岩田修二の市議会ニュース     2009年7月

5月21日に新聞各紙は内閣府が発表した1月から3月期の国内総生産(GDP)速報値について、マイナス15.2%と大きく報道しました。そして、前の期と比較して4%の減となり、戦後最大の減少率となったこと。その原因は、昨年秋以降の世界的な金融危機の影響による輸出の落ち込みが拡大したのに加え、企業業績の悪化に伴い設備投資や個人消費などの内需も減少幅を広げた。と理由を説明しています。

心配されるのは、GDPの6割弱を占める個人消費の動向です。この発表では、今回の減少率は1.1%の減少で、消費税率が5%に引上げられた1997年(平成12年)4月‐6月期の3.6%減少以来の大きな落ち込みとなったことです。

今の日本経済の現状は、「物が売れない − 生産・製造の縮小 − 労働者の解雇・一時帰休 − 賃金の削減 − 買い控え − 物が売れない」という「負の連鎖」状態になっています。この「負の連鎖」をどこかで断ち切っていかなければ景気の回復は望めないのではないでしょうか。私は経済学者ではありませんが、内需の拡大、消費意欲、購買意欲の向上こそが景気浮揚の最大の特効薬だと思っています。働く者の収入の減少が景気に与える影響は、計り知れないものがあるのではないでしょうか。
6月定例議会の報告

須坂市議会6月定例会は、529日から623日までの26日間開かれました。提案された議案の主なものは、叶{坂健康福祉ランドの債権放棄、叶{坂健康福祉ランドの会社を清算するための財政支援を含む補正予算。国の「経済対策臨時交付金」を主な財源とした、地域活性化を目的とした公共事業中心の補正予算の他、事件決議案件等でした。

補正予算に修正・組替え動議を提出

叶{坂健康福祉ランドへの財政支援は市民の理解が得られるのか

修正動議の内容は、叶{坂健康福祉ランド解散に伴う財政支出についてです。叶{坂健康福祉ランドは、すでに定款に規定してある会社の業務を行うことができず、会社存続の意味をなくしています。したがって、叶{坂健康福祉ランドは近い将来解散決議が行われ清算業務を開始することになります。その解散する事業者になぜ財政支援のための補助金を支出しなければならないのか、清算も始まっていない会社の負債を、なぜこの時期に市が肩代わりしなければならないのかまったく意味がわかりません。

問題にしたいのは、市長の市民に対する説明責任の問題です。今議会の一般質問でも叶{坂健康福祉ランドの問題について多くの議員が触れています。市長の答弁に共通したのは、出資者に対して申し訳ないとの言葉のみで、最大出資者である市民に対する責任をどう感じているかまったく伝わってきていません。そればかりか、施設の賃借料を過去3億円あまりも支払っており、まだ2億円も基金に積み立ててある。今回の補助金や、債権の放棄は基金残高の範囲であり、税金の投入には当たらないとまで言っています。「昔景気のよかったときにたくさん払っていただいた。その分がまだ残っているので、違うお金で今の借金の穴埋めに使うことには問題はない。」と言わんばかりの説明に終始しています。その様な理不尽な説明が通用するのでしょうか。そのことの説明責任をきちんとはたすことが最優先課題ではないかと思います。したがって、今補正予算における叶{坂健康福祉ランド関連予算には合理性が認められず、撤回修正を求めたものです。

もう1点は、「福祉医療費給付金事業」について、今年度から給付範囲が拡大されたにもかかわらず、県の要綱が改正されたからとの理由での負担額の引き上げは、個人にとってはたとえ200円であっても福祉行政を後退させるものにほかなりません。今まで溜め込んできた基金を叶{坂健康福祉ランドの負債処理に使うのではなく、このような福祉施策に支出することこそが市民福祉の向上につながるものと確信しています。したがって、福祉医療費給付金の減額に反対し修正を求めました。(修正動議の提案理由の説明)

組替え動議(地域活性化・経済危機対策臨時交付金事業)

