の発言・考え方の長野県産業政策上での歴史的重要性】
○この知事の発言・考え方は、県の各種の産業振興施策の企画・実施化において、
「当然のこと」としてその存在を前提としてきた、県工業技術総合センター、県
中小企業振興センター、県テクノ財団などの県関係の産業支援機関の、現状の機
能・組織等のままでの存在を「当然のこと」とはせずに、「当然のこと」として
きた「既成概念」を大胆に打ち砕こうとするものである。

○より具体的に言えば、既存の産業支援機関が有する支援機能の使い勝手をより
良くするために、ワンストップかつハンズオン型で様々な支援機能を活用ができ
る、全く新しい産業支援体制(既存の産業支援機関では提供され得なかった、新
たな支援機能の追加も含む。)への大改革を想定しているとも言えるのである。

○いずれにしても、本県の産学官のリーダーの方々が、その必要性・重要性を十
分に認識しながらも、その困難性等から今まで提唱できなかった、県関係のもの
づくり産業支援機関の再編を含む、産業支援体制の全面的・抜本的改革を主導す
る旨を、知事自らが力強く表明したことの意味は非常に大きいのである。
 この表明だけでも長野県の産業政策史に残る画期的な出来事と言えるが、この
表明を必ず実現していただくことを期待して、以下で、その実現への取り組みの
在り方について議論を深めたい。

○現状の長野県の産業支援体制を大胆に再編し、他県等に比して優位性を有する
新産業支援体制を構築するためには、当然、実現すべき新たな理想的な産業支援
体制の姿(ビジョン)、そのビジョン実現への道筋(シナリオ)、そのシナリオ
の着実な推進のために必要な各種施策(プログラム)を策定するというような、
論理的手法で取り組むことが大前提となる。

【ビジョン・シナリオ・プログラム策定への具体的な取組手法】
○知事の発言・考え方に基づき、具体的作業を進める上では、まず最初に、長野
県において実現すべき、新たな理想的な産業支援体制の姿(ビジョン)を描く作
業から始めなければならない。その作業においては、内外の先進的なものづくり
産業支援体制の事例調査等を参考にして、本県の現状の産業支援体制の課題(不
足する支援機能等)を抽出・特定することから着手すべきことになる。

○その課題を解決し、内外の先進的産業支援体制に比しても優位性を有すると言
える、理想的・独創的な産業支援体制の姿(ビジョン)を描いた上で、その実現
へのシナリオを策定することになる。
 そのシナリオの中に、県関係の産業支援機関の再編・再構築が重要な構成要素
として含まれることになるのである。最初から既存の産業支援機関の再編・再構
築ありきではない、ということである。

○したがって、県内の産学官が賛同できるビジョンが描けなければ、関係する産
業支援機関の再編・再構築の趣旨(大義名分)を説明できないことから、再編・
再構築の対象となる産業支援機関の協力を得られない事態に陥る可能性が高まっ
てしまうのである。

【「新たな産業支援体制の在り方に関する調査研究会」(仮称)の設置】
○このビジョン・シナリオ・プログラムの策定作業については、産業政策の策定
に係る産学官の実務経験者からなる「新たな産業支援体制の在り方に関する調査
研究会」(仮称)を速やかに設置して、前述の内外の先進的なものづくり産業支
援体制の事例調査や、本県の現状の産業支援体制の課題(不足している支援機能
等)の抽出・特定等から活動を開始すべきことになる。

○なお、この調査研究会の事務局については、調査研究計画の策定・実施化や、
調査研究結果の取りまとめ等を主導できる知識・経験を有し、調査研究に必要な
内外の産学官からの協力を得るのに資するネットワークを既に構築している、県
中小企業振興センターや県テクノ財団のような産業支援機関に設置することが合
理的であろう。

○また、県中小企業振興センターや県テクノ財団は、産業支援機関の再編・再構
築の対象となる機関であるため、実際に再編・再構築作業に取り組むようになっ
た場合にも、対象機関の実情に配慮した再編・再構築作業となるよう効果的に調
整し、対象機関の間での緊密な連携の下に、全体作業を強力に牽引できる拠点と
しての役割も担うことができるのである。

【産業支援機関の再編・再構築に資する実験的取組みの必要性】
○新たな産業支援体制の構築までには、相当の期間を要する。しかし、産業界か
らは、同一建物内に本部機能を有する、県工業技術総合センター、県中小企業振
興センター、県テクノ財団の3機関の産業支援機能を、県内企業がワンストップ
で効果的に活用できるよう、3機関共同運営の統合型相談対応窓口を設置すべき
旨の強い要請が出され、「長野県ものづくり産業振興戦略プラン」の策定作業に
おいて、その具現化に向けて検討されている。

○したがって、県内産業界からの要請にタイムリーに応え、知事の考え方にも沿
って、産業振興を効果的に推進できるようにするためには、新産業支援体制に係
るビジョン・シナリオ・プログラムの策定作業と並行して、3機関共同運営の統
合型相談対応窓口を速やかに設置・稼動させることが、最善の現実的対応策とな
るだろう。
 また、3機関共同運営の統合型相談対応窓口という先駆的活動経験の蓄積や、
当該窓口の効果についての評価等は、将来的な3機関の再編や新組織への統合等
に関する具体的検討において、重要な参考資料として、より優位性の高い新産業
支援体制の具現化に大きく資するものとなるはずである。

