岩田修二の市議会ニュース        2009年1月


 毎年、全国からその年を象徴する漢字一字を募集し、12月に京都清水寺で発表されています。昨年の漢字は「変」になりました。この「変」はいろいろなとらえ方ができます。昨年の場合には「変化」「変革」の「変」と考える人はそう多くはないと思います。圧倒的多くに皆さんは「おかしい」方の「変」を連想しているのではないでしょうか。

100年来といわれている昨年秋からの経済不況の影響は、基幹産業である、自動車産業、電気産業を中心とした操業の縮小、人員整理となって表れています。中でもマスコミでも大きく取り上げているのが、非正規労働者とりわけ派遣労働者の雇い止めの問題です。景気の良い時は安い賃金で大量に派遣労働者を雇用しておきながら、不況になればいとも簡単に首を切ってしまう。それが社会の本質といってしまえばそれまでですが、あまりにも働く者の人権を無視しているのではないでしょうか。トヨタ自動車が1,500億円の赤字と報じられましたが、実は12兆3,000億円もの内部留保金を蓄積しています。資本主義社会の企業は、出資者の利益を守ることが最優先される出資者のための企業活動であって、決してそこで働く労働者のための企業ではないことが今回の経済不況で明らかになっています。

 

  12月定例議会の報告

 

 須坂市議会12月定例会は、122日から19日までの18日間開かれました。提案された議案の主なものは、メセナホール等の指定管理者を指定する案件、生涯学習・スポーツ部門を教育委員会の管理から市長部局の管理に移行するための条例改正案等、一般会計・特別会計補正予算案等で、いずれも原案のとおり議決、認定されました。

 1219日最終日の本会議では、「世界の民俗人形博物館」の指定管理者指定に反対する討論、生涯学習・スポーツ部門を市長部局に移行するための条例制定等に反対する討論、一般会計補正予算のうち、「湯っ蔵んど」資産買い取りに関する予算の削除を求める修正動議の提案説明が行われました。それに対して、それぞれの原案に賛成する討論も行われました。賛成討論は、執行部が一般質問や委員会審査で答弁しているのと同じ内容で、発言者の主体性が全く感じられないものでした。

「湯っ蔵んど」償却資産買い取りに 3,200万円余

市民の理解は得られるのか

負の資産はきちんと清算すべき    未納金2,700万円はどうなる?

 

 「湯っ蔵んど」の経営状況については、2007年度決算で単年度では黒字決算となっていますが、累積赤字が6,100万円余となっています。入館者数は増えているにもかかわらず、売上高の減少傾向に歯止めがかかっていません。

 今回の提案は、「湯っ蔵んど」の管理者を公募するにあたり、全ての資産の所有者を同一にするための買い取りと説明していますが、現「湯っ蔵んど」の管理者(株式会社健康福祉ランド)には2004年度に須坂市に納めるべき施設の賃貸料2,700万円がいまだに未納になっています。「それはそれ、これはこれ」で済まされる問題ではありません。

 問題の中心は「死海の水温水プール」関係の施設建設に伴う長期借入金と年間700万円を超える維持費とも言われています。市長は、褐注N福祉ランドの筆頭株主として、また、経営の最高責任者としてこの間の経過を市民に説明すべきではないでしょうか。

 私たち「市民21」は、「湯っ蔵んど」の資産買い取り関係予算を全額削除し、無償提供等きちんと清算させるべきだとする修正動議を提出しましたが、賛成少数で否決となってしまいました。


   家庭ごみの全面有料化の導入 具体的検討に入る

実施は2010年夏以降に

分別収集品目も拡大検討へ

 

 福祉環境委員会で家庭ごみの全面有料化に向けた検討経過等の報告があり、環境審議会へ諮問し答申を得たのち具体的な作業に入っていくことが報告されました。

 市では、20078月に有識者や公募市民からなる「ごみ減量化専門委員会」を設置し、家庭から排出される可燃ごみの減量化について検討研究を進めてきました。その検討結果について、昨年10月提言として市長に報告がされています。提言の内容は

  1 分別収集品目の拡大

   現在可燃ごみとして処理している品目で、資源化が可能と思われる品目について、事業実施の可能性を検証し分別収集の実施を望む。

(例:「古布類」「汚れの付着したプラスチック容器」「容器以外のプラスチック製品」)

  2 家庭ごみの全面有料化の導入

    ごみの排出抑制と再資源化の促進、ごみ処理費用負担の公平性、ごみ処理費用の削減等を確保するためには、全面有料化の導入が必要。

    導入にあたっては@有料化対象品目は「可燃ごみ」「不燃ごみ」「粗大ごみ」とする。A経済的弱者、紙おむつ使用者への対策、不法投棄に対する対策については柔軟かつ継続的な対応を。B市民の利便性の向上、資源物リサイクルの促進と回収場所の充実、祭日のごみ収集、高齢者宅の個別収集などの検討

 今後、環境審議会からの答申を待って、200912月に条例改正案を提案、市民への周知期間を半年間とってから2010年夏には実施していきたいとしています。


 岩田修二の一般質問と答弁   要旨

 

組織の改正について(市長答弁)

質問 生涯学習体育部門の組織替え、発想の原点は何か。

答弁 市長として、公民館や博物館等の生涯学習体育課の業務を見る中で、市長部局で実施している施策との連携を進めれば、まちづくり等もっと素晴らしい事業展開ができる。

質問 生涯学習はまちづくりのためにするものなのか。

答弁 生涯学習活動は、市民一人ひとりがその生涯にわたって自主的・自発的に行うことを基本とした学習活動で、まちづくりをするかどうかは、学習活動を行う方の意思による。

