地域産業政策をライフワークとして、個人的に、いわばオフ・デューティの「趣味」として、
様々に調査研究し、できれば仕事に活かしたいと努めてまいりました。その理由は、他
地域に比して優位性を有する地域産業集積を形成するためには、他地域に比して優位性
を有する地域産業政策が不可欠であるということを、商工行政に携わった20代後半頃
から、経験的に確信し、地域産業政策の調査研究の重要性や意義を強く認識していたか
らです。
以来30年以上も経過したにもかかわらず、不勉強のせいで、地域産業の優位性確保
に関しては、漠然といわゆる地域クラスター理論が有力との方向性は見出せましたが、
いまだに納得できる地域産業振興理論(地域クラスターが拡大再生産していくメカニ
ズム・理論、政策的仕組みなど)に巡り会えないままでいます。
そこで今後は、「趣味」を更に充実したものにするために、ネット上に地域産業政策
について、オープンでフリーなディスカッションができる場として開設するこの個人的
ホームページ「地域産業振興戦略研究所」に、皆様方からアドバイス等をいただきなが
ら、残された課題について、より効果的に調査研究を続け、できれば「解」を見出した
いと考えています。
また、地域産業振興に何らかの形で係わられている方々に、私の調査研究の経過や、
そこから生まれた地域産業振興への提言などをニュースレターという形でお送りし、
その中で提起している政策課題等について、意見等を交換する場としてこの研究所が
機能することで、本県の産業振興に資する地域産業政策に関する議論が、関係者の間
で活発化するきっかけとなることも期待しております。
ニュースレターとして既にお送りしたテーマ、これからお送りする予定のテーマは以
下の通りです。皆様方からのご意見等も参考にして、順次、調査研究の必要性の高い
テーマを追加してまいります。本県産業の発展のために、所属や職域を超えてオープ
ンかつフリーに議論すべきと思われるテーマを選んでいます。そのテーマ等について
何かご意見・ご助言等をいただける場合には、「お問合せ先」のメールアドレスまで
お寄せください。調査研究等の参考にさせていただきます。
また、ニュースレターの送付を希望される方は、同メールアドレスまで、氏名、送付先の
メールアドレスをお送りください。調査研究結果に基づき提言等としてまとまったテーマ
から順次お送りします。
○調査研究テーマ(調査研究活動の進捗状況により変更有り)
【1 地域産業政策(戦略)の総論的課題について】
@「地域産業政策」を取り巻く様々な課題(イントロダクション)
地域産業政策を策定する上での本県の基盤的課題として、まず、専門性を有する組織、
研究者や評論家、オープンな議論の場の不在などを挙げることができる。また、様々な
行政計画の目的達成(県民の福祉向上)に資する比較優位性のある行政サービスの提供
(「仕掛け」の構築)を合理的に実現するためには、科学技術の活用や産業活動との連携
などが必要であるにもかかわらず、それが全くと言っていいほど議論されていない。こ
のようなことから、本県の地域産業政策を含む各種行政計画やその推進体制には多くの
課題がある。どうすべきか・・・
※ニュースレターでは、ボリュームの点からも、当面は、上記に係る以下に記載した
各論的課題についての報告をしていく。
A地域産業政策の重要構成要素
ある地域産業分野の企業群が、新技術・新製品の研究開発によって、高付加価値分野
に新規参入し、国際競争力を有する新たな地域産業集積を形成していくというストーリー
を具現化するためには、「第一段階」として、当該産業分野の企業群が、その新たな技術・
製品分野に挑戦しようという意思決定をすることに資する「動機づけ(啓発)」過程への政
策的対応(「仕掛け」の構築)が重要となる。その過程を経た後に、挑戦する意思を有する
企業群による、地域産業先導型の産学官共同研究開発活動への展開など、新たな地域
産業集積の形成に向けての具体的活動が活性化していくことになる。この「第一段階」
が、新たな産業集積の形成速度を律速し、その比較優位性が、他地域より速い形成速度
を確保することにつながる。どうすべきか・・・
B長野県の国際戦略(No.9 2013年7月13日送信)
Cメディカル関連機器産業の振興戦略