○そこで、現在策定作業中の「長野県ものづくり産業振興戦略プラン」と「長野
県総合5か年計画」の中には、長野県のものづくり産業支援体制の再構築に向け
て、ビジョン・シナリオ・プログラムの策定に取り組む旨を提示するだけでなく、
3機関共同運営の統合型相談対応窓口を設置・運営する旨も提示していただくよ
うお願いしたいのである。

【むすびに】
○長野県の阿部知事は、本県の産学官のリーダーの方々が、その必要性・重要性
を十分に認識しながらも、その困難性から提唱できなかった、県関係の産業支援
機関の再編を含む、ものづくり産業支援体制の全面的・抜本的改革を主導する旨
を力強く表明した。

○知事が、長野県の産業政策の推進に係る、新たな画期的考え方を明確に提示し
た以上、県組織としては、万難を排して、その具現化に取り組むことになる。
 そして、その具現化への取組手法は、当然、ビジョン・シナリオ・プログラム
の策定・実施化というような、論理的で戦略的なものでなければならない。また、
その策定・実施化においては、県関係の産業支援機関の専門性を効果的に活用し
て、速やか、かつ、積極的に取り組むことを期待したいのである。


ニュースレターNo.117(2018年1月1日送信)

第四次長野県環境基本計画(案)が抱える重要課題について
〜産業廃棄物に係るビジョン・シナリオ・プログラムの課題に焦点を絞って〜

【はじめに】
○第四次長野県環境基本計画(案)(計画期間:2018年度〜2022年度)について
は、平成29年12月15日から平成30年1月13日まで、パブリックコメントが実施され
ている。
 そこで今回は、地域産業(特に製造業)と極めて関連性の深い産業廃棄物に係
る環境基本計画(案)の重要課題に焦点を絞り、その解決方策等について議論し
てみることにしたい。
 産業廃棄物に特化した視点から、環境基本計画(案)のビジョン(実現を目指
す姿)、シナリオ(ビジョン実現への道筋)、プログラム(シナリオの着実な推
進に必要な各種施策)の課題をチェックしようというものである。

※産業廃棄物とは、以下の様な事業活動から排出される廃棄物(有価物でないも
の)であり、排出事業者が法的基準に基づき適正に処理する責任を有する。
 [あらゆる事業活動に伴うもの]
 燃え殻、汚泥、廃油、廃酸・廃アルカリ、廃プラスチック、ゴムくず、金属くず、
 ガラスくず等
 [特定の事業活動に伴うもの]
 紙くず、木くず、繊維くず、動植物性残渣、動物の糞尿等

〇製造業由来の産業廃棄物の適正処理や資源化等の議論においては、製造業を動
脈産業と例え、産業廃棄物処理業を静脈産業と例え、動脈・静脈の両産業分野が
合理的に連携して円滑に活動できないと、両産業とも立ち行かなくなることを基
本認識としている。両産業分野の合理的連携(市場原理に基づく事業としての連
携等)によって、産業廃棄物に係る循環型社会がはじめて実現できるということ
である。

〇環境基本計画(案)においては、産業廃棄物に係る「現状と課題」、「長野県
の将来像」(ビジョンに相当する部分)、「計画期間中の目標と実施施策」(ビ
ジョン実現のためのシナリオ・プログラムに相当する部分)について、一貫して
「循環型社会の形成に関すること」というカテゴリーの中に位置づけ、整理して
いる。すなわち、産業廃棄物については、焼却・埋立等の不要物としての処理・
処分ではなく、有用物としての資源化等によって、資源循環させることを最重要
な政策課題として位置づけているのである。

〇産業廃棄物に係る実施施策(プログラム)の基本的構成は、@「法令に準拠し
た適正処理の確保」と、A「資源化による廃棄物の減量化・環境負荷低減」の2つ
の分野に大きく分類されていると言える。
 しかし、「循環型社会の形成に関すること」の中に位置づけるために最も重要
視すべき、Aの「資源化」について、長野県らしい独創性や新規性のある施策
(他県等に対するアピールポイント)が全く提示されていないこと、提示しよう
とする意思が全く感じられないことを、重要課題として以下で指摘したい。

【産業廃棄物に係る長野県の「現状と課題」について】
〇環境基本計画(案)においては、長野県の産業廃棄物の排出量(平成25年度)
は、約434万1千トン(一般廃棄物は約65万3千トン)で、汚泥の増加により年々増
加傾向にあることを課題としている。しかし、産業廃棄物全体の量的増大を課題
として指摘するだけで、適正処理困難な廃棄物、資源化困難な廃棄物など、その
種類や性状に由来する具体的な課題の存在にまで踏み込んではいない。