優先度の高い事業から行うべき

経済状況の悪化に伴う内需の拡大策として、国の「経済危機対策」による「地域活性化・経済危機対策臨時交付金」等を活用し、地球温暖化対策、少子高齢化社会への対応、安全・安心の実現、その他将来に向けた地域の実情に応じるきめ細かな事業の積極的推進、とした補正予算は、財源的には、単年度で処理しなければならない事業であることから、事業の優先度において考え方に違いがあります。

今回の「組替え動議」の基本的視点は、必要な事業であっても優先順位を考慮し優先度の高いものから選定すべきであり、予算消化的な事業は市民の利益にはつながりません。

そこで、まず、実施計画に計上されていない事業について見直しをし、次に、防災事業を優先的にし、日常的により多くの市民がこの事業を自覚することができ、万が一災害時の対策を取りやすくすること。さらに少子化対策、次世代人材育成に関わる事業を優先させることとして組替え動議を提出しました。

具体的には、防災危機管理事業における避難所配備品の充実、耐震診断の完了している高甫保育園の耐震・補強工事、ゼロ歳児・病後時保育施設の整備への予算配分を求めました。

岩田修二の一般質問と答弁   要旨

地域経済について(市長答弁)

質問 昨年10月以降今日までの市内企業の業績をどう把握しているのか。

答弁 1月から3月期の製造業や建設業の動向調査の結果で、業況は依然として大幅に悪化の傾向を示している。

質問 市では、緊急総合経済対策本部を設置したが、対策本部の役割は果たしたのか。

答弁 対応可能な施策に関係部局が連携して取り組んだため、対策本部の役割は果たしたと考えている。

質問 市民の購買意欲の高揚に向けた市独自の景気浮揚策を行うべきだ。

答弁 行政としての取り組みではなく、商工会議所や商店会連合会など関係機関と連携を密にしながら、企業や商店等の皆さんが自ら考え、やる気のある、元気で積極的な活動に対するPR等を行うなど、側面的な支援をしていく。

質問 「蔵のまち須坂花火の夕べ」の中止は、市民の活力を損なわないか。

答弁 実行委員会の協議結果を尊重する。今年の花火大会の中止は心配されるような、市民の活力が損なわれることはないと思う。

一般廃棄物処理について(市民共創部長答弁)

質問 ごみ減量化・資源化の目標達成状況は。

答弁 ごみの総排出量は減少してきているが、更なる分別の徹底や分別、資源化の品目を増やすなどしてリサイクル率の向上が必要と考えている。

質問 ごみ全面有料化の目的は何か。

答弁 ごみの減量を推進していく動機付け、分別の徹底やリサイクルの促進を図ること、ごみを減らせば費用負担が少なくてすみ、排出量に応じた公平な負担をしていただく観点から有料化を行っていくもの。

質問 ごみの有料化は本当に減量化につながるのか。

答弁 有料化により、分別の徹底が一層図られるとともに、古布・陶磁器の分別、再資源化する品目を増やしたり、市民が分別しやすい収集方法を検討し、減量化につなげていきたい。

市職員の採用と働く環境について(総務部長答弁)

質問 必要職員数を確保するため、任用候補者名簿を作成し計画に沿った職員確保を図るべき。

答弁 実際の採用人数を上回る成績上位者を名簿に登載し、成績上位者から順番に採用した。昨年度は、他企業への就職、大学院への進学等を理由に辞退者が多く出てしまった。

質問 権力や地位を利用した嫌がらせと言う意味のパワーハラスメントについて、職場の現状を把握しているか。

答弁 職員のホッとする相談室を毎年開催しているほか、専門医による相談を実施するなど、メンタル面でのサポートに取り組んでいる。

質問 職場内で大きな声で注意するとか、個人の趣味・嗜好にまで及んだ言動をする行為があると聞いたことはあるか。

答弁 特に聞いていない。

叶{坂健康福祉ランドの清算を考える

   何のために補助金を出すのか

叶{坂健康福祉ランドとは、平成9年に「湯っ蔵んど」が建設された際その管理運営、いわゆる経営を行うために設立された会社で、須坂市が株式の75%(3,000万円)を出資、他に八十二銀行、長野電鉄、須高農協、須坂商工会議所、仁礼会が5%(200万円)づつ出資しています。