(長野経済研究所「経済月報」の調査レポートに寄せて)
長野経済研究所「経済月報」(2012年7月号)の調査レポート「医療機器分野へのチャレ
ンジ〜参入障壁を乗り越える県内企業〜」の最後に「・・・他地域が模倣できない『長寿
県長野』など地域の特性を活かした医療機器の開発・システム化といった視点こそメディ
カル産業を長野県の基幹産業へと発展させていく方向性だろう。」と記載されている。こ
れは、正に、本県のメディカル関連機器産業の振興のためには、他地域に比して優位性を
有するメディカル関連機器産業振興戦略が必要であり、その優位性を「長寿県長野」など
で確保すべきことを、本県の代表的経済研究所が提言したもので非常に意義深いことであ
る。この若干抽象的な提言を具現化するために、当該研究所が、現在の県等の戦略のブラ
シュアップ、高度化、優位性確保などについての研究や議論をどのように主導されるかに
注目したい。当該研究所は、本県の優位性ある地域クラスター形成について、単に現状分
析するだけでなく、それに基づく戦略策定分野においても、研究所として大きな役割を担っ
て頂くことが期待される。そのためには、産業振興戦略実行機関を含む産学官関係者との
合目的的な連携を可能とする協働システムの構築等が必要となろう。どうすべきか・・・
D「顧客」を内包する「コンパクト地域クラスター」の形成戦略(No.13 2013年9月8日送信)
E長野県産業イノベーション推進本部の課題(No.17 2013年11月1日送信)
(日本経済新聞の報道に寄せて)
F下請型中小企業の未来を切り開くグローバル化への政策的支援の在り方
(No.22 2014年1月13日送信)
G長野県中小企業振興条例への期待(No.25 2014年2月15日送信)
H「無い物ねだり」をしない新たな地域クラスター形成戦略(No.27 2014年3月15日送信)
I長野県総合5か年計画に整合する地域産業振興事業の在り方(No.28 2014年3月21日送信)
J新たな政策理念による地域産業政策の高度化への道筋(No.33 2014年6月8日送信)
K長野県のものづくり中小企業の国際展開を支援する戦略の在り方(No.41 2014年9月23日送信)
L地方創生の「フロントランナー」になることの意義とその戦略(No.42 2014年10月13日送信)
M優位性のある地域産業政策の策定を可能とする「環境」の整備(No.44 2014年11月9日送信)
N年末年始に思い当たった長野県の当面の産業政策的課題(No.48 2015年1月6日送信)
Oオーストリア・リンツを拠点とするプラスチッククラスター形成戦略
―――長野県の地域産業振興戦略への応用のために―――(No.52 2015年3月1日送信)
P新たな長野県イノベーション創出システムの構築(No.58 2015年4月17日送信)
Q新たな長野県イノベーション創出システムの構築(No.2)
―――「リビング・ラボ」を活用した「コトづくり」の活性化―――(No.60 2015年5月23日送信)
R「コネクターハブ企業」を核とする地域産業振興戦略の在り方(No.70 2015年10月10日送信)
S長野県の地方創生のための新たな国際戦略の策定・実施化への期待
―――長野県版総合戦略に提示された国際的共創・連携等に関する優れた政策姿勢を具現化していただくことを期待して―――(No.71 2015年10月25日送信)
(21)長野県内5地域での新たな地域クラスター形成戦略策定への取組みの必要性
―――「長野県テクノハイランド構想」策定時の「熱気」の再現を―――(No.74 2015年12月16日送信)
(22)長野県の新たな地域産業政策策定への基本姿勢の在り方
〜フロントランナー型よりキャッチアップ型の重視を〜(No.75 2016年1月7日送信)
(23)長野県中小企業振興条例を遵守した中小企業振興施策の策定・実施・公表への期待(No.78 2016年2月24日送信)
(24)「地域産業クラスター拡大再生産『装置』」としての「産業イノベーション創出活動の活性化『装置』」の在り方(No.106 2017年6月14日送信)
(25)長野県が設置を検討している「長野県オープンイノベーションセンター」(仮称)の在り方について(No.110 2017年8月12日送信)