〇どのような種類の産業廃棄物に、適正処理や資源化等におけるどのような課題
があるのかを提示しなければ、その解決のための効果的な施策を企画・実施化す
ることはできない。このことが、環境基本計画(案)が、「現状と課題」の後に
掲げる、産業廃棄物に関する「長野県の将来像」、「計画期間中の目標と実施施
策」において、目指す将来像の具現化への戦略的な施策や、達成目標の具体的提
示ができないというような、根本的課題の発生の原因となっているのである。

【産業廃棄物に係る「長野県の将来像」について】
〇この環境基本計画(案)が提示する産業廃棄物に係る「長野県の将来像」につ
いては、その「現状と課題」を踏まえて、概ね2030年頃に実現を目指す産業廃棄
物に係る本県の姿(ビジョン)を提示するものとしている。

〇しかし、産業廃棄物に係る「長野県の将来像」については、「食品廃棄物など
地域で発生する廃棄物を資源化し、地域内で利活用する『地域循環圏』の確立」
を掲げるのみで、食品廃棄物以外の製造業、建設業等由来の様々な廃棄物の資源
化等には全く言及していないのである。例えば、増加していることを最重要問題
としている汚泥の減量化や資源化についてさえも、全く触れていないのである。
どのような種類・分野の汚泥が問題なのかさえも提示していないのである。

○そもそも、地域で発生した廃棄物を資源として地域内で循環させるという考え
方は、私が県で廃棄物行政を担当していた30年以上も昔から、既に、廃棄物行政
において扱うべき通常の廃棄物処理システムとして、広く認識されていたのであ
る。古典的、従来的な施策を、あたかも新規性のある施策のように掲載している、
県の産業廃棄物行政担当部署の安易な姿勢からは、残念ながら、産業廃棄物に係
る施策を少しでも革新しようという積極性が全く感じられないのである。

〇環境基本計画(案)の「地域循環圏」の用語解説を見れば明らかであるが、同
計画(案)で地域循環を想定しているのは、食品廃棄物、家畜ふん尿、木くず等、
従来から堆肥や燃料等として、容易に活用可能な廃棄物に限定しており、30年以
上昔からの発想の域を脱していないのである。
 先端的科学技術を活用する、新たな資源化技術の研究開発・実用化によって、
より高度な地域循環を可能とするような、トップランナーを目指す長野県に相応
しいチャレンジングな取組み(他県等に対する優位性、アピールポイント)の提
示は、全くなされていないのである。寂しい限りである。

【産業廃棄物に係る「計画期間中の目標と実施施策」について】
〇循環型社会の形成に関連した産業廃棄物に係る「施策の方向性」(シナリオ・
プログラム)については、産業廃棄物に係る「長野県の将来像」(ビジョン)に
おいて記載された、古典的、従来的な「地域循環圏」の形成に取り組む旨を繰り
返し提示するのみで、何ら新規性や独創性のある「施策の方向性」の提示はなさ
れていない。

〇しかも、「達成目標」の「一般廃棄物リサイクル率」については、2015年度の
23.0%を2020年度に24.3%にすることを目指す旨を提示しながら、「産業廃棄物
リサイクル率」に関しては全く提示していないのである。

〇このようなことからも、県の産業廃棄物行政担当部署の、一般廃棄物の約7倍の
発生量の産業廃棄物の資源化の取組みの重要性への認識の低さに由来する、種類・
分野別の産業廃棄物の資源化促進に資する「政策的仕掛け」構築の必要性への認識
の欠如を指摘できるのである。
 例えば、産業廃棄物の資源化・環境負荷低減による、環境保全の高度化と動脈・
静脈産業の振興との整合というような、より理想的で高度な政策理念の具現化へ
の取組みの重要性と、その具体的取組み方針を提示すべきなのである。
 その具体的取組みには、産学官連携による資源化困難な産業廃棄物の新規資源
化技術の研究開発・事業化プロジェクトの立上げ等も含まれるべきことになる。

【むすびに】
〇第四次長野県環境基本計画(案)における産業廃棄物に係る課題に焦点を絞っ
て議論してきた。結論的には、要するに、この環境基本計画(案)は、産業廃棄
物に関する現状の本質的課題を抽出・提示できないために、顕在的・潜在的に求
められている産業廃棄物に係る課題解決方策の創出、社会実装による環境保全高
度化への道筋も提示できていないのである。

〇もし、現状においては、技術的あるいは経済的な困難性から、産業廃棄物の新
たな「資源循環システム」の構築に、長野県の環境政策の中で取組めないのであっ
ても、その技術的・経済的困難性の解決方策創出のための調査や研究開発に産学
官連携によって着手することくらいは、「施策の方向性」の中に位置づけるべき
なのである。

〇少なくとも、産業廃棄物に関しては、全国共通的な内容の安易なビジョン・シ
ナリオ・プログラムで構成された環境基本計画ではなく、長野県らしい独創性や
新規性を有する、チャレンジングなビジョン・シナリオ・プログラムを提示する
環境基本計画にして頂くことを期待して、このニュースレターの主旨をパブリッ
クコメントに提出することにしたい。