 最初の頃の経営状況は、大規模な施設であり新しさもあって「順風満帆」。平成11年度には、40万人近くが来場し、53,200万円余を売り上げ最高を記録しています。しかし、平成20年度の実績は、来場者数は平成11年度に比べて76%、売上は49%にまで落ち込んでいます。

開業当初は業績が好調だったため、市と会社は節税対策として、また、将来の施設修繕、改修費用に充てるためとして、施設等の賃借料を納付する契約を結びました。須坂市はそのお金を、使用目的が決められている公共施設等整備基金積立金に積み立てています。

 「湯っ蔵んど」の経営状況は平成15年から赤字決算となり下降し始めます。この年からは賃借料として納入していた、物品分、収益分歩合分が免除され建物分のみの納入になっています。平成18年からは建物分も廃止され、会社からの賃借料の納入はなくなっています。

市の考え    次のとおり公益上必要があると考え、補助金を計上した

@ 市は主導的立場で会社を設立し、かつ75%を出資した

 おかしい?  株主は会社の経営において有限責任である(株主有限責任の原則)ことは一般的常識。したがって、出資した3,000万円の範囲で責任を負えば済むことになる。

A 「湯っ蔵んど」は「公の施設」であり、公益性・公共性も有した会社に管理委託してきた

 おかしい?  平成1112月議会で当時の市長は、「第3セクター、いわゆる叶{坂健康福祉ランドに対する財政支援は考えていない。」と答弁しており、平成179月議会で現市長が「行政の継続性、そういった観点から当時の答弁どおり考えている」と答弁している。いまさら「公」を強調するのか。

B 叶{坂健康福祉ランドが須坂市に果たした役割は大変大きい

 おかしい?  市内の企業や商店、当然市民の皆さんも須坂市に対して税金を払い、市内で物を買い、ボランティアに参加し地域の発展、融和のために協力している。その果たしている役割は須坂市を支えていると言っても過言ではない。なぜ、叶{坂健康福祉ランドだけを特別扱いするのか。仮に他の民間企業が債務超過に落ちいったときに、須坂市は財政援助をするのか。

         賃借料として積み立てた基金の残高が約2億円も残っているから、その範囲内での補助金は妥当との論は、民間に例えると、「過去に税金をたくさん払った。それが市の基金の一部にもなっている。今不景気なので過去に払った税金の範囲で財政支援を」と同じことではないか。常識的にはまったく合理性の欠く考え。

C 会社の清算業務を結了することは、設立した市の信用が保持される

 おかしい?  「市の信用が保持される」とはまったく意味が理解できない。「市長の信用」と言い換えたほうがよい。市長はこの間、出資者に対しては迷惑をかけたとの発言を繰り返しているが、ここに至った市民への説明がほとんどなされていない。議会で決めた後で、市長は何を説明し信用を保持しようとするのか。

須坂市一般職の職員の給与に関する条例等の一部を改正する条例に反対討論をしました。
その内容は以下のとおりです。

ただいま議題となっております、議案第51号須坂市一般職の職員の給与に関する条例等の一部を改正する条例について、反対の立場で討論をいたします。私がこのような討論を行えば、お前は市職員出身だからとか、議員自身の報酬も減らされるからとか、多くのご批判をうけることは覚悟のうえであります。しかし、現下の日本経済の状況を考え、地域経済を回復させなければならないことを考えれば、反対せざるを得ないのであります。

 5月21日に新聞各紙は内閣府が発表した1月から3月期の国内総生産(GDP)速報値について、マイナス15.2%と大きく報道しました。そして、前の期と比較して4%の減となり、戦後最大の減少率となった。その原因は、昨年秋以降の世界的な金融危機の影響による輸出の落ち込みが拡大したのに加え、企業業績の悪化に伴い設備投資や個人消費などの内需も減少幅を広げた。と理由を説明しています。