(26)長野県の新総合5か年計画が掲げる地域産業振興に係る政策理念の課題
〜イノベーティブな「『貢献』と『自立』の経済構造への転換」から古典的、従来的な「産業の生産性の高い県づくり」への後退は何を意味するのか〜(No.116 2017年12月17日送信)
(27)長野県の「ものづくり産業支援体制」の全面的・抜本的改革について
〜知事の強力なリーダーシップの下での長野県産業政策史に残る大改革に期待〜(No.118 2018年1月17日送信)
(28)長野県の「次期ものづくり産業振興戦略プラン」の中核的推進拠点の在り方について(No.119 2018年2月14日送信)
(29)地域産業政策に係る「『学ぶ県組織』への転換」には何が必要なのか
〜長野県の次期総合5か年計画の政策推進基本方針の「『学ぶ県組織』への転換」の具現化のために〜(No.120 2018年2月19日送信)
(30)長野県が目指すべき「ものづくり産業支援体制の全体像」の具現化について(No.1)
〜「理想的な産業支援体制の全体像」を描くための調査研究の進め方〜(No.122 2018年3月18日送信)
(31)長野県が目指すべき「ものづくり産業支援体制の全体像」の具現化について(No.2)
〜支援を受ける企業の視点からの、現状のものづくり産業支援機能(工業技術総合センター、中小企業振興センター、テクノ財団)の整理・体系化の一例〜(No.123 2018年4月8日送信)
(32)長野県が目指すべき「ものづくり産業支援体制の全体像」の具現化について(No.3)
〜新たに整備すべき支援機能(その1):次世代自動車(EV化や自動運転化等)分野への展開支援機能の整備〜(No.124 2018年4月27日送信)
(33)長野県が目指すべき「ものづくり産業支援体制の全体像」の具現化について(No.4)
〜工業技術総合センターを中核に据えた、同センター・中小企業振興センター・テクノ財団3機関の再編・再構築の一つの手法について〜(No.125 2018年5月21日送信)
(34)長野県が目指すべき「ものづくり産業支援体制の全体像」の具現化について(No.5)
〜新たなものづくり産業支援体制へのスタートアップ・アクセラレーター機能の組み込みの在り方について〜(No.126 2018年6月6日送信)
(35)長野県の地域産業政策の優位性ある具現化のために解決すべき諸課題について
〜「先送りされた検討課題」の解決への産学官による提言等の活発化のために〜(No.127 2018年6月23日送信)
(36)長野県の地域産業政策に係る当面注視すべき課題について
〜産学官の皆様方による、県に対する、地域産業政策の質的高度化と効果的具現化のための助言・提言に資することを目的として〜(No.133 2018年11月24日送信)
(37)長野県の地域産業政策に係る2019年の調査研究の具体的方向性等について(No.134 2018年12月21日送信)
(38)製品コンセプトデザインの優位性確保による地域産業の市場競争力の強化〜海洋プラスチック問題等の解決のための廃プラスチック類の
資源循環を事例として〜(No.138 2019年3月16日送信)
(39)長野県の地域産業振興戦略の具現化の「起爆剤」としての「デザイン駆動型イノベーション」の重要性とその活性化のための
「政策的仕掛け」の在り方について(No.144 2019年7月14日送信)
(40)新型コロナウイルスとの共存下での地域振興戦略の在り方
〜「長野県新型コロナウイルス感染症等対策条例(仮称)」は「病気の克服(感染抑制)」と「経済活動」の両立を目指すべき〜(No.163 2020年5月30日送信)
(41)長野県策定の各種の地域産業振興戦略に共通する基本理念の優位性とその具現化方法の在り方
〜基本理念「地域産業の振興と県民生活の質的高度化の整合」の真の意義についての議論の深化のために〜(No.177 2021年5月17日送信)
(42)ポストコロナの社会経済の変化に対応した新たな需要創造の活性化方策
〜長野県のポストコロナの新たなものづくり産業振興戦略の在り方について〜(No.180 2021年8月23日送信)
(43)長野県のポストコロナの新たなものづくり産業振興戦略の在り方について