質問 市民の学習する自由をどう保障していくのか。

答弁 市民が学習する自由は、法に基づいて保障されており、今回の移管によって変わることはない。

質問 副市長をトップに組織されている「生涯学習まちづくり庁内推進委員会」の機能強化が先決ではないか。

答弁 組織である以上、縦割りの弊害は発生している。庁内推進委員会が機能しなかったのは、教育委員会と市長部局との縦割りの弊害の一つととらえている。

 

保育行政について(教育次長答弁)

質問 保育士の受け持ち人数について、子どもたちの育ちを保障するため、さらに子育て支援施策の充実を進めるため、基準の緩和に向けた積極的な対応をすべき。

答弁 保育士の配置基準を緩和することは、人件費など多額の費用を要するが、保護者の意見を聞きながらさらに検討していきたい。

質問 保育園児であってもその年齢によった発達の違いがあり、その年齢に即した育ち、権利が保障されなくてはならない。混合保育の基本的考え方は。

答弁 児童数の減少などにより、年齢別のクラス編成が困難な場合には、以前から年齢の異なる児童を混合のクラスで保育している。その結果、思いやりの心が育ち兄弟の少ない児童にとっては、成長する過程でもメリットは大きいと考えている。

 

消防行政について(消防長答弁)

質問 消防は数年来の地方財政危機に直面して、平穏に過ごしている時にはその存在がないがしろにされているのではないか。市民は「消防」に何を求めていると思うか。

答弁 消防を取り巻く環境の変化に組織体制及び職員意識が対応できるようにして、火災をはじめ各種災害の防除、被害の軽減を図り、市民が安心して生活できる消防体制を堅持していくことが、市民から求められていると考えている。とりわけ、消防団の充実は重要。

質問 市役所全体で業務の見直しが進められているが、消防職場における事務事業の見直しとはどういうことなのか。

答弁 消防財政は4分の3を人件費が占めることから、限られた予算で費用対効果が向上するよう検討した。決して、火災などの災害現場の対応人員を減らすということではなく、消防として市民の安全、安心がさらに向上する方策を検討した。

質問 現職職員が病気死亡したが、消防職場の環境改善が必要ではないか。

答弁 職員が仲間を信頼しあい、組織の成功のために一丸となれる組織体制に向けて努力する。


     「生涯学習を市長の直轄にする」  反対討論

独善的で自己中心的な発想で本質を見失っている

「生涯学習」を本当に理解しているのかはなはだ疑問

市長の政策にそぐわない学習会は、制限される懸念がある

 

 最終日本会議において、生涯学習部門を市長部局へ組織替えするための2つの条例案について、反対する討論を行いました。以下はその要旨です。

 

私は、9月定例会でもこの問題を取り上げ、なぜ市長部局に移管しなければ、「共創による総合的なまちづくりの柱に生涯学習・社会教育の考え方を基本にすえ、行政内と市民に生涯学習を推進する」ことができないのか、考えをお聞きした。

市長の答弁は、組織替えをすれば今まで以上に事業の連携や効果的な実施ができると思う。そして、その実例をいくつか挙げ「こうすればよかった」「こうしたから良かった」と言っている。ということは、市長は教育委員会に口出しはできない、だから市長のやりたいことができないから、市長部局にするんだという理屈になってしまう。

そのことを強調するなら、市長が自信を持って進めている「農業小学校」の取り組みをどう説明するのか。この取り組みは、教育委員会子ども課が主管して取り組まれている。市長は常日頃この取り組みは非常にうまくいっていると全国に情報発信している。ということはその事業は教育委員会にあっても、市長部局との連携がうまくいっていることを、自ら証明していることではないのか。

2点目、今定例会では、自分の都合の良い解釈で「生涯学習」を使い分けた答弁をしている。生涯学習と社会教育・学校教育は一体のものであり、教育委員会の職務権限であることは明白だ。生涯学習を本当に理解しているのか、はなはだ疑問に感じる。

3点目、この組織改正に関しての原案は市長部局から出されていることに対して、教育委員会事業への意図的な介入の意思が感じられる。自分の思い通りにしなければ気がすまない独善的な発想だ。

4点目、移管する理由の一つとして、生涯学習推進員の皆さんから、学んだことを地域貢献に活かしたいというもの。そのことは様々なまちづくり事業に個別に参加していただければ、それで済むことではないか。そのことを助言するのが市長の役割だと思う。

5点目、職務権限を残しながらの補助執行とは、まったくわかりづらい仕組みである。

6点目、教育の独立性は戦前の経緯から言っても完全に保障されなければならない。仮に、生涯学習部門が市長の支配下に置かれたとすれば、自主的な学習が、市長の政策にそぐわない場合には、制限される懸念を拭い去ることはできない。また、職員もその様な学習会を企画することすらできなくなるのではないか。

生涯学習は自らの知識を広げ、自己の研鑽のために行われなければならないことは、誰もが否定するものではない。だから、あらゆる立場からの独立性が保障されなければならない。私は、教育委員会はそのために存在しており、存在する意義があると思っている。

(反対討論の全文)

 

   昨年は大変お世話になりました。本年も引き続きご支援よろしくお願い申し上げます。

  20091月   岩田修二後援会長 小森清利       岩田修二

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