 心配されるのは、GDPの6割弱を占める個人消費の動向です。この発表では、今回の減少率は1.1%の減少で、消費税率が5%に引上げられた1997年(平成12年)4月‐6月期の3.6%減少以来の大きな落ち込みとなったことです。この発表を基に、日本経済新聞では民間の経済問題専門家の見方をもとに、日本経済を展望しています。その記事には次のように記載されています。

「内需のカギとなる消費。定額給付金効果などで盛り上がりを見せてはいるものの、先行き不安も付きまとう。3月の完全失業率は4.8%と2ヶ月で0.7ポイントも悪化、雇用調整は1年以上続くと見られ、消費の本格回復は見込みにくい。所得減は景気のブレーキだ。6月末、サラリーマンは銀行に振り込まれるボーナスを見て景気悪化を実感する。消費意欲が高まる可能性は低い。

昨年秋以降の経済不況の影響は、その責任が無いにもかかわらず一般勤労者に現れています。派遣労働者の派遣切れに伴う雇い止めが大きな問題になり、年末年始の東京日比谷公園におけるテント村の様子はマスコミに大きく報道されました。その次が、正規職員の希望退職の募集、須坂市の企業でもそのことが行なわれました。そして、賃金の削減です。

企業は不況下にあっても儲けを確保するために生産コストを低く抑えようとします。その一番手っ取り早い方法が、そこに働く人の人件費を最小限に抑えることにあること、ということが定着してしまっています。しかし、その生産した物を消費するのもその働く人たちいわゆる労働者ではないでしょうか。今の日本経済の現状は、「物が売れない − 生産・製造の縮小 − 労働者の解雇・一時帰休 − 賃金の削減 − 買い控え − 物が売れない」という「負の連鎖」状態になっています。この「負の連鎖」をどこかで断ち切っていかなければ景気の回復は望めないのではないでしょうか。

民間企業では、例年一時金は前年の業績を見ながら7月過ぎまで労使で交渉しているところが多いと聞いていますし、公務員の状況を参考にしている中小の企業もあるとも聞いています。さらに、今回の人事院による臨時勧告の基となった民間会社の調査は、全国2,700社に対しアンケート方式で行なわれましたが、回答があった会社が2,000社そのうちボーナスの支給月数が妥結していた会社はわずか340社という状況でした。長野県人事委員会にいたっては、511日にまったく調査等を行うことなく、人事院と同じ内容の勧告をしています。

527日の朝日新聞長野版には、長野市議会総務委員会協議会での議論の模様が紹介されました。「政府の経済対策に逆行するものだ」「公務員のボーナス削減は、ボーナス交渉をしている民間企業の動向に悪影響を及ぼす」との意見が出され、一時金凍結に積極的な賛成意見はなかったとのこと。また、信濃毎日新聞には長野県内すべての自治体で一時金の凍結を決め、全国的には89.7%の自治体が一時金の凍結を決めていると報じられています。

今回の一時金凍結の措置は、須坂市内に居を構える公務員のすべてが対象になっており、その対象は市職員だけではありません。国家公務員、学校の先生、警察官を含めた県職員を含めれば、その人数は少なく見込んでも1,000人をくだらないと思います。その数はおおよそ納税義務者の10%にあたります。

そう考えると、公務員の賃金や個人消費が多少なりとも地域経済を支えていることは間違いありません。

日本経済全体のことを一地方自治体が議論しても仕方がない、須坂市だけがやらないのはおかしい、とおっしゃる方がいるかもしれませんが、全国的には一時金の凍結を行わない自治体があることも事実です。

私は経済学者ではありませんが、内需の拡大、消費意欲、購買意欲の向上こそが景気浮揚の最大の特効薬だと思っています。そういう意味で、公務員職場が進んで景気を停滞させるような今回の一時金凍結には、反対を表明せざるを得ません。

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