〜中小企業等による新たな需要創造・顧客価値最大化に資する「地域エコシステム」の形成・運営の在り方を中心として〜(No.181 2021年9月24日送信)
(44)地域産業クラスターの形成・持続的発展を可能とする「政策的仕掛け」の在り方について
〜EUの地域産業クラスター形成に係るスマート・スペシャリゼーション戦略が内包する課題とそれへの対応策を参考にして〜(No.182 2021年10月23日送信)
(45)世界的な「デジタル化」と「脱炭素化」の動きを反映した、長野県の新たな地域産業政策の策定の在り方について(No.185 2022年1月2日送信)
(46)コロナ禍の経験を反映した新たなものづくり産業振興戦略の策定の在り方
〜パンデミックにおいても持続的な価値創造活動を可能とするレジリエンスの確保への道筋の提示の必要性〜(No.186 2022年1月30日送信)
(47)イノベーション創出による地域産業振興に必要なコレクティブインパクト
〜産学官連携による研究開発成果の社会実装促進のための「政策的仕掛け」の必要性〜(No.187 2022年3月3日送信)
(48)イノベーション創出による地域産業振興に必要なコレクティブインパクト(2)
〜中小企業等のコレクティブインパクトの実践に資する産業支援機関の在り方〜(No.189 2022年4月28日送信)
(49)ものづくり中小企業における「サステナビリティ経営」への転換について
〜「サステナビリティ経営」への転換の円滑化に資する「政策的仕掛け」の必要性〜(No.191 2022年6月25日送信)
(50)工業振興による経済力強化のための地域産業政策の在り方
〜優れた地域産業政策がGDPで日本を追い抜くドイツの原動力であること(No.208 2023年12月1日送信)
(51)県等が策定する地域産業振興戦略のビジョン実現の確率を高める手法
〜工業技術と人文・社会科学の連携を促進する「政策的仕掛け」の構築〜(No.224 2025年2月24日送信)
(52)中小企業による「デザイン経営」の実践に資する「場」の整備
〜長野県の地域産業振興戦略の新たな構成要素としての提案〜(No.225 2025年3月20日送信)
【2 地域産業政策(戦略)策定機能の整備について】
@地域産業政策研究所の必要性(No.1 2013年4月3日送信)
A地域産業政策論のメッカの形成戦略
東日本大震災・原発事故からの早期復興のためには、日本産業が震災前より更に国際
競争力を高め、長期にわたり復興財源を稼ぎ出していかなければならない。このような現
実に対して、地域に国際競争力を有する地域クラスターを形成するという目的を明確化・
旗幟鮮明にした、国レベル・地域レベルの強力な産業政策が今まで以上に必要となってい
る。このような方向に政策展開をステップアップするために、日本における地域産業政策
論のメッカ(例えば、地域産業政策の共同調査研究拠点や調査研究成果の交流拠点)を県
内に構築し、国内外の地域産業政策と連携・協働して、日本が選択すべき国際的優位性の
ある地域クラスター形成戦略の在り方などを、先進的に国等に提案していくことが、結果
として、本県産業の将来的な生き残り戦略の策定・実施化に合理的に結び付くことになる。
大学等の社会科学系の研究者との連携など、新たな産学官連携推進体制も必要になる。
どうすべきか・・・
B俯瞰的・総合的な地域クラスター形成戦略策定・実施化体制の整備
ある特定の技術分野で、世界的競争力を有する地域クラスターを県内に形成するための
戦略を策定する場合、産学官の関係機関、企業等がどのように連携しながら、どのような
地域クラスターの姿に成長していくのかに関するビジョンと、そのビジョンを具現化する
ために整備すべきソフトとハードのインフラ等を明確化した、俯瞰的・総合的な戦略とし
なければならない。例えば、産学官連携研究開発活動を活性化するためや、その研究開発
成果を早期に事業化するための関連企業・研究所等の集積促進を目的としたソフト・ハー
ドの整備などの各種事業を、俯瞰的・総合的・体系的に戦略に位置づけ、事業相互の効果
的連携の下に、各事業を実施していけるような戦略策定・実施化体制を整備することが必
要になる。どうすべきか・・・
C新たに設立された長野県政策研究所への期待(No.19 2013年11月29日送信)